17th Anniversary Live
2024年5月4日(土・祝)LINE CUBE SHIBUYA[渋谷公会堂]
ゴールデンウィークも後半に差し掛かった5月4日、みどりの日。摩天楼オペラが東京・LINE CUBE SHIBUYAにおいてバンド結成17周年を記念したワンマンライブ<摩天楼オペラ 17th Anniversary Live>を行なった。今回彼らが周年ライブを行なう会場として選んだ場所は、バンドとしてはかなり久々となるホールで、さらにこの会場は彼らが2010年5月6日、3周年記念ワンマンライブ<Birth of GEMESIS>を開催したとき、アンコールでメジャー・デビューすることをファンに告げた場所でもあるのだ。そんな思い出深いホールに再び帰還した彼らはどんなライブを繰り広げたのか。その模様をレポートする。
<真実を知っていく物語>をテーマに掲げ、約2年に渡って展開していったロングツアーの集大成と声出し解禁が重なり、メンバーとオペラー(=ファンの総称)たち全員が大きな感動に包まれた16周年のライブ<摩天楼オペラ 16th Anniversary Live -翠玉のワルツ->から1年。今回は14年前、彼らがメジャー・デビューすることを発表したホールで久々の開催ということで、そのとき同会場で演奏した昔のインディーズ時代のナンバーと今年行なった<EVIL TOUR 2024>ツアーで演奏した曲をミックス。これまで定番でプレイしてきた「BURNING SOUL」や「Curse Of Blood」などを排除し、新しい周年ライブの選曲を掲げて、彼らはこの日のステージに立った。
客電が暗転し、ステージを覆っていた緞帳が静かにアップ。響(Dr)のドラムの赤いフレームが目に入ってきた瞬間、シンバルを叩くカウントとともにステージが明るくなり、ライブは彼ららしいシンフォニックメタル「Eternal Symphony」で幕を開けた。やはりこういう摩天楼オペラナンバーは大きな会場になればなるほどダイナミックさを増し、ホール映えする。彼らの音のシルエットを全身で受け止めた直後、大きな爆発音とともに最新EP盤のタイトル曲「EVIL」のサウンドが立ち上がる。優介(Gt)のスラッシーな激しいギターリフに合わせて、オペラーたちはさらにギアを入れ、ヘドバンを繰り出す。それを煽るように、響が連打するキレッキレのツーバス、素早く入れこむフィルが客席をダイレクトに直撃してく。最新曲の登場にどよめきながらも、大いに盛り上がったオーディエンスは、曲終わりに思わずハンズアップをきめる。そこにスピードチューン「Muder Scope」を連投。客席の動きがヘドバンから体の折り畳みへと変わった瞬間、燿(Ba)が華麗なバックターン決め、パフォーマンスでも会場を盛り上げていく。
「17周年、お越しいただきありがとうございます」と挨拶をした苑(Vo)は、14年前にこの場所でメジャーデビューを発表したときのことを振り返り「あのときは訳も分からず演ってましたけど、今日は一人ひとりの顔を見るぐらい集中してます」と当時といまの変化について率直な感想を伝えた。そうして、今日のセットリストについて、周年ライブといえば、どうしてもヒットパレードのお祭りで毎回似たセットリストになりがちであることを踏まえた上で「今日はみなさんが望んでいるであろう曲を持ってきました」と、いつもの周年ライブとは違う志向でライブを進行していくことをここで宣言。場内にどよめきが走る中、次に始まったのは「舌」だった。演奏が始まると同時に、舞台後方には何本ものトーチが燃え上がる。シャッフルビートからジャズっぽく曲調を変えながら、その上で苑が妖艶さをどんどん増していくこの曲は、彩雨のキーボード、曲間に散りばめたクワイヤがこのバンドならではの煌びやかさを演出していく。ここからは、昨年行なった<EVIL TOUR>の流れを汲んだパフォーマンスが続く。優介の付点8分のディレイをかけたギターが無限の彼方まで広がっていった「誰も知らない天使」は、大きなホールならではの音響が、彼らの楽曲をさらに後押しして観客を魅了していく。曲中、苑が後ろを振り向いて響のドラミングを真似するような動きをした瞬間、それに呼応するように響が笑顔で素早く“ドコドコ-”っと2バスを繰り出してみせると、観客の盛り上がりはそこからさらに一層加速。彩雨がoiコールでフロアを煽り、続けて「悲哀とメランコリー」が始まると、コール&レスポンスが巻き起こり、場内には早くもものすごい一体感が誕生。それに負けじと燿がベースラインでも歌い、苑が美しいフェイクを響かせる。こうして、各々のプレイが細部まで堪能できるのもホールライブのいいところだ。白煙が舞台フロントで勢いよく立ち上がる中、ライブはさらに「S」へと展開。ここでは、優介の泣きのギターソロでまず観客たちは感極まり、そのあと、最後のサビの高音パートを苑がパーフェクトに歌いきったところで、再び白煙が吹き出し、場内をさらなる深い感動へと導いていく。ひと呼吸時間を置いて、黄色い柔らかな照明の奥から届いてきたのは、あの美しくもせつない「ローンデイジー」だ。 14年前、同場所でも演奏したこの曲の再演に感動が倍増。このあと、歌い終えた苑がステージから姿を消し、残った楽器隊のみで「Apocalypse」をプレイ。そこから「輝ける世界」への展開に再び驚愕。こちらも14年前、この場所で披露したナンバーで、ここ数年はまったく演奏していなかった曲だ。当時の彼らのなかでは新しい試みだったこの曲。この日は、光に満ちたメロディーへと開けていくサビに入った瞬間、照明がミラーボールを照らし、苑のファルセットを使った歌声にのせて、会場全体にきらめくような光の粒を降らせていった。
そして、この後は苑が「1曲座って聴いていただきたいなと思います。ホールだなという気がするんで」といって観客を着席させる。苑は口にしなかったが、じつは14年前もライブの中盤に観客の着席させて曲を聴かせるシーンがあったのだ。だが、今回は「でも、1曲終わったらすぐ立って!」という注釈つき、これには場内も大ウケ。そうして「アコギが弾ける優介が入ったから、この曲を久しぶりに披露します」と説明をしたあと、始まったのは3連のバラード「眠れる夜」だった。冒頭、苑がマイクを通して入れた大きなブレス音で、場内の空気がピンと張り詰める。優介が弾くアコギのストロークにのせて、苑はメロディーをつかむように左手を大きく上下に動かしながらこの曲を丁寧に歌唱。曲が終わると、約束どおり観客はすぐさま席から立ち上がり、そこからここで14年前にもプレイした「COCOON」へと展開していくと、客席にはいっきにエメラルドグリーンのペンライトが広がり、美しい光景を作ってみせた。そうして最後、観客たちがサビを力強い声で大合唱しはじめると、響は椅子から立ち上がり、オペラーたちの歌うフレーズを一緒に口ずさむ。そのパワーを受け取った苑が、最後はエモーショナルな歌唱でサビを歌い上げ、迫力あるフェイクを入れながら見事にこの曲を締めくくっていったところは、とても美しくドラマチックだった。
この日会場限定発売したばかりの「闇を喰む」のパフォーマンスで場内の空気をガラッと変えたあとは、「さあ、飛ばしていこうか!」という苑の言葉を合図に、ライブもいよいよ終盤へと向かう。やはりこれがなければということで、銀テープが降り注ぐなかで「GLORIA」、次はトーチが勢いよく燃え上がるなか「喝采と激情のグロリア」と間髪入れずにキラーチューン2曲を連発していったところは、やはり大迫力。疾走感あるメロディーをオーディエンスがシンガロング、コール&レスポンスで歌いまくり、場内が熱狂に満ち溢れたところで、最後、苑が人差し指をそっと唇に当てる。静寂に包まれた場内にマイクを通さず、アカペラで苑が歌を届け、会場中に温かいポジティブな感情が充満していったところで本編は終了した。
アンコールは、5人のトークからスタート。響は「ここ、マジでデカイっすね」といって会場を見渡したあと「もっと(客席を)うめたかった」と本音をポロリ。「でも、今の状態ならもっといける」と意気込んだ。燿は5月4日という様々なイベントが重なるこの日を「なぜこの周年にしたんだろう?」と問いかけながら「そんななか、我々を選んでくれてありがとう。来年まで向こう1年、よろしくお願いします」と告げ、彩雨は、昔から摩天楼オペラはホールが似合うといわれてきたことを話したあと「前回演ったときはそんなこと考えられなかったんですけど、ここの(=ホール)響きが味方して僕らを後押してしてくれました。またホールでやりたいです」と宣言。その間、響が“響き”という言葉に反応して、笑顔で自分を指差しながらアピールすると、場内がいっきに和やかに。そうして次は優介へとバトンタッチ。2年前の周年ライブでバンドに加入してからは「誕生日が2つに増えた感覚」と話し、「みんな、このバンドを守ってくれてありがとう。僕も守っていけるように今後も頑張ります」と抱負を語った。最後に苑は、14年前に同場所で「メジャーにいっても僕らは変わらず摩天楼オペラの音楽をやってきますといったけど、俺たちはイントロを聴けば秒で俺たちの音楽だって分かる。そこは、いまも変わらないと思う」と話し、自分たちがそうあれた理由は「みなさんの支えがあったからです。本当にありがとうございました」といってトークを締めくくった。そうして、今後の活動として2024年12月にニューアルバムをリリースし、それを掲げて2025年から全国ツアーを開催することを発表。その前に6月19日には「夜明けは雪と共に」というタイトルのニューシングルをリリースして、7月12日から<TOUR’24-SNOW IN MIDSUMMER->も行なうことを伝えた。ニューシングルについて「作ってみたら冬の曲だったんだよね」と笑いながら客席に語りかけ、このシングルで真冬に雪を降らすという意味でこのツアータイトルを付けたことも明かしたあと、苑が「では、感謝を込めて新曲を」といって、このあと「夜明けは雪と共に」(新曲)を初披露。イントロから雪が降ってくるような冬の景色に、メランコリックなメロディーが広がる新曲のパフォーマンスが終わったあとは、照明で場内が真っ赤に染まり、「EVE」が始まると、場内はたちまちヘドバンの嵐。さらに「alkaloid showcase」と、14年前もここで演奏した曲を2曲連続でアクト。彩雨のフレーズを優介が引き継ついでソロへと突入する、彼らならではのスリリングな展開で場内のテンションをどこまでも引き上げていったあと、摩天楼オペラらしい壮大な「光の雨」を場内いっぱいに響かせ、アンコールはフィニッシュ。
それでもアンコールを求める観客の声が止まらず、再びステージに現れた5人は、最後に「真っ白な闇がすべてを塗り替えても」を迫力あるパフォーマンスで届けて、17周年のライブを締めくくった。
終演後、全員での記念写真を終えたメンバーたちは、ファンに挨拶をしてそれぞれステージをあとに。最後に舞台に残った優介と響は、楽しそうに自撮りをしながら客席に降りてきて、通路を闊歩。これからの摩天楼オペラとオペラーたちを先頭に立って、刺激し、引っ張っていくのは俺たちだ。そんなポジティブなムードをかもしだしながら、2人は最後に仲良くステージをあとにした。
SET LIST
01. Eternal Symphony
02. EVIL
03. Murder Scope
04. 舌
05. 誰も知らない天使
06. 悲哀とメランコリー
07. S
08. ローンデイジー
09. Apocalypse
10. 輝ける世界
11. 眠れる夜
12. COCOON
13. 闇を喰む
14. GLORIA
15. 喝采と激情のグロリア
Encore
En1. 夜明けは雪と共に(新曲)
En2. EVE
En3. alkaloid showcase
En4. 光の雨
En5.真っ白な闇がすべてを塗り替えても