「DON’T HOLD BACK」ではクライマックスでステージに倒れこみ、マイクを通したエフェクトボイスで、この街にはびこる悪や怒り、悲しみ、それらをすべて吐き出すような鬼気迫るシャウトを入れる。そのまま次の「LION」になだれ込むと、ステージ上に突然エアで動く巨大でカラフルなニョロニョロ(!?)が10体も登場し、曲に合わせて踊り出して観客の度肝を抜く。ライヴハウスツアーではなかった演出で、とたんにANTIの世界がポップに変貌。HYDEはムービーカメラに向かって両手でほっぺたをはさみ、とびきりキュートなチュー顔を見せたかと思ったらブレイクで場内が暗転。目がたちまちのように青白く発光してアンドロイド顔に変貌。そこから「ANOTHER MOMENT」へとなだれ込む。曲の途中、HYDEが「幕張ちゃん、座ってみようか」とフロアに呼びかけ、全オーディエンスをその場にしゃがませる。「3はスリー、2はチューのこと、1はワン」とかわいく説明したあとも「この曲の“ANOTHER 〜”の綴りは〜」と散々もったいぶったあと、HYDEが「3、2、1、GO! 」と唱えると、オーディエンスはフロア一丸となって鮮やかなジャンプを大成功させてみせた。
そうして「MIDNIGHT CELEBRATION Ⅱ」では前方のスタンディングエリアの間からさらに中にHYDEが侵入していき、「芸術的なカオスを見せろ!」と叫んだ。HYDEは熱狂の渦と化した客席の様子を満足げに眺めたあと、ステージに戻ると、手にしていたマイクをバットに持ち替え、パトカーのフロントガラスを激しく叩きまくったあと颯爽とステージを去っていった。
アンコールは、サプライズで客席の後方エリアに突然HYDEが現われ、CO2を噴射しながらステージへ。Slipknotのカヴァー「Duality」を歌い、金属バッドで横にある樽をパーカッションに見立ててカンカン叩きまくるパフォーマンスで場内のテンションを煽る。そうして、自らギターをかき鳴らし「AHEAD」が始まる。ファンは盛り上がらない訳がない。そこからパンキッシュなアレンジを施した「GLAMOROUS SKY」へとなだれ込むと、フロアからは大歓声が上がった。曲の途中、HYDEがフロアにマイクを向けて声を求めると、さっきまで大騒ぎしていたオーディエンスが大合唱を返す。
そんなコンビネーションプレイも美しくきまったところで「すげーいいもん見せてもらった。最高だね、君たちは」と喜びを口にするHYDE。そうして2年前、VAMPSが活動休止して以降のことを振り返り「もっともっとみんなに理解してもらおうと思って、レコーディングして、気持ちを込めてアルバムを作って、ライヴも150本ぐらいやったかな」と話した。その間、オーディエンスはスマホのライトを灯し、HYDEを照らす。スマホのライトがフロアを白い光で埋め尽くす光景を見てHYDEは「ほんといい眺めだよ。ただの光じゃない。全部が意味のある光。僕の大事な人の光。よき理解者のね」といってオーディエンスを褒め称えた。ズシンと胸にくる言葉に、嬉しさのあまり泣き出すファンもいた。そうして、こんなよき理解者であるみんなの援護があればこの先も「俺は絶対に真っ暗闇の中でも何かをつかむから。それを期待して待っててください」と宣言し、DURAN DURANのカヴァー「ORDINARY WORLD」をこの日もっとも綺麗な声で、悪や怒りに支配されることなく普通に過ごす日々がどんなに素晴らしいかをメッセージにのせ、届けていった。赤いキラキラの紙吹雪が空中を舞う中、涙をこらえるようにオフマイクで叫び続けていたHYDEが最後、万感の思いを込めマイクを通してロングトーンを響かせ、ライヴは深い感動に包まれながらフィニッシュ。歌い終えると持っていたマイクを床に放り、オーディエンスに投げキッスをしたあとは「また帰ってくるからな!首洗って待ってろよ!」という言葉を残して、HYDEはステージを後にした。
こんなカオティックなライヴをいつまでやれるのか。もうカウントダウンは始まっている。だからこそ「最後だと思ったら、もう少し高みを望むでしょ?」といっていたHYDE。次に目指すのは、この景色のさらなる先にあるもの。それがいったいどんなものなのか。幕張の1日目にはその欠片となる新曲のMV撮影が行われたと聞いた。2020年もみんなとともに高みを目指すHYDEを見届けていくつもりだ。
SET LIST
01. WHO'S GONNA SAVE US
02. AFTER LIGHT
03. FAKE DIVINE
04. INSIDE OF ME
05. DEVIL SIDE
06. TWO FACE
07. SET IN STONE
08. ZIPANG
09. OUT
10. MAD QUALIA
11. SICK
12. DON'T HOLD BACK
13. LION
14. ANOTHER MOMENT
15. MIDNIGHT CELEBRATION II
16. Duality
17. AHEAD
18. GLAMOROUS SKY
19. ORDINARY WORLD