BIGMAMA、新章の始まりを告げるフルアルバムリリース&初の全国Zeppツアー開催!「青春はエモい」をテーマにした制作エピソードも

インタビュー | 2023.10.24 18:00

——実に5年ぶりとなる、アルバム『Tokyo Emotional Gakuen』が完成! そして、最新作を掲げてバンド初のZeppツアーを開催するBIGMAMA。2023年はこれまでリリースした全曲を披露した『BIGMAMA COMPLETE』ツアーを行って、ツアー後はフェスやイベントに多数出演。この多忙な中、アルバムはどのタイミングで着手して、どのように制作を進めたのでしょうか?
金井政人(Vo/Gt)アルバムは『COMPLETEツアー』と平行しながら、構想を打ち合わせていたんですけど。BIGMAMAには、“バケツくん(Bis)が入って3年で日本武道館にたどり着く”という、ストーリーが組まれているので。たくさん新曲を出して、たくさんライブをやって、色んな挑戦があってという物語の中で、新曲のリリースだけがなかなかタイミングが合わなくて。「この5人で新しい作品を作っていかないと未来がない」くらい、背水の陣的に思ってたところもあったので、『COMPLETEツアー』の後にアルバムを作ることは確定させて。「自分たちにとって、いま作るべきアルバムはどんな作品か?」みたいなことを、どんどん研ぎ澄ませていった感じです。

金井政人(Vo/Gt)

——「青春はエモい」がキーワードの今作。アルバム全体から新しさや新鮮さも感じさせてくれる作品になって。「BIGMAMAの新章が本格的に始まったな」というのを感じさせてくれたし、現体制のBIGMAMAをまだ体感してない人たちに、「現在のBIGMAMAはこうで、新体制で新たな目標に向かってます」というのを知らしめる絶好のタイミングだと思います。
金井それは間違いなく、バケツくんが新しい風を吹かせてくれて、作品の軸となる曲が出来たことが一番の理由だと思います。
柿沼広也(Gt/Vo)僕も「これがスタート地点なんだな」と思いましたし。「新章が始まったな」と感じてもらったのは、Bisが作曲面で0から1を生み出した曲がいくつもあって。それが僕らに今までなかったものだったし、それをこの4人でさらに揉むことでBIGMAMAになるというのがすごく上手くいったし、「いい曲だな」と自信を持って言える曲がいくつも出来たからだと思っていて。今回はBisの活躍に尽きると思います。今までは金井が作ってきた曲を主軸にしていたんですけど、今回はドラマーが作るって意味でリズムも気持ちいいし、メロディを作るセンスも抜群なので。金井や俺が持ってるものとは違う世界観で作ってきてくれたものに、「いいギターを入れるぞ」って気持ちもあったし。「コードや展開はこっちの方がいいかも」って提案する作業は楽しかったです。これが始まりだし、全然まだまだやれるなと思えたんで。バンドの良い未来が見えた作品だと思いますし。聴いてくれる人たちにも、それが伝わればいいなと思っています。

柿沼広也(Gt/Vo)

──昨年10月、「虎視眈々と」を始めとするライブでしか聴けない新曲を披露して。前回のインタビューでは、「まだまだ新曲はたくさんある」と話していましたが。今作の新曲たちは、去年からストックしていた曲も多く含まれているんですか?
金井それはちょっと違って。アルバムを作ろうとなった時、「虎視眈々と」を軸にしようというのは共通認識としてあったんですが。足枷のない状況でなにかを作ろうと思った時って、海に石を投げる感覚というか。釣り糸を垂らして何か引っかかればみたいな、狙いのない怖さがあるので。アルバムを作るなら確かな意図をもって、そこに投げかけることが必要だと思った時、「虎視眈々と」と「17(until the day I die)」だけはすでにあったので。そこからエモなるラインを見出して、「僕らが好きな00年代の音楽が好きな人に投げかけることに、チャンスがあるんじゃないか?」と考えて。じゃあ、それをどう成立させていくか? この2曲をどうサポートする曲が作れるのか?というのを考えて、『COMPLETEツアー』が終わってから、新曲をワッと作りました。
──え、そのタイミングで作った新曲がほとんどなんですか!? 凄すぎます!!
金井それまで作った曲にもいい曲はたくさんあったし、考え方次第ではそこに入るべき曲も全然あったんですけど。もっと意図を明確にした作品を作らないと、誰にも見つけてもらえないんじゃないか?という恐怖感が漠然とあって。具体的に言うと、最初に「RULER」と「ロジカルモンスター」と「History Maker」を作ってバンドに投げたら、柿沼がすごくエモロックテイストな料理をしてくれたので。その瞬間にアルバムのラインがはっきり見えたし、「ここに落とし所を作りたいんだ」というのが、ようやくビジョンとしてみんなと共有出来たんじゃないかな? と思ってます。
柿沼今回ばかりはシビレましたよ(笑)。今回初めて、ディレクターというか、現場監督みたいな形で近藤さんという方に入っていただいたんですが。近藤さん含めて打ち合わせしたのが、5月末ですからね(笑)。その時はまだ1曲もない状態だったんですが、フリーライブでやった「PEACE OF CAKE」と「イノセント」はあったんで。「その曲も入れて10曲くらいで」って話してたら、「それは入れません!」となって。「え、どうするんだろう!?」と思ってたところに、金井がさっき話した3曲を投げてくれて。そこで初めて、「これはイケるな」と思えたんです。
──金井さんの言う、アルバムのビジョンが共有出来た瞬間ですね。
柿沼その後に「速い曲が欲しいな」って話して、「Time is like a Jet coaster」が出来た時、「イケるな」が「勝ったな」という確信に変わって。そこからは時間と戦いつつ、金井の作った曲にギターを入れてたら、自分の持っていた主軸がエモにあることに気付いて、すごく一貫性も出たし、アプローチもしやすくなって。結果、12曲が揃ったら、SEもあるし聴かせる曲もあるし、一気に聴ける良いアルバムになったと思います。
──今作はBIGMAMAの持つ魅力や強みを自分たちで再確認出来てる感があって。それって、『COMPLETEツアー』の影響も大きかったのかな? と思いつつ。ツアー後の短期間でこれだけの新曲を揃えるというのはあり得ない! と思ってたんですが、あり得たんですね(笑)。
東出真緒(Vn/Key/Cho)私はひたすら楽しくやれてましたけどね。『COMPLETEツアー』も、時間を持って1stアルバムからおさらいして挑むことが出来たし。過去曲を演奏しながら、「あぁ、この曲のアレンジ良かったな」とか思い出しながら演ったり、「BIGMAMA、本当にいい曲しかねぇな!」と思いながら演るのはすごく楽しかったですし。レコーディングも、当日ギリギリまでアレンジをやってた曲もあるんですけど。それも「いかに楽しめるか?」とか、「いかに自分がトキメキ出来るか?」という気持ちでやれて、楽しかったです。

東出真緒(Vn/Key/Cho)

──金井さんと共作で作曲した「悩みの種に花が咲いたら」もすごく良いですね。
東出ありがとうございます。あの曲は最初のアレンジから全然変わったんですけど、私が「こういう風にしたいんだ」と言ったものを金井くんがガラッと変えてくれて。
金井あの曲だけで、何パターンもありますよ。もっとざっくりギターが載ったアレンジの段階もあったし、もう少しテンポが速かった段階もあったし、あの一曲でアルバム作れるくらいの数あります(笑)。もともと、<悩みの種に花が咲いたら>という歌詞だけは、ずっと僕の中にあって。一番良いところで切ろうと思ってたし、これで短編の物語が書けるという確信があって。“青春”や“エモ”をテーマにした時、どこかにあると良い仕事をしてくれると思ってたんですが。この作品には、エモロックバンドのマナーがあったんで、アコースティックギターだったりピアノだったり、バンドサウンド以外のものを入れないことで、より聴きやすくなったり、アルバムの世界観が明確になることも判断の基準にあって。この曲が一番呼ばれる場所をジャッジするのは難しかったですけど、あるべき姿として、一番ここがいいなというところにちゃんと着地出来たと思います。
──結果、アルバム中盤に配置されてますが。この曲のある無しでアルバムの印象や作品としての広がりがガラッと変わります。安井さんはいかがでした?
安井英人(Ba)まず、『COMPLETEツアー』はベーシストというより、マニュピレーションの方が大変で。毎回、セットが全然違うから、プログラミングを前日にやってたんですが。リクエストってのが難しくて。リクエスト曲が入ると、全部入れ替えなきゃいけなかったり……。
柿沼ツアーに10箇所来てくれると、次に来てくれる公演で聴きたい曲を1箇所リクエスト出来るってシステムがあったんですが。「明日行くんで、この曲を入れて下さい」ってリクエストが入ると、決まってたセットリストから1曲抜いて、その曲を入れたりして。
安井その曲が入ることで、全部入れ替えなきゃいけなかったりするんです(笑)。でも、みんな喜んでくれたから良かったですし。『COMPLETEツアー』をやったことで、自分のルーツも確認することが出来ましたし。レコーディングは6月から始まったんですけど、6月の時点ですでに暑くて。一軒家みたいなスタジオでやったんですけど、毎日汗だくでスタジオに通って、夏合宿みたいな雰囲気で。ひと夏の良い思い出が出来た感じでした(笑)。

安井英人(Ba)

──Bisさんはツアーから、アルバム制作への流れを振り返っていかがですか?
Bucket Banquet Bis(Dr)バンドとして5人として、それぞれの感性や役割はあると思うんですが。一番根っこのところやルーツの部分を繋いでくれたのが、“エモ”で。『COMPLETEツアー』はいままで生み出してきた149曲を振り返ることで、それを確認するような作業だったんですが。逆に今回のアルバムは楽曲を新しく生み出すことで、また根っこの部分の再確認が出来たなと思ってて。すごく良い流れだったなというのは改めて思います。

Bucket Banquet Bis(Dr)

東出『COMPLETEツアー』で短期集中型で丸暗記して、次のテストに挑んだみたいな感じかも知れないね。
Bis確かに(笑)。でもそこで全く予想してなかったことや、新発見みたいなことももちろんあって。例えば、パンクの2ビートの曲って、加入前まではドラマーとして通ってなかったジャンルなんですけど。一緒にステージで演奏する中で、自分の血肉となって。BIGMAMAのルーツのひとつである2ビートの曲を生み出すことって、すごく大事なことだなと思って生まれたのが「Time is like a Jet coaster」だったり。
柿沼結局、一番速いアレンジにしたもんね? レコーディング前、Bisが打ち込みでいろんなフレーズを考えてくるんですけど。やりすぎて叩けなくなって、自分の作ってきた曲でめっちゃ苦戦してるシーンが何回もあったのが面白かったです(笑)。でも、レコーディングで苦戦するって、自分を越えていくってことだから。現場の空気って意味では、すごい時間が流れるけど(笑)。あれはあれで必要な時間だと思うよ。
──金井さんは前回のインタビューで、「Bisが加入して、作曲家としての寿命が延びた」と。「自分が自信を持てる作詞家としての部分で勝負出来る」と語ってましたが。今回、“学校”をコンセプトに現文、数学、物理といった科目をテーマとした楽曲や、17歳の時に感じたことを思い返して書いたエモい歌詞など、一曲一曲としっかり対峙した歌詞が秀逸で。作詞作業に関して、これまでの作品との違いはありました?
金井少し『COMPLETEツアー』の話に戻すと、僕はツアーの途中で歌詞を覚えるということを少しだけ諦めさせてもらって、みんなと比べたら気楽に挑ませてもらったところがあったんですが。反面、「この後、曲作りたくなるかな? この後に作りたいものってなんだろう?」というのを考えながら過ごさなきゃいけない数ヶ月でもあって。実際、ツアーが終わった後に思ったのは、これを言ったらファンの方に怒られるかも知れないけど、すごく良い意味で、これまでの自分たちのクリエイトに納得がいかなかったんだと思ったんです。でも、決して満足することがなかったから、終わった後にバーッと曲が作れたんだとも思っていて「まだこういうこともやっていいし、こういうこともやれるし、こういうことはやってない」みたいなことが、あの時間に自分の中できちんと貯め込めてたんだと思います。だから、ツアー中は「どんな曲を作ろう?」ってずっと悩んでたのに、「母の日」のライブをやってスイッチが入ったら、意外と出来たっていうのが自分の中であって。僕の中では、「虎視眈々と」と「17(until the day I die)」が、今回のアルバムの主役だというのが認識としてあったので。「それを引き立てる良い曲を作る」という方向に舵を切れたし、すごく作りやすかったし、良い作品が出来る自信はありました。
──自信があったからこそ、このスケジュール感で行ける確信があったと。
金井自分の中で「時間が無い」という言い訳はNGです。時間があればいいというものではないですし、時間があるほど歌詞はこじれますから。言ってしまうと歌詞に関しては、何でもよくて。BIGMAMAというバンドでパーソナルに伝えたいこととか、そういうことではない。いま、この5人である音楽の表現をもっと見つけやすい形にするっていうのが、やるべきこととしてあって。今作では、それをひたすらに追求していきました。看板を作るイメージというか、とにかく自分たちの音楽を見つけやすくすることが主題としてあって。あとはバケツくんが入ったことで、「ここからどう自分たちにしかない音楽を信じて、どんな方向性を作って、どういう道筋をたどっていくか?」っていうバンドの物語があるので。「この青春感みたいなものを形にしたいな」と思った時、それを作品丸ごとを使って描くとしたら、“17歳の1日の疑似体験”という作品にすることが、自分の一番の才能の使い方なんじゃないかな?と思って制作しました。
──17歳を描くにしても、リアル17歳ではないから。実体験だけでなく、大人になったから分かることやフィクションも混じえて、色んな角度から描くことが出来ますしね。
金井「リアル17歳に届けるのは無理だ」というのは東出にも言われたし。僕自身も17歳の感覚を想像して、そこに迎合するようなやり方はやめた方がいいと思ってたんです。BIGMAMAって変化し続けてきたし、いろんな変遷のあるバンドなんですけど。一番、バンドにのめり込んで音楽好きだった17歳の時の自分が「面白い」とか、「カッコいい」と思ってくれるか?ということだけは、いつも想像していて。今回もそこを再確認してやっただけで、思ってることは変わらないと思います。誰しも心の中にある“青春”に訴えかけるものを作ろうと思っているだけで、対象を絞っていくクリエイトにはしたくないので。
──ただ、「17(until the day I die)」では<一度きりを繰り返して 駆け巡った季節のことを 僕らは呼ぼう 青春と>と歌っていて、「虎視眈々と」では<この一瞬を刻め>と歌っていて。「一瞬一瞬を燃やすことが、青春なんだ」というのは今作を通じて出た答えだと思いますし、いまそんな青春の真っ只中にいることもすごく伝わってきます。
金井昨日、久しぶりにテレビ収録があって。「この一瞬をしくじったら……」みたいなことをすごい思って。あの緊張感って、大人になると少しずつ薄れてくみたいなところもあるんですが。ああいうヒリヒリする瞬間に、僕の中で「生きてる」って感じたり、青春を感じるし。「こういう時に成長できるんだろうな」みたいなことを思ったりもしてて。そういう時期が続いてることを嬉しく思ってます。
──金井さんって、“青春”なんてあんまり口にするタイプじゃないと思うんで(笑)。いま、青春を照れずに歌えているのがすごく美しいし。『Tokyo Emotional Gakuen』とアルバムタイトルを付けられる、いまのBIGMAMAが素敵だと思います。
金井“青春”って、生声になると恥ずかしいですけど、バンドサウンドに乗った歌詞だから言えることはすごくたくさんあって。その力を大いに借りると、ここまで僕は歌詞で自由になれるんだなと思うし。自意識過剰ですけど、今回のアルバムの作詞では出来ることを全てやったと思うし、これで嫌われても屁とも思わないです。
──“歴史は振り返るものじゃない、新しいページをめくるものだ”と歌う、「History Maker」も大好きなんですけど。この曲は金井さんが作詞して、柿沼さんが歌ってます。
金井新しいBIGMAMAを届けようと思った時、「柿沼のボーカリストとしての才能をどう使うかを見直すべきだ」って認識が自分の中にあって。僕が曲書いてて、この曲の歌が一番気持ちいいだろうって予測もあったので、「柿沼の声で歌って欲しい」とオーダーしたんですが。僕にない説得力があるので、僕が歌うのとは違った説得力があったし。作詞と歌う人が違うことで軽やかさが生まれたり、良いことがたくさんありました。
柿沼僕は最初、「ちょっと歌ってもらうかも」って言われてたんですが。「ここを歌って欲しい」というパートがあまりにも多くて、「……こんなに?」って言いました(笑)。これまでもちょこちょこ歌ってたんですけど、ここまで歌うことは無かったんで。「金井が納得してくれる歌を歌うには、どうしたらいいんだろう?」と考えて、デモをかなり聴き込んで録ってみたり、自分の良いところをどう示せるか?と考えながら歌ったんですが。歌録りの日に、スタジオに行くまでにゲリラ豪雨に遭って。びっちょびちょでスタジオに入らなきゃいけなくて。「すでに何かが起きてるな」と思いながら、短パン姿でレコーディングに挑んだのを覚えてます(笑)。
金井僕も「自分で作った曲を歌ってもらうから立ち会わなきゃ」と思って雨の中、びしょ濡れになりながらスタジオに行って。玄関のハンガーラックに、びしゃびしゃの2人の服を干してレコーディングして。あんな晴れやかな曲なのに、ずぶ濡れで録ってます(笑)。

公演情報

DISK GARAGE公演

BIGMAMA初のZepp Tour開催!
「SCHOOL WARS TOUR」

2023年10月28日(土)KT Zepp Yokohama
2023年11月10日(金)Zepp Osaka Bayside
2023年11月11日(土)Zepp Fukuoka
2023年11月19日(日)Zepp Sapporo
2023年11月22日(水)Zepp Nagoya
2023年11月23日(木祝)Zepp DiverCity(TOKYO)<TOUR FINAL>

チケット一般発売日:2023年99()10:00

RELEASE

『Tokyo Emotional Gakuen』

ALBUM

『Tokyo Emotional Gakuen』

2023年10月25日(水)SALE

Subscription&Download

  • フジジュン

    取材・文

    フジジュン

    • ツイッター
    • Facebook
    • instagram
  • 近藤みどり

    撮影

    近藤みどり

    • instagram

SHARE

BIGMAMAの関連記事

アーティストページへ

最新記事

もっと見る