──昨年6月に事務所の移籍を発表。「ここからも挑戦し続けること」を宣言して、10月に渋公にてフリーライブを敢行。バンドを取り巻く環境に大きな変化のあった2022年でしたが、いま振り返った時に2022年はBIGMAMAにとって、どんな年だったでしょう?
金井 政人(Vo/Gt)一言でまとめると、“決意表明の年”だったと思います。そこまで数年、自分たちに起きたことって、結構ドラマチックで。改めて志を一つにして、「そのためには誰とどこで何をやるか?」を見つめ直した時期に出た結論があって。それを一つひとつ確かめながら、丁寧にやってきた1年だったし、現在もその最中だと思っています。BIGMAMAというものをどういう風に感じてくれてるか?どう思ってくれてるか?というところで、新しく関わってくれた人の新鮮な意見も貴重だったし、まだ全然届いてないなとも思わされたし。そう感じさせてくれる、スタッフやチームの方が増えてくれたことが純粋に嬉しくて。BIGMAMAってバンドがオンリーワンで、スペシャリストのプレイヤーたちがいて。そこにもっと良い曲、良いボーカルが乗ってきた時の可能性をまだ信じられる自分がいるなっていうのを、より確認出来た1年だったと思います。
──「Hello, My Name Is」と名付けたフリーライブを開催したのも、その可能性を信じてですよね。まだ届けられる人がいる、まだ届けられる場所があるという。
柿沼 広也(Gt/Vo)環境を変えるということは、「いまのままじゃいけない、もっとやらなきゃいけない」という気持ちがあったからで。いまは我慢の時だと思ったり、大変だなと思うこともあるんですけど。自分たちの魅力や良さを再確認するということを、これまでなあなあにしてきたところがあって。例えば、外から見た時にヴァイオリニストがいることも大事だけど。その他のロックっぽいところが大事なのか?綺麗な演奏が大事なのか?それを自分たちで再確認する機会も無かったんですけど。新天地に行った時、「君たちはここが素敵だ」「ここがカッコいいよ」と改めて言ってもらうことで、「こうやっていけばいいんだ」というのが自分たちの中でハッキリしたし。全149曲をやろうというツアーもその一環なんですけど、もう一度BIGMAMAを見つめ直して。「初期のこういう部分もいいよね」と思えたり、自分たちでも「久々に演ったけど、全員の魅力が出てるな」と思えたり。色々を振り返るための1年だったんじゃないかな?と思うし、やっててすごく楽しいので。いまも良い課題を与えられて、必死になってやっている最中です。
──新しい環境に吹く新鮮な風が、バンドに良い影響を与えてくれたんですね。
安井 英人(Ba)そうですね。色々と新しいアイデアを提案して下さるので、僕らも改めて気付くことも多いし、そこにやりがいも感じますし。
東出 真緒(Vn/Key/Cho)客観的に見てもらうことで、自分たちで当たり前になってたことを掘り起こしてもらったり、そこで言われたことを忠実にやってみようとトライしてみたり。いま、何でも出来るし、何でもやってみたいというオープンな気持ちになれているんですが。気持ちをオープンにすることで、大事に持っていたものも自ずと分かってきたし。去年トライしたことを内側に寄せるため、いっぱいミーティングをしている中で、去年が今年に繋がってるという実感もすごくあります。いまはなんか、長年やって凝り固まってきてたものがボコッと外れて、身軽になったというか。Rebornみたいな気持ちでやれています。
──フリーライブで披露した新曲3曲を聴いて、“自分を信じて迷わず進め”という、すごくシンプルで前向きなメッセージを受け取ったんですが。話を聞いて、いまの気持ちをすごく反映しているし、いま届けたいメッセージを集約した新曲だったんだと思いました。
金井曲によって僕が書いたものもあるし、柿沼やBisが書いたものもあるんですが。日本武道館ってところに、10年を迎えた時(2017年)に立って。現在は武道館へのカッコいい登り方をもう一度考えるというか。武道館のステージに立つプロセスを作るというのが、僕らにとってすごく大事なテーマなんです。そう考えた時、今までのやり方を繰り返しても駄目だと思うし。2回目は2回目なりの違う登り方、向き合い方をしなきゃいけないと思うんですが。クリエイティブなBisが入ったことで、僕と柿沼がすごく刺激を受けて変化があったし。それが安井と東出にも波及して、曲作りの形がすごく変わったんです。
──曲作りの変化に関しては、Bisさんの加入が大きかったんですね。
金井僕はそのことで、作曲家としての寿命が延びたなと思いました。あとはこれまでも色んなジャンルや音楽や編成を好んでやり続けてきて、常にエンジョイしていたはずなんですけど。その芯にあるものを確かめるタイミングが、ここにあったんじゃないかとも思いました。Bisが曲作りに加わることで、「こういうテーマで曲作ろうぜ」って時のアイデアの分母が大きくなったというか、曲の作り方がすごく多彩になってきて。だったら曲の出所が僕じゃなくてもいいし、僕は良いメロディやフレーズに対して、絶対的な自信を持って歌詞を書く才能を持ってると信じてるので、それで勝負出来るなと思えるようになって。今後の10年、また全く違うストーリーで、飽きさせず作詞作曲が出来るなと思っています。実は去年からたくさん曲を作ってて、フリーライブで披露した曲って、その中から演奏するべき3曲に絞ったんですが。やっぱり改めて自己紹介をする時、新しい曲が無いと説得力に欠けると思った時、新たな自己紹介、決意表明に似合う曲があの3曲で。今はあの3曲が“ライブハウスでしか聴けない新曲”ということになってます。
──Bisさんは正式加入して1年となった、昨年を振り返っていかがでしたか?
Bucket Banquet Bis(Dr)加入してからのキャリアでいうと、僕はまだ生まれたてなのですが。環境が変わったり、武道館という分かりやすい旗だったり、そこに向けてのフリーライブって旗が立ったことによって、「新メンバーとか関係なく、BIGMAMAの5分の1として、いち家族として出来ることをやろう」と、軸が定まった年でした。僕はドラマーだけど、曲を書くのが好きだったんで、BIGMAMAとしてライブで披露するための曲が作れたことも手応えがあったし、嬉しかったし。このキャリアの長いバンドに新メンバーとして入ったからこそ、「僕が入ってからが一番、有頂天でありたい」と思ってるし、そうでないと僕が入った意味がないと思ってるんで。そのためにも挑戦や成長を忘れずに続けていきたいと思っているし。フリーライブや作曲制作活動だったり、内部の小さなことを詰めたり、色んな挑戦が出来ているので。いまはそれが単純に楽しいし、これからも続けていきたいと思っています。
──昨年、ライブの規制もだんだん緩くなって、お客さんも戻ってきて。ライブ活動が本格始動していったことでのバンドの変化ってありました?
Bis僕が加入したのが、コロナ禍突入の時期で。大きなステージや地方のライブハウスに立たせてもらえるようになりましたけど、色々な規制があることにすごくジレンマがあって。BIGMAMAってタフな音楽だったり、多幸感のある包み込むような音楽だったり、みんなで歌うような曲だったりというのが、すごく大事な音楽性なんで。「この状況でも心血を注いで、どう届けられるか?」というところで、2~3年一緒にやってきて。ようやく元の世界に近い形で音楽を届けられる状況になってきたのが本当に嬉しいし、ここからがまた新たなスタートラインになりそうですごく楽しみで幸せです。
──いや、Bisさんにお話聞くのは初めてですが。考えやお話も本当にしっかりしていて、すごく頼もしい仲間が入りましたね!
金井そこも含めて、自分たちにすごく足りないものを運んでくれたと思ってるし、Bisを入れる決断が出来たのはBIGMAMAのファインプレーだったと思います。ライブに関しては、『BIGMAMA COMPLETE』ツアーは“マスク着用の上での声出しOK”とアナウンスしてて。これは僕個人の考えですけど、この2~3年って、すごくアーティストとして背筋が伸びる時期だったと思うんです。配信から始まって、声を出さずにじっと観るみたいなライブをやらざるを得なくなった時、基礎に立ち返って、良い曲良い演奏という根本的なところに向き合わなければいけない。でも、強制的にそこに焦点が当たったあの時期を、僕は必然に感じたというか。自分のレベルとか演奏とか、現在地を改めて知る機会になって。そこから先のオーディエンスの反応は、ご褒美だと思っています。いい曲いい演奏が基礎にあって、その後に何が起きるかという順番を再確認する意味合いがあったんで。段階的に何かが許されるようになって起きることもあると思うんですけど、それ以前の一番大切なことを教えてもらったこの数年だったと思います。
──その時期があったからこそ、新しい環境に身を置くという選択も出来たし。初心を取り戻して、イチからやろうくらいの新鮮な気持ちでやれていますしね。
金井COMPLETEツアーに向けて、昔の曲を演奏するじゃないですか。「なんか上手いな、俺たち!?」みたいなのがすごくあるんです。いまの技術と自分たちのコンディションや考え方で昔の曲を合わせた時、僕だったら「なんて簡単に歌えるんだろう!?」と思ったり。昔はすごく力が入っていたり、正しいフォームじゃないみたいなことがあって。10年前とは違う自分を実感出来たり、手応えを感じたりしていて。「誰もやってないことをやろうぜ」ってところからの無茶振りみたいなツアーでもあるし、決して他の人には勧めないですけど。やればやったなりに、得られるものはすごく多そうです。
柿沼俺はあの時と同じことをやっちゃダメだと思ってて、いまの自分で向き合った時にどうなのか?ってところで、変わっていく部分は変えていけばいいと思うし。自分の話だと、昔はギターを入れた後にコーラスを入れると、ライブで再現出来ない無茶な瞬間がたくさんあったんですけど。いまは曲をフラットに聴いて、「やれるところはやってみよう」というマインドで向き合えていて。結果、同じ曲を演奏しても全然違う景色が見えてるし。CDを聴いてくれた人に違和感を持たせたくないから、「このコーラス欲しいよな」と思うところはなるべく頑張っているし。そう思えるのも、スペシャリストのBisが加入しての刺激もあって、「俺らも頑張らないと、この先生き残っていけないぞ」っていうのを切に感じているからで。それぞれが闘った先に、きっと新たな道が見えてくるだろうというのはうっすら思っていて。いまが我慢の時だし、頑張るタイミングだとすごく感じています。
──Bisさんはゼロから覚えなきゃいけない曲もたくさんありますよね?
Bisそうですね。とは言え、この2年間で色んな曲をやってきたんで、149曲中の幾つかは演っているんですけど……まぁ、大変ではありますね(笑)。
東出でも、ビスたん(Bis)が言い出しっぺですからね?
──え、そうなんですか!? COMPLETEツアーはBisさんが言い出した?
Bisキッカケはそうですね(笑)。例えば、自分の好きなバンドに新メンバーが入って、レアな曲とかリクエストされた時、「その時代、知らないッスから」みたいな感じだったら、自分がファンならめちゃめちゃムカつくと思うんで。何年前の曲だろうが出来るのは当然だと思って、「全曲網羅しておくべきだと思う」と話す機会があって。「春に広く全国を回れそう」という機会をいただいた時、「じゃあ、そういうツアーにしちゃおうぜ」と金井さんが提案してくれたんです。僕はこの5人でいまのサウンドで地方を回って、「よろしくお願いします」って見せに行けるのがすごく嬉しいですし。物量は半端じゃないので、盤石ではないことは当然なんですけど。「そのスリルも含めて、一緒に楽しんじゃおうぜ!」っていうのが、お客さんにとっても嬉しいんじゃないか?と思ってて。単純に「あの曲聴けた」って喜びもあるでしょうし、そんなツアーになったらいいなって思いました。
──他のみなさんは、「何を言い出したんだ!?」と思いませんでした?(笑)
柿沼いや、新メンバーが「やる」って言って、ボーカルも「いいよ」って言ったら、俺らは何も言えないです(笑)。あと、Bisとこれだけ一緒にいてバンドやってると、演奏中の気持ちが分かるようになってきて。最近は目も光るようになって表情があって、すごい笑顔で叩いてるんですけど。「いまテンパってんな」とか分かるようになりました(笑)。
東出 「いま、考えながら叩いてるな」っていうのは分かるよね?
柿沼そう(笑)。でも、そういう時も臨機応変に出来ちゃうくらい器用なんで、お客さんにはきっと分からないと思うし。演奏しながら、相手の考えてることが感じられるのも、「バンドやってるな!」って瞬間なので、すごく楽しいですね。
金井それもこれもいま、バンドのコンディションがいい証拠だと思うんですよね。「いま、絶好調です!」って、口で言うのはたやすいですけど。見た人にそれを感じてもらえるかが重要で。「全曲ツアーやろうぜ」と言えるBIGMAMAって、すごく雰囲気良いと思うし、ツアーの後のアクションもすでに見えているので。全曲ツアーというのは「コンディション良いんだろうな」というのを、説得力持って伝えられるんじゃないか? というのを含んだ提案だったんです。無茶なことはやってるんですけど、「こんな無茶を乗りこなせるだけ、いまバンドの体力と技術と精神性があるんだよ」ってことも伝えられると思うし。すごく正直なことをいうと、ここ数年で地方になかなか行けなくなって。各地にいる人たちがライブから少し遠ざかってしまったところで。俺たちがどう楽しみながら全国を回って行くか?俺たちが日本の隅々まで楽しそうに回ってる時、「楽しそうだな」と思って飛び込んできてくれるみたいなことがやれたら、一番いいんじゃないかな?と思って。このツアーには、そんな2つの側面があると思ってます。