リズムとメロディが音楽だと思ってスタートしてる
なかったですね。1枚目もそうでしたけど、このアルバムはこういうコンセプトで、このタイミングでビッケブランカはこういうものを作って、みたいなことを考えない、というのを正義として据えた感じがあります。その時に自分が何をやるか、どんなものが生まれるか、アルバムのタイトルもテーマも決まらない状態で作る、という。
はい。そういうふうに作ると、聴いている人を圧迫しないものができると思うんですよ。圧迫した気持ちで作ったものは、何かしら、聴く側を圧迫するエネルギーを帯びるっていうか。時間に追われてヒイヒイ言いながら作ったものには、ヒイヒイっていうメッセージが込められちゃうような気がするんですよね。ドーンとおおらかに作ったものの方が、聴いてくれる人を同じような気持ちにさせることができるのかなと。
はい、僕はそうですね。僕は、リズムとメロディが音楽だと思ってスタートしてるんで。で、今ここ、日本で歌うから日本語で、っていう条件が入った感じですね。テンポ、メロディ、歌詞、この3つがトライアングルで音楽を支える、というところがあるので。
たとえば「Winter Beat」なら……最初にドラマのタイアップで「バラードで冬の曲」っていうお題があって、「まっしろ」を書いたんですね。で、バラードがあるんだったら楽しげな冬の曲も入れんと! と思って。じゃあまずリズムを考える、BPMを考える、それで出て来たのが……(リズムとメロディを歌い出す。ベイ・シティ・ローラーズの「サタデー・ナイト」、プライマル・スクリームの「ロックス」、ワム!の「フリーダム」の3曲)。
そう、「あ、この感じだ!」と思って。あと……(また歌い出す。ヴァネッサ・パラディの「ビー・マイ・ベイビー」)……とか、この感じでいこう、っていうので、まずリズムが決定します。
いや、その時はまだ何も機械は触ってないです。リズムを頭の中で鳴らしながら考えてる。っていうところからどんどん作っていって、いちばんスピーディーに完成まで転がった曲が、これですね。自分で言うのもなんですけど、ほんとに才気爆発みたいに、ブワーッて出て来た。で、そのリズムに、ボヤーンとしたコード感とメロディをのっけて。
それは最後の最後ですね。僕にとって苦行なんです、打ち込みは。ほんとだったら人にまかせたいくらい(笑)。頭の中で鳴っているものを、データ化する作業が苦手なんで、「ああ、早く終わらんかな」という。ベース・ラインとかドラムとか、全部打ち込まないといけないじゃないですか。めんどくせえ、頭の中にあるのに、と思うけど、それはしかたなくて。それでリズムを入れて、ピアノとか入れて、歌を入れると、そこまで作ったからこそわかる、その先のアレンジがある。ピアノだけ入れても埋まってない、でも頭の中では埋まってる、じゃあここに何を入れようかな、バイオリン入れよう……というふうに、そこからまた楽しい作業に戻っていけるんですけど。
曲が次のチャンスを呼んで来てくれる
はい。この話をもらったことは、自分的にはすごく大きくて。
ご指名だったんですよ。ドラマの演出の方が、音楽好きの方なんです。いかしたおじさんで、「バラード書いてみない? 一緒に旅に出ようよ」みたいな、そういう人なんですよ。
そうです。で、エルトン・ジョンとか、そのへんが好きな方だと思うんですよね。挿入歌の候補、若手でどんなのがいるのかって、プロデューサーが5組ぐらいバーッと出したらしいんですけど、その中に僕も入れてもらっていたみたいで。で、あいみょん(主題歌)と僕をひっぱり上げてくれたっていう。
「Your Days」とか、僕の前作のバラードを聴いて、「新しく書いてくれ」と。そこで僕、感じたのが、たとえばインディーズの時とか、メジャーの1枚目とかっていうのは、とりあえず自分は自分のできることをやろう、自分がやるべきことをやろうっていうだけで、タイアップがあって書くとかいうことではない、まったく自分の中だけでの作業だったんですけど。
そこでしっかりいい曲を作っていたから、その曲を誰かが誰かに手渡してくれて……偶然人の耳に触れて、次に人の耳に触れうる新しい曲を書いてくれないか、という話をくれた。その曲が次の曲を呼んで来てくれる、次のチャンスを呼んで来てくれる。だからもうとにかく、今作るべきもの、今書くべきものを、いい意味で内側を向いて書き続ければいいのかなと。
そうですね。「今流行ってるからこいつ」とかいうんじゃなくて、そいつがどんな曲を作って来たかっていう過去をちゃんと聴いてくれて。そこで、誰の目にも触れてなかった、けど僕としては一所懸命作った曲があって。「こいつ、こんな曲書けるんだ?じゃあこのドラマの挿入歌、書けるね?」っていう。その曲を作った時は、僕なんてほんと、うだつの上がらん奴だったんですけど、そいつが今の自分に何かをもたらしてくれている。だからほんとに、誰も見てなくても、今自分がやれることを一所懸命やってれば、きっと何かを呼んで来てくれる、何か自分の足を進めてくれる、っていうふうに思っていますね。
おもしろいですよね。でまた、曲をほんとに……挿入歌って基本的には、ドラマの中で、ちっちゃい音で1分流れたらいい方なんですけど、1話2話3話、全部使ってくれていて。(※取材時は3話まで放送済み)
1話の頭のシーンで、まずボリュームがでかいんですよ。それで1分30秒流れて、2話目なんてガッキー(新垣結衣)の初キスシーンで、すごいボリュームで2分半流れたんですよ。放送を観て「なんだこれ!?」って。すごい使い方してくれてるなあ、って。ほんとにうれしいですね。
ほんとに、この曲はしっかりいいものができたっていう自信があったから、より気楽にアルバムを作ることができた。メンタリティがすごく安定したっていう感じですかね。「Winter Beat」と「まっしろ」がアルバムの頭を飾るんだろうな、じゃあこのあとどんなふうにしようかな、どんなふうに展開してもいいのかも、なんでも作れるのかも!何作ってもいいのかも!もっと自分に許しが出たのかも!みたいになりましたね。
まあ、滅裂だな、っていう感じですね。だけど、今これが僕なんだ、という。これがどういうふうに人様に影響をしていくか、できればマイナスな効果じゃなきゃいいな、生まれない方がよかったものでなければいいな、っていうことを願うばかりというか。
ライブの演出も、曲発信で決まっていく
まあ、楽しければいいのかなあというところですが……ライブで何をやるのかというのも、結局、曲が呼んで来てくれるというか。たとえば「キロン」って曲と「Smash(Right This Way)」って曲は、本気でエレクトロ・ミュージックに寄ってみたんですよ。この2曲はライブだとバンドで表現するのは無理なので、だとすると別のまったく新しいスタイル、たとえば僕がカルヴィン・ハリスみたいに機材を駆使してやる、っていうシーンができるのかもしれないし。というふうに、まずこういう曲がある、だからそれにひっぱられて新しいアイディアが生まれる、ということの連続ですね。
そうですね。ステージが広くなるので、いろんな演出ができるようになるのが、僕は楽しみですね。演出考えるの、好きなんです。前作、『FEARLESS』ってアルバムのツアーで、マイナビBLITZ赤坂でやった時も……ステージの後ろに『FEAR』ってロゴを掲げておいて、最後の方の『THUNDERBOLT』って曲で、そのロゴに雷が落ちて壊れたら、それで『FEARLESS』を表せるんじゃないか、と。だから「雷のSEを作ってこのタイミングで流すから、そこで照明チカチカってやってロゴをまっぷたつにしてください」ってスタッフにお願いしたり。そういうふうに曲発信で決まっていくんです。楽しいですね。
PRESENT
サイン入りポスターを3名様に!
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