「和楽器バンドJapan Tour 2019 REACT-新章-」
2019年11月23日(土・祝)よこすか芸術劇場
詩吟、和楽器と洋楽器を融合させたハイブリッドロックエンタテイメントバンド、和楽器バンド。彼らが11月23日、横須賀芸術劇場・よこすか劇場にて、16公演にわたる全国ツアー「和楽器バンド Japan Tour 2019 REACT-新章-」の千秋楽を迎えた。
デビュー6年目に突入した今年、所属事務所も新たに設立されたイグナイトマネージメントへ移し、7月1日には新オフィシャルサイトを開設と、環境を一新したなかでの全国ツアー。メンバーの音楽活動に対する強い想いを感じる堂々たるステージだった。
障子をあしらったステージセット。メンバー一人ひとりにスポットを当てるオープニングムービーのあとその障子が開くと、ステージ後方に設置された高台にメンバー8人が横並びで登場する。その絢爛としたヒーロー感ある佇まいに、会場のボルテージは一気に高騰した。1曲目「雨のち感情論」から、レーザーが飛び交うなどの華やかな照明が黒を基調に金を差し色にしたメンバーの衣装をより引き立てる。朗々とした鈴華ゆう子(Vo)の歌声、VOCALOIDカバー曲「天樂」での町屋(Gt/ Vo)と神永大輔(尺八)のシンクロする動きやお立ち台でのプレイなど、次々と繰り広げられるダイナミックなパフォーマンス。蜷川べに(津軽三味線)の音色で幕を開ける「吉原ラメント」では、鈴華が和傘を持ってソングライターである亜沙(Ba)のもとで相合傘を作るなど、粋な計らいを見せた。
「横須賀芸術劇場はぎゅっとしてるけど高いところまで客席があって好きなんです。日本武道館のミニ版みたい」と語る鈴華は、「遠いようで遠くないでしょ?」と最上階の客席に向けて手を振る。コール&レスポンスののちアグレッシブでシリアスな「蜉蝣」へ。神永の鬼気迫る尺八プレイがアウトロまで旋回し、メタルテイストと妖艶さを併せ持つ「Strong Fate」は楽曲の世界観に入り込んで激情的に歌い上げる鈴華のボーカルが会場一帯を魅了する。和楽器と洋楽器による8人という大所帯バンドが成立するのは、各々が互いを立てながら自分自身の個性を生かすアプローチをしているからに他ならない。その整った均衡は様式美に近いものがある。
途中MCでは6回目となる今回の全国ツアーの思い出について和気藹々とトーク。いぶくろ聖志(箏)が空き時間3時間でフェリーに乗って島に行くなどフレキシブルな動きを見せたことや、山葵(Dr)がお酒を楽しく嗜むようになったエピソードを明かし、鈴華は「ツアーを重ねるごとにお互いを知られるのが面白い。バンド感が上がっていくのがツアーだなといつも思う」と話した。「細雪」はストリングスの音色も重なり、より壮大で優雅な空間に。鈴華のアカペラに黒流(和太鼓)と蜷川が音を重ねて幕を開けるインストナンバー「鏡花水月」では、和太鼓と三味線、箏と演舞、洋楽器チーム、ギターソロから尺八ソロ、ベースソロで、重厚感のある幻想的な空間を作り出し、間髪入れずにつないだ「月に叫ぶ夜」では鈴華が剣舞を見せ、楽曲の持つ強さと可憐さ、儚さを表現していた。
「なでしこ桜」を硬派かつエモーショナルに届けると、鈴華と町屋のツインボーカル曲「シンクロニシティ」へ。両名が上段ステージでパフォーマンスするなか、神永と蜷川がステージ前方のお立ち台でプレイするという見せ方も艶やかだ。黒流と山葵による和太鼓ドラムバトル「極限双打」では双方が迫力のプレイを展開。そのあとは客席がタオルを回す「雪影ぼうし」、緊迫感のある「暁ノ糸」と畳み掛け、本編ラストをきらきら星のメロディのシンガロングを含む、ポップで多幸感溢れる「あっぱれが正義。」で締めくくる。飛び跳ねながら尺八を吹く神永など、メンバー全員がほかの楽曲ではなかなか魅せない躍動感あふれるプレイを披露した。
観客による「暁ノ糸」のシンガロングに誘われてメンバーがステージに再登場。ファンクラブコンテンツである「亜沙カメラ」のコーナーを、町屋による「港のコーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」のギターに乗せて届けるというアットホームな空間を作ったあと、鈴華がこのツアーへの想いを語った。この8人でまた絶対にステージに立ちたいという願い、リスナーやスタッフからの強い気持ちがこの日を作ったと話す彼女は、「デビューからの5年間は、めいっぱいの毎日を精一杯走り抜いてきました。でもこれから私たちは、もっともっと“音楽”していきたいと思っています。しっかり音楽をやって、しっかりみなさんに届けていきたいです」と、今後のさらなる進化を約束した。
ツアー中に作ったというバンドのニューフェイズを表した新曲「Ignite」と、定番の「千本桜」を披露し、新章のプロローグを締めくくる。観客たちのあたたかい拍手も、その幕開けを祝福するように高らかに豊かに鳴り響いていた。この公演であらためて、和楽器バンドが和楽器、洋楽器、詩吟、ポップス、ハードロック、メタル、ロック、VOCALOIDなど、国境や時代を越えて様々な文化をつなげる存在であることを再確認した。8人の追求する新たな音楽に今後も期待したい。
SET LIST
01. 雨のち感情論
02. 天樂
03. 吉原ラメント
04. 蜉蝣
05. Strong Fate
06. 細雪
07. 鏡花水月(インスト)
08. 月に叫ぶ夜
09. なでしこ桜
10. シンクロニシティ
11. 和太鼓ドラムバトル-極限双打-
12. 雪影ぼうし
13. 暁ノ糸
14. あっぱれが正義。
EN
01. Ignite(新曲)
02. 千本桜