早見沙織、10年の歩みを振り返る集大成のライブを開催!新たな決意を胸に、11年目へ一歩を踏み出す

ライブレポート | 2025.09.25 12:00

HAYAMI SAORI 10th Anniversary Live "HAYAPOP"
2025年9月21日(日)パシフィコ横浜 国立大ホール
Vo:早見沙織 / Gt:渡辺拓也 / Ba:黒須克彦 / Pf:白井アキト / Dr:小笠原拓海

早見沙織が9月21日(日)に神奈川県・パシフィコ横浜 国立大ホールにて、アーティストデビュー10周年記念ライブ『HAYAMI SAORI 10TH Anniversary Live “HAYAPOP”』を開催した。

2015年8月にアーティストデビューし、本格的な音楽活動を開始した早見沙織。アーティストデビュー10周年のアニバサリーイヤーとなる2025年に入ってからは、1月にオーケストラライブを行い、3月と4月には新たにチャレンジした「セメライブ」を開催。そして、8月のトーク&アコースティックイベントでは、アコースティックギターと歌というミニマムな編成に加え、アカペラによる歌唱も披露。ロック、ポップ、R&Bやジャズと多岐にわたるジャンルの楽曲を様々なスタイルで届けてきた彼女は、「10年の歩みを振り返る集大成のライブ」と位置付けた本公演を“HAYAPOP”と名付けた。

“HAYAPOP”とはなんなのか。ライブ前のインタビューでは「いちジャンルにとらわれず、様々な感情をすくい上げる私の音楽」と語り、この日のMCでは、「今年だけでもいろんなジャンルの音楽を披露させていただいて。この10年間に自分が作ってきたものを見ていても、カラフルでいろんな表情やいろんな想いが乗っかっていて。1つのジャンルでは収めきれない、キラキラ光る音楽たちを1つの大きな括りで、キャッチーにポップにまとめてくれるのが“HAYAPOP”となっております」と解説していた。アンコールなしでちょうど3時間。全32曲を感情豊かに歌い上げた本公演は、まさに「HAYAPOPとはなんぞや?」をダイレクトに見せつけるライブとなっていた。

オープニングを飾ったのは、2016年にリリースされた1stアルバム『Live Love Laugh』の1曲目に収録されていた「NOTE」。デビュー曲である「やさしい希望」の作曲も手がける矢吹香那による明るく軽快なポップソング。<Hello.前を向いて/ただひたむきに 歩いて行こう/願う場所にだどりつくまで>という10周年記念ライブの幕開けにぴったりのフレーズとともにライブをスタートさせると、早見が作詞作曲し、冨田圭一(冨田ラボ)が編曲した都会的で洗練されたシティポップ「garden」から諭吉佳作/menによる変拍子のジャズナンバー「エメラルド」へ。ここで、「10年間の軌跡を詰め込んだライブということで、みんな、余すことなく早見沙織の音楽に浸って帰って欲しいし、私も全部出し尽くすのでよろしくお願いします」と挨拶すると、会場全体から祝福と期待の拍手が送られた。

続く「夏目と寂寥」では総立ちとなった客席からコールがあがり、ジャズやファンクの要素をブレンドしたR&B「yoso」では盛大なシンガロングが発生し、アーバンR&B「瀬戸際」ではソウルシンガーのようなフィーリングで観客を酔わせた。幅広いジャンルを縦横無尽に行き来することで“HAYA POP”を体現するとともに、ここまでの6曲は全て違う作品に収録されていた楽曲たち。3枚のアルバムとデビュー5周年記念として製作された2枚のミニアルバムからの選曲によって、冒頭から一気に過去、現在、未来を鮮やかにつないで見せたことになる。

さらに、1曲の中でバウンシーなバブルガム・ソウルポップから高温でしっかりと歌い上げるミュージカルナンバーへと変化する「PLACE」、80年代の歌謡曲ムードたっぷりの「夢の果てまで」を経て、「フロレセンス」では表情が見えないほど照明の落ちたステージで、ダークで深みのある歌声を響かせると、心の声が漏れたかのようなセリフや激しい息遣いで観客を楽曲の世界観にグッと引き込み、さらに重厚になった「祝福」と「Abyss」は彼女のアカペラによる<君に>というフレーズでシームレスに繋ぎ、狂おしいほどの思いの奔流をエモーショナルに歌唱。静から動、光から闇、ウィスパーからストロングという一連の流れはダイナミズムに溢れており、早見のヴォーカル表現の多彩さをじっくりと堪能できる時間となっていた。

これまでのジャケットやアーティスト写真、ライブ映像などをまとめたメモリアルビデオに続いて、画面に映っていたグッズの1つである“10thゴールド(早)ぬい”がスクリーンから飛び出し、着ぐるみとなって会場に登場。観客とコール&レスポンスを繰り広げたあと、「僕らのアンサー」からはホールがライブハウスへと化した。「透明シンガー」「残滓」と激しく攻撃的なバンドサウンドで観客の高揚感を一気に上昇させると、スクリーンに雨が映し出される中で、エレキギターの効いたロックバラード「レイン」で止まない雨を体現。そして、「未来に読むときに、昔の自分を思い出しながら背中を押して欲しいなっていう気持ちで作りました」という言葉の後に披露されたライブ用曲「Memory」は、ピアノと歌だけで始まるバラードだが、過去の不安や傷を受け入れ、悩みや葛藤も抱えたうえで“ここで生きていく”という未来への決意を込めてるように感じた。

「レイン」「Memory」という今年の「セメライブ」のために作られたライブ用曲を2曲つづけた後、「琥珀糖」はハイチェアに座り、ピアノ伴奏のみで情感を込めて歌い、三日月と星空をバックに歌った「glimmer」でスクリーンに流れ星が流れ、光が差す新たな日に導く“生命の歌”である「Tear of Will」では一転して壮大なスケール感を表現。5曲続けての“バラード”は、様々な種類があり、多様な表現があることを再認識させられた想いがした。

<LOVE>というセリフにスポットが当たったジャズナンバー「ESCORT」で観客の体を心地よく揺らしたあと、恒例の「早見クイズ」では、「私がこの夏、一番買ってよかったものは扇風機だ」という、「私しか答えを知らない理不尽なクイズ」が出されたが、多くの観客が「YES」を挙げて正解をゲット。そして、観客のコミュニケーションをしっかりと楽しんだ早見は、「私の中の最大の可愛い気持ちが生まれて来ました! 可愛くやっていこう!!」と宣言し、Honey Works「可愛くてごめん」を振り付きでキュートにチャーミングにカバー。さらに、「もっともっと笑顔になってもらいたい」という言葉に導かれたアニメ「トニカクカワイイ 女子高編」のオープニング主題歌「plan」では、再び呼び込まれた“10thゴールド(早)ぬい”とともにステージを所狭しと動き回り、<君が生きて笑えることが 何より嬉しい>と歌う「Ordinary」から、2019年4月に開催された全国ツアー「早見沙織 Concert Tour 2019 "JUNCTION"」の各会場でワンコーラスずつ作り、当時の最終公演地となった国際フォーラムでワンハーフまで完成させ、更にバンドバージョンへと進化した「curtain」へ。<終わらぬ未来を見ていたい/あなたと一緒に>というフレーズは応援してくれているファンに向けたメッセージだろう。

“あなた”の日常や人生に寄り添うという想いのこもった楽曲を続け、ステージと観客の距離をグッと縮めてみせた「curtain」までで既に24曲。場内もいい雰囲気になっていたが、ステージを一旦はけて、早着替えして戻ってきた早見が「まだまだ終わらないよ!」と声を上げ、12月からNetflixにて独身配信されるアニメ『終末のワルキューレⅢ』のエンディングテーマとしてリリースされる新曲。ドラマチックでスリリングなロックナンバー「Last breath, Last record」からライブはいよいよクライマックスに突入した。早見の「いけるの?」「いくよ!」という呼びかけに観客が真っ赤なペンライトを掲げて応えた「視紅」から、「オイ!オイ!」という声のヴォリュームが一段と上がった「Installation」、さらに「その声が地図になる」とBPM160超えの高速のロックナンバーで観客のヴォルテージを上げると、デビューシングル「やさしい希望」は当時のMVをバックに歌唱。客席をバックにした記念撮影を行った後、「Jewelry」では再び(早)の着ぐるみが登場し、場内を周回して観客を盛り上げると、早見の<大丈夫>という呼びかけに応えるかのように大合唱となり、会場は多幸感で満ちていった。そして、「Guide」で暗闇から照らされる眩い光に向かって手を掲げ、<誰にも似てない私だけの光>を掴んだ彼女は、最後のMCでこれまで関わってきた全てのスタッフや家族、友達、ファンに向けて丁寧に感謝を伝えた。

MCの最後に「自分の一個人の心から生まれてきた表現が皆さんの元に届いて、大切にしていただいて本当にありがたいと思います。これからも光を届けていけるように、歌とともにあれるように頑張っていきます」と未来に向けた決意を表明。ラストナンバーは<消さないで光を>と繰り返す「Awake」。<先なんて確かなもの>に続く<何一つないけど>というフレーズだけ、メロディラインからもはみ出して歌っていたのが印象的だった。それでも、<わたしはここにいるよ>と自身のリアルな感情を刻み込んだフレーズに全てのエネルギーを込めるかのように歌い上げると、場内が“夜明けの光”のような真っ白い光に包み込まれる中でエンデイングを迎えた。歌い切った彼女が笑顔で手を振りながらステージを後にすると、終演後のスクリーンには「10周年ありがとうございました。これからも音とみんなとともに。」という手書きメッセージが流された。何も見えない時でさえも夜明けの光を信じ、自らの音楽を“HAYAPOP”と笑顔で言い切るには、表現者としての覚悟も感じた。過去、現在、未来。そして、光と闇を鮮やかに繋げながら、シンガーソングライターとして、ヴォーカリストとしての魅力を存分に発揮した、まさに10周年の集大成にして、11年目の新たな一歩を踏み出したことを感じさせてくれるライブだった。

SET LIST

01. NOTE
02. garden
03. エメラルド
04. 夏目と寂寥
05. yoso
06. 瀬戸際
07. PLACE
08. 夢の果てまで
09. フロレセンス
10. 祝福
11. Abyss
12. 僕らのアンサー
13. 透明シンガー
14. 残滓
15. レイン
16. Memory
17. 琥珀糖
18. glimmer
19. Tear of Will
20. ESCORT
21. 可愛くてごめん
22. plan
23. Ordinary
24. curtain
25. Last breath, Last record
26. 視紅
27. Installation
28. その声が地図になる
29. やさしい希望
30. Jewelry
31. Guide
32. Awake

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