摩天楼オペラ、バンド結成18周年記念ライブは雨とファンの愛が降り注ぐドラマチックな夜に。新曲披露、19周年記念ライブも発表

2025.09.01 16:00

18th Anniversary Live
2025年8月10日(日)日比谷野外大音楽堂

8月10日、3連休のど真ん中、摩天楼オペラが東京・日比谷野外大音楽堂でバンド結成18周年記念ライブ<摩天楼オペラ 18th Anniversary Live >を敢行。開演からラストまで一時たりとも雨が止まないという悪天気のなか、メンバー、ファン、スタッフ、誰もがびしょ濡れになりながらも、この8月10日に開催した18周年ライブは、何年経っても語り継がれるほど忘れられない衝撃的な一夜となった。

当日は開演時間が近づくにつれて雨は土砂降りに。この公演の前には優介(Gt)が不慮の事故により左上腕を骨折し、野音での演奏を見合わせるという衝撃的なニュースが世の中を駆け巡った。そのため、当日は優介抜きの4人でステージに立つこと。ギターはこれまで優介が演奏してきた音を同期で流して対応するため、ライブは5人の完全体でのパフォーマンスではないという理由で、バンド側はチケットの払い戻しにも対応していた。にも関わらずだ。当日、蓋を開けてみると、野音には驚くほど多くのオペラー(ファンの総称)たちが集結していて、雨が降りしきるなかで開演を待っていた。これは、オペラーたちの愛でしかない。

そもそも摩天楼オペラの周年ライブは、毎年バンド結成日である5月4日に行なうのが恒例だった。だが、今年はその日に最新アルバム『六花』のツアーファイナルを行ない、周年ライブの日程を8月10日にずらしたのだ。そこまでして、彼らは今回の会場となった“野音"での周年ライブ開催に特別にこだわっていた。じつは、過去に摩天楼オペラがライブを開催したもっとも大きな会場。それが、この野音だった(2014年10月18日、全国ツアー<ALALON TOUR>のファイナル公演として開催)。野音は今後改修工事に入ることが決まっている。その前に、現体制でバンドが絶好調に仕上がったいま、過去の歴史を塗り替えるために彼らは野音をやりたかったのだろう。いつもの周年とはモチベーションが明らかに違う。そんな5人の思いを察して、オペラーたちは今回野音に駆けつけた。その気持ちを想像するだけで、開演前から胸が熱くなった。

雨に打たれながら、カッパを着た大勢のファンが待つなか、17時30分に場内は暗転。全身真っ黒というニュー衣装に身を包んだメンバーが次々と舞台に現われる。響(Dr)、燿(Ba)に続いて、彩雨(Key)がいつも優介がいる上手サイドに構え、この日しか見られないイレギュラーのフォーメーションで、まずはファンを驚かせる。よく見ると、彩雨の横には優介のギターとアンプがちゃんと置かれている。これも胸熱だった。最後に苑(Vo)がステージに現われ、照明が真っ赤になったところで、「BLOOD」をベースにしたSEから流れるようにライブはもちろん「BLOOD」で幕開け。いわずとしれた最新アルバムのリード曲だ。雨など構わず、オープニングからバンドがトップスピードで野音を突き刺すような迫力で、重厚感あるメタルサウンドを放つと、場内では真っ赤なペンライトが揺れだす。優介の同期のギター音源も、違和感なく生のアンサンブルに馴染んでいてホッとする。

苑(Vo)

続けて、高速チューン「EVIL」をたたき込むと、白煙が野音の天空めがけてものすごい勢いで吹き上がる。オペラーたちは雨の中、カッパのフードが外れ、ずぶ濡れになるのも気にせず全力で頭を振ってさらにヒートアップ。そのあともメロディックな「落とし穴の底はこんな世界」、「儚く消える愛の讃歌」をものすごい熱量で畳みかけていったあと、苑が「18周年、お越し頂きありがとうございます」と客席に向かって丁寧な挨拶を届けた。その間も絶え間なく降る雨を見て「降りましたね。薄々分かっていたんですけど、誰よりも“雨男”なんです」と申し訳なさそうに告げたあと、改めて11年ぶりにバンド最大規模の会場まで戻ってこられたことについて、メンバー、ファン、スタッフに感謝の言葉を贈った。そうして「今日はいままでの俺らを、いまの摩天楼オペラで越える日にしたいと思います」と高らかに宣言。このあとは優介の話題に触れ、優介がいない状態でのライブであることを「申し訳なく思ってます」と謝罪。ギターは弾けなくても「声は出せるから」と、舞台袖に優介がスタンバイしていることをあかし「優介の(同期のギターの)音と、優介のコーラスやシャウトとともに18周年、派手に祝っていきましょう!」と客席を威勢よく煽ると、苑の言葉に応えて、会場からは大きな歓声が上がった。

響(Dr)

その会場に向けて、周年を祝うパーティーはここからとでもいうように名曲「PHOENIX」を投下。美しくどこまでも天空へと駆け上がっていくメロディーは、当時メンバー脱退やレコード会社移籍などでどんなに苦しい状況でも、希望を持って前に進んでいくんだというバンドの意思を刻み込んだ渾身の1曲。その意思はこの体制になったいまも変わらないんだというように、間奏に入る直前、苑が「いけー、優介!」と叫ぶと、ステージにはいない優介のギターソロに合わせて観客たちが手を広げて咲き乱れ、場内のボルテージはさらにヒートアップ。続けて、摩天楼オペラの作品のなかでもリズミカルなダンスチューン「Psychic Paradise」が始まると、ステージの左右から客席に向かっていきなりウォーターキャノンが発射! 雨と水しぶき、ダブルの水の演出でで全身ずぶ濡れになったオペラーたちは「もうとことん濡れてやる」という雰囲気でテンションは爆上がり。燿と彩雨と一緒に狂ったように激しくヘドバンをしたあとは、椅子から立ち上がった響と“Oh! Yeah!”を大声でシンガロングして大興奮。苑のハイトーンと優介のシャウトが炸裂した「Ruthless」、光差す未来を観客全員が手を伸ばして描いていった「TABOO」まで爆走したあとは、ステージから再び白煙があがり、曲は「MONSTER」へ。客席に盛大なクラップが広がったあとは、弾むリズムに合わせてサビではファンがジャンプを繰り返し、雨の野音を楽しそうに揺らしていった。

燿(Ba)

だが、ステージ上は外から吹き付けてくる雨でそれどころじゃなかったようで「本来しゃべるところではないですけど、無理。こんなに酸素が入ってこないとは。休憩入れます」と苑がライブをいきなり止める。こんな彼らを見たのは、初めてだった。苑の言葉を受けて、即座に燿が「お客さんも休憩して、こういうときに飲み物を取りに行ったり飲んだりして。みんな、カゼひかないようにね」といってオペラーたちを気遣う横で、苑が「メイク、アイツヤバいぞってなったら×出してね」と観客に話しかけ、客席の笑いを誘った。それでも、雨の野音はステージ上も相当厳しい状態だったのか、このあと、いつも元気ハツラツの響が「新衣装、脱いでいいですか?」と訴える。そうしてタンクトップ姿になった響は、いつもの調子で「今日は男の声がデカいな」と客席を煽ると、男性たちの野太い声が野音にこだまする。続けて「女の子のキャーキャーした声ももらっていいっすか?」とお願いすると、女性陣が黄色い歓声で「響!」を連呼。その声援を独り占めにした響は「元気もらいました!」と笑顔を浮かべて、ライブは再開。

苑が「僕たちのメジャーデビューアルバムから」と曲紹介を告げ、始まったのは「もう一人の花嫁」だった。彩雨の繊細なタッチのピアノ、ドラマチックな旋律と苑の歌声が静かに重なり、胸を締め付けていくこのナンバーから、野音はメランコリックな空気に包まれていく。スピード感たっぷりの激しさや熱量をもったメタルチューンだけではなく、このような繊細な美しさ、耽美な要素があってこそ摩天楼オペラであることを再確認させていくように、ここからは哀愁感たっぷりのメロウサイドの摩天楼オペラ曲で観客を魅了していく。珠玉のスローバーラード「流星の雨」で、野音の森に苑のファルセットがとけていったあと、その代わりにさらに激しさを増した雨粒の音と蝉の声が広がっていく。自然界のサウンドを30秒ほど味わったあと、彩雨のキーボードが聞えてきて、曲は「愛を知りたかった幼き日々よ」へ。曲の最後に彩雨のピアノが途切れ、苑が色気と艶をたっぷり含んだ声をロングトーンで野音に放ち、それが消えて雨音だけになっていったところは本当にドラマチックで、野音はなんともいえない神秘的かつ幻想的なムードに包まれていった。そうして、このあとメロウサイドとライブ前半のメロスピをマックスで合体させたハイブリッドの傑作「夜明けは雪と共に」へと展開すると、観客がすぐさまペンライトを白く灯して、雨の野音に雪景色を生み出す。彩雨の弾く美麗なキーボードのメロディーに合わせて、苑がゆったりと歌い出し、そこからドラムの暴走から爆発的に曲がテンポアップして疾走していくところは何度聴いてもスリリング。客席にはヘドバンが広がっていく。このあと、スケール感たっぷりのサビが力強くも美しい「光の雨」、さらにシンフォニックな「六花」を続けてアクト。「六花」の演奏で、場内にこれまでにないような多幸感を呼び込み、感動の渦を巻き起こして最高のクライマックスを迎えたところで本編は終了。

彩雨(Key)

コンサートスタッフがステージ上に溜まった大量の雨水を掻き出したあと、アンコールに応えて、再びメンバーが集結。「濡れきったね。全然(雨は)止まないね。こんなに雨に濡れてライブをやったのは初めてです」と話し出した苑が「もう1人呼んでもいいですか」といって、ここで優介を呼び込む。サポーターはつけているものの、元気な姿で舞台に現れた優介に、ファンは「優介!」と叫びながら温かい拍手を送った。この日はちょうど優介の誕生日だったこともあり、苑がアカペラでバースデーソングを歌うと、響が優介の好物である蒙古タンメン中本のカップ麺を積み上げて作ったケーキを運び込み、それを優介にプレゼントすると、優介も場内も大盛り上がり。このあとはメンバーそれぞれのトークを挟み、最後に苑が「改修工事が終わった野音、この5人で立ちたいと思います」とファンとリベンジを誓う。「その前に19周年。来年の5月4日、東京・豊洲PITに決まりました。今度は雨が降っても大丈夫(笑)。来年は豊洲PITでお祝いしましょう」と、19周年のアニバーサリーライブをサプライズで発表した。

優介(Gt)

アンコールは「『PHOENIX』を作ったときもそうですけど、バンドを救ってくれる曲というのが必要なんですよね。この曲が摩天楼オペラのこの先の未来を照らしてくれると信じてます」という曲紹介から、8月15日に発売の新曲「AGONY」を初披露。ラップのように言葉をまくしたてる苑の歌、暗くヘヴィなリフでバンドとして新しい扉をまた1つ開けた姿をアピールした後はメロスピチューン「Eternal Symphony」、「honey drop」で大暴れ。そうして「GLORIA」が始まると、響の猛烈なドラミングに合わせて観客たちがヘドバンを繰り出し、ウォーターキャノンが放たれる。壮大なサビを苑とともにオーディエンスが大合唱して、会場全体が1つになったところで、ライブは終わりを告げた。

アンコールを求める声はさらに高まり、ダブルアンコールは白煙が激しく吹き上がるなか「alkaloid showcase」、そうしてラストはもちろん「喝采と激情のグロリア」しかない。曲の冒頭では緑色のキラキラしたテープが会場に放たれ、彼らの18周年を盛大にお祝い。ラストのサビは、オペラーたちが大ボリュームで合唱すると、それを受けて、苑がマイクを外し、アカペラとは思えない声量でサビをオペラ歌手のようにエモーショナルに歌い上げていき、「やっぱ最高だな」と叫んだ後、エンディングで全身全霊をかけてフェイクを捧げていったところでは、野音の時間がピタッと止まり、誰もがびしょ濡れになっていることを忘れた。こうして18周年の祝祭を感動的に締めくくったあと、メンバーは5人で手を繋いで挨拶を告げてステージを後にした。

1回目のアンコールで「みんな濡れてテンション上がってるよね。人間は濡れると興奮するんだって。僕もびしょびしょで興奮してます。雨のお陰で、何年たっても“あの8月10日はびしょ濡れになったな”って、忘れられない楽しい思い出になったから、雨が降ってよかった」と語ったのは彩雨だった。雨に打たれっぱなしで、バンドとオペラーがびしょ濡れになりながら、いろんな時期の曲を取りそろえたセットリストで摩天楼オペラの18年を振り返りながら、興奮しっぱなしの2時間半。終わってみれば、摩天楼オペラ・18周年・びしょ濡れの野音、というキーワードが一生忘れられないものとして脳裏に刻み込まれた一夜となった。

摩天楼オペラはこのあと、さらなる新曲を制作。「AGONY」とその新曲をひっさげて、彼らは12月にバンド初のクアトロツアーを東名阪で開催して今年のバンドとしての音楽活動を締めくくる。そして、本公演のなかで発表したように、2026年5月4日には、19周年を祝うアニバーサリーライブ<摩天楼オペラ 19th Anniversary Live>を東京・豊洲PITで開催する。
新作「AGONY」で新しい扉を開けた摩天楼オペラ。19周年、20周年を見据えて、彼らの進化のスピードはまだまだ止まらない。

SET LIST

01. BLOOD
02. EVIL
03. 落とし穴の底はこんな世界
04. 儚く消える愛の讃歌
05. PHOENIX
06. Psychic Paradise
07. Ruthless
08. TABOO
09. MONSTER
10. もう一人の花嫁
11. 流星の雨
12. 愛を知りたかった幼き日々よ
13. 夜明けは雪と共に
14. 光の雨
15. 六花

ENCORE
01. AGONY(新曲)
02. Eternal Symphony
03. honey drop
04. GLORIA

W ENCORE
01. alkaloid showcase
02. 喝采と激情のグロリア

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