seek(Psycho le Cému / MIMIZUQ)、12/3(水)3rd Single「月と黒猫」デジタルリリース&9/14(日)渋谷CHELSEA HOTELライブレポート到着!

ライブレポート | 2025.12.08 18:10

seek FIRST ONEMAN LIVE「白日をたゆたう雨虎、水に溶ける数列」
2025年9月14日(日)渋谷CHESEA HOTEL

2025年9月14日に渋谷CHELSEA HOTELで開催されたseek FIRST ONEMAN LIVE「白日をたゆたう雨虎、水に溶ける数列」ライブレポート

9月14日はseekの誕生日当日でもあり、超満員の会場からは終始祝福のムードが充満した。
誕生日というものは、365回に渡って数えられる日々を一度リセットし、新たな門出、あるいはそのきっかけにする日。そうシンプルに考えれば、大そうな意義など求めることがそもそもナンセンスなのではないかとすら思わされるものだ。
人間は本質的に自分が生まれたときの景色を記憶していない。だからこそ、生まれた日自体に本来ならば思い入れを有することはないのだ。
だが、一方で年齢を重ねることで特別な日になることも事実だ。
物心がつき、祝いの日として過ごしてきた光景や情景が積み重なることで、その暦は単なる数字ではなくなる。

この日seekは御年46歳となった。
幾多のバンドを渡り歩き、エッセイストとしての側面も持ち合わせる多彩な男にとっても、一層特別な日だったことは間違いない。

タイトルに冠しているように、ソロとしてのワンマンは彼のキャリアにおいても初めての試みだったからだ。

Psycho le Cémuでの主催フェス開催にはじまり、MIMIZUQの周年ワンマン、machineのサポートと、とりわけ精力的だったseekの2025年のなかでも重要な1日の模様を振り返ってみよう。

先述したように、会場は超満員で後方まで多くのファンで埋め尽くされている。
この日にソロワンマンを開催することはちょうど1年前に発表されており、seekの活動における重要度があらかじめ伝わっていたことも大きいのだろう。
人によってまちまちではあるが、1年前から2025年9月14日の行先をこの会場に決めていたオーディエンスも少なくないはずだ。

1年かけてゆっくりと温められた空間に水音のようなSEが染み渡ると、この日のステージを支えるaie(deadman / kein)、晁直(lynch.)、西山小雨が登場。最後にスーツを纏ったこの日の主役が現れると歓声が起こった。その声がseekの掲げる右手に吸い込まれると、始まったのは「不透明人間」。

seekにとって初のソロ音源として今年の3月にリリースされたことも記憶に新しい1曲。“ラッタラリラリタラリラ”と繰り返されるサビが癖になるナンバーだが、音源以上の湿度をもって届けられる。アップライトベースを携えたseekの醸し出すムードは妖艶で、まさに大人のロックの社交場といったところだ。

“来世はいらない ねぇ そうでしょ?”と問いかける詩世界が、渋く深い歌声と深く絡みついて、狂おしい情念めいたものを感じさせる。退廃的に声色を変えていくブレスも含めて、ひとつひとつのサウンドが情景に色を加えていく様は穏やかなサウンドと反比例するようにスリリングだ。

間髪おかず西山小雨のピアノが鳴り渡った「相食む」でもアダルティな音色が、ポエトリーリーディングのような歌唱を色づける。静と動を往来するヴォーカリゼイションは、それだけで聴きごたえのあるもので、seekがコロナ禍で弾き語りを始めたことに帰来する説得力を存分に感じさせた。
続いた「稀代の鼠」でフロアを小気味よく揺らすと”おい!渋谷―!ようこそ!今日はseek FIRST ONEMAN LIVE「白日をたゆたう雨虎、水に溶ける数列」本日は1日よろしく!!“と見慣れたいつものseekの口調でアツく謝辞を投げかける。
彼のイメージカラーである緑のライトが続々とフロアで点灯し始めると、メンバー紹介を経て、“ここで本日のスペシャルゲストを紹介します!”と呼びこまれたのはMIMIZUQの森 翼。

“音楽が好きな人―!ライヴハウスが好きな人―!seekが好きな人―!”と場を温めると、盟友の登場にseekも顔をほころばせる。

ここでは森 翼の「アンフェア」とMIMIZUQの「Piggyback」がプレイされた。
「アンフェア」の途中、森の合図で各楽器とオーディエンスのクラップの音量を可能な限りミニマムに絞る場面があったりと、まさに音で遊ぶ大人な空間演出も見事だ。
優しいメロディが染み入る「Piggyback」ではお馴染みのエレキベースに持ち替え、聴覚的にも視覚的にも楽しませてくれる。

“うちの相食む坊やが…”に対して“誰が坊ややねん!”と漫才のような軽妙な掛け合いも微笑ましい。

熱量高いステージから一転して、中盤はノスタルジックな空気が会場を包んだ。西山のアコーディオンをフィーチャーしたわらべ歌のような「夜掴奇譚」、残響まで味わい深い晁直のドラムが冴えわたった「夢みる心臓」と、暗がりのなかでしゃがれ掠れながら音に溶けるような歌唱は艶やかに昇華される。

aieのアッパーなカッティングとseekの“聴かせてくれよ渋谷!”の咆哮に導かれるように、オーディエンスからOi!Oi!と声が上がると、今宵2人目のスペシャルゲストの登場だ。

“この人がいたから…この人がいたから今日俺はここのステージに立ってるぜ!!”と紹介されるとハットにTシャツといった、バンドでは見れない軽装のDAISHIが現れる。

seekのつま弾くベースのイントロに歓声が上がったのは、自身が作曲している「Paranoia Flyng Fish」。この曲のコール&レスポンスで盛り上げると、続いたのは「シラサギ」。
seekソロ曲制作のきっかけになったキーマンでもある西山小雨が、レコーディングでもピアノを弾いている1曲だ。この日は印象的なピアノ部分も生演奏で聴ける機会となった。
こと、seekにおいては彼が所属するPsycho le CémuとMIMIZUQの音楽を体現するうえで、シーケンスは欠かせない要素である。だが、今回のソロワンマンはシーケンスレスで構成されていて、グルーヴはステージ上の演者とオーディエンスの呼吸でのみ成り立つ。この緊張感と自由度はseekソロ編成の醍醐味である。

これは森 翼にも言えることだが、信頼するボーカリストをステージに招きいれた際のseekはとにかく嬉しそうで、まさに少年のように破顔一笑といったところだ。
いくつになっても祝いの日は良いものである。DAISHIの耳を惹きつける伸びやかな歌唱を聴きながらそんな気持ちになった。

DAISHIとseekのやり取りがお馴染みの珍妙さもあり、笑いのなかに大きな信頼を感じさせるものだったことはもはや説明するまでもない。

seek自身もサイコのファンに森 翼を、MIMIZUQのファンにDAISHIを見せられたことが何より嬉しかったのではないだろうか。

ボーカリスト論的なことで言えば、絶対的な2人とはキャリアも何もかもが異なる前提ではあるが、seekの歌は目を見張るものがある。

その奇抜なヴィジュアルからも、ど派手なベーシストの第一人者的なイメージの強いseekだが、その天賦の声質がなす芳醇な歌声は実に絶品だ。ボーカリストとしての今後の展望も気になると同時に、その歌声を抽出するオリジナル楽曲の存在はやはり大きい。

そういった意味では、Psycho le Cému曲を歌い上げたDAISHIを送り出してから披露された「白濁に酩酊、泥濘の睡蓮」以降の終盤ブロックは、この日のハイライトと言えるだろう。
今年7月にリリースされた「白濁に酩酊、泥濘の睡蓮」は序盤よりもしゃがれた声が最高に味わい深く、心地よく体内に侵食していくような錯覚に陥る。

“手拍子ちょうだい!”と煽った昭和歌謡チックな「月と黒猫」を終えると、seekがバンド生活26年を振り返るように思い出を語った。
今のスタイルに至った理由、出会った人々への感謝のなかには“気がつけばどんどん同世代のバンドマンがいなくなった”と、寂しさも感じさせる。

そして、自身のこれまでの活動で時に約束を果たせなかったことにも触れたうえで、“自分のなかに流れる血で、今もバンドマンとしてやれてるんじゃないかなと思って作った曲があるんで、その曲を今日みなさんにお届けしてこのステージを降りたいと思います。今日はどうもありがとうございました!”と改めて感謝を述べた最後は、再びエレキベースに持ち替えて「not a spell」を披露。

これまでの人生と生き様に向き合いながら、自身を鼓舞するように滾る楽曲は、その煌びやかなメロディと相まって言葉にならない感動を紡いだ。
人に歴史あり。その生き様を曝け出すからこそ、愛される。破天荒なだけがロックではない。呼ぶ声と万感の喝采が会場を包み込んで本編終了となった。

アンコールでは全4曲をプレイ。
スペシャルゲストが揃い踏みして、ツインボーカルでサイコの楽曲とMIMIZUQの楽曲を披露する一幕も。
それぞれの声質の相性はもちろんこと、DAISHIと森 翼はキャラクターのマッチングも言うことなしで、至福の時間となった。

4人編成に戻ったラストは「行雲流水」。
そのタイトル通り、流れるままに身を委ねるように生きていく道のりを歌ったこのナンバー以上に、この夜のクロージングとして相応しい曲はなかっただろう。
シーケンスレスの編成だからこそ、それぞれのサウンドから受けたインスパイアが織りなすアンサンブルが終始心地よく、seekの描く世界の没入感は相当なものだった。
ディープな音楽だからといって決してニッチではなく、深呼吸したあとのような爽快感も残すのは熟練の技だ。

いかにseekが愛されているかが全局面から伝わり心温まる、素晴らしい会心のアクトだった。
余談だが、この日纏っていたVivienne Westwoodのスーツは、長年お世話になった恩師であるSWEET HEART坂上社長から譲り受けたもので、初ワンマンの際に着ようと心に決めていたそうだ。彼の実直な人柄を表すエピソードだが、こういったところも長く愛され続ける理由なのだろう。

しかし、これだけ澄みきった想いを浴びてしまうと、どうしても気になるのは次の展開だ。だが、現状のところ発表されている予定はない。

それでも、幕を下ろす前にすでにいくつもの楽曲がレコーディング済みであることに加え、次は“旅”で会いたいとの想いを明かしてくれた。

そして、音楽とは生き様であることを体現したからこそ、Psycho le CémuとMIMIZUQの活動にもフォーカスしたくなる。

酔いしれる音楽と場所はいくつあってもいいのだから。

SET LIST

1.不透明人間
2.相食む
3.稀代の鼠
4.アンフェア with 森 翼
5.Piggyback with 森 翼
6.夜掴奇譚
7.夢見る心臓
8.Paranoia Flying Fish with DAISHI
9.シラサギ with DAISHI
10.白濁に酩酊、泥濘の睡蓮
11.月と黒猫
12.not a spell

ENCORE
EN1.永遠の微熱
EN2.鎮む森に降る慈しみの雨 with DAISHI&森 翼
EN3.もう一度、くちづけを with DAISHI&森 翼
EN4.行雲流水

公演情報

DISK GARAGE公演

seek ライブ情報

■凡思社企画「水槽のたゆたう」
2025年12月27日(土)下北沢演家
2026年2月15日(日)下北沢DY CUBE

■凡思社企画「ぽろろん猫とふらふらの死神とたゆたう魚」
弾き語り三人旅
2026年4月4日(土)高崎花唄倶楽部
2026年4月5日(日)新潟6studio
2026年4月18日(土)下北沢演家
2026年4月19日(日)名古屋静かの海
チケット発売日:2026年1月18日(日)

出演:Közi、 aie、seek

■凡思社企画「ぶらりナゴム旅」
弾き語り三人旅
2026年5月16日(土)神戸CHICKEN SHACK
2026年5月17日(日)広島音楽喫茶ヲルガン座
2026年5月31日(日)板橋ファイト!
チケット発売日:2025年2月14日(土)

RELEASE

「月と黒猫」

seek 3rd Digital Single

「月と黒猫」

2025年12月3日(水)SALE

配信先はこちら
Music Video
  • 取材・文

    山内 秀一

  • 撮影

    インテツ

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