ウルフルズ ライブツアー2025-2026 ツーツーウラウラツー シーズン2
2025年9月23日(火・祝)昭和女子大学 人見記念講堂
ゲストミュージシャン:Gt.桜井秀俊(真心ブラザーズ) / Key.小杉泰斗
2025年9月23日(火・祝)、東京・昭和女子大学 人見記念講堂。ウルフルズが、2025年秋から2026年春までかけて、全国18都市(デビュー33年にして、初めて行く街も含む)を回る全国ホールツアー『ツーツーウラウラツー シーズン2』の1日目は、トータス松本曰く「初日からいきなり波乱万丈」な幕開けとなった。
何が。ベースのジョンBが、である。ステージ上の5人の配置は、前方左にサンコンJr.、中央にトータス松本、右にジョンBで、後方の台の左にサポート・ギター桜井秀俊(真心ブラザーズ)、右がサポート・キーボードの小杉泰斗、という、いつものフォーメーションである。
だが、ジョンB、座ってベースを弾いているのだ。しゃれたバーみたいな高めのスツールに腰掛けて。
トータス、一回目のMCまで待ちきれなかったらしく、1曲目の途中で、「骨折ベーシスト、ジョンB!」と紹介する。
そう、公式サイトで発表されたように、ジョンBは左足の関節を骨折。入院して手術を受け、9月22日に退院、立って演奏することはできないが、ツアー開始にギリ間に合った──というのが、トータスが言うところの「波乱万丈」なのだった。
二度目のMCで、ジョンB、その経緯を説明する。ツアーが始まるから髪を整えておこう、と、いつもの美容院に行き──その店は階段で2階まで上がるそうだ──帰り際、下りきる寸前に階段を踏み外し、その時、足から「グキグキッ!」とイヤな音が二回鳴った、という。
救急病院に行き、翌日に入院→手術。「僕、23日にライブがあるんです」と医者に言うと「絶対無理です」と即答されたが、その後、カルテのジョンBの本名をネットで調べて正体を知ったらしく、次に病室に来た時は「わかりました!」に答えが変わっていた──という話に、完売満員の客席、爆笑する。
サンコンも同じ美容院に行ったそうで、マネージャーに「くれぐれも階段に気をつけてください」と言われたそうだ。
トータス、「これがサンコンやったら、完全に無理やったなあ」。そうですね。昔、フラワーカンパニーズのミスター小西が右足首を骨折した時、ツアーを休むしかなかったもんね。ちなみに、その2011年のフラカンのツアーで、代わりに叩いたのは、クハラカズユキとサンコンでした。
トータスは「(ステージの上の)みんな座ってるやんけ。立ってるの、俺と桜井くんだけや」というのが気に入ったらしく、その後も何度も口にしていた。
いかん、ジョンB骨折話が長くなりすぎた。
このツアーは、2024年8月~10月にウルフルズが行った『ライブツアー2024 ツーツーウラウラツー シーズン1』の続編である。なので『シーズン2』。
『シーズン1』も『シーズン2』も、2002年の全国ツアー『ツーツーウラウラ』に因んだもの。『ツーツーウラウラ』は、『笑えれば』を収録した7作目のアルバム『ウルフルズ』のリリース・ツアーで、同アルバム収録の楽曲『ツーツーウラウラ』をタイトルにして、日本全国津々浦々細かく回りますよ、という趣旨だった。
それを再度、2024年と2025年に行います、というのが今回なので──このライブレポ、ツアー初日なのでセットリストや演出等のネタバレはNGなのだが──「ツーツーウラウラ」と「笑えれば」が演奏されることは、さすがに、書いてもいいですよね?
あと、現時点での最新曲である、2025年リリースの2曲=「青春」と、「おっさんのダンスが変だっていいじゃないか!」が、歌われることも。
それぞれの曲が、何曲目に、どんな演出と共に演奏されたかについては、書かないでおくが、4曲とも、「ここか!」とか「ここだよね!」とか言いたくなるような、非常に重要なポイントで演奏され、ファンを狂喜させた。
それらの曲以外にも、生で聴けるのが素直にうれしい歴代の代表曲の数々、あり。トータスとジョンBがツイン・ボーカルをとるあの曲、あり。サンコンがひとりで歌いきるあの曲や、全編ジョンBが歌うレアなあの曲や、桜井秀俊がステージ前まで出て来て、ギター・ソロを弾きまくるあの曲も、あり。
中盤のMCでトータスは、「初日からこんな幸せな気持ちになれて、ありがとう」と、オーディエンスにお礼を伝えた。
それから。「笑えれば」を歌う前に、トータス松本はこんなことを言った。
「作った当初は、鳴かず飛ばずやったこの曲は、なぜか23年も経って、みんなが好きでいてくれる曲になっています」
みんなが大拍手する中、歌われた「笑えれば」は、確かに今聴いても、いや、今聴くとなおさら、その真価をリアルに感じることができる仕上がりだった。歌詞の一言一句や、メロディやコード進行や、アレンジの細部に至るまで、考えうる限りの最善の状態でできあがっている、「バンザイ」と双璧をなすほどの名曲だ、と思った。
トータスは、アンコールのMCでも、この「笑えれば」のことに触れた。
『バンザイ』以来久々に、伊藤銀次プロデューサーと組んで、ロサンゼルス・レコーディングまで行って、ドラマのタイアップも付いたのに、全然売れないし、ドラマは打ち切りになるし……まで話したところで、客席から「観てたよ!」と声が飛ぶ。
瞬時にトータス「観てたよとか言うな、却って傷つく!」と返し、みんな大笑い。『ギンザの恋』ですね、トータス松本初主演の。
しかしトータス、こんなに言うってことは、この曲が(当時は)ヒットしなかったことが、相当なトラウマになったんですね。でも今、こうして客前でネタにできるようになった、ということは、長年ライブで歌い続け、オーディエンスに喜ばれ続けてきたことで報われた、ということですね、きっと。
「みんなのおかげで、いい初日が飾れそうです。これだけやってきても、毎回ソワソワソワソワするんですよ。初日の前って。怖い。でも、ほんの数時間経ったら、こんな気持ちになれてる。いい仕事やなあ。みんながいてくれてこそやから。いてくれんと、仕事にならへんからね」
最近の若いバンドは、みんなうまいし、ステージングもしっかりしている。でも、毎回決まったことを、難なくこなしている感じもして、「おまえら、初めてステージに上った時の熱い気持ちはもうないのかよ」と思ってしまう時もある。
それで言うと、フラカンの(鈴木)圭介、ええよな。何十年もやってんのに、いまだに初めてのライブの時みたいな、ピリピリハラハラしたまんまやもんな、あいつ──。
7~8年くらい前のインタビューで、トータスにそんな話をきいたことを、このMCで思い出した。「圭介いいよなあ、って、松本さんもそうじゃないですか」と言いたくなったことを。
あとひとつ。これは書いておきたい、と思った、行ってみてわかったこと。
このツアー、セットリストが複数あります。
バンドが、長いツアーの時にセットリストを複数用意する、というのは、めずらしいことではない。ただし、そういう場合は、たとえば「8曲目と13曲目は2曲用意して、そのどっちかをやる」というふうに、ピンポイントで曲を変えるのがセオリーだ。
しかし、この『ツーツーウラウラツー シーズン2』は、「その2曲のどっちかをやる」ところが、ピンポイントではない。もっと多いのだ。
その上、2曲のどっちを演奏したとしても、演奏しなかった方の曲に対して「これを聴けなかったのかよ!」と思ってしまうやつが、並んでいるのである。やりたい曲、やらねばならぬと思う曲の数が、尺に収まらなくて、こうしたのではないか、と推測する。
終演してすぐ、思わず、今後のツアー日程を見直した。地方とかで、自分がもう一回観に行けるスケジュールの日が、あるかどうか。まあ、地方に行ったとしても「今日と同じセットリストでした」という結果になる可能性も、大なんだけど。
でも、また観たいです。















