──川嶋さんとしては、2014年にミニアルバム「紅梅(べにうめ)センセーション」でデビュー。新境地を開いてきました。その川嶋さんが、「まだ、もっと!」とやりたいことを追求しているのが、CHiLi GiRLのプロジェクトです。2020年6月に立ち上げ、今年の6月10日にファーストアルバム「MEBAE」を発売します。アルバムでは倉品さん、GIVE ME OWさんをゲストに迎え、共作もしています。おふたりと出会ったのはいつ頃ですか。
CHiLi GiRL倉品くんや、倉品くんが所属しているバンド「GOOD BYE APRIL」に関しては、EMIミュージックで新人発掘をしていた(音楽プロデューサーの)加茂啓太郎さんの繋がりで、8年ほど前に知り合いました。お互いGREAT HUNTING(※注1)の界隈にいたんです。当時から「かっこいいな」と思っていましたが、やっている音楽が全く違ったので、近いところにいるけれど「大先輩」として見ていました。一緒にやりたいですと、企画にお誘いできたのは、2018年、19年頃でした。
※注1 GREAT HUNTING(グレート・ハンティング):2000年に東芝EMI(現ユニバーサルミュージック)の新人発掘育成部門として創設され、現在に至るまで、数多くのアーティストを発掘、育成してきた。
──どんなところが魅力でしたか。
CHiLi GiRL私の音楽ルーツは渋谷系やR&Bなどで、当時彼らが掲げていたニューフォークロアっていうジャンルを全然通って来なかったんです。だから倉品くんたちの作品に触れた時、言葉が丁寧に聴こえて、声や楽器から人間味が感じられたということが衝撃でした。
──倉品さんの目には、川嶋さんはどのように映っていましたか。
倉品志乃舞ちゃんは、出会った当時から三味線とポップスを融合させたいんだという思いをにじませていて、それは新しくて、かっこいいことだなと思って見ていました。そこは今でも変わらないんですけど。
──GIVE ME OWさんとの出会いや印象を教えてください。
CHiLi GiRL美緒とは2017年に渋谷のライブハウスで対バンをした時が、初めてでした。当時は彼女がバンド「Chelsy」と現状のプロジェクトを並行してやっていたんです。すごい売れているガールズバンドのフロントマンが、ひとりでギターを持って自分の歌いたいことをバンドとは違う環境で表現していることに、ものすごい力強さを感じました。あと今日着ているファッションもそうですが、めちゃくちゃおしゃれで。話してみたら同じ年ということが分かって。初対面から今までずっと惹かれています。
GIVE ME OW私は対バンの時に初めて三味線の弾き語りと言うのを見て、「ヤバい子いる」と思いました。伝統芸能をベースに持ちながら、ポップスを取り入れている。実際にどのくらい大変なことかは分からないけれど「常識を覆すようなものなのだろうな」とは感じていて。そこを突き進んでいるカッコよさに感銘を受けました。同い年で、カッコよくて、面白い子がいる。私はあんまり対バンの子に話しかけることをしていなかったのですが、その日は自分のライブのMCでそのことを言うくらいテンションが上がりました。
CHiLi GiRLそう。MCで言ってくれたんだよね。私はすぐに遊びたくてしょうがなくて。LINEを交換して1週間後くらいには、「行きたいフリーマーケットがあるから一緒に行こう!」って誘いました。雨が降っていたのですが、雨の中で遊んで。お気に入りの服も買って。
GIVE ME OWそうそうそう。雨が降って、青春だったよね。
──GIVE ME OWさんの魅力はどんなところですか?
CHiLi GiRLだって、東京の子っていう感じでおしゃれじゃないですか! 美緒はアイデアもすごくて、グッズもかわいいし。音楽も表現も新鮮で。美緒から新しいワードを聞くことも多くて、私の中で美緒はインフルエンサー的な存在です。
──倉品さん、GIVE ME OWさんとはファーストアルバム「MEBAE」で共演しています。まず、アルバムの制作経緯についてお話しいただけますでしょうか。
CHiLi GiRLはい。アルバムの中に収録した「壊れちゃう予感がするの」でキーボード奏者の和久井沙良とフィーチャリングをして、「面白いな」と思ったことから、ほかのアーティストをゲストで迎えたいと話が進んでいきました。それまでは情報過多にならないよう、ゲストボーカルを迎えることもせずにいました。レイヤーが重なり過ぎると、音楽として届けたいものが情報で止まってしまうのではないかと恐れていたんです。でもCHiLi GiRLの活動に慣れ、キツネや三味線などがあっても、ひとりのアーティストとして届けたいものが固まっていたので、「みんなでやりたい!」という欲が芽生えていきました。迎えるにあたって、自分で作曲することを止めてみようと思い、美緒に「曲を書いて欲しい」と連絡をして生まれたのが、「MNNS(Midnight Net Shoppingを意味)」で、倉品くんと共演した「泣き虫の星」でした。私がバラードを作るのが苦手で、声もリズミカルでシャキッとしていますし。そんな私でも挑戦できるバラードを作ってもらえないかなと、勇気を出してGOOD BYE APRILさんのお力をお借りしました。
──おふたりはオファーを受けた時の印象は。
倉品すごくうれしかったですね。配信リリースされていた「壊れちゃう予感がするの」を聴いた時、僕らがバンドとして向かいたい音楽性と、志乃舞ちゃんがこれからCHiLi GiRLとしてやりたいと考えている音楽性が、近いところにあると感じたので、(バンドで)アレンジを務めてみたいと思いました。僕らが元々あるオーセンティックな曲っていうか、普遍性を持った曲と言う大元の方向性を聞いて、あと「春霞」とかキーワードが出てきていましたね。最初は志乃舞ちゃんから、ピアノの弾き語りだったかデモの音源をいただいて、それをバンドで聴いてサウンドを作って渡す。ということを3往復くらいしてアレンジを固めていきました。
──共作をして改めて気付いたお互いの魅力や、凄さはありましたか。
倉品まずシンプルに三味線のリズム感が凄すぎました。最初はこのスローな曲にどうやって三味線が乗るんだろうと思っていたのですが、最初にデモ音源を戻した時、「ちょっとラフに弾いてみた」と言われて翌日のお昼ごろに戻って来た音源を聴いたら、バチバチに三味線の音が入っていて驚いて。リズムがビタッとそろっていて、全然ラフじゃない。そこにもともと持っている力量や、底力を感じました。普通に感動しました。
CHiLi GiRL良かったです。最初に戻って来たアレンジが想像以上で。私もやってみたいことがどんどん湧いてました。気づいたら弾いていたという感じで、曲に突き動かされたような感覚がありました。
──聴きどころは。
CHiLi GiRLバラードチャレンジ1作目なので、これからもっと他のこともできるだろうなと、自分への期待も増しました。私は、倉品くんたちがバンドとして育て上げたグルーブを求めていたので、この曲を通じて可能性が広がって行けばいいなと思います。
倉品最初はジャズアレンジだったのですが、先ほどもお話した「普遍的なものにしたい」という希望を経て、バランスにこわだって制作をしました。色々な音楽的なバックボーンを感じることができると思いますし、キーワードとしてあった「春霞」感を思わせる壮大な曲に仕上がったと思います。
──GIVE ME OW さんと取り組んだ「MNNS」では歌詞を共作していますね。どのように制作を進めていかれたのでしょうか。
GIVE ME OW最初にLINEのノートに「志乃舞ちゃんが伝えたいことや、持っている言葉を載せて」とお願いしました。私は言葉のリズムを大切にして楽曲を作っているので、パズルのような感覚で、生まれた言葉を組み合わせていきました。「Midnight Net Shopping」と良いワードが志乃舞ちゃんから出てきた時、すごくかわいいなと思ってそこから着想して広げていきました。今回は志乃舞ちゃんの世界観に入って作りたかったので、ストーリーが浮かびやすかったこのワードに引っ張られて生まれた感じです。
CHiLi GiRL美緒との制作もすごいスピードで進みました。彼女はアレンジも達者なので、彼女が作ってくれたものを土台にして、ゲームっぽい音や8ビットサウンドを加えていきました。8割美緒のアレンジが、この曲の肝。美緒なしでは作れなかった曲です。