インタビュー/兼田達矢
──日比谷野音でのライブは2年ぶりになります。
甲斐よしひろ 前回は、40周年のツアー・ファイナルでしたね。
──今度は“THE BIG GIG AGAIN 2016”という、これまたメモリアルなライブになるわけですが、日比谷野音というのは8月7日にやりたいと思っても、ただ早く押さえればいいとか、そういうシステムではないんですよね。
甲斐 なかなか厳しい抽選があるみたいでね。それを引き当てた男がいて、イベンターの担当者なんだけど。おそらくは、その彼が8月7日狙いだったんですよ。僕らは何も知らなかったんです。いまのディスクガレージの社長は当時、「THE BIG GIG」の担当者で、当時、このライブを開催するために1年半くらいの間ずっと関係する役所でたらい回しに遭いながらも必死の思いで実現にこぎ着け、結果的には3万人近いオーディエンスが集まったわけですよね。そのなかの単なる観客の一人だった男が、その後、イベンターになって僕の担当者になり、この日を引き当てたんですよ。Kという男なんですけど、イニシャルKの男は今年に入ってから運の悪い人が多いんですよね(笑)。でも、彼は虎視眈々とこの企画を狙ってたんでしょうね。僕が聞かされたときには、THE BIG GIGと同じセット・リストを野音でやりましょう、と。中継の話やプロモーションの計画まで全部プランが出来上がっていて、僕はただ「そうだね」って(笑)。それは、僕が了解するためだけにわざわざその場が用意されたようなものでね。
──かなりセレモニアルなものだったわけですね。
甲斐 そうです、そうです。でも、それは僕にとっても決して嫌なことではなくて、むしろ僕ら甲斐バンドのメンバーを喜ばせるための儀式という感じだったんです。実際、僕らはすごくうれしかったし、そういうふうに用意されたら乗らないわけがないですよね。だから、これはやっぱり、イベンターや制作スタッフ全員の思いが強かったんですよ。普通は、プランニングから何からすべて僕が中心になってやっていくんだけど、今回はうれしい誤算というか、予想外の展開でした。だって、やりたいと思っても、なかなか引き当てられないわけだから。そういう意味では、僕が事前に聞かなくて良かったかもしれないですね。先に話を聞いてたら、止めてたかもしれないから。「そんなにうまくいくわけないんだから」って(笑)。
──いま、東京は近郊まで含めてもコンサート会場事情がどんどん厳しくなっているので、シビアに実現可能性を突き詰めないといけないという現実がありますからね。
甲斐 そうなんですよ。
「8月7日」は特別な日