ヤバイTシャツ屋さん
突破力を誇るヤバイTシャツ屋さんは、持ち前のユーモラスな音楽性を存分に発揮し、赤城ステージのオーディエンスをクレイジーに圧倒。“無線LAN 有線LANよりばり便利”というシンガロングで奇妙な一体感を生み出した「無線LANばり便利」、“収入ゼロで困窮で 笑えん 金がない”とヤケクソ気味に歌ってのける「NO MONEY DANCE」など、遊び心と中毒性のあるサウンドに乗せたシュールでコミカルな歌が、傍若無人に強烈な輝きを放つ。
「みんなで“G-FREAK FACTORYジャンプ”をしたいので、手で山(の形)を作ってもらっていいですか? で、“G”って言いながら立ち上がってほしいんです!」としばたありぼぼ(Ba/Vo)が唐突に提案し、4階スタンド席の最後列から1階アリーナの最前列までウェーブを起こすという突然のチャレンジも、なんと一発勝負で見事に大成功。
ヤバT流のサマーチューン「ちらばれ!サマーピーポー」、魅力があふれてこぼれるキュートな「かわE」、直感重視で結婚に向かって突っ走る「ハッピーウェディング前ソング」と、型破りで超絶キャッチーなナンバーを畳みかけた3人。こやまたくや(Gt/Vo)も「あー、やっとここに戻ってこられた! 嬉しいーーー!!」と叫び、4年ぶりとなった「山人音楽祭」の出演を大いに喜んでいた。
NakamuraEmi
椎名林檎「罪と罰」、SUPER BEAVER「27」、ハナレグミ「家族の風景」、EGO-WRAPPIN'「くちばしにチェリー」、小沢健二 featuring スチャダラパー「今夜はブギー・バック」などのサビをファンキーに歌い繋ぐ豪華カバーメドレーで、サウンドチェックから夕刻の榛名ステージをアゲていたNakamuraEmiは、カワムラヒロシ(Gt)と熊井吾郎(MPC)とのトリオ編成でライブ。「Rebirth」では、彼女がフルートを吹く場面も。
「大人になったって泣きたい夜はあるよね」と呼びかけて披露した「雨のように泣いてやれ」をはじめ、誤魔化すことなく自分と向き合った、歌詞のとおり茨の道を行く歌は、いつ聴いても抜群に凛々しい。一筋縄ではいかない人生の難しさをオーディエンスもよく知っているからこそ、強く生きようとする彼女の楽曲にどこまでも惹かれるのだと思う。
「最高じゃないかー! みなさん音楽ラバーなのがめっちゃ伝わってきます」と笑顔を見せ、コロナ禍で開催断念となった2020年の「山人音楽祭」時に続き、今回も声をかけてくれたG-FREAK FACTORYへの感謝を述べるNakamuraEmi。7月にリリースした新曲「究極の休日」、気持ちがグッと奮い立つ「YAMABIKO」もパワフルかつソウルフルに届け、愛にあふれたフロアとの距離をどんどん縮めていった。
SUPER BEAVER
17時からの赤城ステージには、SUPER BEAVERが登場。“もはや終わればと思った 挫折もあったな”と歌う「27」、“いつだって今日が人生のピーク 超えていけ”と歌う「ひたむき」……生きている実感を噛み締めるような楽曲は、聖地・グリーンドームに戻ってくるまでが決して容易い道のりではなかった「山人音楽祭」の歩みを想像させたりもする。
「山人音楽祭」初出演となるビーバー。以前から声をかけてもらっていたのにタイミングが合わなかったこと、G-FREAK FACTORYをツアーに誘ってもコロナで中止になってしまったことを明かしつつ、「他のフェスと比べて先輩が多いのが気持ちいいですね。俺たちは19年目の新人としてこの場所に立たせてもらってます!」と、渋谷龍太(Vo)は嬉しそうに話す。
「めちゃくちゃバカなこと聞きますけど、音楽は好きですか?」という問いかけからありったけの愛でグリーンドームを包み込む「アイラヴユー」へ繋げたり、スタンド席のオーディエンスにまで歌がちゃんと届いているのかを何度もコミュニケーションを取って確かめ合ったりと、ここ何年かで数々の晴れ舞台を経験し、現場至上主義で磨いてきた彼らのライブパフォーマンスは、泥臭いカッコよさがあって本当に力強い。映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』主題歌の「グラデーション」「儚くない」も壮大なスケールで鳴らしてくれた。
BRAHMAN
主役のG-FREAK FACTORYが登場する直前の赤城ステージを、一段と最高の空気にバシッと整えてみせたBRAHMAN。1曲目「THE ONLY WAY」の途中、TOSHI-LOW(Vo)が「『山人』、おかえり!」と伝え、そこからしばらくはノーガードの激しい打ち合いを思わせる展開へ。
“呼んでもらった礼は全身全霊の演奏で返す”と言わんばかりに、豪快かつラウドな楽曲を強く、疾く、命を燃やすように、まるでワンマンのように、威風堂々と届けていく4人。「Slow Dance」「鼎の問」では、さまざまな困難を乗り越えて素晴らしい今があることを実感させ、怒涛の連打を経た、これまでのすべてを抱きしめる「今夜」が心に染み入る。「ANSWER FOR…」はジーフリの茂木と共に熱唱し、茂木は「1974年11月9日、B型として、ここ北関東に生まれた兄弟!」と、自分と同じ生年月日と血液型のTOSHI-LOWを称賛。
MCでは、野外でも観てみたいと「山人音楽祭」のさらなる進化を願ったTOSHI-LOW。「俺たちを繋ぐのは、仲間であり、出会いなんだって信じてる」と語り、OAUのMARTINもバイオリンで参加した、年齢や性別や国境を越えて集まれる歌「満月の夕」へ。“ヤサホーヤ”の声が鮮やかに舞い、両日を通して最もやさしい時間が流れたのだった。
G-FREAK FACTORY
赤城ステージで大トリを務めたG-FREAK FACTORYは、初日同様にジャムセッションから自分たちの世界観を醸成させ、茂木洋晃(Vo)の鬼気迫るボーカルをはじめ、彼を後押しする原田季征(Gt)、吉橋“yossy”伸之(Ba)、岩本“leo”怜王(Dr)による迫力満点のグルーヴが「Unscramble」で過熱。さらに、イントロで三味線の音色が響き、“赤城”“榛名”の山も曲中に出てくる、強烈な群馬讃歌「REAL SIGN」へ。フリーキーたちも拳を高らかに掲げて応える。
「ライブハウス・グリーンドームへようこそ!」という茂木の叫びに続いて歌われた「らしくあれと」は、“そこに愛さえあれば 大丈夫さ”のメッセージが、これからどんなことが起こったとしても絶対に乗り越えられると思わせてくれる、人生のお守りみたいな曲だ。
「4年ぶりにグリーンドームに帰ってこられて、2日間のとても大げさな祭り、楽しんでくれたかな? みんな本当にありがとう! 昨日“群馬のヤツどれくらいいる?”って手上げてもらったら、7~8割ほどいましたね。とんでもない奇跡というか、事件だと思いました。BRAHMANのTOSHI-LOWが“野外でやったらどうだ?”と話してましたが、それもいいな。こんな景色を見せてもらっちゃったらね。野外は雨の心配もあるけどさ。俺たちとlocofrankはいつも雨バンドって言われてるんだけども、今日みたいに晴れたときのこともしゃべってください(笑)」
2日間をそんなふうに振り返るも、「このフェスが来年もある保証はないです。もしかしたら、新しい戦争や疫病に支配されるかもしれない。メンバーの誰かが倒れてライブができる状況じゃないかもしれない。だから、俺は奇跡だと言ってんだ!」と訴える茂木。次は照明でよりステージが真っ赤に染まる中、「RED EYE BLUES」でリアルを突きつけた。
盛大なシンガロングが巻き起こった「Too oLD To KNoW」からは一転、光が降り注ぐような温かいムードとなり、クライマックスの「ダディ・ダーリン」では、OAUのMARTIN(Vn)とKAKUEI(Perc)に加え、TOSHI-LOW、10-FEETのTAKUMAもステージに駆けつけ、平和は自分たちの手で作るんだと明示。
「群馬の若くてカッコいいバンド、ラッパー、芸人、スポーツ選手とようやく繋がれていて、また面白いことができそうです。これからも『山人音楽祭』をよろしくお願いします!」という茂木の未来へ向けた言葉とともに、本編ラストは灯を絶やさぬように「Fire」を披露。アンコールはHEY-SMITHよりイイカワケン(Tp)を迎え、出演アーティストたちも舞台上に集まり、“限りない故郷に愛を”と歌う「日はまだ高く」。夢みたいな最高のエンディングで大成功に終わった「山人音楽祭 2023」、ぜひ2024年も開催してもらえたら嬉しい。