意識して作っていったんじゃなく、お悩みのお返事返しをしていたら自然と告白ソングばかりに
──ericaさんがラブソング、そのなかでも"告うた"といわれるものを歌うようになったきっかけってなにかあったんですか?
路上ライブをずっとやってまして。その時はいろんなジャンルを歌ってたんですね。その路上ライブが終わったあとに出した曲が「恋、告げる」という曲なんですけど。その曲が、これから新生活を始める女の子が新しい自分になるために告白をするという曲だったんですね。それは、当時の自分にも重なっていて。ここから歌手として新しく再スタートという気持ちでその曲を作ったんですけど。それが、恋愛ソングだったこともあって、YouTubeにアップしたらそのコメント欄に片思いをしている子からお悩み相談がたくさん来たんですね。そこから、お手紙が来たり、ブログのコメントにもお悩み相談が来るようになって。その時は、できることは全部やろうと思ってたから、来たものにすべてお返事を書いてたんですよ。手紙もブログも。そうしたら"あれ?待てよ"と。私は作詞・作曲できるんだから曲でお返事返ししようと思って、来てる相談のほとんどは片思いのお悩み相談だったんで、それにお返事返ししたものをYouTubeにどんどんアップしていったんです。結果的にそれが告白ソングになっていったという。だから、別に意識して告白ソングを作っていったんじゃなく、お悩みのお返事をしてたら自然と告白ソングばかりになっちゃった感じなんです。
──ああ、そうだったんですね。
ええ。そうしたら、みんなが"告うた"と呼び出したんです。
──だから、いまでもericaさんのYouTubeのコメント欄は活発なんですね。
あれ、みなさんのコメントを読んでるだけでも泣けてきちゃいますよね。だから、あれは夜中に見ちゃダメなんですよ。泣いちゃって翌朝顔がパンパンになっちゃうから。
──みなさん、コメントが真剣なんですよね。
そう。大人になっちゃうと、なんとなーくお互いの関係値を探っちゃったりするじゃないですか?でも、最初の恋って、心が動いて止まんない、何も見えないっていうぐらい自分がおかしくなる。そんな恋をするのって、人生で1、2回だと思うんです。その子たちはいまそんな自分と向き合ってるんだろうなって思うんですよね、コメントを見てると。いまあの子たちは人生かけて恋をしてる。あの頃の私と同じように。あの頃、告白した恋もあれば、告白もしない、たぶん気づかれてもいないという恋もしたこともあったので。みんなには絶対後悔しないで欲しいという思いで「負けんなよ」って、ちょっとお姉さん目線も入りながらの曲もあるんですよね。だから、すごい男の子にモテてて、すごい綺麗で、いろんな人からから告白ばっかされるような恋をしてる子たちよりも、すごく大失恋をして、幸せになるために恋したはずなのに辛いことが多かった子たち。そんな人たちが私の歌に共感してもらえてるのかなと思ってます。
分かりやすい言葉、音で想いを伝えることができるアーティストになりたい
──ericaさんが告うたを作る時、なにか心がけていることはあるんですか?
私のなかにはルールがあって。音楽が大好きだから、「こんなおしゃれな歌作ってみたいな」とか、どこがサビだか分かんないメロディとか、絶対使わないような楽器とかを使った曲も私は大好きなので、玄人受けするような曲もすごい作りたいなと思うんですよ。じつは昔、上の階の水漏れで、住んでた部屋が水浸しになっておしゃれな部屋に住んでたことがあるんですよ。そうしたら、おしゃれな曲しか作れなくて(笑)。世には出てないんだけど、洒落た曲をやってたこともあるんですね。一瞬だけ。「こんなんもできまっせ」って。
──音楽人としてのericaさんは。
ええ。でも、それってすごく自分よがりで、しっくりこなかったんですよ。だから、私はおしゃれなワードよりも分かりやすい言葉、音で想いを伝えることをルールにしようと。路上ライブの時もそうだったんですけど。同じ曲を歌ってても「今日はだるいな」と思いながら歌ってたら、誰も立ち止まらないんですよね。だけど、目の前にいた子から「大失恋した」というのを聞いて歌ったら、歌の伝わり方がまったく変わって。音で想いを伝えるってこういうことだなと感じて。私は音で想いを伝えられるアーティストになろうと思いましたね。
──路上ライブがいまのericaさんを形成してるんですね。
間違いないです。バイトもしながら、その後に終電まで毎日路上ライブをやってて。すごく辛かったんですけどね。上京して、オーディションにさえ受かれば事務所が私を売ってくれると思ってたんですけど。私が動かなければ誰も動いてくれないんですよ。自分が輝いてないと誰も振り向いてくれない。
──恋愛と同じだ。
まったく一緒です。「私、他の人と比べてまったく努力してないもんな」と思ったから、そこから路上ライブを週イチから毎日に変えて。やれることは全部やろうと思って。路上ライブの他にライブのブッキング、CDのパッキングからなにから全部自分でやってました。YouTubeにアップしてる歌詞だけの映像の曲は、全部自分で画像を作ってアップしたんです。衣装も自分で作りましたし。
──じつは、すごい苦労人なんですね。こんなに明るく話してるけど。
はい。でも、そこでできることをやってたからこそ、告白ソングというところにいきついたんだと思います。ただ、相変わらずわちゃわちゃ感は歪めなくて。雑だからいまだに粗相もするし、うるさいしで。マネージャーさんは苦労してます(苦笑)。