──あはは。そんなエピソードも含めて、それぞれアルバムで特に思い入れの強い曲や、印象的な曲を教えて下さい。
安井僕は１曲目のSE「Tokyo Emotional」を作ったんですけど。最初、金井に「『虎視眈々と』に繋がる曲を作ってくれ」と言われて、サントラみたいなオケが入った曲を作って持っていったら、「豪華すぎて、どんなバンドか分からん！」って言われてボツになって。そこから「チャイムを使う」ってアイデアが出て、いまの形になりました。
──11曲目「Tokyo Emotional Reprise」で下校のチャイムが鳴って、「Go Home Anthem」に繋がる流れも良いですよね。
安井それはマネージャーのアイデアで、直前に決まったんですが。一日の物語の終わりとしてちょうど良かったですね。
Bis僕は「5W1H」です。このアルバムは基本的に、自分の実力リミットの1.2倍くらいを背伸びして、色んなフレーズとかを試みているんですが。バラード曲の「5W1H」はレコーディング当日までに一番、固めずに臨んだ曲で。タイトルのごとく、「どこになぜ、どんな気持ちでこの音を入れるのか？」みたいに考え出したら、シンプルだからこそ、すごく難しくて。録りながら色んなパターンを考えて、みんなの意見も聴きながら試行錯誤して作り進めていって。足すことではなく、削ぎ落とすことに時間をかけることで哲学的になっていったし、それがこのタイトルにも沿っているのも面白いなと思いました。結果、「これだ！」と見つかって、通して叩いた時、すごく達成感と手応えを感じたし。すごく愛着の湧く曲になりました。足すことは簡単だけど、引くことってすごく怖くて。「本当にいいのか？」と思いながら、思い切って飛び込むというのが新境地で、とても楽しかったです。
東出私も「5W1H」なんですけど、この曲は歌詞がすごく良くて。デモが上がった時、メロディのラインも良いし、「なんてシンプルで聴きやすくて良い曲なんだろう」と思って。すごく歌詞に惚れた曲でした。「いつどこでなにがどうして？」って考えることって、自分にも起こりうることで。「人間って、一日に35,000回の決断をする」っていいますけど、自分もこんなにたくさん選択をしているんだなぁと思ったり、いまの自分にも刺さる曲でした。あと、曲として、「BIGMAMAって面白いバンドだな」と思うのは、「RULER」で。私はこの曲で自分のエモを叩き出したと思います。最後のリフが来た時、「これや！」と思って。私はイエローカード(バイオリニストが在籍するアメリカ出身のパンクバンド)にバイオリンの学びを得たんですけど、そこに帰って来れたかな？と思って、自分の好きなルーツが込められて良かったし。＜いったい何と戦ってるんだろう？＞って歌詞があるんですけど、すごい速い刻みをやりながらそんなことも思いました（笑）。
金井「5W1H」の話をもう少しすると、この曲の歌詞は30秒くらいで書いてて、デモから変えてないんです。英語の教科書を見ながら歌詞を書こうと思って、“5W1H”を見つけて、「これでいい」って。今回、かなり特殊な歌詞の書き方をしてて、定規見ながら書くとか、葉っぱを見ながら書くとか（笑）。“5W1H”は「これでサビを書こう」と思って、＜いつどこで＞って書き始めたら、あのメロディが生まれて、曲になるから不思議ですよね。
安井英語の教科書はどうしたの？
金井普通にAmazonで買った（笑）。全科目じゃないけど、なかなか進まないものだけ、教科書を買ってヒントを探しました。あと、「RULER」は技術的にみんなのギリギリのものが集約されてるというか。ドラムもそうだし、速いフレーズもそうだし、サビのピークの作り方もそうだし。一生懸命演奏してるだけでカッコいい曲って、勝手にそれがパフォーマンスになるっていうのが、自分の中の理想としてあって。それが改めて出来たし、技術的にみんなが「凄い！」っていうことをやろうとすると、曲全体が難しくなる可能性があるんですけど。この曲はそうならなかったところもいいなと思います。バイオリンのリフがカッコ良くて、ツインボーカルが成立してて、曲として完成している中に自分らしい歌詞が特に書けたと思うので。なかなか評価されるのは難しいだろうなと思う反面、BIGMAMAのクリエイトの中でも自分の濃い血が通ったものが作れたと思います。
柿沼僕はギター的視点で言うと、ハイライトや良いシーンはいっぱいあって。「ロジカルモンスター」も、今まで自分たちのバンドでやってこなかったアプローチをしていたり。「5W1H」もバッキングのストロークだったり、俺しかやんないだろうなと思うギターも入れられてて満足してるんですけど。最後の「Go Home Anthem」を近藤さんが監修してくれていて。金井の作ったデモもすごく良い感じだったんですけど、「リズムだったりをいまの洋楽と比べても良い感じに出来るんじゃないか？」って言って、骨組みを作って。結果、レコーディングした時に、ギターがすごく楽しく自由に録れました。気付いてもらえないと思うんですけど、サビのバッキングギターが最高の音が入れられて。これはやったことないなって作り方をしてるんですけど、Bisくんはちゃんと気付いてくれて「良いッスね」って言ってくれて。すごい力を抜いた曲になってるんですけど、その中にセンスやこだわりが光った曲になっていて。本当に好きですね。
──それぞれ、思い入れの強い曲も聞きましたが。新しい挑戦や成長もたくさんある、始まりの一枚を経て。次はどこに向かうのか、色んな選択肢も見えそうですね。
金井色んな選択肢というのは、良くも悪くもだと思うので。僕は「これぞ、BIGMAMA」というものの確立をもう一度したいという気持ちの方が強くて。このアルバムで軸となるものを明確にした作り方が出来たと思うので。自由な方が楽しいし、「次は何をやってくれるんだろう？」と思ってくれた方が楽しいと思うけど、僕らの中ではやるべきことがハッキリしたと思います。
──そして、そんなアルバムを引っ提げて、10月28日(土)KT Zepp Yokohamaからは、全国Zeppツアー『SCHOOL WARS TOUR』も控えています。
金井リリースからツアーの期間も含めて、ファンの方に聴き込んでもらう期間が少なくなってしまったのは、ちょっと申し訳ないんですけど。それでも楽しんでもらうだけの内容にしたいというのは、当たり前に思ってます。BIGMAMAの中で、ファンの方が“青春”とか“エモ”を感じる部分って、人ぞれぞれだと思ってて。どの時期にバンドを好いてくれて、どの曲が思い出になってるのかは分からないですけど。そこを自分たちなりに精一杯想像して「今日のライブが一番エモかったね！」と思わせることが今回、ひとつの正解になるんじゃないかと思います。再始動で５人でアルバムを作って、その最初がZeppツアーなんて、すごく贅沢なことだと思うし。Zeppのステージに見合うだけのいい音が出せる自信があるので。この機会を逃さないよう、一人ずつかき集めていきたい気持ちです。
PRESENT
サンプルTシャツ(非売品/直筆サイン入り)を2名様に！
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