DISK GARAGE presents 共鳴レンサ vol.53 Supported by DOBEATU
2024年12月19日(木)SHIBUYA DIVE
【出演】GOOD BYE APRIL / hockrockb / エルスウェア紀行
エルスウェア紀行
1組目に登場したのは、今年10月に4年ぶりのフルアルバム『ひかりを編む駐車場』をリリースした2ピースバンド、エルスウェア紀行。ヒナタミユ(Vo/Gt)いわく「このラインナップはフルバンドでないと臨めないと思い、急遽このメンバーでできることになりました」とのことで、ギター、キーボード、ベースのサポートメンバーを加えた5人編成のステージを届ける。2人編成ではギターを弾きながら足でドラムを叩く“足ドラム”を披露するトヨシ(Gt/Dr/Cho)もこの日は半年ぶりに通常のドラムプレイに徹し、プレミアムなライブを繰り広げた。
甘くてビターな「少し泣く」、トリッキーな展開が観客を陶酔させる「鬱夢くたしかな食感」とバンドの力強いグルーヴで会場の空気をドライブするシーンもあれば、「ひとときのさよなら」はアコースティックギターやブラシを使ったドラムプレイなど、アコースティック色の強い柔らかな音色で魅了する。ヒナタがアコギをプレイした「素直」ではチルなムードで包み込み、2人編成で磨き続けてきた要素も十二分に発揮した。
「ロマンチックサーモス」「あなたを踊らせたい」とポップソングで会場を沸かした後に、センチメンタルな浮遊感が胸をくすぐる「無添加」を披露してバンドの振れ幅を印象づけると、ヒナタは精力的に活動した2024年を振り返り「来年はより加速したい」と意欲をあらわにする。ラストは仄暗さと軽やかさを併せ持つ「冷凍ビジョン」。2025年6月に渋谷CLUB QUATTROにてフルバンド編成で開催予定の単独公演「夢幻飛行2025」への期待を煽る、濃厚なひとときを作り出した。
hockrockb
2組目のhockrockbは、サポートメンバーのキーボードとギターとともに5人編成で登場。堀胃あげは(Gt/Vo)がおもむろにギターを弾いて歌い出し、「Champon」でライブをスタートさせる。鮮やかなサビのコーラスワークやアダルティなムード漂う演奏で心地好い空気感を作ると、みと(Ba)がステージ前方に躍り出てスマートに「Driver」へつなぎ、田中そい光(Dr)の刻むビートに乗せて会場も高らかにクラップを鳴らした。観客を巻き込む巧みな曲のつなぎだけでなく、間奏で堀胃とみとが向き合ってプレイをしたり、サビで軽い振り付けを取り入れるなど視覚的なギミックも忘れない。隙のないステージにたちまちフロアは感嘆の溜息を呑んだ。
歌謡曲風のメロディが艶やかな「バタフライ」、真摯な気持ちが伝わる「リップシンク」の後、堀胃は2024年を「とってもわくわくするものを一生懸命丁寧に手作りする1年だった」と回想し、「来年はそれをどんなふうに見せてやろうか、いろんなかたちで見せられるのではないかと既にわくわくしています」と強い眼差しで笑みを浮かべる。そしてエネルギッシュでメランコリック、さらには麗しさも併せ持つTVアニメ『鴨乃橋ロンの禁断推理』ED主題歌として制作した最新曲「ラビリンス」を披露した。
以降も、四つ打ちのリズムにファルセットが感傷的に響く「やさしい怪物」、ユーモラスな「無問題」、凛としたムードを醸す「クールに戦え」と曲ごとに異なる表情を見せ、田中がドラムを鳴らしながら「最後にみんなで楽しみたい曲があります!みんなで最高の夜を作りましょう!」と呼び掛けて「トビウオ愛記」でライブを締めくくる。観客があれだけ晴れ晴れとした様子でワイパーやクラップ、コール&レスポンスに興じたのは、3人が終始観客とまっすぐに向き合っていたからだろう。理想のライブスタイルを堂々と貫くステージだった。
GOOD BYE APRIL
トリを飾るのは先月メジャー1stフルアルバム『HEARTDUST』をリリースしたGOOD BYE APRIL。サポートキーボードを迎えた5人編成のセッティングからそのまま演奏をスタートさせると、倉品翔(Vo/Gt)が「最後まで残ってくださってありがとうございます。明日からの栄養をたくさん届けて帰ります」と観客に呼び掛けて「サイレンスで踊りたい」へとなだれ込む。弾力のあるダンサブルなグルーヴで会場を揺らすと、レゲエの要素を取り入れた「Highway Coconuts」ではゆったりとした演奏に乗せてつのけん(Dr)がプレイの傍らスティックを高く掲げて左右に振り、観客もその動きに合わせて天を仰いだ。
アウトロで倉品から吉田卓史(Gt)にギターソロをつないで会場を熱く包み込むと、倉品は初めて訪れたSHIBUYA DIVEでこの3組のライブを行える喜びを語る。延本文音(Ba)がクリスマスのビンゴ大会のエピソードトークで場をあたためた後は、最新アルバムから「Dusty Light」をライブで初披露した。サックスのフレーズを吉田がギターで演奏するなどこの編成ならではのライブアレンジが施され、きめ細やかで濃密な音像は白雪が降り注ぐようなロマンチシズムを感じさせた。
インスト演奏に乗せてメンバー紹介をしてたたみ掛けた「CITY ROMANCE」「missing summer」は、楽曲に描かれた物語を表現するだけでなく、音の隅々からいまこの瞬間に音楽を共有できる喜びと興奮が溢れる。ラストの「Love Letter」はときめきに満ちた演奏が観客の顔をほころばせていた。
フロアのクラップに導かれてアンコールで再びステージに現れると、倉品はコロナ禍以降対バンイベントの機会が減少したことに触れ「皆さんと会えたのは当たり前のことではないので本当にうれしいです」と再度感謝を告げる。そして「最後は冬の香りを皆さんにお届けします。来年の東名阪ツアーでまたお会いできたらうれしいです」と言い、ウインターラブソング「夜明けの列車に飛び乗って」でこの日のエンドロールを冬の澄んだ空気のように爽やかに、雪に心をときめかせる子どものようにピュアに彩った。
すべての出演バンドがサポートメンバーを迎え入れ、音の良さとライブならではのダイナミズムを大切にした「共鳴レンサ vol.53」。リスペクトするアーティスト同士のイベントや、アーティスト自身からのラブコールで生まれるイベントの良さもあるが、この日のようにイベントをきっかけに様々な人々が近い距離で交差するのは、ライブハウスならではの面白さとあたたかみと言っていいのではないだろうか。GOOD BYE APRIL、hockrockb、エルスウェア紀行のひと足早い2025年のプロローグを体感するような、充実の1日であった。
SET LIST ※出演順
◾️エルスウェア紀行
01.少し泣く
02.鬱夢くたしかな食感
03.ひとときのさよなら
04.素直
05.ロマンチックサーモス
06.あなたを踊らせたい
07.無添加
08.冷凍ビジョン
◾️hockrockb
01.Champon
02.Driver
03.バタフライ
04.リップシンク
05.ラビリンス
06.やさしい怪物
07.無問題
08.クールに戦え
09.トビウオ愛記
◾️GOOD BYE APRIL
01.サイレンスで踊りたい
02.Highway Coconuts
03.Dusty Light
04.Interlude#1
05.CITY ROMANCE
06.missing summer
07.Love Letter
ENCORE
08.夜明けの列車に飛び乗って