――今回の3日間のライブ、どんな意識で取り組もうと思われました?
音楽をやっていく上でのチームを一新しまして。いろんなミーティングをしている中で、挑戦というキーワードが出てきて、新しいことに挑戦していきたいっていうところに共鳴したんです。その中で、“静かな嵐”、“激しい嵐” っていう切り口のライブが面白いんじゃない?っていう話が浮上してきて。そこに俺が単純に反応したんだよね。思慮深く考えて次のステップを模索する方法もあるだけど、今回に関してはインスピレーションで、面白いことをやりたいと思ったんです。ライブの準備も含めてすべてのことを楽しめるというか。いろんな生き方があるけれど、仲間たちと一緒になってワクワクしながら全部を楽しんでいく生き方っていいなと思って。だって、“静かな嵐”、“激しい嵐”って冗談みたいなアイデアでしょ(笑)。笑いながら言ってるような。しかも、会場が3日間あるんだよね、もうひとつ何か面白いことはないか?という話になって、“カバーも聴きたい”という案が出て。それで今回のように、3日間でコンセプトもメンバーも異なるライブをやることになったわけなんだよね。そのぶん、労力がすごく必要なんだけどね。参っちゃったよ(笑)。
――単純にリハーサル時間が3倍になるし?
しかも、本番が3日続くというリスキーなプログラムになって(笑)。でも、何か楽しそうな匂いがするねっていうのが今回の始まり。名前から決まったので、静かな嵐って何?、激しい嵐って何?、COVERで嵐って何?、みたいに、オーディエンスが1日1日を楽しめるようにどんなことをやろうかと考えています。準備段階もミーティングも、楽しい時間が流れてますね。
――ひらめきで決まったものがトントン拍子で進んだわけですね。
でも、誰と何をやるかがすごく大事だと思っていて。一緒にやるチームの相性がいいというか、会議な感じがしない。アマチュア時代に練習が終わった後にメンバーでミーティングしているような、そんなワクワクした感じがあって。そのワクワク感をできるだけ多く引っ張り出せたら、と思っています。直感で進もうとする、俺の性質だよね。いいねって思ったらやってみて、走り出した後でどうやってその川を渡るか考える(笑)。昔からそういうところがあったりして。どうしても経験が多くなって、いろんな考えが頭に浮かぶ年齢だけれど、そこからもう一回もとに戻したくてさ。好奇心とかワクワクが動機づけになって、楽しいことをやりたいっていう、そこにもう一回つながるような場所に自分を置きたくなっていると思うんだよ。だから、自分が一番反応している。そういう時期じゃなかったら、“何言ってるの?”、で終わったと思うんだよね。今自分が求めているものと、プロジェクトを進める仲間との感覚がマッチしているってことなんだ。
――精神的にそういう時期だったんでしょうか?前に進みたいというか。
前に進むとかどこに行きたいというより、もっと楽しみたい、ということだよね。音楽を作ることも演奏することも、全部楽しみたい。曲を作るのは大変だけれど、出来上がった時の喜びがあるから次のページを開いてしまうし、これが終わったらもうやめよう、なんて思っても、またそこで出来上がった時の感動があって次のページを開いちゃうものだし。
――守りに入るんじゃなくて、チャレンジしたい気持ちが強いんですね?
今はそっちしか興味ないみたいだね。新しいもの、やったことないものに挑戦したい。今回のライブも3日間、違うメニューで違うメンバーで行うというのも初めてなんだよ。メンバーのセレクトも新しい挑戦が満載で。慎重な部分もあるんだけど、それを脇に置いて、みんなが用意してくれるものに乗っかるのを楽しめたらなと。今までにない自分に出会えるチャンスだなって思っているよ。
――その3日間ですけど、初日が“静かな嵐”。ピアノとチェロという編成で行うことが発表されていますね?
この日は、クラシックホールから神社仏閣でのライブにつながる、ここ数年のスタイルがあって、自分でも大好きな編成なんだ。声が出なかった頃にシーラEのライブを見に行って、バンド編成にチェロがいてさ。ピアノ弾き語りにチェロが入ってくる瞬間があって、“なんて斬新でかっこいいんだろう”って思えて。今回は、この編成にどういうストーリーを持たせるかというあたりを考えてるよ。
――静かだけれど、いろんな感情が渦まくライブになりそうですね。
そうだね。T-BOLANの曲から最新の曲まで、このアンサンブルに似合うカバー曲も織り交ぜても楽しそうだよね。シックにゆったりと、大人なライブをお届けできたらと思います。
――確実にこれまでと違って聴こえるでしょうね。
ROCKなんだけどシックに洗練された音楽を感じてもらえたらと思うよ。俺のボーカルの繊細な部分、ブレスまで聴こえるようなニュアンスのコントラストもあると思うので。声っていう部分でもたっぷり味わっていただきたいですね。
――そして2日目が “COVERで嵐” ということで、カバー中心のメニュー。取り上げてほしい曲を募集されてますよね?
はい。選曲を募集してて、いろんなリクエスト頂いてますよ。80年代から今に至るまで、名曲のベスト版みたいなセットリストになりそうだよね(笑)。それぞれのアレンジも楽しみだし、今回は意外なカバー曲も楽しめたらなと思っています。
――ということは意外な曲も?
あったりするかも(笑)。イントロが流れた瞬間、“わっ!” と思えたり。イントロで分からなくても、歌が始まると“ええっ?”とか。そういう思い切ったこともやってみたいよね。そういうところでも俺たち自身が楽しめたらなと。メンバーもこの日は大御所の方たちなので、音楽経験がいろんな場面に飛び出てくればいいなと思っています。
――3日目は “激しい嵐” ですね。
これは感情に触れる、激しい曲を中心に行きいたいな。この日はバンドメンバーも若手を中心に集めてやろうと思っていて。だから、この日は初めてのメンバーばかりなんだよね。すべて挑戦だね。今までの自分だと、しっかり準備をして合わせてみようというやり方が多かったんだけど、今回はそうじゃなくて、決まったものの中に俺が入って行く。そこに自分を置いて、新しい何かが見えるのか、楽しみだよ。
――ちなみに3日間連続で、喉のコンディションは大丈夫なんですか?
めっちゃ不安だよ(笑)。でも、何とかするしかないでしょ(笑)。できるだけのケアはもちろん準備するし。3日目を気にして2日目を抑えるとか、そういう計算もしたくないしね。こういう日程、こういう気持ちなんだという事を踏まえて、みなさん遊びに来てくださいと。こういうライブの形式やストーリーを感じてもらって、自分の何かと照らし合わせてもらえたらと思うよ。もちろん、ちゃんとライブはやるけれど、“やらかそうぜ、楽しもうぜ”っていうことですから。人生を楽しもう。仕事も何もかも楽しんでやれるほうがいいにきまってる。こうじゃなきゃダメ、これが正解だっていうジャッジが多いけれど、“いいじゃん”っていう。時代がそういうところに向いているような気もしているし。楽しむために頑張るんじゃなくて、今頑張っていることを楽しむ、そのことを楽しむ、っていうやり方がいいなって思うんだよ。そういう話を同世代や下の世代の奴らとするけれど、“楽しんでる?”っていうのが最近のキーワードなんだよ。東京マラソンのランナーの応援ソングを書くことになって、いろんな方々のメッセージを読ませてもらう機会があったんだけど。ゴールをすることは苦しいけれど、みなさん、その過程を楽しんでる。ただ42.195キロを走るだけだと苦しいだけだけれど、そこにみんなそれぞれのエピソードがあって、走ること、ゴールにたどり着くことを楽しんでいるんだよね。それは人生にも言えることで。同じ事をやるにしても、楽しんでやっているのか、その先の楽しみのために今苦しんでいるのか。そういうことが全てに表現できたらいいなって思うんだ。3日間、喉が心配ですよって心配してたら力入るでしょ。なるようにしかならないしね、楽しんでいきますよ。3日目、声が出なかったら、 “ごめんね、3日目なんで” って(笑)。ケアはしますけれど、それぐらい肩の力を抜いたところで楽しめる生き方を表現できたらいいかな。
――めったにない試みなので、お客さんも貴重な体験ができそうですね。
今までこういうふうに考えてやったことがなかったから、自分でもどういう結果になるのかワクワクしてるよ。初挑戦なので、足を運んでもらって、一緒にスタートしましょう。
――3日間のマラソンですね。最終日にはいいゴールが待っていそうな?
そうだね、面白いこと言うよね(笑)。マラソンだって100人いれば100人の理由、その人なりの理由があって、それを遂げられれば走った意味があるわけだからさ。そういうようなゴールを作れたらいいなと思うよ。
――森友さん自身のキャリアの中でも有意義なライブになりそうですね。
起承転結の、節目みたいな、変わり目の始まりみたいな気がしてる。楽しみにしてほしいなと。
――何事も楽しみながらやるというのは、今後もキーワードになりそうですね。
音楽だけじゃなく、全部にそう思っているんだよ。常に選ばないといけないでしょ、どうしようかって。そういう時に一つ一つの考え方が自分のどこにあるか、どこに行くか、どう楽しむか、その楽しみ方なんだよね。旅がしたいというと、まず3日間ぐらい休みを取らなきゃって思ちゃうけど、旅なんて一時間でできちゃう。例えば、帰り道、いつもと違う駅で降りて、歩きながら何かとぶつかる、何かが起きる。知らない店で誰かと仲良くなったり、知らない人とお酒を飲んだり、いろんなドラマが生まれる。それが旅なんだよね。どこに行くかじゃなくて、どう過ごすかだから。何かのために今があるんじゃなくて、今やっていることを楽しみたいなと。
――3日間のライブが終わった後の変化が楽しみです。
初挑戦なので、自分でもどういう結果になるか楽しみなんだ。新しい自分、まだ見ぬ自分に出会えるようで、ひとつの節目になるような3日間になるような気がしてる。とはいえ、どの夜もみんなと一緒に楽しめれば、それが何より最高。軽い気持で遊びに来てください。みんな、待ってるよ(笑)。
インタビュー/岡本明