レトロリロン、次世代ブレイク候補筆頭の彼らが示す新しきバンドの音と言葉

インタビュー | 2023.05.22 17:00

怖いほどに豊かな才能、聴くほどに胸に沁みることば、微笑ましいほど仲睦まじく、うらやましいほど各自が伸び伸びと個性を主張するバンド。シンガーソングライターとして活動していた涼音を中心に、音楽大学の同級生を集めて2020年に結成されたレトロリロンは、あっという間にSNSやストリーミングなど各メディアで俄然注目を集める存在になった。初のCD作品となる最新作『インナーダイアログ』は、代表曲と新曲をバランスよく散りばめた自己紹介であり、未来予想図であり、必聴の作品だ。次世代ブレイク候補筆頭・レトロリロンとは、一体どんなバンドなのだろう?
──4人は同じ音楽大学の同級生なんですよね。涼音さんが声をかけて集めたんですか。
涼音(Vo&AG)いえ、僕が集めたというよりは、勝手に集まった感じです。バンドの発起人はタイキです。
永山タイキ(Dr)4年生の時に、みんな同じ授業を受けていたんですけど。そこで涼音のバックをする機会があって、涼音に惚れて、打ち上げで「おまえとずっと一緒にやりたいんだ」みたいなことを言ったらしいです。酔っぱらっていて、よく覚えていないんですけど(笑)。
涼音彼が僕に「バンドをやろう」と言わなければ、始まらなかったと思います。僕はチームプレーが苦手で、だから一人でずっとやっていたので。そこからあとは、ポンポンポンって決まりました。miriは、出会って5秒で加入したし。
永山階段で、すれ違いざまにね。
涼音「あ、miriいる。声掛けよう」「バンドやるから鍵盤弾いて」「オッケー」「また連絡するね」って。
飯沼一暁(Ba)「ポケモンゲットだぜ!」という感じですね。
涼音投げたら入っちゃった。で、ヌマ(飯沼)は自分からモンスターボールに入ってきた(笑)。
飯沼唯一、立候補で「入れてくれ」って。バンドを組んでることは知らなくて、でも3人が座ってるのを見てバンドっぽいなと思って、声を掛けて入れてもらいました。
──ちなみに、大学時代のそれぞれの専攻は?
永山僕はジャズドラム。
涼音レコーディングエンジニア科でした。
miri(Key)私は作・編曲専攻で、オーケストラの譜面を書いたりしていました。
飯沼4年間クラシックピアノをやっていたんですけど、(学校内に)別の楽器もやっていいよという雰囲気があって、ベースを弾くようになりました。
──全然違うルーツですね。すごく面白い。
涼音まずは試しにやってみようという感じだったんですけど、ちょうどコロナになってしまって。とにかくやれることだけをやろうということで、曲を作ったり、ミュージックビデオを作ったりしてました。初ライブも、ライブハウスでできなかったので、機材と場所を借りて自分たちで配信しました。あんまりないスタートの切り方ですけど、けっこういろんな人が見てくれたんですよね。そう考えると、コロナ禍でよく生き残ってるのかもしれない。
miri逆に良かったのかもしれないね。ライブができないから、作るしかない。
涼音バンド結成の発表も、ずらしたんです。卒業と同時に出そうと思っていたんですけど、お祝いされるような空気ではなかったので。それで6月までずれこんで、発表だけして、スタートを切って。
──それが3年前、2020年6月。
涼音早いですね。最近のことのように思えます。
──レトロリロンを組んだ当初のキーワードや、音楽的方向性というと?
涼音最初はみんなバラバラで、これはすぐ解散するなと思いました(笑)。でも僕は歌詞を大事にしていて、そこをちゃんと聴いてくれる人に伝えたいから、「自分たちが楽しいだけでは良くない。それはおのおのがやればいい」という話を、どこかのタイミングでみんなにしました。別に仲が悪いわけではなくて、「それでもこのバンドを続けたいんだったら残ってもいいし、興味がないなら辞めてもらっても大丈夫」という感じです。始めて1年ぐらいかな。
miriおのおの、「こういうミュージシャンになりたい」というものがあったと思うから。そこを一回固めておこうということだったんじゃないかな。
永山バンドとしての矢印がそこで見えたよね。歌詞をしっかり大切にするためのプレーだったり、アレンジだったり、あらためて考えたタイミングでした。
──そこで一人も離脱せず、納得してバンドに残ったと。
涼音なんか、残りましたね(笑)。
miriやめる理由も特になかったので。
涼音たぶんコロナのせいで、あまり現実的じゃなかったと思うんですね。就職とか。そういう理由もあったと思います。言い方が難しいですけど、僕らはコロナ禍だったからこそうまくいったというか、無駄なことをせずに進めた感じはします。やれることが決まっていたので、「まずこれをやって、次にこれをやって」って、世間が落ち着くまでひたすら耐え忍ぶという。
永山準備期間でしたね。
涼音音楽的には、ジャンルに縛られないように、あくまでポップスであるという主軸があれば、何をしてもいいよという話はしました。あるのは、あくまでポップスであるという一個のルールだけ。
飯沼ルールの中であれば、何をやってもいい。
涼音(アイディアを)一旦出してもらって、取捨選択は僕がして、ポップスであるかどうかの基準値を判断している感じです。これ以上やるとお客さんが入ってこられなくなるとか。僕の感覚値なんで、合ってるかどうかわからないですけど、そこはメンバーに信頼してもらって。基本は、それぞれのバックグラウンドが生きるようにしたいと思っているので。

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