筋肉少女帯 “ツアー 『一瞬!』〜メジャーデビュー35周年記念”
2023年11月22日(水) Zepp DiverCity(TOKYO)
筋肉少女帯が全国4か所の「ツアー『一瞬!』 ~メジャーデビュー35周年記念」のファイナル公演を東京・Zepp DiverCity(TOKYO)で開催した。
この日演奏された楽曲はすべて、6月にリリースされたオールタイムベストアルバム『一瞬!』の収録曲。おなじみのサポートメンバー三柴理(Pf)、長谷川浩二(Dr)を迎えた4人(大槻ケンヂ/Vo、内田雄一郎/Ba、本城聡章/Gt、橘高文彦/Gt)は、現在の筋少の絶好調ぶりをダイレクトに見せつけた。
オープニングSE「ツアーファイナル」とともにメンバーが登場。客席を埋めた観客(全公演ソールドアウト!)はカラフルなペンライトを振りながら、大きな歓声を挙げる。大槻の衣装はもちろん、背中に“筋肉少女帯”と記された特攻服。1曲目の「サンフランシスコ」。華やかなヘビィネスをまとったバンドサウンドが鳴り響き、会場のテンションを一気に引き上げる。テクニカルにして豪快な橘高、本城のツインギター、重厚さを維持したまま疾走する内田、長谷川のリズム隊、楽曲に深みと彩りを与える三柴の鍵盤、そして、オーディエンスを煽りまくり、ハイトーンボイスを響かせる大槻。初っ端から見どころだらけのステージは、どこを見ていいかわからなくなるほど濃密だ。
「今夜はいい感じ、ありがとう!なじみの飲み屋に来たみたいで嬉しい!1時間、2時間、話を聞いて欲しい!でも大した話題は何にもない!ただ一つあるとすれば、それは何かと問うならば!(問うならば!)今夜はツアーファイナルですよ!」(大槻)という挨拶から、最初のMC。4か所すべてがソールドアウトになった、でも特にエピソードはないというか覚えてない、今夜のことだけ心に刻めばいい、このツアーは喋り過ぎてるから今日は曲中心でいく、でも、この年齢なるとステージでお客さんにワーッ!と言ってもらえるほどうれしいことはないんだよ!……というトークを約7分間続け、「混ぜるな危険」へ。言うまでもなく筋少の音楽性の軸にあるのは往年のハードロック、プログレなどで、独創的なメンバーのプレイが重なり合うことで唯一無二としか言いようがないバンドサウンドが出現するわけだが、この曲にはその特徴がはっきりと表れている。ここだけの話、「混ぜるな危険」をライブで聴くたびに心のなかで「混ぜるな危険って、あなたたちのことですよ」と思ってしまう。
さらに「OKお台場、一緒に歌おう!」という大槻の言葉から「香菜、頭をよくしてあげよう」。〈極めろ!道 悟れよ!我〉の大合唱が生まれた「バトル野郎~100万人の兄貴~」では橘高が大量のピックを客席に投げ込み、ゴージャズなギターソロを披露。高度なテクニックに裏打ちされた演奏とエンタメ性に溢れたステージング、やはり楽しすぎる。
2度目のMCで大槻は“某カフェに行って……”というトークを繰り広げたのだが、「ライブレポートには書かないでね。そのうちコラムで書くから」と釘を刺されたので(笑)、割愛。「筋少はメジャーデビュー35周年を迎えましたが、俺たちはまだベイビーなのよ!」と「踊る赤ちゃん人間」(緻密なアレンジと爆発的なダイナミズムのバランスが最高)を放ち、ライブはさらにヒートアップ。トーキングブルース風のボーカルによって高円寺の若き二人の物語を描いた歌詞が広がった「高円寺心中」、そして、鋭利なギターリフと〈無意識 電波 メッセージ 脳Wi-Fi〉というコーラスが炸裂するハードロック・ナンバー「ディオネア・フューチャー」で最初のクライマックスを演出し、メンバーはいったんバックステージへ。
数分のインターバルを挟み、後半はメンバー紹介から。
本城→ツアー初日・川崎公演のステージで大槻と衝突しそうになるも、寸前でかわす。「来年、還暦なんだけど、自分の足すげえ!って思った(笑)。俺まだまだイケんじゃん」と笑顔。
内田→大槻に「『レコード・コレクターズ』の企画“この曲のベースを聴け!”に『釈迦』が入っていた」と言われ、「ちゃんと弾かなきゃな。あの曲、子供のときに作ったじゃない?だから無理なことをずっとやらなきゃいけない。鍛えられるよ」とコメント。(さらに大槻は「正直、セトリは“ここはきつい”“ここはラクなところ”とか考えて作ってるよ。……レポに書かれたくないね」と発言)
橘高→「自称24歳なのに、デビューして35周年なんだよね」という大槻のツッコミに対し、「昨日、デビューして39年目を迎えました。39年のうち35年が筋少。これからもギタリストとして精進して、キャリアを伸ばしていきます。筋肉少女帯のギタリストとして精一杯がんばっていきますので、これからもよろしくお願いします」という言葉に対し、観客は拍手喝采。
さらに“喫茶店で出会った芸能人”トークの後は、アコースティック風のコーナーへ。メンバー全員に“セリフ”がある演劇的な佇まいの「ドンマイ酒場」、愛や優しさを理解できず、生きづらさだけを共有する恋人たちを描いた「サイコキラーズ・ラブ」、大槻もギターを弾き、サイケデリックな音像を生み出した「航海の日」。筋少のディープで摩訶不思議な音楽世界にどっぷりと浸り、ここからライブは一気にクライマックスへと突入。
「あいつがやってきたぜ!それは誰かと問うならば!(問うならば!)その名はイワン!」という言葉に導かれたのは「イワンのばか」。速弾きのギターフレーズと高速のビート、“OiOiOi!”というコールがぶつかり合い、観客は激しくペンライトを振りまくる。さらにラテン的エキゾチズムを感じさせる橘高のアコギから「再殺部隊」へ。猛烈なスピードで疾走するスラッシュメタル直系のサウンドと大槻の渾身のシャウトによって会場のテンションは最高潮だ。そして次なる曲は「50を過ぎたらバンドはアイドル」。昭和のアイドル歌謡を思い起こさせるサウンドとメロディに思わずホッコリしてしまう。「再殺部隊」との凄まじい落差もまた筋少だけの魅力だ。
「みなさんが振ってくださるウチワに書いてある字が読めないのが50代のバンドだね(笑)。今日はありがとうございました。来年も筋肉少女帯でお会いしましょう!」(大槻)というMCから本編ラスト「Guru 最終形」。憂いと解放感を併せ持った大スケールのバンドサウンドによって会場は豊かな感動で包まれたのだった。
アンコールで「エニグマ」「釈迦」と代表曲を続けざまに演奏。ライブ終了後もエンディングSE「楽しいことしかない」をかけながら、内田、本城、橘高が観客とコミュニケーションを取るなど、最後の最後まで大満足のステージが繰り広げられた。
12月23日(土)に恵比寿LIQUIDROOMで2023年最後のライブを開催する筋肉少女帯。メジャーデビュー35周年を経て、筋少はまだまだ先に進み続ける。そのことをはっきりと確信できた圧巻にして濃すぎるステージだったと思う。
SET LIST
01. サンフランシスコ
02. 混ぜるな危険
03. 香菜、頭を良くしてあげよう
04. バトル野郎~100万人の兄貴~
05. 踊る赤ちゃん人間
06. 高円寺心中
07. ディオネア・フューチャー
08. ドンマイ酒場
09. サイコキラーズ・ラブ
10. 航海の日
11. イワンのばか
12. 再殺部隊
13. 50を過ぎたらバンドはアイドル
14. Guru 最終形
ENCORE
01. エニグマ
02. 釈迦