有安杏果 A Little Harmony Live 2024
2024年10月20日(日)大手町三井ホール
有安杏果が10月20日(日)に東京・大手町三井ホールにて、弾き語りツアー「有安杏果 A Little Harmony Live 2024」の最終公演を行った。
10月20日(日)は有安にとって思い出深い日にちである。2016年7月3日に横浜アリーナで初のソロコンサートと大分での追加公演を大成功に収めた彼女は、2017年6月からは初の東名阪ホールツアーと仙台での追加公演を開催。そして、「ココロノセンリツ 〜feel a heartbeat〜」シリーズの集大成として、2017年10月20日に日本武道館での単独公演を行った。そして、ちょうど7年後となる2024年10月20日。開演時間になると場内がブルーの明かりに変わり、ステージ上のアコースティックギターとキーボードにピンスポットが当てられた。そこへ有安が入場し、アコギを抱えると「ヒカリの声」のサビをアカペラで歌始めた。武道館の本編の最後を締めくくった曲だ。真っ直ぐに手を伸ばし、<だからどんなに彷徨っても/ここで同じ光浴びよう>というフレーズをひときわ力強く歌い上げると、観客からは大きな拍手が上がった。
続く、「心の旋律」はスリーフィンガーでゆったりと静かに語るように歌い始めたが、<歌いたい、歌いたい/握ったマイクもう離さない>と歌う彼女の声は涙声になっていた。心に去来するものがあったのだろう。のちのMCで本人が明かしたが、この「心の旋律」から「東京、一緒に楽しみましょう!」と呼びかけ、一体となって盛り上がった「Catch up」という流れ(7年前も2曲目と3曲目だった)は武道館公演を再現したものだった。
最初のMCでは客席を見渡し、「こんなにいっぱい来てくれて嬉しい」と喜びを露わにし、「いや。すごい。ドキドキするわ、ライブ」と笑顔で語りながらキーボードの前に座った。「ソロになって一人で頑張っていく決心を込めて書いた曲です。その時にした悔しい思いも詰まってます」と話した「虹む涙」は当時の憤りを思い出すかのように感情を込めて歌い、武道館ではフルバンドを従えてエレキギターを弾きながら歌った「feel a heartbeat」をピアノの弾き語りでパフォーマンス。観客とのコール&レスポンスも飛び出したが、弾力性のあるスイングするアレンジが楽曲に新たな命を吹き込んだ印象を受けた。
「feel a heartbeat」は武道館公演では2回歌い、ダブルアンコールではアコギを弾いていた。そして、その3ヶ月後にグループ卒業を発表し、ソロアーティストとして活動再開した2019年のライブで初披露したのが「虹む涙」だった。これまで繰り返し武道館公演に触れているが、懐かしみたいわけではない。フルバンド編成に8人のストリングス隊、さらに、ダンサーと大勢のキッズダンサーが加わるという大所帯だった武道館からの7年間で、彼女がたった一人でステージに立ち、オケにも頼ることなく、自分で楽器を演奏しながら歌う弾き語りのツアーを行えるまでになった成長の軌跡に純粋に感動を覚えているのだ。しかも、ただ演奏するだけではない。横アリ公演から歌ってきた「ハムスター」はボサノバのアレンジでガットギターを演奏しながら優しく柔らかく歌い、スティーヴィー・ワンダー「Isn’t She Lovely」ではお馴染みのフレーズをアコギで爪弾きながらハミングを重ね、ジャズライブで獲得したフェイクも伸びやかに展開。英語歌詞の向上も見せつつ、back number「ヒロイン」ではしっかりと歌の言葉を届け、冬のラブストーリーの世界観に観客をぐっと引き込んでいた。
今年2月に開始したジャズライブのことで頭がいっぱいだったという彼女は、この1年間を振り返り、「毎回、少しでもパワーアップできてるといいな、成長できてるといいなと思ってます」と語り、「夢の途中」「指先の夢」でまさにパワフルで伸びやかに広がっていく成長過程を体現。ここで、来年2月にビルボードライブ大阪と横浜で弾き語りライブ「有安杏果 A Little Harmony Live 2025 ~Piano Note~」の開催を発表。「初めてピアノと歌だけのライブに挑戦します! 今からめっちゃ緊張するんやけど、グランドピアノを弾きます」と宣言。ファンの想像を越えてくる有安の飽くなき向上心にはただただ感嘆するばかり。その後は、観客が総立ちになってタオルを回した「Drive Drive」から「Runaway」とアップテンポなナンバーを続け、「靴ひも」では「みんなの願いがうまく結ばれますように」という祈りのような思いに加え、<Keep on trying>という彼女の活動の指針のようなフレーズを届けた。さらに、、「何気ない日常の中にある幸せを書いた曲です」と語ったバラード「オレンジ」で会場を温かい空気で包み込むと、最後は客電がつくなかで「TRAVEL FANTASISTA」を大きな笑顔でパフォーマンスし、明るく楽しい雰囲気でライブ本編を締めくくった。
アンコールの拍手に応えて再び登場した有安は「遠吠え」でブレイクをたっぷりとりながらドラマチックにギターを演奏。続く、「ナツオモイ」は、「ギターでやるか、ピアノでやるか」の選択を観客の拍手に委ね、この日はピアノでの演奏に決定。靴を脱いでピアノの前に座った有安は、初めてピアノを弾き語りした7年前の東名阪ホールツアーを振り返り、「1曲目に『ありがとうのプレゼント』をピアノの弾き語りでしたのが本当に初めてだった。でも、あれがなかったら、来年2月の『ピアノオト』もない。でも、“ありプレ”はあのツアーと仙台、武道館が私にとって本当に最後のライブとなると思っていたので、すごく想いを込めて歌いました。あのときのパフォーマンスを超えられないと思っているので、“ありプレ”はみんなの中で大切にしまっておいてくれたら嬉しいです」と語った。
「今日、10月20日は7年前に武道館をやった、たまたま同じ日やったから、その日のセットリストをなぞってみようかなと思って、考えて、準備してきました。あの時やったライブはバンドもいたし、弦もいたし、あの時のあの曲たちを一人で全部届けるって、当時は思ってなかったから、自分でも驚いてます。まだまだな部分もあるけど、みんなに届けてられて嬉しいなと思います。ありがとう」と感謝の気持ちを伝えると、観客から拍手が送られた。「……話し出すと思いが溢れちゃうから」と涙声になった有安は、「ももクロを卒業して、別の道を歩いてきて。大変なこともあったけど、こうやってライブができることが本当に嬉しいです」と声を絞り出し、「7年前の今日、アンコールの最後に歌った曲を歌いたいと思います」という言葉から「Another story」を勢いよく歌い始めると、観客からこの日、1番大きいクラップが鳴り響く中で、光を背負った有安は真っ直ぐに前を見据え、強い意思を感じさせる歌声を響かせた。
ここで終わりかと思いきや、武道館と同じくダブルアンコールが実現。「7年前の今日、武道館の真ん中で最後にみんなと歌った『feel a heartbeat』をやりたいと思います!」と声をあげた後、「あんときほんまに最後やと思ってたから……みんなとまた歌えるなんて。7年前の私に教えてあげてたい」と涙を見せた。そして、「7年前と違うのは、弾き語りをできるようになった。7年前と変わらないのは、みんながいてくれることです」と感謝の気持ちを伝え、新たなアレンジが加えられたアコギ弾き語りの「feel a heartbeat」を観客全賃で大合唱し、7年前と7年後を重ねながらも、 “変わったこと”と“変わらないこと”が明確になったアコースティクツアーは幕を閉じた。
SET LIST
01.ヒカリの声
02.心の旋律
03.Catch up
04.虹む涙
05.feel a heartbeat
06.ハムスター
07.Isn’t She Lovely(STEVIE WONDERカバー)
08.ヒロイン(back numberカバー)
09.夢の途中
10.指先の夢
11.Drive Drive
12.Runaway
13.靴ひも
14.オレンジ
15.TRAVEL FANTASISTA
ENCORE
01.遠吠え
02.ナツオモイ
03.Another story
W Encore
04.feel a heartbeat