SPYAIRが明るい未来を提示したホールツアー「BEST OF THE BEST」東京ガーデンシアター(有明)公演をレポート!

ライブレポート | 2021.12.27 20:30

SPYAIR RE:10th Anniversary HALL TOUR 2021 - BEST OF THE BEST -
2021年12月19日(日)東京ガーデンシアター(有明)

SPYAIRが9月23日、埼玉・羽生市産業文化ホールからスタートさせた全国ホールツアー<SPYAIR RE:10th Anniversary HALL TOUR 2021-BEST OF THE BEST-」>、そのファイナルを12月26日、彼らの地元である愛知・名古屋国際会議場センチュリーホール公演で迎えた。ここではそのツアーの中から、12月19日に東京・ガーデンシアターで開催した公演のレポートをお届けする。

コロナ禍により昨年中止となったバンド結成15周年、メジャーデビュー10周年にまつわるアニバーサリー企画を今年次々とリスタートさせてきたSPYAIR。ファンはご存知かと思うが、SPYAIRの1年の計は、彼らが毎年、富士急ハイランド・コニファーフォレスト(山梨)で開催している恒例の野外ワンマンライブ「JUST LIKE THIS 」にある。昨年は、感染拡大の影響を鑑みてやむなく開催を見送ったこの野外ライブを今年彼らは「JUST LIKE THIS 2021」と題して開催に踏み切った。「JUST LIKE THIS」といえば“雨”続きだった天気が、今回はなんと5年ぶりに快晴に恵まれた。さらに、この観客規模のライブを(同時生配信を含めた)有観客でできたこと。この日初披露した新曲「Born To Be Loud」に込めたこの先の新しい年のSPYAIRの指針となるメッセージを含め、今年の「JUST LIKE THIS」は、なにもかもが未来へ向かう起死回生の合図となっていた。その会場で終演後、ビジョンを通して発表されたのが今回の全国ホールツアーだった。

今回のツアータイトルは、8月にSPYAIRがリリースしたベストアルバム『BEST OF THE BEST』と繋がっている。なので、ライブは当然これまでのSPYAIRを築き上げてきた代表曲だらけ。つまり、どこをどう切ってもBEST OF SPYAIRという内容だった。全国各地のファンとヒット曲連発のライブでアニバーサリーを共有しあいながら、蓋を開けてみるとそれと同時にまだまだ声は出せない環境だけど諦めんな、いつか絶対一緒に歌おう、そのためにも前を向いて行こうという気持ちを誓い合う決起集会のようなツアーとなった。

IKE(Vo)

SEが流れ、カッコよく名前をコールするアナウンスに続いてKENTA(Dr)、MOMIKEN(Ba)、UZ(Gt)、最後にIKE(Vo)がゆっくりとオンステージ。真っ白で衣装を統一した白SPYAIR。おなじみのサポートメンバーのtasuku(Gt)とともに、ライブは「LIAR」で幕開け。KENTAのカウントを数える声が場内に響き、続く「現状ディストラクション」ではMOMIKEN、IKE、UZがお立ち台に揃って飛び乗り、KENTAがスティックを振ってクラップを求めると客席で一斉に手拍子が巻き起こる。サビの“真っ白なまま”というフレーズで、照明に照らされてステージが真っ白く発光するところはメンバーの衣装と合間って、めちゃくちゃカッコよかった。音を直にあびる、メンバーを生で見る以外に、こういう瞬間が味わえるのも生のライブの醍醐味。

「どうもSPYAIRです」と挨拶をし「いまは一緒に歌えません。でも、やれる限りのものを作るんで」と伝えたIKE。そのあと彼が「手を貸して下さい」といい放ったフレーズがハッとした。SPYAIRのライブといえば、オーディエンスの歌声もいわば演奏のひとつの要素。だけど、いまは歌えない。それでもいい、やれることで手を貸してくれという言葉が、オーディエンスを鼓舞する。

ライブでは飛び交うレーザーの演出がお決まりのダンスチューン「0 GAME」が始まると、IKEがいつものように「飛べー」と叫ぶ。声は出せなくてもジャンプで手は貸せる。それを証明するように、観客は客席が上下にバウンスするような激しいジャンプをくり返す。これで場内はどんどん熱量を増し、続いて、リズム隊が繰り出す心地いいグルーヴにUZのラップ、IKEの色っぽい歌声がのっかる「MIDNIGHT」で観客一人ひとりの体を揺らしていったあとは「一緒にライブをする“覚悟”ありますか?」とIKEが叫んで、投下したのは「イマジネーション」だった。ここからは歌えないお前たちはどう楽しんでこの先へといくんだ、というSPYAIRからの挑戦状。それに対して、声を届ける代わりにまずは両手を掲げ、その挑戦に答えていくオーディエンス。「轍~Wadachi~」では、“お前ら、声は出せなくても心で中で歌うのさぼるんじゃねえぞ”とでもいうようにIKEは「せぇの」と客席に向かっていつものように掛け声を入れ、オーディエンスの心の声を誘い出していく。

UZ(Gt)

UZがアルペジオを奏でると、場内の空気がいったん落ち着く。その流れから始まった「サクラミツツキ」がこの日は心にしみた。語り掛けるように丁寧にA,Bを歌唱するIKE、2番からKENTAのドラムがどんどんテンションをあげていき、UZがギターソロで鮮やかなクライマックスを作りながらも、それでもずっとせつなさが体の奥底に残っている感覚がこの日は際立って届いてきた。その感覚をキープしたまま、次のバラード「Be with」へとつなぐと、IKEのブルージーな成分をたっぷり含んだ声質、歌詞の心情を表現した歌いっぷりに思わず会場全体が息をのむ。

KENTA(Dr)

IKEがボーカリストとしての実力を大いに発揮したあとは、メンバー4人がフロントに集合してセットチェンジ。観客は席に座り、その様子を見守る。KENTAがカホーン、UZがアコギを構えて椅子に座って楽器をセットしている間、KENTAが今日のメンバー楽屋が2部屋に分かれていたことを話題にすると、IKEが「仲が悪かった頃の俺ら以来だね(笑)」といい放ち、これにはメンバーも大ウケ。アニバーサリーならではのエピソードトーク、こんなことがいまは笑い話にできるようになったことは、メンバー以上にファンも嬉しかったはず。そうして、曲はアコースティックセットで、名古屋の栄でストリートライブをやっていた頃の懐かしのナンバーから「To」。さらに続けて、バンドセットに再び戻って「昔から変わらないものってあるから、そいつを」とIKEがいい、インディーズ時代の「I’ll be there」を続けてプレゼント。この曲では観客が暴れられない分、フロント3人がお立ち台に飛び乗り、客席に背中を向けて華麗に大ジャンプを決めて床に着地してみせた。

MOMIKEN(Ba)

照明が暗くなり、KENTAの叩き出す豪快なビートにベースが加わり、場内にクラップが広がったところでステージが明るくなると、サングラスをかけたメンバーが視界を占拠。となったらもうあの曲、「JUST ONE LIFE」しかない。“こんな日々が続きゃ腐りたくもなる”、 “俺もおなじだぜ oh マイフレンド”と歌う歌詞が、これまでとは違う意味で胸に沁みる。エンディングでIKEはマイクを高らかに掲げたあと、不安を吹き飛ばすようにグロウルをイッパツ入れて、この曲を締めくくった。

「東京のみなさん、まだまだ遊んでくれますか?」とIKEが客席に呼びかけ、ライブはいよいよ後半戦へ。攻撃の口火を切ったのは「One Day」。ここまでやってこれたのは偶然じゃない、君がいたからというワードを確認しあうように、UZとMOMIKENが両サイドからドラム台を上っていって、KENTAと視線を交わす。その下でIKEが「やっちまおうぜ東京! おっどっれー」とリズミカルに叫んだあと「ROCKIN’ OUT」が場内に響き渡ると、MOMIKENが容赦ない音でスラップベースを弾き倒す。続く「RAGE OF DUST」ではレーザービームが激しく飛び交い、IKEのエモーショナルなスクリーモに楽器隊それぞれがパワフルな音を鳴らして食らいつき、ライブだからこそ見られるスリリングなバンドアサンブルで、エキサイティングな光景を作り出す。どんなに興奮しても、曲が終わってしまうと、場内はとたんに無音に包まれる現在のライブ。この状況が「最初は怖かったよ」と客席に向かって友達のように話しかけたIKEは、「いまはだいぶん慣れてきた。みんなの“楽しい”っていう気持ちがヒシヒシと伝わってくるからさ」といって、無音状態が来るたびにドキドキ緊張しているみんなの心を安心させた。そうして、大定番「サムライハート(Some Like It Hot!!)」へ。「声出せない代わりタオルを動かしてくれ。タオルがない人はエアタオルでお願い!」というIKEの煽りに応え、観客が一斉に頭上でタオルを振る姿は圧巻の一言。ここで一気に気分が盛り上がると、「JUST LIKE THIS」の野外ライブで何度も見てきた景色がよみがえる。

ラストの「Born To Be Loud」に入る前、楽器隊がセッションで奏でるファンキーな音をバックにIKEはこう語りかけた。「今回は一緒に歌えません。でも、諦めないことにしました。こんなんじゃ寂しいし。歌えるようになるまで俺らが歌うから、それまでライブに来てよ」。歓声をあげたりシンガロング、コール&レスポンスができないこの制限下、よくよく考えてみればバンドを始めたばかりのあの頃と同じじゃないかという抜群の説得力をもった最新曲を通して、いまこそピンチをチャンスに変えて、“行こう 未来へ”と諦めないで未来を目指すことを高らかに宣言して、彼らは本編をフィニッシュ。

手拍子のアンコールに応えて、再びステージに揃ったメンバーたち。「長くバンドを続けていこうとしてるんで、これからもよろしくお願いします」と伝えたIKEが、とうとうつぶやいた。「お前らと歌えるまで、俺ら死なねぇからな」。本音だった。いまライブをやるSPYAIRの思い、そのすべてを吐き出したような言葉に心が震えた。そこからSPYAIRシンガロングの最高峰「SINGING」への展開は泣きそうになった。あのMCのあとにファンの大合唱ありきで成り立つこの曲を外すことなく最後の最後にもってきて、観客のシンガロングが聞こえなくても、それでもIKEは歌を客席に預け、両手を大きく広げ、全身全霊でみんなの心の声を浴びていく。その姿はまるで「この先絶対にまた、この曲をみんなで歌おうな」といっているようだった。

こうして、SPYAIRの仕切り直しのアニバーサリーイヤーは、自分たちの歩んできた道のりを楽曲で再確認すると同時に、今この状況下を乗り越えて、絶対にまたみんなで一緒に歌おうと心を通わせ、誓い合ったところでライブは感動を引きずったまま終わりを告げた。

このツアー最終日には、2022年7月16日(土)、いつもの場所、富士急ハイランド・コニファーフォレストで「JUST LIKE THIS 2022」を開催することを発表した。来年のSPYAIRの活動も引き続き注目していて欲しい。

SET LIST

01. LIAR
02. 現状ディストラクション
03. 0 GAME
04. MIDNIGHT
05. イマジネーション
06. 轍~Wadachi~
07. サクラミツツキ
08. Be with
09. To
10. I’ll be there
11. JUST ONE LIFE
12. One Day
13. ROCKIN' OUT
14. RAGE OF DUST
15. サムライハート(Some Like It Hot!!)
16. Born To Be Loud

ENCORE
01. SINGING

公演情報

DISK GARAGE公演

JUST LIKE THIS 2022

2022年7月16日(土) 富士急ハイランド・コニファーフォレスト・山梨

チケット一般発売日:2022年5月28日(土)
詳細はJUST LIKE THIS 2022特設サイトへ!
https://www.spyair.net/justlikethis2022/

SPYAIR AIR-GATE LIVE 2022

2022年5月25日(水) Zepp Nagoya・愛知
2022年5月27日(金) Zepp Osaka Bayside・大阪
2022年6月3日(金) Zepp Haneda(TOKYO)・東京

≫ 詳細はこちら

RELEASE

『JUST LIKE THIS 2021』

完全生産限定Blu-ray&DVD

『JUST LIKE THIS 2021』

2022年3月9日(水)SALE

≫ 詳細はこちら
『BEST OF THE BEST』

BEST ALBUM

『BEST OF THE BEST』

2021年8月11日(水)SALE
※初回生産限定盤(2CD+DVD)、期間生産限定盤(3CD)、通常盤(2CD)の3TYPE。

※画像は通常盤


『BEST OF THE BEST CLIPS』

ベストMV集

『BEST OF THE BEST CLIPS』

2021年8月11日(水)SALE
※完全生産限定盤(DVD/Blu-ray)

※画像はDVD

≫ 詳細はこちら
  • 東條祥恵

    取材・文

    東條祥恵

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  • 東 美樹

    撮影

    東 美樹

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