自他ともに認めるタフなライブバンドとして、叙情とメッセージを兼ね備えた優れたソングライターとして、日本中を休みなく飛び回って来たTRIPLANEが今年でデビュー20周年を迎える。2月28日にリリースされる初めてのオールタイムベストアルバム『BEST SET Ⅰ』『BEST SET Ⅱ』は、初期の作品の再録音やリマスターを含むメンバーセレクト曲に新曲2曲を加えた構成で、長年のファンにも新たなリスナーにもアピールする決定盤だ。リリースのあとは4月から10月まで、47都道府県を巡る記念ツアーに出る。アニバーサリーを通過点としてさらなる高みを目指すTRIPLANEの現在地について、江畑兵衛(Vo/Gt)と広田周(Dr)に話を訊こう。
——2004年の10月デビューで、今年で20周年。やはり「20」という数字には重みを感じますか。
広田周(Dr)それは感じますね。「続けてきたからこそ」だとは思いますけど、でも本人たちはそんなに思っていないというか。
江畑兵衛(Vo/Gt)それが目標ではないからね。通過点という感じですけど、でも普通に考えて、仕事でもなんでも何かを20年続けるのは大変なことだなとは思います。同じくらいにデビューした人で、続けている人はあんまりいないから。形を変えてソロでやっているとかはあっても、バンドが続いているのはほぼないんじゃないかな。
広田売れてる人だったらいるけどね。
江畑売れてないと残ってないもんね。
——思い返せば20年前、エイベックスからデビューした時には、どんな未来予想図を描いていましたか。
広田もちろん何も知らなかったんで、もっと早く、メジャーなバンドになると思っていたし、そういう世界しか知らなかったんですね。でもデビューツアーで北海道以外の土地に行ったら、お客さんが3人、4人というところもあって、「デビューしたからってお客さんがいるわけじゃないんだ」ということをまずそこで感じて。
江畑メジャーデビューって何なのかな?って、そのツアーが終わった時に思いましたね。幻想を抱いていたんですよ。メジャーデビューすれば事務所やレーベルが何かお膳立てをしてくれているものだって、大きな船に乗った気でいたので。札幌でアマチュアの時に一からお客さん増やしていったのを、今度また全国でやらなきゃいけないんだなということを知って、でも「そりゃそうだよな」って、知ってるわけねえもんなとか思いながら、現実を見て、目標を遠く感じていましたね。
広田しかも僕らが音楽を始めた90年代頃って、CDが100万枚バンバン出ていた時代じゃないですか。デビューしたらもう当たり前に「ミュージックステーション」に出て、みたいなイメージでいたので。
江畑「それはそうだよな」という現実を見て、じゃあどうやってそれに近づけていくか?と。
広田でもまったく心は折れなかったですね、不思議と。その後もいろんなことがありましたけど、その気持ちは変わっていないと思います。
──いろんな理由があるとは思うんですけどね、TRIPLANEがこうして続けている理由の一つは、ライブバンドとしての強さがあるからかなと思います。ライブの数がとにかく多い。今回の、47都道府県ツアーもそうですけど。
広田幸せなことは、メンバーがだいたい同じ方向を向いていて、こういうこと(47都道府県ツアー)を提案しても「20周年だし、やろうぜ」ってなるから。誰か一人でも「これ多すぎるだろ」とか、「ベストも1枚でいいよ」とか、そんな話になってきたら、まとまらないですから。
江畑ライブの本数で言ったらすごい数なんですけど、その経験があるから何気なくやれてるというか。去年もおととしもすごい数をやったんですけど、大変なことをやっているなという気はあんまりないし、体も全然ついてくるし、ガタが来てるという感じもあんまり感じないですね。
広田ギターのKJは、もしかしたら戸惑ってるかもしれないけど(笑)。
──KJさんは5年前に正式加入して、それ以前のものすごいライブスケジュールを経験してないですからね。
江畑でも半年かけて、土日だけだし、そんなに例年と変わらないかな。下手したら少ないんじゃない?
広田少なくはない(笑)。ただ、イベントとかを入れてこのぐらいの数だったから、すべてワンマンでやるという意味では、中身は濃いかもしれない。
江畑初めて行く場所も、けっこうあるので。
──あ、20年やってもまだありますか。
江畑あります。山形、長野、あと山梨もFM FUJIに行っただけで、ライブはしていないので。
広田あとは、福井と奈良。5か所ですね。
──それが今回のツアーでコンプリートできると。
江畑今はSNSの時代ですけど、それまではファンレターとか、ラジオに来るメッセージとか、それしか知る手段がなかったんですよ。だから長野にどうせファンはいないだろうなと思ってたら、「ついに初のライブを地元で見れるのが嬉しいです」というメールが来て、「あ、いるのか」みたいな(笑)。その人は車椅子で、なかなか県をまたいでは来れないみたいで、このツアーを組んで良かったなと思いましたね。でも奈良はいないと思うよ。
──あはは。いますって。
江畑いるかな?(笑)
広田去年、初めて沖縄に行ったんですよ。地元の人はいないかなと思ったら、SNSを見ていると、行きたかったけど行けなかったというメッセージがあったりして。そういう方が今年は来てくれればいいんですけどね。(日程を)結構早く発表したので。