【インタビュー】まるで風のように、自由に形を変えながらどこまでも。進化し続けるピアノマン・園田涼の世界へようこそ。

インタビュー | 2021.11.13 12:00

──「赤とんぼ×家路」という曲は、日本の童謡と、ドヴォルザークのクラシック曲とのマッシュアップ、と言っていいですかね。すごく面白い試みだと思います。

マッシュアップというものが流行ったのが、5年前とか10年前だったと思うんですけど、その当時僕が思っていたのは、「そんなのジャズで50年以上前にやってるじゃん」と(笑)。コード進行を拝借して別のメロディを作るとか、コード進行が似ている曲をつなげて一つにするとか、ジャズのそういう洒落が効いているところが、僕は昔から好きなんですよね。ソノダオーケストラというユニットで、バッハの「バディネリ」とラテン音楽の「ティコ・ティコ」をくっつけて演奏することもやっていましたし、僕の趣味として、いかにも「マッシュアップしましたよ」という感じではなく、ちゃんと音楽として1曲になっていることが美しいと思う考えがあるので、それをあの2曲を使って実験してみたという感じですね。

──ミュージックビデオも撮っていて。

「赤とんぼ×家路」は、ユーチューバーの沙耶香さんという、北海道にお住いの女性が作ってくれたんですけど、それこそ、コロナ禍で彼女のチャンネルをよく見ていて、癒しをもらっていたこともあって。メールのやりとりはさせていただいていたんですけど、この曲を聴きながらふと彼女のチャンネルが浮かんで、よかったらミュージックビデオを作ってもらえませんか、と連絡したといういきさつでした。

「赤とんぼ×家路」

──「For you,You and You」も、ミュージックビデオを作られていますね。大切な曲だと思うんですが、どんな思いで作った曲ですか。

「For you,You and You」は、かなり気持ちを込めて書いた曲です。自分も30代半ばになって、ベテランではないですけど新人でもない、いい大人の年にはなったかなと思っていて、そうするとバンドの頃には頭にものぼらなかったような、たとえば家族愛や、友情や、そういうものを恥ずかしげもなく表現できるようになりましたし、そういう年頃にコロナということが起こって、自分にとってはポジティブに人とのつながりや愛情というものを感じて、表現できるようになったと思うんですけど、そういうところから生まれた曲だなと思います。

「For You, You and You」

──Youが三つもあるところに、いろんな深い思いを感じます。

インスト曲は歌詞がないのがいいところだと昔から思っていて、タイトルは自由に解釈してもらえるものにしたかったので。三つのYouが、恋人に対してYouを3回言うことでもいいですし、家族や友人、たくさんの人に向けてのYouだと解釈していただいてもいいですし、そこに対して限定的な意味はないというか、それぞれにとってのYou=あなたを、それぞれの情景で聴いていただければいいなという思いがありますね。

──アルバムタイトルの『まるで風のように』も、自由にイメージが広がる言葉です。

今回、北海道でレコーディングが終わって、そのあとからずっと頭の中にあったフレーズです。それと、僕にはいろんなジャンルの音楽をやる知り合いがいるんですが、特にクラシックの演奏家たちの言葉選びがすごく面白いんですよね。バンドマンのリハーサルでは絶対出ないような言葉で音楽を表現するというか、いまだに素敵だなと思って思い出すのは、クラシックの曲を演奏した時に「ここは風が吹き抜けるように」という表現をして、何をキザなことを言ってるんだと最初は思うんですけど(笑)。自分でそれを演奏してみると、ものすごく納得するんですね。「風が吹き抜けるように」って、「おっしゃる通りです」というぐらいすごく理解ができる。指揮者の方も、それぞれに素敵な言い回しをお持ちの方が多いですし、そういうことも思い出します。

──そして、久々のコンサートがあります。東京公演は、1月8日のヤマハホール。大阪公演は、1月10日のザ・フェニックスホール。どんなコンサートになりそうですか。

コロナが起こってから、本格的なソロライブをずっとやっていなかったんですね。なのですごく思い入れがありますし、一生の思い出になると思います。いいピアニストはホールでの楽器の鳴らし方が優れていて、5年前にもヤマハホールでやったことがあるんですが、その頃は全然コントロールできていなかったと思うので、果たして自分はホールの響きを味方に付けられるか?ということが、自分として楽しみです。できるかできないかはわからないですけど、それを判断する耳は育ってきていると思うので、ああいう場所で自分がピアノに対してどういう体の使い方をするんだろう?ということが、個人的にすごく楽しみにしているところです。

──ピアノ一台で勝負する。

そういうことになりますね。今はフルオーケストラから、バンド編成から、いろいろやらせてもらっているので、自分一人でコンサートをさせてもらえるのが本当にありがたいなと身に沁みて感じます。特に今はこういう時代ですし、バンドの頃もお客さんに「ありがとう」とは言っていましたけど、より一層感じて演奏できるんだろうなと思います。

──久々に会えることを楽しみにしているお客さんに、言葉をもらえますか。

自分の音楽を応援してくれる方、愛してくれる方を本当に大切に思っています。って、デビュー直後の新人みたいなこと言ってますけど(笑)。今までこういうことを真正面から言えなかったんですが、本当にみなさんのことを大切に思ってピアノを弾くので、それがもしみなさんの心に触れることがあったら、その気持ちを僕に返してほしい、というと変ですけど、年々そういうつながりをすごく考えるので、舞台と客席との関係ですけど、その空間の中でのみんなのつながりを感じられるようなコンサートにしたいと思っています。

PRESENT

直筆サイン入り!NEW ALBUM『まるで風のように』を2名様に

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