渋谷すばる、「Lov U」ツアーファイナルで充実の2024年を締めくくる。「2025年も渋谷すばるを楽しみにしていただけるとうれしいです」

ライブレポート | 2025.01.11 19:00

渋谷すばる LIVE TOUR 2024 「Lov U」
2024年12月25日(水)三郷市文化会館大ホール

渋谷すばるの人生をエンタテインメントに昇華した場合の、現時点での最適解と言っていい。2024年に環境を新たにして“第3章”のスタートを切り、同年10月リリースのニューアルバム『Lov U』を引っ提げて開催されたライブツアー「渋谷すばる LIVE TOUR 2024『Lov U』」。大千秋楽となる12月25日の埼玉・三郷市文化会館公演は、表舞台に立つ人間としての渋谷を形成した過去、「歌うことが好きだ」という純粋な思いを持って新たな1歩を踏み出した現在、2025年のイベント開催の発表や突然の新曲一部公開といった未来までもを詰め込んだ充実の一夜だった。

開演前のBGMは開演時刻が近づくごとにクリスマスソングへ。マライア・キャリーの「All I Want for Christmas Is You」が流れると観客もクラップでそのムードを引き立て、それに触発されるようにBGMの音量も大きくなるとライブはオープニングを迎えた。

ステージ前に掛かる斜幕には、ギターを抱えながら楽譜に筆を走らせる、曲作り中と思しき渋谷の様子が映し出される。その後は窓の外から渋谷を捉えるカットに変わり、渋谷は制作の手を止めてカーテンのかかる窓へと近づいた。ムービー内の渋谷が客席に向かってまっすぐ手を伸ばすと映像が止まり、斜幕の向こう側にある舞台上には渋谷の姿が浮かびあがると、彼はバンドとともに作詞作曲曲「First Song」を披露した。

映像と実際の舞台を組み合わせた演出と、ハンドマイクで歌に集中しながら響かせるソフトでまっすぐな声。ステージには階段やソファ、ローテーブル、絨毯や大きな窓、フロアライトなどが配備され、先ほどのムービー内で渋谷が曲作りをしていた空間を再現しているように見える。渋谷すばるの人生を“ステージ”という空間すべてで表現する様子はファンタジックな舞台演劇のようにも見えるが、歌と向き合う渋谷は紛れもないリアルだ。ドキュメンタリー映画ならぬドキュメンタリー舞台と言えるかもしれない。

斜幕が上がり「君らしくね」ではゆっくりと客席を見渡しながら歌い、続いての「Lov U」ではハットからハイヒールまで赤で揃えた衣装に身を包んだ2名のダンサーがマイクスタンドを渋谷の前に差し出し、サビでは3人で揃いのダンスを見せる。彼の軽やかな身のこなしとファルセットは、観客の表情をさらにほころばせた。

ツアーファイナルに集まってくれたことに感謝を告げた渋谷は「今日はニューアルバム『Lov U』の曲はもちろん、いろんな曲をやります。せっかくのクリスマスなのでスペシャルに。最後まで楽しんでいきましょう」と続け、「ライム」「アオ」「ロマンス横丁」と引き続き『Lov U』収録曲を届ける。歌いながら観客に手を振ったり、イントロでクラップを促したり、バンドメンバーやダンサーと合わせてステップを踏んだりとポジティブなムードで包み込み、渋谷がターンをした際に客席が歓声を上げると少し照れくさそうな表情を浮かべたシーンも微笑ましかった。

その後は「トラブルトラベラ」「ベルトコンベアー」「爆音」とアルバム『二歳』収録の3曲をメドレーでたたみかける。ブルースハープを荒々しく吹き、感情を解放するように喉を震わせるなど、先ほどまでとは一転気魄溢れるパフォーマンスで圧倒すると、そのまま「聖なる夜にないしょのダンスで踊りませんか!?」と叫び「ないしょダンス」へ。歌声からほとばしるひりついた高揚感が会場の熱をさらに上げた。自身で作詞作曲をした楽曲では全身で感情を解放し、『Lov U』の楽曲ではファンへの感謝を真摯にまっすぐ声に乗せる。どの曲の歌唱にも渋谷の素直さや無邪気さが表れていた。

再度観客に感謝を伝えると、第3章のスタートを切れた理由を一つひとつ丁寧に伝える。なかなか人に心を開けない自分のことを理解してくれようとする人々に恵まれているおかげで自分の目線が変わったことを明かし、あらためて現在の環境への喜びをあらわにした。その後は天の声の“天さん”が登場し、渋谷に「クリスマスの思い出」「ツアーを重ねての心境の変化」を問う。後者について渋谷は、楽曲だけでなくこれまでにないライブ演出を取り入れているため初日の開演時に今までに感じたことのない高ぶりがあった旨を明かし、「(過去にも)大概のことはやってきたし、どこで何をしようが特に(気負うことは)ない」と答える。彼の歌に宿る潔さに通ずる迷いのない返答に、観客も安堵の表情を浮かべた。

その後は2007年にリリースされたブルージーなグループ時代のソロ曲「琉我」と、『二歳』のファンクラブ会員限定特典CDに収録された、グループ脱退後からソロ始動するまでの間に抱えていた気持ちをしたためた楽曲「LOVE」のクリスマスアレンジを披露した。年月を経たからこその渋みが表れた歌、当時抱えていた気持ちを鮮明に映し出す歌の趣もさることながら、「LOVE」に綴っていた意思は今もなお変わらないどころか増している気がした。第1章から変わらず、彼はただシンプルに歌を通して自分の心から湧き上がる感情を聴き手の心へと最短距離で届けたいのではないだろうか、と思いを巡らせた。

バンドメンバーによる迫力あるインストセクションが会場を大いに沸かすと、衣装チェンジをした渋谷が登場しロックバラード「一眼レフノ君」、カーテンを用いた映像演出が爽快感を際立たせた「渚と台風」とバンドとさらに一心同体になるように歌を届け、ローテーブルの花瓶から赤い花を手に取ると今ツアー用に渋谷が書き下ろした「赤い花」を届ける。渋谷から観客への手紙のような歌詞に乗せて、観客がグッズの赤い花や赤く灯ったペンライトを掲げてSNSに公開された振り付けに興じる様子は、とても心あたたまるものだった。

「皆さん最高です、感動的です!」と目を輝かせる渋谷は「最高のクリスマスにするぞ!」と意気込み突破力に富んだボーカルが華やいだ「ルピナス」、エッジの効いた演奏が衝動性を拡張した「ストライクゾーン」、グループ在籍時代のソロデビューシングル曲「ココロオドレバ」とハイテンションな楽曲を立て続けに歌い、さらにライブのキラーチューン「池」「ワレワレワニンゲンダ」でギアを上げていく。底なしと言わんばかりのパワー漲るパフォーマンスと、堂々とした佇まいが会場に旋風を巻き起こし、渋谷の熱量と呼応するように客席の歓喜の声援も大きくなる様子は、雲一つない青空のように晴れやかだった。

あらためて出会いに恵まれた2024年を振り返った渋谷は「(世渡りなどを)うまいことやれるタイプではないけれど、その時々の自分と精一杯向き合って、周りにいてくれる人たちを大切にしていければ何も怖いものはないと思っている」「2024年はやっと1歩踏み出せたから、2025年はもっともっと広く大きく図太く音楽をやっていきたい」と意欲を見せる。本編ラストに披露した「人間讃歌」は力強さ、切なさ、繊細さ、悲しみや喜びなど様々な思いが伝わる誠実な歌だった。

アンコールでは3月に東阪で昼夜公演のファンミーティング「渋谷すばる FAN MEETING 2025 ~昼からすばる/夜もすばる~」を開催すること、この日の模様を収録したライブBlu-rayがリリースされることが発表される。「最高に楽しいツアーでした」とすがすがしい表情を浮かべると、「僕と君はネコ」でナチュラルな笑顔溢れるハッピーなムードのなかツアーを締めくくった。

ダンサーとバンドメンバーが去りひとりステージに残った渋谷は丁寧に再度感謝を告げる。どことなく後ろ髪をひかれる様子の彼は、何かを思いついたように「ちょっと待ってください」と袖に引っ込み、自身のスマホを持ってステージに戻り「新曲聴きますか? ちょっとだけですけど」と言う。そしてマイクをスマホのスピーカーに近づけてレコーディングを終えたばかりの楽曲の一部をサプライズで先行公開した。

最後に「いろいろやっておりますので。ぜひ2025年も渋谷すばるを楽しみにしていただけるとうれしいです」と呼びかけると、客席からは大きな歓声と拍手が起こった。過去と現在と未来を投影したツアーで2024年を締めくくった渋谷すばる。2025年はさらに健やかな快進撃が期待できるだろう。

SET LIST

01. First Song
02. 君らしくね
03. Lov U
04. ライム
05. アオ
06. ロマンス横丁
07. トラブルトラベラ~ベルトコンベアー~爆音
08. ないしょダンス
09. 琉我
10. LOVE
11. 一眼レフノ君
12. 渚と台風
13. 赤い花
14. ルピナス
15. ストライクゾ―ン
16. ココロオドレバ
17. 池
18. ワレワレハニンゲンダ
19. 人間讃歌

ENCORE
20. 僕と君はネコ

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