有安杏果 弾き語りツアー "A Little Harmony Live"
2023年11月2日(木)神奈川・横浜ランドマークホール
有安杏果が全国12会場12公演をめぐる弾き語りツアー「A Little Harmony Live」の第2弾となる秋冬公演がスタートした。
「A Little Harmony Live」は、「みなさんの顔が良く見える距離でハーモニーを届けたい」という思いから企画されたツアー。初の弾き語りツアー「サクライブ 弾き語りツアー2021」やピアノとのデュオによる「サクライブ Acoustic Tour 2022」を継承した新たなライブシリーズとなっており、11月2日(木)に横浜ランドマークホールで行われた神奈川公演では、アコースティックギターとピアノによる弾き語りスタイルで新曲「靴ひも」を含む全18曲を届けた。
開演前の最後のBGMから場内では手拍子が鳴り響き始め、有安がステージに現れると、観客は歓声をあげ、早くも総立ちとなった。アコースティックの弾き語りライブとは思えないほどの熱気に迎えられた有安は、深くお辞儀をした後、笑顔でアコギを爪弾き始め、昨年春の「サクライブ Acoustic Tour 2022」で初披露した「夢の途中」からライブをスタートさせた。もともとはピアノで作った楽曲で、歌詞には夢に向かって歩み続ける苦悩と覚悟が込められている。今から約7年前、2016年の夏に彼女が「夢の実現」をテーマにした初のソロコンサート「ココロノセンリツ 〜feel a heartbeat〜 Vol.0」を行ったのが、同じ横浜にある横浜アリーナだったこともあり、この日は“夢”というフレーズが、新旧織り交ぜたセットリストを繋ぐ通奏低音のように流れていた。
アコギのボディを叩いてカウントを刻んだ「Do you know」では歌とギターでダイナミックにスケールを拡大していきながらも観客一人一人としっかりと目を合わせる余裕も感じられ、「横浜、ただいま!」と声をあげた「Drive Drive」では観客はタオルを回して盛り上がり、序盤から一体感のある空間を作り上げていた。最初のMCで「始まる前から元気いっぱいなのが伝わってきて嬉しかったです」と感謝の気持ちを伝えた有安は、真正面を向いてピアノに座り、Official髭男dismの藤原聡提供の「TRAVEL FANTASISTA」でスピード感を上げると、風味堂の渡和久による「遠吠え」では一転してダークでシリアスなムードに変え、ジャジーなタッチのピアノソロも披露。会場ごとの日替わり曲となっているカバーコーナーでは、「高校生の時にライブに行ってた好きなアーティストで、ギターが弾けるようになったらいつか弾き語りで歌いたいと思っていた」というスキマスイッチ「藍」をアコギの弾き語りで、まさに語るように歌い、superfly「愛をこめて花束を」では伸びやかで温かみのあるハイトーンで会場をハッピーなムードで包み込んだ。
さらに、「有安杏果 サクライブ Acoustic Tour 2022」で初披露し、まだ音源化されていない「オレンジ」で観客の心を優しく温めると、「心の旋律」は胸に手を当て、なんとフルコーラスでアカペラで歌唱。<あの夢は叶わない>とため息混じりの声で葛藤を吐露しながらも、<自分を未来は変えられる>と顔を上げ、<歌いたい、歌いたい/握ったマイクはもう離さない>と決意する。楽器はないが、声だけではなく、表情や手など、身体全体を使った情感のこもった表現を見せると、歌い終えた後の有安の目からは不意に涙が流れた。涙を拭きながら、「初めて歌ったのが横浜で、私の歌への思いがいっぱい詰まってる曲です。初めて歌った時はバンドで、レコーディングはたくさんのストリングスさんが入ってくれてたり、その後のツアーではピアノ一本でやったりとか、いろんな形でみんなに届けてきたんですけど、やっぱり私は歌が好きだし、今日は、歌手として、みんなに歌だけで届けたいと思ってやってみました」と語ると、観客からはこの日、一番と言っていいほどの大きく長い拍手が湧き上がった。
そして、「みんながライブで楽しんでくれるのを思い浮かべながら作った新しい曲をやりたいと思います!」と笑顔で飛び跳ねながら、新曲「靴ひも」の披露を報告。「すごいカロリー高い曲だけど、みんな大丈夫?」と呼びかけ、「まさか弾き語りでやるとは……と思うくらいアップテンポで元気いっぱいの曲で、みんなの夢とかお仕事とか恋愛とか色々な事が、うまく結ばれますようにという願いを込めて書いた曲です」と解説。アグレッシヴな力強さに溢れた楽曲では盛大なクラップと共に拳が上がるなかで、「ヒカリの声」「feel a heartbeat」など、ファンとの絆や思いを結ぶアップテンポのナンバーをシームレスで続けて場内の熱量を引き上げると、最後はコロナ禍に行った初めての弾き語りツアー『サクライブ 弾き語りツアー2021』に向けて作った「指先の夢」では、力強く切実なボーカルとギターを響かせて “明日の僕”と“君”を結び、<将来の夢/今度会ったら聴いて欲しいな>とそっと語りかけてステージを後にした。
アンコールでは「愛されたくて」でジャズピアノをウォーキングベースを交えて演奏しながらスキャットも繰り出し、「ハムスター」は、観客に「ピアノでやる? ギターでやる?」 というアンケートを取り、この日はギターでの演奏に決定。そして、「いろんな人にもっともっと音楽を届けていきたいなって思ってます。今日、みんなのパワーがすごくて、これからも頑張ろうと思いました。次にみんなと会える時までに、少しでも成長してみんなと会いたいです」と語り、2016年11月に行われた2度目のソロコンサート「ココロノセンリツ 〜feel a heartbeat〜 Vol.0.5」で初披露した「小さな勇気」をマイクやアンプ、スピーカーを通さずに、アンプラグドのギターの弾き語りで演奏。「みんな、それぞれ、毎日いろんなことがあって。楽しい日もあれば、しんどいこととか、悲しいこととか、壁にぶつかることもあると思う。地震や災害とか、病と闘ってる人もいるかもしれない。いろんな人たちが少しでも勇気を持って、前に一歩踏み出せたらいいなっていう思いを込めて書いた曲です。一人一人に届きますように」と呼びかけた彼女の生の歌声に、少しずつ観客の歌も重なり、自然と大合唱となり、会場全体に笑顔が広がる中で、ツアー4本目を終えた。
ツアーはこの後、京都、北海道、愛知、静岡、東京公演と続く。現時点ではライブでしか聴けない楽曲が「指先の夢」「オレンジ」に続き、新曲「靴ひも」が加わった。また、この日は、“私の夢”から“みんなの夢”へと広がっていく道のりが描かれていたが、アンコールの1曲目だった「ハムスター」で幕を開けた公演や、いきなりタオル回し曲「Drive Drive」でスタートした公演もあった。この後、どんなセットリストが組まれるのか。あの曲はどの楽器で歌うのか。ギター、ピアノ、アカペラ、アンプラグド……。一人でステージに立つからこその自由を存分に味わえる「A Little Harmony Live」の今後の展開にも期待している。
SET LIST
01.夢の途中
02.Do you know
03.Drive Drive
04.TRAVEL FANTASISTA
05.遠吠え
06.藍(スキマスイッチ カバー)
07.愛をこめて花束を(Superfly カバー)
08.オレンジ
09.LAST SCENE
10.心の旋律
11.靴ひも
12.ヒカリの声
13.feel a heartbeat
14.Another story
15.指先の夢
ENCORE
01.愛されたくて
02.ハムスター
03.小さな勇気