FIVE NEW OLD
“fino crewsing”
2024年7月7日(日) Zepp Shinjuku(TOKYO)
波音とカモメの鳴き声のSEに乗ってメンバーが登場すると、ブルーのレーザーを照射してバンドロゴが描かれる。HIROSHI(Vo/Gt)の「よう来たな！」の一声も相まってスターターの「Perfect Vacation」がフロアを真夏に変えていく。サビでは早くもシンガロングが巻き起こりパーティ空間が作り上げられる。そのムードをさらに盛り上げる「Sunshine」ではSHUN(Ba)がステップを踏みつつプレイし、楽しさを全身で表現。鬱陶しい気分を跳ね除けるポップソウル「Don’t Be Someone Else」では短い“ほら答えはいつでも胸の奥に、暗闇でも〜”の日本語詞が鮮明に胸に届く。サポートメンバー山本健太(Key)の存在がアンサンブルにリッチさを加味していて、生音の豊かさで魅了していく。
HIROSHI(Vo/Gt)
ギターを携えたHIROSHIの「まいど！」という短い挨拶を挟んで、スピーディな「Happy Sad」が駆けるように鳴らされるとオーディエンスは３拍のクラップを決め、序盤と思えないほどのグルーヴが生まれた。キラーチューンで結ばれたバンドとオーディエンスの幸福な時間だ。HIROSHIは早くもジャケットが熱いと言いつつ、「新宿やからってストリップというわけにもいかないし〜」とメロディをつけてのMC。ちなみに衣装はテニスがインスピレーションらしい。輝度の高いWATARU(Gt/Key)のギターリフが太陽を思わせる「Summertime」はまさにシーズンソングで、おおらかなミディアムチューンはスタジアムを想起させる。そこから緩急をつけ、ライブアレンジにブラッシュアップされた「Dance with Misery」が目の前の景色を素早く変える。WATARU、HIROSHI、SHUNのユニゾンリフがなんとも洒脱だ。
WATARU(Gt/Key)
続いてもアルバム『Too Much Is Never Enough』からのチョイスで、「Liberty」を披露。アルバムリリースを伴わないライブならではのセットリストだから可能な流れに、イントロでたびたび歓声が上がるのも納得。山本のピアノとWATARUのワウを効かせた大人っぽいフレーズが楽曲の成長を示し、イントロや間奏のインスト部分の味わいが増す。そんなムードでありつつ、WATARUのギターソロをカメラで撮影するHIROSHIのお茶目さであったり、直後に音源ではPecori（ODD Foot Works）のラップ部分を披露、さらにロングトーンで盛り上げる自在さに思わず笑顔になってしまう。どんなにスキルフルなことでも圧倒というより、楽しくさせるのは彼の才能だろう。
SHUN(Ba)
今年前半はずっと制作部屋をD.I.Y.していたそうで、楽器を持つ代わりに木材を切っていたと笑わせる。そんな日々の中で、少し肩の力を抜こうよ、というマインドセットで書いたのが新曲「Touhikou」なのだという。初めての日本語タイトルで歌詞も日本語が多めのこの曲。「ここをあなたに歌って欲しいんです」と“Turn it right now”、空耳では“足りないな”と聴こえるコーラスパートを軽く練習して演奏に突入。小気味いいカッティングとビートで、楽しむことやいい意味でサボることを謳歌する。この曲もまさにシーズンソングである。さらにダイナミックなHAYATO(Dr)のドラミングから「Trickster」へ。ネオソウルフレーバーの中にエモ要素を感じさせ、バンドならではのソリッドさも顔を出す「Chemical Heart」を続けて演奏することでFiNOのオリジンを明らかにしていった。そしてイントロのピアノを長めにライブアレンジした「One By One」の徐々にハードさを増す演奏、これぞ彼ららしい１曲の中の音楽的なレンジの広さだ。レンジの広さはHIROSHIがアコギを弾き、誠実なトーンで歌う「Moment」でも明らかで、ハスキーさが混じるロングトーンで歌い切ったあと、爆発的な拍手と歓声が上がった。
HAYATO(Dr)
HIROSHIはこの「fino crewsing」のネーミングの由来を「みんなで街をクルージングするイメージ」と話した。奇しくもこの日は東京都知事選挙の投票日。「普段はそんなことは話さないけど、今日新宿でライブしてるのも何かあるのかなって。みんなが少しずつ変わることでしか変われないと思う」という発言に拍手が起こったが、すかさず「俺は期日前投票したから、今日は遊ぶだけなんですけどね！遊び足りないんじゃないですか？」と、茶目っ気たっぷりにフロアに水を向けた。
シリアスというより当たり前で大事なことを話した後、「Ghost In My Place」のサビで大きなハンドワイパーが起きたのもなんだか自然な流れだ。そしてイントロのリフ一発で歓声が上がった「What’s Gonna Be？」では乾いたクラップが響き渡る。最近のナンバーである「Showdown」はラウドやポストパンクのビートやドラムサウンドも前面に出し、ロックバンドとしての強さを改めて実感させてくれた。ダンスミュージックやエレクトロニックな要素もロックバンドとしてアウトプットする個性を今のFIVE NEW OLDのスキルで実現すること。この日の演奏に端的に見えた部分だ。本編ラストの「Breathin’」のスケールの大きさもそのことを証明していた。
フロアの“Turn it right now”というか“足りないな〜”の歌声でアンコールを求める（まさにアンコールにピッタリ）声が重なり、合いの手も入ったりしてファンもバンドに負けず劣らずの自由度の高さだ。WATARUの絶妙なグッズ紹介のあと、HIROSHIが合流し、前夜祭での「1時間で曲を作る」企画で完成した出来立ての新曲、その名も「crewsing」がギターと歌だけのアレンジでこの日のお土産として披露された。また、11月の全国４ヶ所のツアー、２ndアルバム『Emulsification』がリリース５周年を迎えたことを機に全曲再現ライブを９月に渋谷で開催することを発表。さらに来年は結成15周年を迎えるとあって、「春ぐらいになんかあるでしょ！」というHIROSHIの匂わせに大いに沸いたのだった。アンコールはその２ndアルバムから「Bad Behavior」、再会が待ち遠しくなるアンセム「By Your Side」で締めくくり。「また音の鳴るところで会いましょう！」というHIROSHIの言葉はライブというかけがえのない場所への愛情とバンドへの自信に満ちていた。
SET LIST
SET LIST
01.Perfect Vacation
02.Sunshine
03.Don’t Be Someone Else
04.Happy Sad
05.Summertime
06.Dance with Misery
07.Liberty
08.Touhikou
09.Trickster
10.Chemical Heart
11.One By One
12.Moment
13.Ghost In My Place
14.What’s Gonna Be？
15.Showdown
16.Breathin’
ENCORE
01.Bad Behavior
02.By Your Side
