リアルアキバボーイズ日本武道館-レペゼン秋葉原-
2024年10月4日(金)日本武道館
パリオリンピックで新競技のブレイキンでB-BOY、B-GIRLの躍動感あふれるダンスに注目が集まった。一方、日本ではあるB-BOYたちが偉業に挑もうとしていた。それはチェックのシャツにジーンズというアキバ系ファッションに身を包み、アニソンにのってダンスを魅せるグループ、リアルアキバボーイズ(以下、RAB)。2007年の結成後、ダンス動画を動画投稿サイトに投稿すると一躍話題になり、単独ライブ開催や様々なフェスに加えてアーティストMVに出演するなどエンタメ界やダンスシーンを席巻。声優の福原香織とのユニットでアニメ主題歌を担当したり、2023年末にはYOASOBIの「アイドル」のサポートで『紅白歌合戦』に出演するなど知名度と共に活躍するシーンが拡大中。そんなRABがずっと夢として掲げていた武道館公演が2024年10月4に実現! 盟友である人気アニソンシンガー、オーイシマサヨシをゲストに迎え、演奏を担当するREAL AKIBA BANDと共に彼らはどんなパフォーマンスを魅せたのだろうか?
開演すると、まず彼らの聖地である秋葉原の駅前でトリックを繰り広げるルーツ(創設)メンバー5人の映像、その途中途中に過去のライブから武道館公演発表時の映像、これまでのライブでの客席をバックにした記念写真が次々映し出される。そして武道館の前にして、決意の表情で歩みを進める。なんて最初からエモいんだ!……と思いきや、武道館当日のメンバーの様子を模した過去の黒歴史写真と映像の数々。シリアスかコメディなのか? どっちなんだRAB!? そしてクイーンの「We Will Rock You」が流れ、曲が終わると一人ひとりメンバーが走る映像からステージに現れる演出。その後はステージで歌唱と演奏を担当するREAL AKIBA BANDのメンバーを紹介。4名のボーカリストに、ブラスを含む10名のリズム隊というガチ編成。茶チェックシャツにメガネの最年少メンバーの龍はアリーナ後方から悠然と歩いて登場。
全員がメインステージにそろったところで、1曲目はRABが作ったアニソンっぽい曲の「VERSUS」。迫力ある生演奏と歌声にのせて、RABは立った状態で腕を胸のあたりで固定して華麗なフットワークを見せるトップロックから逆立ちしてイスに座ったような姿勢になるエアーチェアーなどの技を2~3人が絡んで見せると、サビでは9人そろってコンビネーションダンス。そしてサビ終わりの「俺たちの夢」では9人がコブシを高く掲げた。そこからソロダンスを披露。白バンダナに白チェックシャツのネスは得意技の指、手首、ひじを柔軟に動かすタットを、オレンジチェックシャツでオレンジバンダナのゾマやかじゃない!は体操のあん馬のようなトーマスを、赤キャップに青チェックのDRAGONは逆立ちして片手で回転する1990(ナインティ)、黄色チェックのムラトミは逆立ちで頭を支柱にして何度も回転するヘッドスピンなど、華麗なダンスの共演でオープニングを飾った。
赤チェックでアフロヘアが特徴的なあつきが「武道館行くぜ!」と叫ぶと、『紅白歌合戦』を果たした昨年の大ヒットアニソンの「アイドル」。RABならではの歌詞ハメ(歌詞の内容をイメージしたダンス)と曲ハメ(曲のリズムや曲間を読み込んだダンス)が炸裂する。かわいくコミカルなダンスを一糸乱れずに踊ったと思うと、腕を挙げて「オイ!オイ!」と会場を煽る。そして腕を左右斜めに上げて踊るオタ芸の「ロマンス」も取り入れる。その中でも彼らの軸であるブレイキンやHIP HOPダンスも随所に入れ込む。もちろんお客さんも見ているだけではなく、各メンバーカラーのペンライトを振ったり、歓声を挙げたり楽しんでいる。ダンス、アニソン、アニメ、イケメン(?)それぞれが好きな要素が詰まったRABは最高のパラダイス!
続く「ロキ」は、2018年にミキトPが発表したボーカロイド曲。バックのモニターにはまるでロサンゼルスのような夜の都会のポップなCG映像が映し出される中、踊る。途中で「信者」というフレーズが繰り返されると黒チェックで長い髪を後ろで結って、ヒゲを生やしたけいたんを前に、9人が縦に並び、千手観音のように手が円状に上下する。その様子は新興宗教のようで妖しさ満開(笑)。ラスサビでは暗転する中、まぶしい輝きを放つものの発光時間が短い、通称ウルトラオレンジと呼ばれるケミカルライトを振って踊り、フロアで回転する技まで。オタクならではの発想!? ラストはみんなでジャンプで締めた。
最初のMCゾーンでは、ゾマやかじゃない!が「やっと約束の場所、武道館に来たぜ~!」と絶叫。「この場所でこの挨拶をできることを幸せに思います。せ~の、おたまっぱぎー!(アニメ『日常』の「すらまっばき」に「オタク」を足したRABの挨拶の言葉)」とステージのメンバーと客席が声を合わせた。一人ひとり自己紹介すると、まず完売で満員になった武道館の保護者(RABファンの愛称)に「ありがとう!」。そしてけいたんが甲高い声(浜崎あゆみ風?)で「アリーナ~!」、「2階席~!」など初武道館のアーティストにありがちなムーブを。お客さんのリアクションを見て、あつきは「(水樹)奈々さまになったみたい」。おかっぱ頭でメガネが特徴のマロンは「僕たちはニコニコ動画で、踊ってみたを投稿したところからストーリーが始まりました。ニコ動のコメントに励まされてきたので、みんなのコメントをここに!」と後方のモニターを指差すと弾幕と呼ばれる配信視聴者からのコメントが右から左から右に次々に流れた。
「日本武道館をニコニコ色に染めてやるぜ!」と叫ぶとアニメ『おジャ魔女どれみ』のOP曲「おジャ魔女カーニバル」のイントロが。アニメが放送していた当時、ニコニコ動画にたくさんの人が踊ってみた動画を投稿した人気曲。モニターに弾幕が流れ、「どうしよう」のフレーズでは会場も声を合わせ、9人もすごく楽しそうにパフォーマンス。コミカル+パワームーブ(ブレイキンの大技)の組み合わせで盛り上がる。ムラトミはヘッドスピンで何十回転も。アウトロで、左右で横向きの姿勢の1人を持ち上げて決めると、映像には「88888(拍手の意味)」がたくさん流れた。
続く「ファッとして桃源郷」は、アニメ『てーきゅう』のキャラクター、新庄かなえが歌うOP曲。チャイニーズ風の曲に合わせて踊り、「ハウマッチ!」などの掛け声は弾幕で。間奏では歌詞の「龍へ(ドラゴン)」、「豹へ(パンサー)」、「虎へ(タイガー)」のカッコ内の掛け声を保護者たちに合唱するようにけいたんが要求。
「Helpme, ERINNNNNN!!」は東方Projectという同人サークルの人気シューティングゲームのボス対決のテーマ曲では、ネスが先導して会場が「え~りん!え~りん」の大合唱。そこから各メンバーの名前のコールへ。ラスサビでは全員が前方の円形ステージに向かって走って、また保護者の声を求め、最後は爆発で飛び散るオチ。ダンスよりもコール&レスポンスが多かったが、「これはニコニコ超会議(ニコ動が行う大きなイベント)か!?」と錯覚してしまうブロックだった。
弾幕にまぎれて、後方に赤字で「オーイシ最強!」の文字が表れると「オーイシマサヨシ」の筆文字とスモークと共にギターを抱えながら後方にゲストのオーイシマサヨシが登場。3月に行われたオーイシマサヨシの武道館ライブにはRABがゲスト出演しており、そのお返しか? オーイシが「RABが夢を叶えるのにお手伝いに来ましたよ!僕とRABと言えばこの曲『RABじゃなきゃダメみたい!』」と叫んで「君じゃなきゃダメみたい」(アニメ『月刊少女野崎くん』OP曲)オーイシが弾くギターのリフから始まり、生ギターとベースの低音がソウルミュージックのように心地よく、ダンスも滑らかに。サビの「今すぐ君に会いた~い」のフレーズの後には、踊りながらもRABが「俺も!」と叫ぶアニソンオタクのようなムーブ。オーイシもサビラストを「RABじゃなきゃダメみたい」と歌詞変え。「騒げ! 武道館!」と叫んだ後、ロングトーンを響かせた。そのまま「ようこそジャパリパークへ」(アニメ『けものフレンズ』OP曲でRABとの出会いのきっかけの曲)で、背後には動物園の中を走るバスの先頭がオーイシさんの顔になっている映像が流れ、間奏ではオーイシとムラトミが掛け合いするとRABとオーイシの10人で一列になり、右に左に移動しながら「武道館!」と合唱。
MCパートでは会場を見渡したオーイシさんは「自分ら、ダンスユニットでしょ?ズルない?」と話しかけると、あつきは「ここまで来るのに長かったんですよ」。オーイシとRABの出会いは2014年で、共に北九州のイベントに参加していて、ファミレスで一緒に食事をしたことらしい。「これから俺たち、どうなっていくんだろうねと語り合ったことを覚えてる」(オーイシ)。新メンバーで最年少の龍とは「会った時はこんなに(胸あたりを指し)小さかったのに。今は俺よりも背がデカくなったんじゃない?あと最近、俺の顔に似てきたで」。二人が並ぶと確かに似ているかも。
そしてMVで共演を果たした「なまらめんこいギャル」(アニメ『道産子ギャルはなまらめんこい』OP曲)に。撮影時はメインのルーツの5人だけだったが今回はフルメンバーで。ダンスナンバーなので、RABのダンスが映える。MVでは冬のスキー場でかわいい女性と出会うストーリーで、スキー場と派手なセットの2種類で歌い踊ったがステージ場のフルメンバーとの共演はゴージャス。会場もクラップで参加し、「氷点下の街も溶けてく」のようにホットに。ラスサビはオーイシも振りを合わせた。アニソンシンガーの持ち歌、しかも生歌で歌う夢のような時間だったに違いない。
龍がステージ中央に立って、四股を踏むように足踏みするたびに後方のモニターに次々と落ちてくるフライドポテト。そしてかのマ●ドでポテトが揚がった時のあの音が鳴って大量に投下。そしてRABが初めてアニメタイアップ曲を「REAL AKIBA BOYZ loves 田口華有&AiRyA from REAL AKIBA BAND」として担当した「フライド☆プライド」(アニメ『エルフさんは痩せられない。』OP曲)。自分たちがオリジナルで、その曲で踊るのは感無量なのでは。ここで「short撮ります」の文字が映し出され、撮影スタッフが現れて、ステージ上段から9人のパフォーマンスを撮影し始めた。この発想もRABらしい。急に曲が早回しのようにBPMが速くなると、RABの動きも速く。ここもRABのスキルの見せどころ。今度はテンポがスローになるとムラトミが頭のみで支える逆立ちを、長時間バランスを上手に取りながら見せたのもスゴイ!
ステージには水色チェックのとぅーしが一人ステージに残り、「武道館、楽しんでますか~?いいじゃん!いいじゃん!でも俺はもっと楽しい!」と笑顔で叫んだ。そして「これがRABの真の姿をご覧ください。どうぞ」と紹介すると、「Bunny Night Club」と書かれた映像とDECO27*によるボカロ曲「ラビットホール」のイントロが。そして黒いバニーガールとスーツの男性の衣装で登場。最後に出てきた貞子のような長髪女はけいたんか。次の電波ソング「粛聖!! ロリ神レクイエム☆」ではランドセルを背負った幼児とおまわりさん。この2曲が撮影OKタイムだったが自分のスマホのメモリーを汚したくない気がするほどのビジュアルだったので、ヤメました(笑)。そしてキッズ向けのダンスソング「ジャンボリミッキー」ではあのカッコいいDRAGONが半裸でねずみ耳を付けて、龍がピンクベストでオードリー春日に。終盤では上半身の形にくり抜かれた段ボールを華麗にすり抜けてドヤ顔のバニーあつきが。1カ月早い地獄のハロウィンパーティに武道館出禁になるのではと心配になるようなコスプレコーナーだった(笑)。
曲が終わるとけいたんと龍が残り、自身の長髪をのれんのようにくぐるギャグを見せると、龍はちょっと憐れんだ目で「俺はおもしろいと思いましたよ」。この公演の翌週に18歳の誕生日を迎える龍に対して、こぶしで腕を押して「せ~じん(成人)」。そのまま二人でラップでグッズ紹介(龍はリハーサルで『俺はこんなことをするためにRABに入ったわけじゃない』と言ったそう)。このコーナーの途中で、「♯リアルアキバボーイズ武道館」がXのトレンド1位になったことを報告。たくさん配信も見られていることを実感。
「お前の誕生プレゼント代わりに一人の時間をあげる。じゃあ塾があるから」と去っていくけいたんに、「塾があるのは俺だよ。今日、学校休んだんだから」とやさぐれる龍。「8年間RABが目標としてきた武道館(公演)を発表した日からずっと緊張していて。日々、自分の出番でミスらないように。日々出番…ビビデバ」と人気YouTuberの星街すいせいの曲「ビビデバ」を紹介するとジャケットを着た6人が登場。シックな衣装でアダルトな雰囲気で踊るRAB。前のコーナーとのギャップが大きすぎる!途中で車イスに乗ったとぅーしが現れて得意のタットを披露。
「踊る暇があったら発明してぇ……」という女性ボーカルの歌声で「エジソン」(水曜日のカンパネラ)が聴こえると、ゾマやかじゃない!、ネス、とぅーしもシックな衣装で登場。派手なパワームーブなどはないが、華麗なフットワークや上半身のしなやかな動きなどおしゃれ感と落ち着きがあるのがいい。ラストはとぅーしが中央に立ち、三人並んで肩を組んだ。曲が終わるとゾマやかじゃない!はとうーしのお腹を、ネスは肩をポンと励ますように叩いて去った。一人ステージに残ったとぅーしはネクタイをほどき、シャツの前ボタンをはずすと、4月のTOKYO DOME CITY HALL公演で全治半年の大ケガをしたことを真剣な表情で話し始めた。不安や葛藤を抱えながらもメンバーに支えられたこと、そして待っていてくれた保護者へ感謝の言葉を述べる。「今日のRABのメンバーのみんなのムーブを見て、自分が不甲斐なく感じる。でもやっぱり負けたくないんすよね。だって俺もRABのメンバーだから。待っててくれてありがとう」と言って頭を下げた。そして「これから見せるのは僕の半年です。見ててください、もう一つの僕のRoad to Budokanです」と言うと、ずっと真夜中でいいのにの「あいつら全員同窓会」でソロパフォーマンスが始まった。たくさんのイメージカラーの水色のペンライトが振られる中、得意の上半身を使って懸命に踊る姿を見て、胸が苦しくなり、心の中で叫んでいた。「頑張れ!」と。終盤で後ろに倒れ込むが、すくっと立ち上がり、メインステージへと歩いていくと最後は汗が飛び散るばかりの熱演。そのまま去っていった。
続いてアカペラで「Sincerely」(アニメ『ヴァイオレット・ヴァーガーデン』OP曲)が聴こえるとメガネをはずした龍がゆっくりとやってきた。「手を伸ばすの」では前方に腕を伸ばしたり、「泣いているんだろ」では頬に手をあてるなど、せつないマイム。センターステージに進んでいくと、2コーラス目では演奏もエモーショナルになり、龍の動きも何度も回ったり、大きく腕を振ったり、感情のうねりのような激しさを映し出す。勢いやキレがあるダンスのイメージが強い龍だが、センスティブかつエモーショナルなダンスに主人公の物語を見ている気持ちになった。アウトロで手を伸ばして、上方を見上げると清々しい表情の龍がいた。龍も昨年、ダンスの日本大会で優勝した後の練習で負傷し、その状態で世界大会を戦っている。アクロバティックなダンスや派手なパワームーブはケガといつも隣り合わせだ。でも彼らがダンスもアニメも好きだから裏切りたくない、いつも全力でいきたいという気持ちはよくわかる。その想いの強さがRABにひかれる理由の1つだろう。
そして龍がREAL AKIBA BANDを紹介。するとボーカルのMASAが「みんなもお尻が疲れたでしょう」と立つことをうながし、「イエー! オー!」とコール&レスポンスを要求。REAL AKIBA BANDのオリジナル曲「GO&FUN」を歌唱&演奏。ソウルなダンスナンバーに保護者たちも体を揺らした。
ブラス隊が「Get Wild」(アニメ『シティーハンター』ED曲)のイントロを鳴らすと、RABのルーツメンバー5人が登場。この曲もRABの代表的パフォーマンスの1つ。ハードボイルド感を漂わせながら、キレのあるダンスとパワームーブで魅せる。ムラトミの回転系のムーブに沸く会場。間奏になるとスクリーンには過去のRABメンバーの想い出の写真の数々が。センターステージで5人が手を合わせるとそれぞれ散ってダンス。最後は5人が腕を勢いよく上へ挙げて締めた。アウトロの中、MASAも「ルーツ!」と叫んだ。
踊り終わると、DRAGONが「武道館に来られたのは、ネス、ゾマ、とぅーし、龍のおかげだと思っています。ありがとう」と言って頭を下げた。そして「この瞬間だけルーツ5人でこの光景を見る時間をもらってもいいですか?」と言うと抱擁し合う。ムラトミが泣いている中、「その5人の時間、6人にさせてくれないかな?」という声。声の先には創設メンバーのひとり、チャカがいた。笑顔で指を高く掲げるけいたん、目頭を押さえるあつき。「チャカ、遅いぞ」と声をかけるDRAGONを見て、「お待たせ。遅くなったね」とチャカ。「じゃあ、一緒にやる?」「やろう、やろう」。その掛け合いに会場も大歓声。けいたんは膝曲げジャンプを繰り返し、早くも臨戦態勢。マロンは「チャカ、武器の貯蔵は?」と問いかけると、チャカは「無限だよ」とニヤり。DRAGONは「みんな、目に焼き付けろ!今宵限りの6人の『全力バタンキュー』だ!」と叫んだ。アニメ『おそ松さん』OP曲だが、6つ子の物語なので6人そろってのパフォーマンスというのは素敵。イヤミの「シェー」ポーズやパラパラっぽい動きなども取り入れている。6人で手を合わせるポーズの後、チャカのソロパフォーマンスには一層大きな歓声。フリーズやパワームーブなども見せ、さすがB-BOYの魂、忘れずか。センターステージまで6人で走り、一斉にジャンプするとテープが発射。アウトロになるとそれぞれメンバーがチャカに寄り添い、けいたんは大きく手を振り下ろして曲を締めた。
直後、「俺たちもまぜろよ!」とほかの4人も現れた。10人一列で並ぶと感動もひとしお。あつきは「『アベンジャーズ』やん!」。そして改めて「おたまっぱぎー!」のごあいさつ。チャカは会場に向かって「僕も皆さんと一緒にRABの一日を楽しみに来ました。一緒に楽しみましょう!」。ゾマやかじゃない!から10人で「踊ってみた(動画)を撮影させていただけませんでしょうか?」と頼んで膝をつきながた手を差し出すとその手を取って了承するチャカ。撮影はいつもRABの動画撮影をしている馬のかぶりものをした神宮司が担当。
「僕たちのBの部分をお見せします」とゾマやかじゃない!が言い放つと「テクノブレイク」へ。オリジナルを歌うらっぷびとがREAL AKIBA BANDにいるので、この曲もオリジナルで踊る。5人、6人では広々と感じたセンターステージも10人で踊ると手狭に感じる。一人が踊る姿を見たメンバーが指差したり、煽る姿はブレイクダンスの大会のような雰囲気。そして純粋にダンスを10人が楽しんでいる原風景にも感じられた。
踊り終わるとみんな、「最高!」、「ヤバすぎ!」と口にする。「この動画がネットに上がって完成するのが俺らっぽいね。インターネットから始まりインターネットで終わるという」とけいたん。うなずくメンバーをよそに、続けて「また10人で、できるかはお仕事次第かな」と社長、経営者らしいところも。そして10人とバンド、オーイシマサヨシが加わって(RABになじみ過ぎじゃないからという声も)、客席を背に「レペゼン秋葉原!」の声で記念撮影。冒頭の記録写真にまた思い出の1枚が加わった。
オーイシとチャカが去ると、けいたんが「終盤に入って突っ走るので、ここで未来の話をしてもいいでしょうか?」と新情報のお知らせ。1つめは2025年1月から放送のアニメ『ニートくの一となぜか同棲はじめました』のOP主題歌と、同じく1月スタートの『妖怪学校の先生はじめました』第2クールのED主題歌を担当すること(マロンは作詞でも参加)、RABのアニメ化プロジェクトが始動を発表。けいたんは「僕らはいくつになってもオタクだし、B-BOYだし、RABもまだまだ続けたいし、もっともっといろいろなところにみんなと行きたいと思っています」。
更にムラトミから「ここで新曲をやります。この曲にはテーマは『街』です。僕たちはこの街が好きで集まりました。昔は認めてもらえないことや悲しいこともたくさんあったけど、この街は僕らを受け入れてくれました。この街のおかけで、今ではこんなに頼もしい仲間が増えました。HIP HOPに『レペゼン』という言葉があります。意味は代表する背負う。僕たちはこの街が大好きです。そして今日、僕たちの夢である武道館公演が叶いました。でも武道館よりもっともっと大きなステージへ行けるように、これからも秋葉原をレペゼンしていきます。そんな曲です」と紹介したのは想いそのままの「レペゼン秋葉原」。ヒップホップ風のサウンド、スクラッチなども聴こえる中、後方には落書きがたくさんされている秋葉原の街なみのアニメ。アキバはRABにとって「俺らの遊び場」の歌詞の通りの大切な場所。「ゲームやマンガ、アニメ」や「マスターピース」などの言葉も並ぶ。9人で肩を組むと「レペゼン」の連呼。最後のキメポーズなどストリートの少年たちのようなカッコよさ。
イントロが流れる中、「これからの歴史は俺たちが作る! もっと未来へ行こうぜ!」とゾマやかじゃない!が絶叫して、「OVER THE FUTURE」(アニメ『絶対可憐チルドレン』OP曲)へ。一人ひざを抱えるメンバーに全員が手を差し伸べる姿が印象的で、サビの「未来を今超えよう」などアニメの曲なのにRABの曲のようにも聴こえる。ラストは全員で天に向かって指を差した次の「脳漿炸裂ガール」はれるりり作のニコ動に投稿された曲で、映画化もされている。譜割が詰まった速い歌にのせて、ムーブも速く。レーザー光線が乱れ飛ぶ中、エルボーワープ(ひじをついて、滑るように移動)などソロのパフォーマンスも見せつける。10人そろったコンビネーションダンスもきれい。続く「Rock&Beat」は、MASAが活動中の二人目のジャイアンの曲。イントロ中に「RABの本質はバトラーだ! 最高のバトル見せておくれよ!」のMASAの言葉に、9人が左右に分かれて、ブレイクダンスの戦いのよう。ムーブを決めた後に相手側を煽ったり、相手側もパフォーマンスしているメンバーを指差して「音とズレてるよ」とアピール。龍は思い切り宙返りをキメてもクールな顔。このバチバチ感もカッコいい! そして「Rock&Beat」のフレーズのたびに客席を何度も指差した。
曲が終わるとネスが「音楽とダンスの融合、俺たちのリアルが詰まった武道館ワンマンどうですか?」と客席に問いかけると拍手。続けて「俺たちは秋葉原で踊るからRABじゃない。俺たちが踊る、この場所が秋葉原になるんだ。今日はこの武道館が秋葉原になる日だ」。背後に月の映像が映し出されて、鈴虫の鳴き声が聴こえる中、月に向かってネスが歩いていき、夜闇に消えるとYOASOBIの「夜に駆ける」へ。薄暗い照明に照らされながら、ABメロのせつなさとサビのスタイリッシュなところをダンスで表現。Dメロでネスが絶叫するようなムーブから全員が円で包むような様子は「ひとりじゃない」というメッセージにも見えた。曲が終わると後方には劇場の幕が閉じるアニメの演出。その幕が上がると一転、明るい照明になって「シュガーソング&ビターステップ」(アニメ『血界戦線』ED曲)に。メンバーの表情にも笑顔が見える。10人のリアル映像に光の粒が降り注ぎ、星型のペーパーも降りしきる中、肩を組んで横一列に並び、ラインダンスしたり、左右に動いたり、楽しそう。本編最後はらっぷびとが武道館に挑むRABのために書き下ろした「Realize」。サビの「あの日の夢は正しかったんだ」、「振り返れば全部楽しかった」、「踊れ あの場所まで」は近くで見てきたらっぷびとだから書けたフレーズ。跳んだり、弾けるダンスと笑顔のRAB。このライブを通して、ここまでRABの歴史を見てきたがやっぱりこの姿が一番似合う。ラスサビ前で音が途切れると、あつきがマイクオフの大声で「ありがとう!」。そして9人が一塊になって笑い合った。
誰もいなくなったステージに向けて大きな「アンコール」が続くと、暗転中のステージにライトがいくつか灯り、RABが再登場。「SURVIVE」は、らっぷびととアリレムの共作で、後日Xでマロンが記していた「メンバーそれぞれのことを歌っている歌詞」。膝をついて見つめ合うけいたんとムラトミ、その後ろで腕組みして立つ7人。歌詞が映し出される中で踊る姿は一層熱が帯びているようで、悲壮感を感じつつも今を全力で生きているRABのイメージが浮かんできた。途中でまたチャカがステージに現れ、左右に分かれて道を作ったメンバーとハンドタッチしていく。10人で踊ってアウトロが鳴る中で荒く呼吸するチャカの様子が映し出された。百戦錬磨だったチャカさえも息切れするほどの激しいダンスだった。
曲が終わると改めて場内を見渡し、「この景色をどれだけ見たかったか。ありがとう!」とマロン。あつきは「いつまでもここにいたいね。俺たちこんな未来があるなんて、まったく想像してなかったんだよ。RABは、17年前にけいたんの家にルーツの5人が集まって、『踊ってみた』の動画を投稿しようというところから始まりました。その動画をニコニコ動画にアップする時に、『この動画、本当に投稿しますか? はい いいえ』という確認の画像が出てきて。怖えと言いながらも『はい』のボタンを押したんだよ。何だかよくわからないけど、このボタンを押したら、きっと魔法以上のユカイが限りなく降り注ぐってそんな気がしたんです。ここまで来るのは簡単じゃなかったけど、不可能じゃなかったよ。僕たちRABはまだまだ未来へ向かっていきます」。その言葉を聞きながら号泣するムラトミ。最年長が一番涙もろい。続けてあつきは「だって保護者も俺たちも『大きなユメ&ユメスキでしょ?』。俺たちの始まりの曲を10人で行こうか?『ハレ晴レユカイ』」。小さな部屋から始まった冒険は会場の1万人と配信で見ている保護者の元まで。『踊ってみた』では笑顔で踊っていたあつきもこの時は涙が止まらない。それぞれが想いを抱えたまま、踊っている。オタ芸が入っているコミカルな振りなのにエモい。たぶんこのエモさを超えるのはアニメの中の人が歌った時だけ。ラストにセンターステージの中央で一人、腕を斜めに上げたあつきはアウトロで泣きながら会場をぐるりと見渡した。
そして正真正銘のラストはRABの主題歌「NEW ERA」。10人は保護者たちと一緒に左右に手を振り合った。「この世界がダンスホール」や「君の歌に合わせて踊るよ 踊るよ」などの歌詞に合わせて全力パフォーマンス。「そして僕の一歩がミライだ」のラスサビから長い時間、「Wow wow……」と声を合わせ、長い時間手を振り合った。喜びと楽しい時間を一緒にかみしめるように。10人で手をつないで、アウトロが終わると円状に倒れた。曲が終わってもしばらく、武道館の天井を見ている。目を押さえたり、嗚咽したりする中、マロンは嬉しいそうに左右のメンバーに微笑みかけた。立ち上がるとメインステージで出演者全員が並び、手を繋ぐと、ゾマやかじゃない!はマイクオフで「俺たちの夢は今日ひとつ叶いました。でも自分たちにはもう一つ、自分たちがアニメになるという夢を持っています、今日の武道館はその夢へと背中を押してくれると思います。もう俺たちの夢を絶対に笑わせない!」と叫ぶ。すると場内の保護者たちも「オオー!」と賛同の声を上げた。一拍置いて「本日はありがとうございます!」と叫んで、全員で頭を下げた。そして「VERSUS」が流れ、場内の方々に手を振る中、腕で目を押さえるムラトミを抱き寄せるゾマやかじゃない!。RABの10人だけ残って再び手をつないで、保護者へあいさつ。そして龍もマイクオフで「僕たちは一生オタクだし、一生ストリートの人間だし、一生RABです、一生終わることはありません。だからみんなついて来てください。また会いましょう」と叫んだ。10人がステージを去った後も、スクリーンには特報として、2025年1月10日、ZeppDiverCity(TOKYO)でルーツ5人のライブと、ゾマやかじゃない!とネス、とぅーしのRAB ESPICEのライブの開催、REAL AKIBA BANDも11月26日、代官山UNITでライブ、RABの2.5次元舞台化、弟分ユニットのREAL AKIBA JUNIORZの新メンバー募集オーディション開催など矢継ぎ早に発表された。そして「僕たちは次のステージに進みます」の文字。どうやら武道館ロスの時間も与えてくれないらしい。直後にメンバーから直筆メッセージが映し出されて3時間半超のステージは終わった。
思えば龍が生まれた年にRABが結成され、龍が加入するという夢のようなストーリー。武道館公演を終えた後もアニメ化プロジェクトも進む。「アニメの中に入りたい」という夢が現実になりつつある。でもオタクはわかっている。RABは欲深い。次々と夢を作って、叶えるまで動き続ける。その答えは自分たちの曲にある。「どんなことがあったって終わらない旅さ」。
SET LIST
01.VERSUS
02.アイドル
03.ロキ
04.おジャ魔女カーニバル
05.ファッとっして桃源郷
06.Help me, ERINNNNNN!!
07.君じゃなきゃダメみたい
08.ようこそ!ジャパリパークへ
09.なまらめんこいギャル
10.フライド☆プライド
11.ラビットホール
12.粛聖!! ロリ神レクイエム☆
13.ジャンボリミッキー
14.ビビデバ
15.エジソン
16.あいつら全員同窓会
17.Sincerely
18.G0 & FUN
19.Getwild
20.全力バタンキュー
21.テクノブレイク
22.レペゼン秋葉原
23.OVER THE FUTURE
24.脳漿炸裂ガール
25.ROCK & BEAT
26.夜に駆ける
27.シュガーソングとビターステップ
28.Realize
ENCORE
29.SURVIVE
30.ハレ晴レユカイ
31.NEW ERA