初日の終演後にはもうすでに雨が上がっており、2日目は文句なしの気持ちいい秋晴れといった空模様でオープン。ゲート付近の正面広場に飾られた、聖地・グリーンドームを離れている間の「山人音楽祭」を守ってくれていた緑色のダルマ、そして新たな出発を象徴する白色のダルマも、心なしか嬉しそうな表情に見える。
開幕宣言は2日目もNAIKA MCが担当。「始まったら終わる一方、この日本で今いちばん楽しい瞬間はここで間違いないっしょ!」と軽快なラップで客席を温め、赤城ステージの1番手へとバトンを繋ぐ。
Creepy Nuts
そんな先輩ラッパーのNAIKA MCに感謝を伝えるシーンもあったCreepy Nutsは、「おはよう『山人』、朝にぴったりのナンバー持ってきたぜ!」とR-指定が切り出した「よふかしのうた」、活動初期からのライブ鉄板曲「合法的トビ方ノススメ」、オーディエンスのタオル回しを大発生させた「堕天」などで、赤城ステージをこれでもかとガンガンに揺らす。
気の利いたしゃべりをテンポよく届けながら韻も鮮やかにラップするR-指定、巧みな指さばきでキレのあるスクラッチやカラフルなビートを繰り出すDJ 松永。この2人はやっぱりペースを掴むのがすこぶる早く、切り込み隊長に指名されることが多いのも改めて納得。
高速BPMのトラックに高難度のヤバいラップを掛け合わせた新曲「ビリケン」も果敢に披露され、グリーンドーム内は午前中にして大盛り上がり。「1発目でこの一体感、この返してくれる波動……半端ないです。今年の『山人』は例年よりも(お客さん)全員が(出演アーティスト)全員を好きになって帰れるフェスなんじゃないかと確信しております。このあとの昼と夜、どうなっていくねん! 俺らマジのびしろしかないな!!」というR-指定の言葉から始まった「のびしろ」では、喜びに満ちあふれたシンガロングを何度も起こし、Creepy Nutsは2日目のトップバッターを見事に務めてみせた。
竹原ピストル
リハの時点からビートたけし「浅草キッド」や泉谷しげる「春夏秋冬」をカバーしたりと、赤城ステージを早くも沸かせていた竹原ピストル。自ら退路を断つような、土手っ腹にドスンと響く魂の歌は、大舞台でもまったく揺るぎない。たったひとりのアコギ(+ブルースハープ)弾き語りながら、抜群の存在感で聴かせていく。
その覚悟を決めた歌いっぷりが会場の空気を引き締めた代表曲「オールドルーキー」、なんとも渋く染みてお酒が飲みたくなる「マスター、ポーグスかけてくれ」、母親が病にかかってしまった際に祈りを込めて歌詞を書いたという「Amazing Grace」などを経て、「よー、そこの若いの」「みんな~、やってるか!」では、オーディエンスも賑々しいハンドクラップで大いに熱唱。
「フェスでお客さんが歌ってくれたの今日が初めてだったんで、めちゃくちゃ嬉しいです! 中には、こうやって(照れくさそうに両手でハートマークを作る仕草をしてみせる)聴いてくださってる方なんかもいてね」と竹原は笑顔を見せ、「明日からも精進して、もう一度『山人音楽祭』に出させていただけたら(ステージのテーブル上に置かれていた)このダルマに目を入れますんで。そのときはまた遊びに来てください!」と再会を誓っていた。
NUBO
午後イチの榛名ステージに活き活きと登場したのは、G-FREAK FACTORYのレーベルメイトでもあるNUBO。「いっしょに遊ぼうぜ!」と呼びかけるtommy(Vo)、「ぶっ飛べ!」とジャンプを誘う一成(Vo)、ロックやラテンやファンクやパンクなどさまざまなジャンルを吸収した熱くグルーヴィなバンドサウンドの上で、このツインボーカルが痛快に交わり、あっという間に南国みたいな解放感を作り出してみせる。
「『山人音楽祭』は2回目(2018年以来の出演)ですが、前回との変更点はあなたたちのヤジがめちゃくちゃ多いってこと(笑)。いやー、最高です! あとはライブハウス・FLEEZが群馬県内に帰ってきてくれれば、大好きなバンドがまた揃います。その可能性を俺らでもっと確実なものにしたい」と語るtommy。
そして苦しかったコロナ禍でのライブにおいては、オーディエンスの手拍子にとても救われたと伝え、「ここにいる全員の手を借りたい」と、今年作った新曲「クラウド」へ。榛名ステージが心温まるハンドクラップにすっぽりと包まれ、「Circle」では文字通りフロアと同規模のありえないくらい巨大なサークルが場内に爆誕。みんなが笑顔で肩を組み、スキップを踏み、シンガロングで盛り上がるという景色が、本当にピースフルすぎて思わず涙腺が緩んでしまう。
HEY-SMITH
赤城ステージに戻ると、激流が迫り来るような狂乱のライブをHEY-SMITHが繰り広げていた。「おもいっきり歌ってくれるかい?」と猪狩秀平(Gt&Vo)が前置きした「California」で、オーディエンスはよりいっそうヒートアップ。「Fellowship Anthem」では、裏打ちのギターと重心の低いビートがノリノリで響き、こうなるともうスカダンせずにはいられない。
「またこのステージに立てて、本当に幸せを噛み締めております」と話し、昨年の『HAZIKETEMAZARE FESTIVAL』でG-FREAK FACTORYのパフォーマンスにものすごく刺激を受けたという猪狩は、「だから俺は今日、人生懸けてヤバいライブをしに来ました!」と意気込む。フェスを主催する猛者同士のバチバチな高め合いが随所で楽しめるのも、「山人音楽祭」の醍醐味のひとつと言えよう。
興奮冷めやらぬ様子の猪狩だけじゃなく、YUJI(Ba/Vo)がメインボーカルを執る曲も次々に解き放ち、11月にリリース予定のニューアルバム『Rest In Punk』からのいちばん踊れるインストゥルメンタル曲だという「Into The Soul」もフルスロットルで披露。ホーンアンサンブルも映える最強のメロディックスカパンクが歓喜のファンファーレとして轟く、手に汗握る圧倒的な熱演となった。
10-FEET
ヘイスミに続いては、「京都大作戦」を主催する10-FEETが赤城ステージへ。「よっしゃ、ついてこいよ! 絶対に置いていくからな!!」というTAKUMA(Vo/Gt)の宣言どおり、オレンジの照明とともに届けたいきなりの「back to the sunset」で泣かせにくるなど、3人はこちらの感情が追いつかないほどに眩しい、閃光のようなミクスチャーロックを連発。オーディエンスも大喜びで必死に食らいつく。
「G-FREAK FACTORYのメンバーは、どんなことがあっても友達でいてくれそう。うまく言えへんねんけど、たとえ炎上とかして世界中から“死ね”みたいに責められる状況になったとしても、“調子どうよ?”って話しかけてくるやろな」と、TAKUMAはジーフリとの関係性を明かす。
そんな流れからジーフリのボーカルである茂木洋晃がステージに現れ、マブダチ同士で歌った「アンテナラスト」は感涙もの。「その向こうへ」「RIVER」といったライブアンセムでボルテージをさらに上げ、映画『THE FIRST SLAM DUNK』エンディング主題歌の「第ゼロ感」は、バスケ男子W杯で日本代表がパリ五輪出場権を獲得したときのように、このグリーンドームでも割れんばかりの大大大合唱に! 持ち時間あと1分で、爆速の「CHERRY BLOSSOM」を1番だけブッ込むフットワークの軽さもよかった。