梓川、アウトプットの振れ幅が感じられる2ndアルバム『端子』、2nd ONE-MAN LIVE「POAT_A」の話を聞いた【後編】

インタビュー | 2025.05.22 12:00

楽曲「無料生配信」、「ハッピーエンディング」について

──生楽器が入った楽曲や、生楽器が映えそうな楽曲が多いのも今作の特徴だと思います。Tadano Kaede/A4。さん提供曲「無料生配信」もとてもグルーヴィーで、梓川さんのボーカルの繊細な部分もダイナミズムも出た曲になったのではないでしょうか。
梓川Tadano Kaedeさんとはゲームをしたり、一緒に音楽に関する作業をしたり、もともと仲がいいんです。レコーディングでも僕がミックスしたものに対してKaedeさんが意見をくださって、それに対して僕も返していくというラリーをめちゃくちゃやりましたね。「もっといける!」みたいな感覚がどんどん連続して、結果的にすごくかっこいいものになりました。Kaedeさんも「さあ舞台が始まるぞ!」みたいな曲にしたいとおっしゃっていたので、じゃあ豪華にしましょう!と。その結果コーラスの厚みがとんでもないです。梓川がいっぱいいます(笑)。1曲目の「言っちゃった!」がオープニングアクトで、2曲目の「無料生配信」はトップバッターみたいな位置づけですね。
──「ハッピーエンディング」のようなJ-POPサウンドもアクセントになっています。
梓川100回嘔吐さんのアレンジや曲、メロ、歌詞のセンスがすごく好きなので、そのままお願いをしたら100点の楽曲が届きました。王道J-POPの構成の曲ではあるけど、それが逆にこのアルバムでは異彩を放つのが面白いですよね。曲自体が華やかなので、ボーカルは自分の色を出しつつも主張しすぎないようにして、ボーカルミックスも刺さるような感触が少ないように、行儀のいいものを心掛けました。100回嘔吐さんにもディレクションをしていただけたので勉強になりましたね。

レーベルメイトによる提供曲、香椎モイミ「Eye」、どーぱみん「アネクメーネ」、 Neuron (Empty old City)「uni」

──あと香椎モイミさんによる「Eye」、どーぱみんさんによる「アネクメーネ」、Empty old CityのNeuronさんによる「uni」と、レーベルメイトの皆さんの楽曲が中盤に3曲連続で並んでいるのも見逃せません。お三方は梓川さんにとってどのような存在ですか?
梓川皆さんリスペクトしていますね。モイミさんは男性に対して曲を書かれてるイメージがなかったんですが、すごく素敵なアプローチをしてくださって面くらいました。アルバムでスパイスになってくれていますね。どーぱみんはクラブミュージックに精通しているので、DJプレイのセンスからも彼の発信する音のパワーを感じていて。NeuronさんはEmpty old Cityの「Buffer」を聴いたときに衝撃を受けて、この人に曲を書いてもらったらどんなものが届くんだろうという興味がすごくあったんです。この3曲の流れもすごくいいですよね。

PSYQUIの「マジか!」への思い

──そうですね。その3曲の後に「ハッピーエンディング」で悲しみを壮大に明るく照らし、「東京心中」で地獄に飛び込み、「平均台」で弔い、PSYQUIさんによる「マジか!」で締めくくるという。かなり小粋なエンドロールです。
梓川実は活動を始める前にいちばん聴いていたアーティストがPSYQUIさんなんです。憧れの存在との邂逅という意味でも、自分にとってはめちゃくちゃ熱い経験になって。最初のデモを聴いたとき泣いちゃったんですよ。自分が高校生の頃に聴いていたPSYQUIさんのポップスがそのまま自分の曲として現れて、ラスボスが仲間になったみたいな感覚がすごくあって泣いちゃったし、シンプルに曲がかっこよくて泣いちゃいました。デモのPSYQUIさんのボーカルが良すぎて、「PSYQUIさんが歌って出したほうがよくない!?」と思うくらい歌入れにすごく苦労しました。青春の1曲ですね。
──この曲のボーカルミックス面白いですよね。肉声とデジタルのいいとこ取りというか。
梓川このボーカルミックスを手掛けてくださっているのはTRMXさんで、1stアルバムの「パラノイア」もお願いしたエンジニアさんなんです。歯切れのいい音にしようと試行錯誤するけれど、自分の持つ技術だと自分の理想どおりになかなかいかなくて……そういうジレンマを感じたときにTRMXさんにお願いしてるんです。でも今回はTRMXさんに頼るのではなく自分でやりたい気持ちもありつつ、いいものになるならと思ってお願いしました。だからめちゃくちゃ悔しかったですね……! 返ってきたものがものすごく良くて、できればこれを自分でやりたかった!!(笑)
──きっとその悔しさが次のバネになっていくんでしょうね。
梓川やっぱり切磋琢磨して感じる悔しさはエネルギーになりますよね。きっと今回楽曲提供してくださったクリエイターさんも各々「もっといい曲書きたかったな」みたいな後悔があると思うんです。クリエイター人生の次につなぐという意味でも『端子』というアルバムになればいいなと思いますね。みんな「いい曲を書きたい」というゴールは同じだけど、各々の流派があって、やりたいことがあって。そういうものが解放されたすごく楽しいアルバムだと思います。だからこそジャケットはシンプルなんですよね。

2nd ONE-MAN LIVE「POAT_A」へ向けて

──8月3日にZepp Shinjukuにて開催する2nd ワンマンライブ「POAT_A」もいいライブになりそうですね。
梓川これだけパワーのある楽曲が集まって、下手なライブはできないですね……。実はもともとライブが苦手で。もっと遡ると、ピアノの発表会がすごく苦手だったんですよ。人前に立つことは好きだけど、そこに向けて練習をしてきたことを発表するという行為に、すごく臆病になってしまう部分が自分の中にどうしてもあって。でもライブは発表会ではないし、楽しむものであるべきだと思っているんですよね。実際、初めて梓川としてステージに立ったときにすごく楽しかったんです。「POAT_A」は小さい頃のトラウマみたいなものを払拭できるくらい楽しいライブにしたいし、楽しいものになるだろうなという漠然とした自信はあるんです。でもなあ、自分の気質がライブ向きじゃない気もするんだよなあ……(笑)。
──梓川さんは職人タイプでもあるから。
梓川『端子』の制作を通じて、大きい石を削り出してじっくりと自分が思い描く素晴らしい形を作ることが何よりも楽しいのかなあ……と思っちゃったんです。だから「POAT_A」は音楽活動で何がいちばん好きなのかを答え合わせするような1日になるかなと思います。『端子』のリリースワンマンでもあり、5周年記念でもあるので、この日が自分にとってターニングポイントになるんだろうなとは思っていて。活動を始めた頃の5年前の自分と今の自分は別人だし、今から5年後に自分がどうなってるのかもまったく想像がつかないけれど、ここを境にいい方向には変わってくんだろうなという予感はあるんですよね。
──お話を聞いていると、梓川さんはその瞬間の自分が最善だと思った選択を取ること、心の動きに忠実であることを何よりも大事にしてらっしゃるのかなと感じます。
梓川もともと自分が発信するものは自分の頭の中のイメージをそのまま届けられるものでありたいという気持ちが強いんですけど、『端子』を作り終えてさらに強くそう思ったんです。自分がイメージするものそのままをみんなに届けたい。今回はいろんな方に楽曲提供をお願いしたんですが、今後は自分の中にあるイメージを自分でかたちにしていきたいんですよね。いまいろいろトライしていて、MVのプロットを書いてます。ライブとは真逆の作業かもしれないんですけど(苦笑)。
──でも変化を好む梓川さんですから、Zepp Shinjuku(TOKYO)の景色を観た梓川さんは今とおっしゃっていることが真逆になる可能性もありますよね。
梓川ほんとそうなんですよ。ボーカリストとしてバンドを背負ってステージに立ちたいので「POAT_A」もバンド編成でのライブになりますし、当日どんな心境になるのかは自分でもわからないというのが正直なところなんです。とはいえ節目のライブになることは間違いないので、皆さんに見届けてもらえたらうれしいですね。

PRESENT

直筆サイン入りポスターを3名様に!

※転載禁止

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