筋肉少女帯、代表曲から今聞いてほしい曲まで、まさに『ALL TIME BEST』!見どころ満載の東京公演をレポート

ライブレポート | 2024.10.26 18:00

筋肉少女帯 ALL TIME BEST ツアー2024 ~今のことしか書かないで
2024年10月12日(土)東京・江戸川区総合文化センター

「今、筋少はいい時代だと思うんだよね。アルバムで言うと『UFOと恋人』(93年)あたりかな? 当時、バンドブームが終わっても、ウチはあまり動員が下がらなくて。無責任に盛り上がれるっていうか、全ての人を盛り上げる必要もないなって思ってたんだけど。今はその時みたいな状況になってて、すごく居心地がいいの」

MCで現在のバンドの環境や状況、そしてそれが心地よいことを語った大槻ケンヂ(Vo)。狙ってはいないと思うが、『UFOと恋人』収録の「君よ!俺で変われ!」でライブの幕を開けると、バンドの状態の良さを表す、貫禄あるどっしりした歌と演奏でしっかり聴かせて。その後も『ALL TIME BEST』と銘打ち、代表曲や人気曲だけではない、いま自分たちが演りたい曲や見せたい曲をズラリ並べて。今の充実っぷりを見せてくれた、『筋肉少女帯 ALL TIME BEST ツアー2024 ~今のことしか書かないで』東京公演。「今のことしか書かないで」つうので、このレポではこの日起きた、筋少の今だけを書き記そうと思ってるのだが。今の筋少、すごい良い塩梅だった。

OPナンバー「君よ!俺で変われ!」で会場を沸かすと、凍てつく風が吹きつける効果音と青い照明が会場の雰囲気を変え、始まった曲は井上陽水のカバー曲「氷の世界」。激しく丁寧に世界観を作り上げる歌と演奏に酔いしれながら、「お~、『ALL TIME BEST』だと、これもアリなのか」と興奮していると、「じゃあ、これから2時間。オーケンのおもしろトークをじっくり聞いてもらいます」とオーケンのMCが始まる。

橘高文彦(Gt)

すると、MCを遮るようにベースを鳴らす内田雄一郎(Ba)に「ベースを弾きたいのか!? じゃあ、やってもらおうじゃないか!」というオーケンが挑発。内田の鳴らすノイジーなベースで、なだれ込むように「ゴーゴー蟲娘」が始まる。しっかりリズムキープする本城聡章(Gt)のギターに乗せて、橘高文彦(Gt)が軽快にタンバリンを鳴らしたり、内田がペンライトで叩き弾きしたりと、自由に楽しく演奏するメンバー。ギターを背負った橘高が麗しのギターソロで魅了して、ドジャーンと演奏を終えると大きな拍手と歓声が起きる。

内田雄一郎(Ba)

本城聡章(Gt)

「江戸川区総合文化センター、略してエドセンに2年ぶりに帰って来ました!」と始まったMCでは、先に記した「いま筋少が良い時代で、すごく心地がよいこと」を語ると、「紅白も出なくてもいいなぁ。エドセンくらいのところで、たまにライブが出来ればいい気がするなぁ……どう思う?」と尋ねて観客を困惑させたオーケン。「今後、筋肉少女帯にどんな運命が待ち受けようとも、今夜を盛り上げればいいんじゃないか!?」と力強く告げるも、曲入りのキッカケが分からずアタフタして。カッコつけきれないまま、次の曲へ。曲に入ってしまうとめちゃくちゃカッコいいという、ギャップ萌えも筋少のズルいところ。

グルーヴィーな演奏とソウルフルなボーカルで観客の体を揺らした「ソウルコックリさん」、ドラマチックな演奏に乗せて愛を歌い上げた「ゾロ目」と続き、本城のアコギにオーケンが語りを乗せた「冬の風鈴(序章)」から、「小さな恋のメロディ」が始まる美しい流れへ。本格ハードロックを軸としながら、枠に囚われない幅広い音楽を果敢に取り入れて。高いセンスとスキルをもって、独自の音楽世界を構築してきた筋肉少女帯。ロック界の異端とか、孤高の存在と言われるのは、決してオーケンの特異なキャラや文才だけではなくて。他に類を見ない独創性溢れる楽曲たちを作り続けてきたからだろうと、改めて思う。

サポートである三柴理(Key)の美しい調べから、長谷川浩二(Dr)のドラムを合図にドジャーンと始まった「モーレツア太郎」に客席の熱が上がると、楽器隊によるインストナンバー「ロシアのサーカス団イカサママジシャン」の荘厳な演奏に大興奮する観客。歓喜の拍手が起きる中、アコギを抱えたオーケンが「いくよ」と告げ、弾き語りで始まった「風車男ルリヲ」のラウドな演奏とスリリングなボーカルが最高潮の盛り上がりを生み、前半戦は終了。見どころ満載、まさに『ALL TIME BEST』な内容に後半戦が待ち切れない!

「筋少のライブって、“ドジャーン”が多くないですか? いいんだけど、ドジャーンが多いなと思って」という、オーケンのMCで始まった後半戦。「蟲娘」でやって、「ゾロ目」もやったよね? 「モーレツア太郎」は前と後ろで“ドジャーンやって」と話してメンバーを呼び込むと、「あんたが「この曲も“ドジャーン”をやれ」って増やしてたじゃねぇかよ! 上手いな大槻くん、さすがだな!!」とツッコむ橘高。「ただ、筋少のドジャーンはちょっと違って、一種異様なジャーンなので。「筋少のドジャーンがあれば、他はいらない!」と思ってもらえれば嬉しいです」とオーケンが笑い、「世界ちゃん」でゆったりと後半戦が始まる。

「久しぶりに歌いました」という「世界ちゃん」、「香菜、頭をよくしてあげよう」とどっぷり浸れるミディアムチューンが続くと、橘高がアルペジオを繊細に爪弾き始まり、楽曲世界を丁寧に構築した「少女の王国」で観る者を圧倒した後半戦。MCで12月22日(日)に『2024ライブファイナル』を開催することを発表すると、「ロックで最初に観客を立たせたのは誰か?」という戦犯探しのMCから、ドジャーンと鳴らして気持ちをブチアゲて、観客が決して強制ではなく自然と立ち上がった「釈迦」で終盤戦へ突入。

「バトル野郎~100万人の兄貴~」に観客が拳を突き上げて一体感が生まれると、「みなさん最高! 自然と盛り上がって、立ち上がった気がする~!」と嬉しそうに叫んだオーケン。本編ラストは「50を過ぎたらバンドはアイドル」で会場中がペンライトを振って、PPPH(パンパパンヒュー)を合わせて、明るく楽しくフィニッシュ。これもまた、いまの筋少!

そして、もちろんこれだけでは終わらず。鳴り止まないアンコールの拍手に再びメンバーがステージに登場し、「まだツアーも続くし、恵比寿リキッドルームもあるし。まだ気が早いけど、来年も頑張ります!」というオーケンの挨拶から、「サンフランシスコ」を披露。バンドの環境や状況の良さ、そしてメンバー個々の今の充実っぷりもよく分かる最高のプレイとパフォーマンスで魅せてフィニッシュ。最高にカッコ良かった!!

バンドでもなんでも“旬”みたいなものがあって、自身の状態の良さと時代の波がガッチリ噛み合った時、大ヒット曲が生まれたり、世間からの注目が集まったりするもんだが、そんな時期も経験しているからこそ、今がそういう時期でないことも理解して、自分たちのやりたいことやファンの求めることに徹底して、自信と誇りを持って今を鳴らす筋少を見て、本当にカッコいいと思ったし、長くライブに来ていないファンやまだ見たことのない人にぜひ見て欲しいと思った。歌、演奏ともに熟練の域に達しながら良い意味で肩の力も抜けていて、変わらぬ異端かつ孤高のステージで魅せてくれる。今の筋少を見逃さないで!

SET LIST

01.君よ!俺で変われ!
02.氷の世界
03.ゴーゴー蟲娘
04.ソウルコックリさん
05.ゾロ目
06.冬の風鈴(序章)〜 小さな恋のメロディ
07.黎明〜モーレツア太郎
08.ロシアのサーカス団イカサママジシャン
09.風車男ルリヲ
10.世界ちゃん
11.香菜、頭をよくしてあげよう
12.少女の王国
13.釈迦
14.バトル野郎〜100万人の兄貴~
15.50を過ぎたらバンドはアイドル

ENCORE
01.サンフランシスコ

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