──3曲目「思い出は奇麗で」は、力強いバンドサウンドに、明るさとせつなさが絡み合うようなメロディがぴったりはまる曲。どんなふうに作った曲ですか。
年齢問わず共感してもらえるような曲を作りたい、という思いから作り始めた曲です。そして、わたしの曲の中には、アニメーションでMVをつくっている一連の曲たちがあるのですが、この曲もそのシリーズのひとつとして、アニメーションでMVをつくろうという試みが、制作当初からありました。かつ、既存曲の「今日から思い出」のMVが悲しい結末になっているので、そこに登場する女の子を救ってあげられるようなストーリーのMVにしようと、スタッフさんと話し合い、MV制作を、ほぼ歌詞制作と並行しておこないました。できあがったMVは、観てくださった方にもちゃんとその意図が伝わったようで、とても嬉しかったです。
──「思い出は奇麗で」は、今年の父の日に、YouTubeで初公開した曲でしたね。歌詞に込めた思いをおしえてください。
今まで以上に日本語が映える、日本語の普遍的な歌詞にしようという思いで作詞しました。わたしの歌詞は、歌っている相手との関係性を限定しないものが多いですが、この曲は明確に、「親」との関係を歌っています。悲しさと嬉しさ、両方をこめながらも、悲しいではなく、ありがとうの気持ちが伝わるものにしようと思いながら書きました。
──このシングルにはもう1曲、4曲目にカップリングとして「今日から思い出」のセルフカバー、「Evergreen ver.」が入っていますね。この曲に込めた思い、そしてあらためて歌って思うことは?
前述のMVに表れているように、深い悲しみを歌った曲です。5年前に歌ったときは、悲しみの淵に浸って歌っていましたが、今回の「Evergreen ver.」では、悲しむ自分を少し俯瞰で見つめながら歌うようなイメージでした。昔よりもサビで声が張れるようにもなったので、各パートが存在感を出してきても成立するようになり、アレンジもより壮大に仕上がりました。
──今回のシングルは、全曲に共通したテーマがあると聞きました。Aimerさんにとって、今回のシングルで伝えたかった思いとは?
共通するテーマは、「幼くも、今を支える思い出たち」。どの曲の主人公も、温度、色、感情はそれぞれ違えど、“小さな頃の思い出、夢、願いを、心の支えにして生きている”がコンセプトです。わたし自身、ライブや楽曲制作であたらしい挑戦をする際、自分のルーツを探ることも多くなってきて、自然と、このコンセプトが生まれていきました。
──10月からはじまるホールツアー「18/19“soleil et pluie”」。太陽と雨、ですね。どんな思いでつけたタイトルでしょう?
ベストアルバムのタイトルが「blanc」「noir」(フランス語で白と黒)であったように、かつて自分の曲はバラードの白、ロックな黒、というように分けることができたのですが、ベストリリース以降挑戦してきたアップテンポなナンバーは、自分にとってそのどちらにも属さないものでした。色にたとえると、虹色、のような、カラフルなものだったのです。だから今回はあたらしく「太陽と雨」というテーマで、わたしの今の世界を、みなさんに堪能していただきたいと思っています。
──ホールツアーは「17/18 “hiver”」以来8か月ぶり、「2016 ~like a daydream~」含め3度目です。今回は、どんなテーマを持って臨みますか?
前回は、“hiver”、フランス語で「冬」のタイトル通り、アルバムを掲げてのものではない、わたしにとって初めてのコンセプト・ツアーでした。だからこそ、デビュー当初からリリースしてきた冬の曲たちを中心に、今の自分の世界観を、濃厚にお届けできた旅になりました。今回のツアーでも、去年から更新されている今の自分の音楽の世界観を、また違った角度から、より濃厚に表現できそうです。そして来てくださったみなさんと、“一緒に”楽しめるような瞬間を、前回よりも多くつくりたいと思っています。
──ステージ上で、最も感情がたかぶるのは、たとえばどんなシーンでしょう?
歌っている最中に、不意に泣いてしまったり、泣きそうになったりすることがあります。その時の会場のみなさんの空気感や、バンドメンバーとのグルーヴの中で、ちいさな色んなことを感じ取りながら、曲の世界に入り込んでいくと、そういう瞬間に出会えることがあります。それはわたしにとって、信じられないほど美しくて壮大な、自然の風景に出会ったときの感動に似ています。決定打が何なのかは自分でもはっきりとわからないのですが、確実にそれは、その場にいてくれるみなさん一人一人が作り出して、わたしにくださるもののおかげです。拍手の大きさや雄叫びの大きさから、ファンのみなさんからの愛を多大に感じる夜には、歌うほどに自分の歌がどんどん良くなっていくのも感じます!
──ファンのみなさまへ、ツアーへのお誘いのメッセージを、よろしくお願いします。
お一人でも初めてでも誰かと一緒でも楽しめる、音楽ってやっぱりいいな、とあなたに再確認してもらえるような夜にしたいと思っています。あなたが明日を生きる力が湧いてくる夜になったらいいなと思っています。ぜひ、これを読んでいるあなたに、ライブでお会いできたら嬉しいです。今の歌は今しか歌えないんだと、7年活動して、しみじみと感じています。今のわたしの歌を、今のあなたで、ぜひ聴きにきてくださいね。
──ツアー中の楽しみや、やってみたいことなど。今考えていることを、こっそりおしえてください。
その日のステージを終えたらご当地のグルメをいただくのは、ツアーごとの恒例でもあり、ひとつの楽しみにもなっています。千葉、愛媛、栃木、滋賀、奈良、岩手など、今回のツアーで初めて行く箇所もたくさんあります。ぜひ、みなさんにおすすめをご教示いただきたいです!
──ツアーは、年明けまで続きます、2018年から2019年、Aimerさんはどんなテーマを掲げて進んで行こうと思っていますか?
今までもそうしてきたように、マイペースに、でも着実に、原点を大切にしながら、自分の世界を広げていきたいです。