Galileo Galilei、再始動!新体制での初ツアーファイナル「7年という時間が空きましたけど、みんなで一緒に歩いていけたら」

ライブレポート | 2023.07.07 21:00

Galileo Galilei "Bee and The Whales" Tour 2023
2023年6月24日(土) Zepp Haneda(TOKYO)

バンドというものは、動いていなかったとしても止まっていないのかもしれない。Galileo Galileiが新体制で始動してから初のツアー「Bee and The Whales Tour 2023」のファイナル、Zepp Haneda(TOKYO)公演を観ながら、そんなことをぼんやりと思った。

最新作『Bee and The Whales』は、尾崎雄貴(Vo/Gt)が描いてきた様々なモチーフを現在につなぎながら、Galileo Galileiが再び呼吸をし始めたことへの激しい喜びをサウンドに変換したフルアルバム。愛するものの象徴“Bee”、音楽への原動力の象徴"Whales"を冠した同タイトルは、活動休止前最後のフルアルバム『Sea and The Darkness』をなぞらえていることも想像できる。このツアーもその精神性を受け継いだものだ。だがアルバムが新曲尽くしだったこととは対照的に、ファイナルで披露された今年リリースの楽曲はアンコール含め21曲中6曲。つまり過去曲をふんだんに含んだセットリストである。過去の活動、7年弱という休止期間を現在につなげようとする4人の演奏と歌は、途轍もない生命力に溢れていた。

開演時間が近づくと、ステージ背景の左右に設置された正方形のスクリーンに海面が映し出される。少しずつBGMが小さくなると波の音が流れ、海沿いの家の窓を覗いているような心地になった。会場が暗転すると尾崎雄貴と尾崎和樹(Dr)が壇上に現れ、オーケストラの映像と壮大なSEに乗せて和樹がドラムを叩き、雄貴が指揮者のように岩井郁人(Gt)と岡崎真輝(Ba)、サポートメンバーの大久保淳也(Sax/Flute/Syn)(ex.森は生きている)を呼び込むと、徐々に全員で音を重ねて最新アルバム1曲目「ヘイヘイ」へとつなげる。背景中央にはもう1面スクリーンが浮かび上がり、映像と照明も5人が奏でる地に足がついたたくましいサウンドスケープを鮮やかに映し出した。

女性コーラスが加わりアルバム2曲目のポップナンバー「死んでくれ」を晴れやかに届けると、2012年にリリースした2ndフルアルバム『PORTAL』収録のインストナンバー「Swimming」へ。同アルバムはGalileo Galileiが活動拠点を東京から札幌に戻し、自分たちの音楽を追求するという強い意志を持って制作された作品だ。ここを機にGalileo Galileiの過去、休止中の数年間、現在の3つがさらに色濃く滲み出し、時間という概念をなくすように溶け合っていった。

ミニピアノのノスタルジックな音色とひずんだギターの音色の交錯がドリーミーな「リジー」、アコギコーラスのサポートメンバーを加え6人編成で披露された2016年リリースのベストアルバム収録曲「車輪の軸」、無重力感を帯びた音が内省的な歌詞を包み込む「くそったれども」、アンニュイかつシニカルに喪失感が響く「ウェンズデイ」など、どの楽曲も歌詞に描かれた世界や物語を瑞々しく音と歌で描いていく。空に広がる星のきらめき、頭に浮かぶ宇宙の風景、風の通り道や緑の香り、目に見えないものや触れることができないものまでもが感じられるその音に、身を任せるより他なかった。

歌詞に綴られた独白を力強く丁寧に届ける「僕から君へ」の後、雄貴は 「今回ツアーを回って、この日の光景を目の当たりにして、たぶん僕らはお客さんと会うために始動したんだろうなと思っています」と満員の観客へ感謝を告げる。オリジナルメンバーの和樹は「メンバーとお客さんの意気込みが高まってひとつとなって大きな爆発になる気がする」と観客からの熱い思いを受け取っていることを明かし、BBHFとwarbearのサポートを務め始動とともにGalileo Galileiに加入した岡崎はアルバムリリースと全国ツアーが7年ぶりであることに触れ、「こんなにたくさんの人がGalileo Galileiを待ってくれていたんだなと感じました。僕は初めましての気持ちもあり、これからもよろしくお願いしますという気持ちです」と頭を下げる。2009年から約3年間Galileo Galileiに参加し、以降は自身の音楽活動だけでなくBBHFやwarbearのサウンド面や映像面も支えるなど、今回の始動において雄貴がまず声を掛けた人物である岩井は「今が今まででいちばん最強のGalileo Galileiです。僕がバンドを脱退した後も、お互いいろいろありましたけど、またこうやってひとつになれて最強だなと思っています」と強いまなざしで語った。

雄貴が「僕らほんと小学生男子の気持ちでGalileo Galileiをやっているんです。うれしくて、喜びが溢れちゃってて、自分たちが止まらないなって空気があって。7年という時間が空きましたけど、これから楽しい日々が続くと思うので、みんなで一緒に歩いていけたらと思います」と朗らかに語ると、「ピーターへ愛を込めて」からさらに音の彩度と純度を上げていく。すると観客一人ひとりが彼らの作り出す世界の中へと潜っていくように、その場にいる人々のエネルギーがひとつになっていった。先のMCでメンバーが話していたとおり、このバンドの音楽は“ひとつになる”という形容が非常に腑に落ちる。それは全員が同じタイミングで声を出すといった一体感ではなく“伝搬”だ。雄貴の頭と心の中に存在する世界がメンバーの力によりGalileo Galileiの音楽へとかたちを変え、それを受け取った観客はその空間へと引き込まれる。手を取り合う、抱きしめ合うような感覚に近い。楽園というには生々しく、現実世界と言うにはあまりにも穢れのない淡雪のようなその世界は、自然の恵みに満ちた広大な大地を彷彿とさせた。

メンバー紹介を交えて伸びやかかつスケール大きく演奏した「あそぼ」やロマンチシズムに溢れた「燃える森と氷河」など無邪気さや清らかなムードで包み込むと、雄貴はこのツアー中に休止中の約7年間もGalileo Galileiの音楽が聴き手とともに時間を過ごしてきたことを実感した喜びや、音楽を通して人と接していきたいという思いを語る。さらに「聴いた人がめちゃくちゃぶっ飛ぶ、最強のアルバムを作るという夢があります。それを叶えたいと思っています」と続けると、フロアからは歓迎の拍手が巻き起こった。
「色彩」の後、本編ラストを締めくくったのは「Birthday」、「星を落とす」、「Sea and The Darkness II (Totally Black)」の3曲。活動終了前のライブのラストを飾ることが多かった曲たちだ。歴史が展開されていくこのラストは、名残惜しいと訴えているようであり、この先にもまだ物語が続いていることを提示するようでもある。その音の一粒一粒が、優しく勇敢に観客一人ひとりを包み込んでいた。

アンコールで「青い栞」と「夏空」の2曲を届けるものの観客の拍手は鳴りやまず、それに応えるかたちで再度メンバーが登場する。雄貴いわく、恐らくGalileo Galilei史上初のWアンコールだそうだ。雄貴は今後のGalileo Galileiへの意気込みを念押しするように語り、メンバーは始動後初の楽曲「4匹のくじら」を演奏。最後に雄貴がギターを掲げながら「これからもよろしく!」と呼び掛けると、会場からは柔らかく大きな拍手が湧いた。
今回のフルアルバムとツアーにより、活動終了前までの時間、休止中の7年間、始動してからの時間がひとつになったと言っても過言ではない。そしてアンコールでは今年11月に東札阪ツアー「"WINTER HARVEST" -冬の収穫祭-」の開催が発表された。彼らと彼らの音楽を愛する者たちと全国で丁寧に植えたこの種は、夏を越えて冬にどんな実や花をつけるのだろうか。走り出した4人は、この先どんな景色や心象を音楽にしていくのだろうか。Galileo Galileiの新しい旅がまたここから始まる。

SET LIST

01. ヘイヘイ
02. 死んでくれ
03. Swimming
04. リジー
05. 恋の寿命
06. 車輪の軸
07. くそったれども
08. ウェンズデイ
09. 僕から君へ
10. ピータ―へ愛を込めて
11. バナナフィッシュの浜辺と黒い虹
12. あそぼ
13. 燃える森と氷河
14. サークルゲーム
15. 色彩
16. Birthday
17. 星を落とす
18. Sea and The Darkness II (Totally Black)

ENCORE
01. 青い栞
02. 夏空

W-ENCORE
01. 4匹のくじら

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