cali≠gari TOUR 17
2024年6月22日(土)柏PALOOZA
※曲名表記がございます。ネタバレが気になる方はライブ参加後にお読みください。
SEは尾崎豊の「十七歳の地図」のライヴ・ヴァージョン。新作の背景を思うと納得の選曲だが、同曲が終わって流れてきたのは……尾崎豊の「十七歳の地図」。はっきり聴こえないが、こちらはスタジオ・ヴァージョンだろうか。いったい何ヴァージョンが用意されているのだろう……とカウントしはじめたところで、ベースの村井研次郎、サポート・ドラムのササブチヒロシ、ギターの桜井青が順に登場。最後にヴォーカルの石井秀仁が現れ、4人揃ったところでおもむろにライヴは開幕した。
『17』のリリース・ツアーだけあって、オープニングは同作と同様に不敵なカオスに満ち満ちた滑り出し。石井の低音ヴォイスと緊張感あふれる暴走グルーヴで場内の熱気を豪快に撹拌する「サタデーナイトスペシャル」でスタートする。続いては2010年の『≠』から「反ッ吐」。強烈なドライヴ感を維持したままシームレスに2曲を駆け抜ける。
桜井の「柏行くぞー!!」というシャウトに導かれたのは、映画『ゴーストバスターズ』のテーマ調で繰り返される“何で?”が印象的な『17』からの新曲「化ヶ楽ッ多」。生で体感すると音源よりファンキーな印象で、石井に向けられたマイクにフロアがすかさず反応しまくるコール&レスポンスが観ていてとても楽しい。
「高鳴るぞー!!」という桜井の煽りから、グラマラスなブギ―「禁断の高鳴り」へ。そのままファンクラブ限定の配布音源として発表された艶やかなラテン・ロック「隠されたもの」を披露すると、「die──」「revive──」「don’t move──」という暗黒ヴォイスのエコーが響きはじめる。
地の底から湧き上がるようなビッグ・ビートを 「動くな!死ね!甦れ!」 がダンサブルに引き継ぐと、続いては淡いギター・サウンドが霧雨のように降り注ぐ「暗い空、雨音」。その後、速いシャッフル・ビートと桜井の扇動的なセリフによって、会場が不穏な空気に。この「白い黒」はじつに11年ぶりの演奏だけあって、フロアのあちこちから歓声が上がる。
かと思えば、会場から「ナーイティナイティナーイン!!」という合唱を引き出したクラウトロック由来のスピード・チューン、重いグルーヴがいたくクールなグラム・ロック経由のナンバーの「乱調」など、『17』からの最新曲をふたたび連打。旧来の楽曲のなかに放り込まれた新曲群を次々に浴びることで改めて感じたのは、cali≠gariの持ついびつなポップセンスだ。アグレッシヴなプレイで斬り込む場面はもちろん、キャッチーかつエモーショナルな歌心で魅了する場面ですらも、どこかタガが外れているというか。そんなことをつらつらと考えているうちに、ステージ上は本日初のMCタイムに。
「小学校の教室より静かなライヴハウスって、いいですね……(会場から拍手が上がる)……嫌味よ!?」という苦言で口火を切る桜井。そこから村井がメンバー紹介で場の空気を温めると、石井が「昔から“ササブチヒロシ”でやってるの? 俺、そういう人、大好き」とササブチに向かって突然の告白。「俺もずっと“石井秀仁”でやってきてるから。途中で苗字を奪われたことがあるけど」と続けると、桜井が「途中で戻してあげたでしょ!」……と、一時期は下の名前だけだったcali≠gariのメンバー名の変遷とその理由を説明。30周年イヤーらしい(?)話のあとは、ゴキゲンにロールするドラムを合図に後半戦へ。
ミラーボールが回るなかで走り出したのは、浮気なミッドナイトティーンエイジたちの青春グラフィティが綴られた2曲。時代が時代ならツイスト・ダンスにあふれたであろうリズムに合わせ、観客たちが息の合ったクラップを放つ様がなんとも痛快だ。世界観を共にするナンバーと連結した「ナイナイ!セブンティーン!」で80年代へひと息にタイムスリップすると、そのまま“青春”と名の付くcali≠gariの代表曲までパワフルに疾走。仄かな青さを残して演奏が終わると、フロアからは桜井の名を呼ぶ声が次々と上がっていく。それに対し、桜井は桜井はこう語りはじめる。「自分はcali≠gariのアイコンだからまあいいんですけど、でも、ほかのメンバーも等しく名前を呼ぶんですよ。どこのバンドもそういうレクチャーをするって聞いたので、初心に戻ってやってみようと思って。cali≠gariを超人気があるバンドに仕立て上げてみてくれませんか? ほら!(フロアからメンバー全員の名前を呼ぶ声が続々と上がる)……それよ。それを毎回自主的にやってくれると、みんな何も言わないけど気持ちがいいんですよ」。
そんななか、村井が流れを切るようにMCを継承。開口一番に「みんな、青春してる!?」と会場へ問いかけ、「この夏は若々しいライヴにするんですよね? 青さんは17歳のときにどんな感じでしたか?」といきなり青春トークを開始する。毎日ロックの洗礼を受けていたという桜井、勉強ばかりしていたという村井のエピソードが明かされると(石井は不在)、ステージはいよいよ本編のクライマックスへ。
ベースの音が聞こえず石井が入りそびれるというハプニングがありつつも、ムーディーな場を作り上げていく最終章。グルーヴィーなアーバン・ポップ、大きな喪失感を匂わせるドラマティック&エモーショナルなギター・ロック、同様の喪失感とそれを受けての決意を吐露する黄昏色の歌謡ロックと続き、本編は『17』のエンディングと重なるセンチメンタルな余韻を残して幕を閉じた。
ゆるいクラップが続いて5分ほど経過したのち、ぽつぽつと上がりはじめる「アンコール」の声。そこへ桜井が先陣を切って再登場すると、ふたたび「ライヴの作法」についてのレクチャーが始まる。
「アンコールだけでもいいんで、人気のあるバンド風に、皆さんもっと前に詰めてもらって。で、このあとはとりあえず「グッバイさよなら」から始まるから、それは聴け。次は“マッキーナ”で……詰まってて申し訳ないけど、がんばって。その次からは「行く」ので、もう周りを観ちゃダメ。私たちだけを観ればいい。そして頭を振る! cali≠gariがフェスとかにも出られるようになるかは、皆さんの自主性にかかってます!」。
……そんな謎のプレッシャーをかけたうえでのアンコールは、『17』で爆誕したcali≠gari屈指のポップ・チューン「龍動輪舞曲」でスタート。さらに、フロアを埋め尽くした色とりどりのジュリ扇が狂乱の舞を見せる「マッキーナ」でド派手に盛り上げると、『17』から「バカ!バカ!バカ!バカ!」、『16』の「脱兎さん」をリアレンジしたファンクラブ限定の配布音源「脱兎さん豪」、さらには不動の定番曲といったハードコア/パンク・チューンを畳みかけ、バンドも観客も完全燃焼。すべてのセットリストを走破した。
途中のMCで村井も触れていたが、この日のステージを観て個人的に思ったのは、今回はさまざまな青春の在り方を体感できるツアーになるのでは、ということ。活動開始以降、cali≠gariは多彩なアプローチで“青春”を音像化してきたが、どういった場面をどのような音楽性で切り取るのか──そこに、そのときどきのバンドの年輪がわかりやすく刻まれていたようにも思う。三人が発表してきた数々の青春曲を通じて振り返る、cali≠gariの30年。ファイナルのLINE CUBE SHIBUYAまでショウは絶えず変化していくのだろうが、『17』で描かれた青春がどのような結末を迎えるのか、最後まで見届けたい。