FIVE NEW OLD
『Current Location Concert High Quality Noise Canceling Headphones ver.』
2019年11月3日Red Bull Music Studios Tokyo POP-UP in Shibuya
サイレントライヴはソニーの高音質ノイズキャンセリングヘッドフォン(WH-1000XM3)を使用し、ライヴハウスとは一味違う環境に身を置いて、生演奏を味わえるというもの。過去に海抜251mのSKY CIRCUS サンシャイン60展望台でも開催。バンドのメインコンセプトでもある“ONE MORE DRIP=日常に彩りを与える”というテーマにそったユニークなアプローチを試みてきた。
この日のプレミアムライヴには限定60名(2部制各30名)の観客が詰めかけ、フロアに設置された椅子に座り、サイレントライヴを堪能することができる。定刻にHIROSHI(Vo&Gt)、WATARU(Gt&Key&Cho)、SHUN(Ba&Cho)、HAYATO(Dr&Cho)のメンバー4人が登場。「Stay (Want You Mine)」が始まると、観客はヘッドフォンを付けた状態で真剣に聴き入る。一音一音がクリアで立体感を帯びており、バンドの鳴らす演奏が手に取るように把握できたが、目の前で演奏しているにもかかわらず、音質は最高級なのだから、最初は不思議な感覚に陥った。ライヴと音源の中間のような聴き心地と言えばいいだろうか。しかし、その考えも曲が進むにつれて覆されていく。「Pinball」に入ると、WATARUのギターソロは色鮮やかに響き、HIROSHIの裏声を活かした伸びやかなハイトーンも澱みなく鼓膜に飛び込み、ハッとさせられた。
“お耳は心地良いお湯加減でしょうか?”とHIROSHIが呼びかけ、続けて“これをツアーにして、ライヴハウスとは違うかたちでやりたい。日常の延長にあってほしいから”と語りかける。生活の中に音楽がもっと溶け込んだ空間を彼らは作りたいのだろう。それから夜の時間帯にマッチした「Magic」を披露。優しいキーボードの音色に導かれ、WATARU、SHUN、HAYATOによる重厚なコーラスワークも大人びた曲調に深みを与えていた。
そして「Last Goodbye」を経て、バラード調の「Set Me Free」へ。シンプルに削ぎ落とされたバンドサウンドの中、HIROSHIはアカペラに近いディープな歌声を解き放つ。この曲はヘッドフォンを通すと、より一層迫力が増して聴こえてきた。演奏後、“アルバムに収録する予定はなかったけど、メンバーに聴かせたら、「いいじゃん!」と言われて。自分の良いところや悪いところも全部出そう、そのきっかけになった曲です。”とエピソードを語ると、観客も興味深く耳を傾けていた。
ライヴも後半に差し掛かり“みんなで一緒に歌いましょう!”と声をかけて、「Gotta Find A Light」をプレイ。観客は椅子に座りつつも、身体を横に揺らしたり、ハンドクラップしたりと、それぞれに楽しむ姿が目に入った。次の「Keep On Marching」ではマイクを客席に向けると、観客によるシンガロングがみるみると広がる。僕も思わずヘッドフォンを外して、会場の熱気を確かめてしまうほどだった。ラストは明るく爽やかな「Please Please Please」で締め括り、バンドと観客の距離を取っ払った親密な空気を作り上げ、大盛況のうちに終幕。サイレントライヴはライヴと音源の中間ではなく、FIVE NEW OLDによる“ライヴの新しいかたち”なんだなと至極納得。音を鳴らす場所に限界も制約もない。それを体感できた素晴しいイベントだった。ライヴ後はMONJOE(DATS)によるDJもあり、観客は最後まで満喫している様子であった。
現在、FIVE NEW OLDはレコ発ツアー真っただ中にいる。ファイナルの東京公演は11月29日(金)EX THEATER ROPPONGIにて開催。こうしてサイレントライヴを挟み、音楽の可能性をますます貪欲に追求していく彼らがどんなパフォーマンスを魅せてくれるのか、期待せずにはいられない。
SET LIST
01. Stay (Want You Mine)
02. Pinball
03. Magic
04. Last Goodbye
05. Set Me Free
06. Gotta Find A Light
07. Keep On Marching
08. Please Please Please