インタビュー/東條祥恵
LUNA SEAとX JAPANを兼任しながら、ヴァイオリンも弾くスーパーギタリスト/作曲家・SUGIZO。そんな彼が、1997年7月9日、1stシングル「LUCIFER」を携えスタートさせたソロワークが今年、20周年を迎えた。アニバーサリーイヤーを記念して、20年前といまをつなぐ作品を9月から続々リリース。ライヴツアー<Unity for Universal Truth>開催も決定したSUGIZOが、20年間留まることなく進化を繰り返し、創作に対する強い信念を持って提示してきたエポックメイキングなSUGIZO MUSIC的電子音楽と総合舞台芸術と化したLIVE。そこに流れる哲学を語る。
音楽に関しての表現欲求や自分が求めるレベル、情熱は、20年前とは比べものにならないぐらい大きくなっている
──ソロ20周年のアニバーサリーイヤーはいかがですか?
レコーディングに明け暮れてる20周年ですね。今年がそのピークです。
──今年がピークというセリフは、SUGIZOさんから毎年聞いてるんですど(微笑)。
今年は、もうこれ以上は無理ってところまできてます。いまはソロとLUNA SEAのニューアルバムを同時進行でレコーディングしている状況で。7月はそこにX JAPANもあったんですよ。この3つのプロジェクトのアルバム制作が同時進行するという状況は自分でもさすがに想像していませんでした。X JAPANは99.9%僕の作業は終わったので、いまはソロとLUNA SEAを引き続きやってるんですが。人間としての限界にきてる感じがします(苦笑)。20年前、あの当時の凄まじかった日々を、それこそいままた反芻してる気がしますね、ここ数カ月は。20年後、あの頃以上にこんなにも凄まじい日々がくるとは想像もしていませんでしたけど(苦笑)。
──20年前、ソロを始めた頃といまの自分を比較してみてどんなことを感じますか?
始めてから山あり谷ありの波乱万丈の日々でしたけど、なんとか生き永らえている。音楽への表現欲求や自分が求めるレベル、情熱は歳を重ねるごとに増しているので、20年前とは比べものにならないぐらい大きくなっている自信はありますね。
──そんなSUGIZOさんの始まりの時代と最新の音楽。その両方が、ソロデビュー20周年を記念してこの後続々リリースされていく訳ですけど。そこで、まず最初に9月30日にリリースされるのが最新アルバム『音』のアナログ盤とハイレゾ音源。
自分のなかでは、『音』をハイレゾとアナログでリリースすることにすごく意味がありました。最初から出したいと望んでいたんですが、1年弱かかってやっと実現しました。アナログって、音楽のクオリティーでいうと決して高いものではないんですよね。自分が本当に表現したかった音が完璧に刻まれる訳ではないんですが、そこにはアナログ盤で聴くという物理的な魅力があって。僕はアナログ盤世代なので、そこに帰りたくなるんですよね。嬉しいことに近年またアナログ盤のブームがやってきて。
──なかでも日本をはじめ、アジアは盛り上がってますよね。アナログ盤やカセットテープをおしゃれアイテムとしてわざわざリリースする人たちも増えてきた。
若い子たちが抵抗なくそういうものを手に取るようになってきたのは、僕的には素敵なことだなと思ってます。僕の娘もアナログとかカセットが好きだといい出してるからね(微笑)。さらにアナログ盤と同時にハイレゾ音源を発売したかったのは、僕が表現したかった音をそのままリアルに聴いてもらいたかったからです。CDとは比べものにならない音のクオリティですから。普段iPhoneやMP3で音楽を聴いてるいまのリスナーにとっては、音質なんて関係ないのかもしれないけど。本当の音楽の感動や衝撃を体験してもらいたいよね。
──鬼才クリエーターたちが『音』をREMIXするアルバム『SWITCHED-ON OTO』。こちらも期待が高まりますが。今回はどんなクリエーターたちが参加してるんですか?
WarpのCLARKとRichard Devine、長年コラボレーションしているSYSTEM7というのが海外勢で、日本では松武英樹さんがLogic Systemとしてやってくれてまして。あとはminus(-)の藤井麻輝さん、日本のモジュラーシンセ界を牽引するHATAKENさん、ボカロPのATOLSさん等です。
──ワールドワイドな人選、そこに電子音楽の奇才からボカロPまでが一緒に並んでいるというところはSUGIZOさんならではだと思います。
みなさん、いま僕が注目しているクリエーターたちですからね。テクノ、電子音楽としてとても興味深いアルバムになると思いますよ。こういうものが好きな人が聴いたら「えっ!?」ていう、ものすごく衝撃がある。それぐらい濃い内容になってます。
REMIX3部作は20周年にどうしてもやりたかったことです。遺跡を掘り起こすような作業がうまくいけばだけど(微笑)。
──そして、10月25日にはSUGIZOさんのソロワークの原点となる1997年に発売した1stアルバム『TRUTH?』のリマスター盤と、当時出したREMIX3部作(「REPLICANT LUCIFER」,「REPLICANT PRAYER」,「REPLICANT TRUTH?」)をまとめて、新たにリマスターしてフルアルバムにした『REPLICANTS』もリリースされます。
これは20周年にどうしてもやりたかったことです。これらはずっと廃盤になっていたので。メジャーのシステムの中でうやむやになって埋もれていった作品というのがいろいろあるんですね。それを救出したくて。5年前、15周年のときも動いたんですけどそこまで到達できなかった。なので、今回20周年に昔の作品をこうしてちゃんと世に蘇らせられることができたのはとても嬉しい。けど、正直あんまり聴いて欲しくはないけどね(苦笑)。
──いやいや。SUGIZOさんのソロのスタート。それこそソロの音楽表現の“原石”となった作品たちですから。まだ聴いたことがないという方々には、ぜひ聴いてもらって。
じゃあ「若造がなにかやってるよ」って。そういう贔屓目で見てもらいたいです(微笑)。いまの僕には耳もあてられないですから。半分はまだ聴けるけど、残りはこの世から抹殺したいぐらい。でも、あの楽曲たちに罪はないんでね。そうやって1997年の音を一生懸命掘り起こしていたら、当時のマスターのDATはなんとか見つかったんですよ。なので『REPLICANTS』には当時未発表だった曲を付け加えてリリースする予定です。
──20年という月日を経て、当時の未発表曲がやっとリスナーに届く。
遺跡を掘り起こすような作業がうまくいけばだけど(微笑)。
今回は、すべて“歌もの”です。20周年という節目でしかできない、自分のなかでは特別な企画物です。
──そうして、11月29日には『音』に続く待望のニューアルバム『ONENESS M』を発売。現在レコーディング中のこちらの作品は、どんなものになりそうですか?
去年、本当に自分の心に正直に立ち返り『音』というアルバムを生んだんですね。あのサウンドのテクスチャー、質感、世界観をそのまま踏襲しながら、今回は真逆のアルバムを制作しています。曲はほぼ揃っているので、アルバムの6割ぐらいはできています。今回は、すべて“歌もの”です。
──えーっ!!ほんとですか?
はい。20周年という節目でしかできない、自分のなかでは特別な企画物です。今後もほぼないことだと思います。ちなみに、僕は1曲も歌いません。なので、SUGIZO版冨田ラボというか(微笑)。
──ゲストヴォーカルを迎えたアルバムということですね?
そういう作品になってます。それでも、とてもSUGIZOならではの内容になると思います。どちらかというと、自分のなかのコンポーザー、プロデューサーという部分が色濃くフィーチャーリングされた作品になります。楽曲はとてもいいものが集まっていて。そのなかには昔の自分の曲のセルフカバーも何曲かあるんですね。なので、僕の音楽の20年間の流れが見てとれるようなものになると思います。そして未来に光を見い出すものにもなると思います。
──この作品を引っさげ、11月19日からは全国ツアー<SUGIZO TOUR 2017 Unity for Universal Truth>もスタートしますね。
ツアーに関してはいままで通りのSUGIZOのやり方でいくので、基本的には去年の流れを踏襲したものになると思います。これまでの方向性をより深化させたいと思ってます。去年、名古屋、大阪、石巻とやるたびによくなったんですね。今年は、去年のツアーを終えた石巻から始めたかったんです。とても小さなハコなんですけど、個人的にもとても思い入れがある地域なので。
──なぜ石巻BLUE RESISTANCEからスタートするんだろうと思ってたんですけど。そこはSUGIZOさんのこだわりだったんですね。
ええ。考えてみたら、数年前のX JAPANもそこから始まっていて。本当に僕にとっては大事な場所なんです。去年石巻で行なわれた<Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016>にも出演しましたし。個人的に(東日本大震災以降)ボランティアで何度も訪れている場所なので、とても思い入れがあるんですよ。そこからツアーを始めるというのは、自分としてはとってもスペシャルなことなんです。