斉藤朱夏「朱演2019 くつひもの結び方」
2019年11月7日(木) TSUTAYA O-EAST
斉藤朱夏は、『ラブライブ!サンシャイン!!』の声優グループ、Aqoursの一員として紅白歌合戦出場、東京ドーム2DAYS公演、ソロ活動でも写真集が週間ランキング1位に輝くなど、活躍のフィールドを広げている。そんな彼女が8月にミニアルバム『くつひも』でデビューし、夢の1つだったソロライブにたどり着く。
先日の『DI:GA』のインタビューで、「ミニアルバムを聴いたみんなの想像をどう超えられるかというのがテーマ」と語っていた朱夏さん。公演は台風19号の影響で順延となり、遂に待望の日を迎えた。
『あと1メートル』のイントロが流れると幕が開き、赤いシューズボックスのような真っ赤なステージ(完全生産限定盤のパッケージデザインと同じ!)の上に立っている朱夏さん。真っ赤な衣装とリボンで髪を縛り、後ろ向きが反転して、正面を向くと優しい笑顔。
ギター、ベース、キーボード、ドラムが全員女性のバンドが刻むリズムに心地よさそうに歌う朱夏さん。下手のファンに手を振ったり、上手のファンの方向に顔を近づけたり、間奏ではおでこに手をあて、サイリウムで真っ赤に染まった会場をじっくり見渡す。ラストのフレーズ“君がそばにいるせいさ”では四方八方に指を差しまくった(思えば、「君」という言葉が出るたび、客席を指差し。できるだけ多くの人と繋がりたいという気持ちの現れ?)。歌い終わるとまたニッコリ。
右手をすっと挙げて、「くつひもの結び方開演!」と大きな声で宣言。下手側に設けられた女子専用ゾーンには「キャッキャと楽しんで」、向きを変え一般ゾーンを見ると「こっちはむさくるしいね」といつものしゅかしゅー節が(笑)。
「みんな、緊張してた? 私はもちろん緊張したよ」と公演前予想していた緊張感も「どのくらいお客さんが入っているかわからなかったけど、振り返ったらたくさんの人がいて」。そして「楽しみだったよ。今日という日が最高!」と喜びを隠せない。
次の曲『くつひも』は真っ赤なライトに照らされ、体をくねらすように揺らしながら両腕を挙げてクラップ。片想いする乙女心をかわいく歌い、2Aの“1番伝えたい”で右人差し指をすっと立て、小悪魔のような表情にドキッ。ナチュラルで伸びやかな歌声でのせながらも心地よい空気を運んでくれる。
明るい雰囲気から一転、照明が暗くなり、バックライトに照らされながらささやくように歌い始めたのは『誰よりも弱い人でかまわない』。表情もせつなげだったり、時に苦しそうだったり。“自分のことは何よりも曖昧なまんまだ”のフレーズでは思い切りこぶしを振り下ろす。時折握るこぶしも強く、サビになると歌声の音圧も強く。自分の想いを伝えらないもどかしさがダイレクトにこちらにも刺さってくる。アウトロですっと右手を宙にかざした仕草は一歩踏み出す決意を表わしているのか?
せつない曲の後、とつとつと語り始めた。「みんなの顔を見ながら歌えるのが新鮮で楽しい。来てくれるみんなやスタッフさん、みんなとの出会いがあってライブができているんだなって。みんなと出会えたことは奇跡で、運命。今日という日を共有できるのがうれしい。いろいろな糸でつながっているんだなと。糸で出会えたことがうれしくて」。そして「私の大好きな歌をお届けします」と紹介して、美しいピアノのイントロが流れ、中島みゆきさんの『糸』をカバー。マイクスタンドやマイクを両手でぎゅっと握って、歌詞の一語一語をかみしめるように大切に歌う。時に優しく、愛おしそうに。
ラスサビを歌った後、余韻が漂う中、再びピアノ演奏から斉藤さんが発したのは“おはよう”“ありがとう”“ごめんね”。そう彼女が伝えたい言葉が詰まったバラードナンバー『ことばの魔法』だ。伝えるようでいて、自身に言い聞かせるように言葉を紡いでいく。Dメロでは泣き出してしまいそうなくらい、加速するエモーション。途中で涙ぐみ言葉に詰まる場面も。彼女の言葉と気持ちの波が押し寄せ、ぐっと引き込まれる。
歌唱後、空気の音がしばらく漂う中、「皆さんに伝わりましたか?」と会場に問いかけると大きな拍手が送られた。そのまま、デビューミニアルバムから現在までの心境を語り始めた。「デビューミニアルバムを作るにあたって、いっぱいお話しして。どうしてアーティストになりたいの?ライブをしたいの?と聞かれて。向き合い続けた結果、そんなのわからないよ。悩んで悩んでできたのがミニアルバム『くつひも』。私の弱さや不器用さなど今まで見られなかったところが見られたんじゃないかな。泣き顔なんて絶対見せるもんかって。でも私はみんなに絶大な信頼をしてて。弱い自分は今まで見せていけないと思ったけど、これから見せていこうと」。そして「弱い私も受け入れてくれるかな?」に「OK!」の言葉の代わりにまた大きな拍手。
感動的なシーンからバンド紹介、そしてこのライブでみんなと盛り上がるために作られた『リフレクライト』。弾むようなテンポと明るいサウンドにのって、1B終わりの“Oh! Yeah!”で客席に向かって手を広げると大合唱。それを見た朱夏さん、右親指立てて“good”のポーズ。2コーラス目では“Oh! Yeah!”を全身で浴びて気持ち良さそう。2Aでつんのめる仕草などアッパーでにぎやかな演奏にのって、やんちゃで明るい、いつもの朱夏さんが。
「人生いろいろあるけど、君の明日は絶対、いい日になるからね」と叫ぶと、高橋 優の『明日はきっといい日になる』のカバー。サビの“明日はきっといい日になる”は、みんなを励ますように。2Bの“虹が”では右腕で大きな虹をかけた。Dメロでシューズケースに腰掛け、百面相したり、踊りまくったりと忙しい(笑)。
その勢いのまま「タオルを持って」と叫んで、新曲『しゅしゅしゅ』を初披露。“しゅしゅしゅ”と歌いながらぶんぶんタオルを振りまくり、間奏ではタオルを首に巻いたり、セクシーな振りを見せ、くつ箱にひざまずいたり。最後は腕をまわして、笑顔でフィニッシュ。
汗をぬぐいながら「マジホットだね。暑いよ。ヤバくない?」と満足気な表情。また新曲にも関わらず、対応するお客さんたちに「みんな天才だよね」と感心。「タオルを回したいなと思ってこの曲を作りました。この3曲のセットリスト組んだのバカじゃない?入れようって言ったの私なんだけど(笑)」と笑う朱夏さん。
延期公演に対し「楽しみが先延ばしになっちゃったけど、来られなかった人の分も来てくれてありがたいなと思います。延期になって悔しい気持ちもあったけど、これも私の人生の一部だな。糧になったら最高だなと。みんなの時間をムダにしたくないなと思って、ガムシャラにやってます」の言葉はここまでの全力ステージで立証済。
「みんなのヒーローになりたい。時にはつまずくこともあるけど。そんな私のそばにいてくれる?」と問いかけて、本編最後に歌うのは『ヒーローになりたかった』。強くなりたいと思い続けた朱夏さんがこの曲を与えられ、この日のライブでも弱さを見せたり、寄りかかってもいいと思えたこの日のライブ。本編を締めくくり、彼女の中で芽生え、新たに進んでいくため、感情むき出しに歌った。そして「悔しい事いっぱいあるけど、大丈夫! みんなには私がいる」といつもそばにいるよと伝えるように。
大きなアンコールの声と拍手に呼び寄せられた朱夏さん。ギターのカッティングがカッコいい、ポップだけどドラムビートがガンガンくる新曲の『パパパ』。ビートにのりながらステップは軽やかに、サビ最後の「パパパ」で手のひらを広げ、会場も合唱。アウトロでも激しくダンスしまくり。幼少期からダンスを続けていただけあって、キレもバツグン!
「アニメ見てる? 朱夏を好きなのはお前だけかよ。ギャルでやってます(笑)」と『パパパ』がOP主題歌になっているアニメ『俺を好きなのはお前だけかよ』にかけ、自身が出演するキャラの紹介も。
自身のスマホで撮影場所を何回も変えてお客さんと記念撮影すると「アンコールありがとうございます。私からもうれしいお知らせが。東名阪Zeppツアーが決定しました!」の報告にひときわ大きな歓声が湧きあがる。「バースデーライブの時、全国まわりたいって言ったけど、実現するなんて。今日よりもっと人がいるんでしょ? 緊張しちゃうよ。汗が止まらない(笑)」と喜びながらも心配、ネガティブと自称する朱夏さんらしい。
「またみんなと遊ぶ約束ができたので、それに向かって頑張っていきます。全力疾走だけど大丈夫? また会えたらいいなという気持ちを込めて。ここにいる君と運命の赤い人を結びましょう」と最後はもう一度『くつひも』。2コーラス目でしゃがんで観客を見つめたらつい笑ってしまい、歌えなくなるのもご愛敬。シューズケースに寝っこりがり、足を上げてバタバタしたり、1回目よりも更にオチャメでキュートな部分を見せてくれた。そして赤と金の紙が舞い落ち、ライトに当たって朱夏さんの周りを光の粒たちが成功を祝福するかのような素晴らしい光景。
「ありがとうございました!」と感謝を述べた後、「(ライブタイトルに付けた)くつひもの結び方をどう教えたらいいんだろうと思ったけど、それぞれ個性があるから教えなくていいかな。みんな自身が結び方を持っていると思うから。今日、結ばれたと思います。この日を思い出せばどんなことも乗り越えられるはず、思い出してね。みんなとまた会いたいです。Zeppでみんなを待ってます! あっ、1つだけ言うのを忘れてました。斉藤朱夏でした!」。名乗るのを忘れて、思い出したのが最後の最後という(笑)。
楽しさやかわいさ、キュートさがあふれるステージングだった。ただそれだけではなかった気がする。ライブ前に「様々な疑問がこの日にわかる気がする」と語っていたが、このライブの最初からファン、そして自身と向き合い、自らの想いをむき出しにしながら、現在の心境にたどり着いたような。ファンも楽しみながらも彼女の成長を温かく見守っている、濃密な「朱演」だった。
「赤丸の百点がとれる、そんなライブになるように」と言っていたが、百点をあげるのはちゅうちょしてしまう。だって、次のツアーで百点以上出さなくっちゃと朱夏さんの緊張がMAXになりそうだから。でも「朱演2020」にもっと期待している自分がいる。
SET LIST
M1.あと1メートル
M2.くつひも
M3.誰よりも弱い人でかまわない
M4.糸(カバー)
M5.ことばの魔法
M6.リフレクライト
M7.明日はきっといい日になる(カバー)
M8.しゅしゅしゅ
M9.ヒーローになりたかった
<ENCORE>
M10.パパパ
M11.くつひも