──ちなみにデビュー曲「ROUTE 246」は最近歌っていますか。
渡瀬最近は歌ってないです。だから今度久しぶりに歌います。みんな思ってるでしょうね。絶対あの曲はやるでしょって。
──ZIGGYとLINDBERGの対バンなら、当然そうなりますよね。一個だけ昔話を聞いていいですか。LINDBERGのデビュー曲「ROUTE 246」を、森重さんが作曲した時のエピソードを。
森重あれはね、もうなくなっちゃったけど、永福町のスタジオでやったのは覚えてる。
渡瀬ああ、スターシップ。
森重そうそう。俺は当時、デモテープを作るなんてできないからさ、ただこうやって弾いて、曲をメンバーに伝えて形にしたの。曲を持ってって、弾いて、「ここでベースのラインが3度に動いて」とかさ、そういうことを伝えて。あの時川添くんが一緒にいてくれたんじゃなかったかな。確かそうだったと思う。
渡瀬えー。そうだっけ。
森重マキちゃんともう一人メンバーがいて、俺は「Aメロはこんな感じで」って伝えて。俺は歌詞書いてないから、そういう流れだったと思うんだよね。どうやってLINDBERGをプロデュースしていくんだっていう、月光(恵亮)さんの考えとかも当然あっただろうし。だから俺は、今思うとね、のちのLINDBERGのポップなメジャー路線よりも、ちょっとマイナーな曲調っていうのが、あの時点で良かったか悪かったかわかんないんだけど、とりあえずああいうサビを書くのは俺は得意だから。もうあの時点で、PRINCESS PRINCESSとかあったと思うんだよね。だからプリプリみたいな感じじゃないところを、自分でも探してたんだろうなって思う。今思えば。
渡瀬月光さんに、LINDBERGに1曲書いてくれない?って言われたんですよね。
森重そうそう。
渡瀬それでスターシップに私たちがいて、森重さんが「Aメロはこうで、Bメロはこうだ」って。
森重やったのよ。
渡瀬嘘ぉー! 信じられない。記憶がない。
森重俺はそんなにまだ、作家としてのキャリアなんかないわけよ。何人かには書いてたと思うんだけど、同じ事務所の後輩アーティストになるっていうLINDBERGさんに何を書けばいいのかとか、色々考えてさ。
渡瀬女子だしね。
森重そうそう。また違うじゃない? その辺りで一般性のありそうな雰囲気のものをと思ったんだけど、でもやっぱりリンドって明るい曲が後に求められていくじゃない? そういう視点から見ると、わりと異色な部分もあるんだよね。でもそれはそれで、俺の役目としては良かったんじゃないかなって。
渡瀬すごいメロディアスで。
森重そうだね。泣きがちょっとあるっていうのがね。
渡瀬ああいうのはなかったから。
森重そんな経緯で、とにかく手渡し方としては、俺はデモテープとか作れる人間じゃないし、未だにそんなことしないんだけど。俺の曲は全部ケータイに入ってるから、ボイスメモに。ケータイのない時代が、公衆電話から家の留守電のメロディを鼻歌で入れてたの。たぶん「STAY GOLD」とかもそうじゃないかな。だからリンドの曲も、俺んちのあの留守電に入ってたのかもしれないね。
渡瀬そうだったんですね…。
森重そのストーリーは結構覚えてるよ。まだデビュー前だったわけだし、自分の何かしらが役に立ちゃいいなって思ってたから。
──LINDBERGのリクエストライブもそうですし、先日の森重さんのバースデーライブのセトリもそうですけど、新曲と昔の曲とのバランスがすごく良くて。お二方とも、特に近年のライブでは、ものすごくファン目線で曲順を考えているんだろうなと思います。
森重まぁ、自己満足で終わってもしょうがないからっていうのはあるしね。マキちゃんも俺もなげぇからな、芸歴が(笑)。
──懐かしい曲を一緒に歌える喜びというか、その瞬間を共有してるという嬉しさを感じるんですよね。
森重マキちゃんのところもさ、若い時からずっとこう応援してくれてた人たちが、年相応の社会的立場とかになっていくわけじゃん? その中で、やっぱり彼らに輝いた時代というか、逆に苦しかった時代かもしれないけど、そこに共にあった歌が背中を押してくれるっていうことはあると思うし、俺も結局そういうことに携わってんだろうなと思ってはいるよ。だからわかりやすいところで、みんなが喜んでくれるっていうのは、自分だってそれを求めてないわけじゃないしね。この年になると、結局みんながにこやかに笑顔で帰ってくれりゃ大満足だなっていう感じになるんだよね。若い時の「俺が俺が」みたいなのは、影を潜めちゃうんだと思うけどね。独りよがりで自分だけ良くたって、お客さんが楽しくなかったらつまんないしさ。
渡瀬そうですね。
森重マキちゃんも女性シンガーとしてさ、いわゆる非常にわかりやすくみんなを勇気づけたり元気づけたりって役割があったわけじゃん? で、今もそれをやり続けるっていう、そのストレスもあると思ってんだよ。元気を相手に与える人が元気じゃなきゃいけないみたいな、自分が自分にかけるプレッシャーとかもあると思う。でも俺はもうそんなの、とてもじゃないけどできないし、元気はもらうもんと思ってるから。
渡瀬あははは。
森重でもそういうマキちゃんの立ち位置ってのは、他の人ができないから、やっぱりそれはすごい大切にしてほしいと思うよ。だって、他の人じゃ与えられないんだもん。それはある意味プレッシャーになるかもしんないけど、大切にしてほしいな。さっきマキちゃんが言ってたけどさ、誰にでもできる仕事じゃないしさ、誰にでもそれを与えてあげられるわけでもないじゃない? マキちゃんの立ち位置ってすごくいいんじゃねぇかなって思うな。多くの人にとってね。
──そして10月14日の対バンライブ。どういう形になりそうですか。
森重構成は、さっきもマキちゃんと話をしてたんだけど、たとえば同性のシンガーだったら、キーの設定を変える必要もなかったりするだろうけど、マキちゃんと俺だと、持ち前のいいところを表現するために、色々エディットしなきゃいけなくて。でもごちゃごちゃエディットするのは、俺はあんまり趣味じゃないのよ。とりあえず乗っかれるところは乗っかって、お互いの持ち歌に花を添える感じがいいんじゃないかな?って思うけどね。どんな感じでお互いのステージで絡んでいくか、当然それを期待してくれる人もいるわけだからさ。
渡瀬…想像したらドキドキしてきた。
森重楽しめばいいよねっていう、もうそれだけだよ。お客さんだって楽しんでる姿を見たくて来てくれるわけだし、パーフェクトなものを見たいんだったらDVD見りゃいいし、CD聴きゃいいしね。
渡瀬楽しみだなぁ。私がZIGGYさんの曲に入っていくところ。
森重俺はあれだね、佐藤達哉の使われ方が楽しみ(笑)。ダブルだからね。
渡瀬言ってましたよ。「(顔の)半分メイクして、半分すっぴんで行こうかな」って(笑)。
森重でもこういうイベントがあるからこそ、いつもと違う部分も刺激されるわけでね。オーディエンスも、いつものLINDBERGを見てくださってる方、いつものZIGGYを見てくださってる方たちにとって、新鮮なものは何か感じてもらえれば、それでいいんじゃないのかな。
渡瀬絶対面白いですよ。ファンの人も楽しいと思う。リンドファンがZIGGYさんを観ることも、あんまりなかったと思うし。
森重とにかくいろんな世代が、何かのきっかけで聴いてくれればいいしね。メインになってる層っていうのは、同じ時代に世の中に認知されるような形で出てきてるから、そこまで世代のギャップはないと思うんだけどね。
──最後に、ライブを楽しみにしているお客さんに、メッセージをお願いします。
渡瀬こんな貴重な組み合わせは、なかなか見ることができないと思います。ぜひ来てください。
森重俺はマキちゃんが元気でいてくれればそれでいいな。それを一番みんなが喜んでくれて、背中押されるんだから。
──当時を知る方も、もちろん知らない方もぜひ。
森重お子さん連れで見える方も最近結構いらっしゃるしね。要は、ある人にとっては若き日の記憶だったりするけど、ある人にとっては本当に新鮮な、初めて見るものだったりするわけじゃない? そういうことを変わらず与えていける仕事ってのはさ、マキちゃんが言ったように、誰にでもできるものじゃないなっていうのもあるよね。だから、楽しくやりましょうよ。
渡瀬はい。ZIGGYファンのみなさん、お手柔らかに。よろしくお願いします!