25周年記念特別価格として、当日券を1,100円に設定して迎えたPsycho le Cémuの神田明神ホールでのライヴ。DAISHI発案のこのアイデアがどんな結果を招くか、やきもきするメンバーをよそに、会場には当日券を求める長蛇の列が。その結果、SOLD OUTという最高のスタートで、彼らは26年目のスタートを切った。5月3日、25回目の結成記念日に行われた『Galaxy's 伏魔殿~銀河を駆け抜けろ~』のオフィシャルレポートをお届けする。
結成25周年記念であると同時に、新しいコンセプトとヴィジュアルのお披露目の日でもあったこのライヴ。THE Psycho le Cémuとも言うべき奇妙奇天烈な衣装を身にまとうメンバーは、いったいどんなキャラクターで、どんな物語が紡がれるのか、開演前から期待がふくらむ。
ライヴの始まりを飾ったのは、Psycho le Cémuではおなじみ、とは言え、久しぶりとなるお芝居。メンバーそれぞれの紹介をしつつ、地球防衛軍PLCのメンバーであるAYAとDAISHIが、地球外の星から来たYURAサマ、seek、Lidaが出会い、物語の幕が上がった。
新しい衣装を身にまとい、それぞれのキャラクターに相応しいステージングで動く5人の姿に、オーディエンスからは「かわいい~」といった黄色い歓声や吹き出すような笑い、謎のざわつき(YURAサマの上半身がシースルーだったから?)が発生。
前コンセプト『RESISTANCE』では、シリアスな物語に加え、あくまで音楽での表現を中心に据えたライヴを展開していたこともあり、お芝居やダンスといった要素をたっぷり取り入れたステージは久しぶり。ここからは、メンバーそれぞれの個性を活かした見せ場をお伝えしたいと思う。
オープニングを飾った「BLADE DANCE」をはじめ、キレッキレの動きでステージを華やかに彩ったのは、YURAサマ。ドラムに向き合うと、熱量を注ぎ込むかのようにプレイに集中しつつ、ステージの後方でも目を引くような派手なドラミングで、ステージを盛り立てた。お芝居では、美しい立ち姿をはじめ、指先や視線まで意識の行き届いた動きを見せていたのは、エアロビクスインストラクターというバンドマンらしからぬ資格を所持するがゆえ。
DAISHIは、「抱かれる覚悟で来たか」をはじめとする言葉でファンを熱狂させ、静かなピアノから始まり、多種多様な音色を駆使したアレンジで壮大な美しい光景を描き出した「FANTASIA~恋の幻想曲~」を切なくもエモーショナルに歌い上げると、最後は「みんな、愛してるよ」と優しく口にし、ロマンチックなひととときを締めくくる。背中に刀を二本背負った胴着姿とギャップがないわけではないが、力技でねじ伏せて納得させてしまうのもまた、Psycho le Cémuというバンドが持つ魅力だろう。
中盤のお芝居では、YURAサマ、seek、Lidaの三人が魔物ではなく、地球に向かう漆黒の隕石から人類を救いにきた救世主であることが判明。隕石がやってくる2025年5月3日、つまり一年後に向けて、彼ら五人がどんな活躍を見せてくれるのか、それは7月からのツアーを楽しみにしたい。
元気いっぱいの「おっは~!」から始まるAYAのMCに加え、「ブス!」とファンをののしる、ツンデレで言うところのツンのAYAに、ファンは歓喜の悲鳴をあげる。そんなキュートな表情だけでなく、ギタープレイに集中し、ストイックささえ漂わせる一面も。ギタリストとして、ミュージシャンとして成長を遂げ、ステージに臨む姿勢は、結成当初から大きく変化している。
「死ぬ気でかかって来い!」という叫びで、いつもオーディエンスを激しく煽るseekは、この日も会場をひとつにまとめ上げた。「命のファンファーレ」は、タイトルが表すように生きていることの歓びを高らかに祝福する曲だが、その途中、なんとサークルモッシュをすることに。seekはフロアへ降り立つと、サークルの中心へ。回る方向を指示すると、再びサビがスタートする。心地よく流れるサビに合わせて、流れる人波。はしゃぐファンの満面の笑顔。そんな様子を見つめるオーディエンスからも笑みがこぼれている。熱く激しくも、ハッピーな空気が会場を満たした。
Lidaがギタリストとしての本領を最高に発揮したのはアンコール。マスクまでついた戦隊ヒーローのような衣装とは裏腹に、正統派のギタリストとして、あくまでオーソドックスなソロを奏でる。そのエネルギーに満ちた音色とフレーズに、会場はすっかり支配されたようだった。お芝居やダンスといった要素を取り入れつつも、Psycho le Cémuをあくまでロックバンドたらしめるのに、Lidaの存在は大きな役割を果たしている。
ライヴの最後は、久しぶりのYURAサマによるロケットジャンプでお別れ。「輝ける未来に向かって、ロケットジャーンプ!」と、みんなで手をつないで一斉にジャンプすると、そうそう、Psycho le Cémuのライヴはこうだったと懐かしく思うとともに、自然と笑顔になってしまうのだった。
このライヴの大切なメッセージは、本編の最後を飾った「REMEMBRANCE」の歌詞の一節に込められているだろう。
「未来はもう始まる」
その言葉どおり、彼らは未来に向けて大きなスタートを切った。会場いっぱいのファンが、その輝かしい姿を目に焼き付けたはずだ。
会場には、彼らをずっと応援し続けてきたファンだけでなく、久しぶりにライヴに足を運んだ人や初めて彼らを観るという人まで、さまざまな人たちがいただろう。これまで彼らのライヴで目にしたことがないほど、男性の観客が多かったことからもそれは明らかだ。彼らはこれからも貪欲に、さまざまな人たちを巻き込んでいくに違いない。そしてその先には、輝かしい未来が待っている。まずは7月6日、新宿BLAZEから始まるツアー『METEOR MISSION』で、漆黒の隕石から地球を救うための五人の活躍を目撃しようではないか。