LAMP IN TERREN ワンマンツアー2019「BABY STEP」
2019年3月16日(土)恵比寿LIQUIDROOM
LAMP IN TERRENが、4thアルバム『The Naked Blues』を引っ提げたワンマンツアーのファイナル『LAMP IN TERREN ワンマンツアー2019「BABY STEP」』を3月16日(土)に恵比寿LIQUIDROOMで開催した。
昨年4月より松本 大(Vo&Gt&Pf)の声帯ポリープ除去手術によって一時活動を休止していたLAMP IN TERREN。8月に日比谷野外大音楽堂で復帰を果たし、自分たちの生き様をぶつけた12月リリースの『The Naked Blues』は再開後初のアルバムとなった。その後も毎月26日開催の定期公演『SEARCH』など含め、精力的にライヴを実施。それらを経たこのツアーで、バンドはさらに殻を破ろうと邁進してきたように映る。
たくさんのお客さんで埋め尽くされた恵比寿LIQUIDROOM。開演時刻が近付くとショパンの「ノクターン第2番」が流れ、やがて客電が落ちた。幕が開けば、まさに夜明けを思わせる微かな光の中、すでに板付いているメンバー4人。ライヴは松本が弾くピアノの静謐な音色とともに「I aroused」で始まった。ありのままのLAMP IN TERRENを再確認するように、《眩しさに潰されずに 選んだ道を行けばいい》とまずは宣誓し、照明が鮮やかに灯った「New Clothes」では《俺は恥ずべき裸の王様 そして新しく袖を通す》のところで帽子を脱ぎ捨てた松本。覚悟がうかがえる叫びと振る舞いに、大屋真太郎(Gt)、中原健仁(Ba)、川口大喜(Dr)も激情を乗せた美しいバンドサウンドで応えていく。一転して、ハンドマイクで清々しく「Water Lily」を歌ったりと、そのパフォーマンスはもはや何者にも囚われていない。
“『The Naked Blues』を出して、ツアーを回ってきて、本当に自分たちでも分かるぐらいに様変わりした姿を、今日はみなさんに証明しに来ました。全力で歌って騒いで帰るんで、一緒に最高のライヴを作りましょう!”と松本が告げた後の「Dreams」以降は緊張がほぐれたのか、フロアーから拳がグッと上がり、ハンドクラップが沸く。メンバーの4人もさらに伸び伸びと演奏。「at (liberty)」で稲光のようなフラッシュが煌めくのに合わせ、松本のヴォーカルは自由を求めて感情を爆発させた。
過去の自分を清算するように、まとわりつくものを振り払うように、常軌を逸したテンションで荒々しく届けた「亡霊と影」と「凡人ダグ」。悩ましいグリーンのライトがステージを覆った「亡霊と影」では、紫のピンスポットが差す中で松本が渇望たっぷりに独唱したりと、見逃せない瞬間が次々に訪れた。また、大屋のギターソロも熱を帯び、曲のつなぎ目は川口のドラム、中原のベースが担ってメドレーっぽく聴かせたりと確かにバンドが頼もしく急成長しているのが伝わる。そうなると「heartbeat」「innocence」など過去の楽曲さえまったく新たな質感で響いてくるから、音楽というのは不思議だ。
エモーショナルなナンバーはもちろん、バンド名に込められた意味のとおり、“この世の微かな光”を繊細に表現することにも長けているLAMP IN TERREN。今の彼らの凄みは「Beautiful」「花と詩人」などのミディアム曲でこそ際立っていたとも言えるかもしれない。美しいメロディーを奏でつつ、時に狂気も覗かせながら、やり切れない感情にまみれた絶望の淵から、不器用に一筋の希望を見出していくような。中盤のパートはそうした強弱も映えたアンサンブル、心地良い静けさ、音の余韻で魅せてくれた。
ステージバックを彩るネオンカラーのバンドロゴについて触れたり、この1カ月がとても早かった話や移動の際のフェリーの揺れが大変だったなど、楽しくてずっと終わりたくなかったというツアーのあれこれをメンバー全員で語ったりするシーンも。そして、ライヴ後半はその嬉しさを露に粘っこいアカペラで始めた「キャラバン」、活動休止中に音楽をやりたい想いがあふれたことを綴った「オーバーフロー」と前のめりで畳み掛けた。オーディエンスを高くジャンプさせて無敵のムードを作り出した「地球儀」では、松本がフロアーに降りてその真ん中を練り歩き、観客と喜びを分かち合う。
まるでこの日をやさしく包み込むように「月のこどもたち」を披露した後は、いよいよクライマックス。もがき苦しんで辿り着いた今について、松本が積もる想いを語り始めた。“俺はずっと周りに憧れてばかりで、「なんでできないんだろう」とか、「もっといい曲書けるはずなのに」とか、足りないものを探して、それを埋めるように音楽を作ってきました。だけど、理想に近付けば近付くほど空っぽになるし、だんだん歌う意味も分からなくなって。気付いたら、自分のことが嫌いになってました。ちょうど25歳になるあたり。そこからどうすれば歌が歌えるかなって。考えた先にあったのは、自分がやってることを自分が一番信じること、愛することでした。だから、胸を張って言います。俺はこのバンド、今の自分が大好きです! 俺が長い時間をかけて自分を愛せたのと同じく、あなたたちが僕、私を好きになれるような、その背中を押せるような音楽を歌っていきたい、鳴らしていきたいと思います”。
制御しているものを壊し、裸になって、ありのままの自分を認め、生まれた自信。それが漲る「BABY STEP」はただただ美しい。心地良く響き渡るメロディーに乗る《僕が僕を好きになった瞬間から 世界は変わるのだから》のラインも感動的だし、何よりこんなに声を張り上げて勇敢に歌う松本はかつて観たことがなかった。いずれにしろ、この日LAMP IN TERRENが新たな一歩を踏み出したのは間違いない。
アンコールでも全力の「緑閃光」を聴かせ、7月には再び日比谷野外大音楽堂ワンマンに挑むことを発表した4人。今めちゃくちゃ脂が乗っている新生LAMP IN TERRENだけに、次の野音はぜひとも目撃してほしい。
SET LIST
01. I aroused
02. New Clothes
03. Water Lily
04. Dreams
05. at (liberty)
06. 亡霊と影
07. 凡人ダグ
08. heartbeat
09. innocence
010. Beautiful
011. 花と詩人
012. キャラバン
013. オーバーフロー
014. 地球儀
015. 月のこどもたち
016. BABY STEP
ENCORE
緑閃光