──トリビュート・アルバムは、自分たちで制作しないからいいとしても、劇伴もあったじゃないですか。
カワイまあ、今年は、劇伴が立て込んで……8月9月は、何本?
井上4本ぐらい?
カワイその4本ぐらいが並行で走ってて、今、だんだん終わって来てるんですけど。
──本業の劇伴作家の量ですよね。
カワイ本業の劇伴作家でも、こんなに同時期にかぶらないと思います(笑)。ライブもやりつつ、アーティストとしてのアルバムを作って、その合間に劇伴……いや、どっちかっていうと、今回のアルバムの方が、劇伴の合間に録ったみたいな感じ(笑)。
岸本確かに。
カワイ同業の劇伴作家の人にも、「そんなに同時にやる人、いないでしょ。引くわ」って言われましたね(笑)。
井上まだ、今こういう世の中で、ライブがあんまりなかったんで。ライブが入ってたら、どんなことになってたんだろう、っていう。
──で、その合間に『XRONICLE』を?
カワイそうですね。先にスケジュールを切って、この日にレコーディングするから、曲をそれまでに間に合わせる、っていう。自分たちで発注して、締切作って、みたいな。
岸本とりあえず、劇伴の仕事が本格化する前に、違うテイストで、僕は4曲ですけど、アルバムの指針になるんじゃないか、っていう曲を作って、メンバーに送るところからスタートして。で、劇伴の仕事と並行しながら作って、レコーディングの初日にギリギリ譜面が上がってくる、みたいな。他のロック・バンドとかだと、事前に曲を作って、プリプロでアレンジを詰めて、レコーディングだと思うんですけど、我々は、レコーディング当日に、初めてその曲を合わせるので。プリプロをやらなくても、メンバー3人それぞれが、自分の曲の完成図を描いてるからできるんだと思うんですけど。
カワイ『NEBULA』の時に参加してくれた、9mm(Parabellum Bullet)の滝(善充)くんに、「絶対ありえない」って言われました(笑)。
井上僕ら、ミックスするまで、全体像を見れてない曲もあるし。ミックスでやっと、「あ、こういう曲になるんだ?」みたいな。
──ほんとに気持ちいいくらい、1曲1曲バラバラですよね。
カワイピアノ・インストのバンドだから、こういう傾向の曲、とかいうふうに、似通った曲が多い人たちもいるわけですけど。僕ら、なんでもかんでも入れちゃうんで。ジャンルかぶりというか、そういうのはアルバム内で起きない方がいいなと思っていて。
録り終わった時は、どんなアルバムなのかが、まったくわからない(井上司)
──生演奏ですけど、トラック・メーカー集団のアルバムみたいな感じもしました。
岸本ああ、6曲目のつかっちゃんの曲(「Time / Break」)とか、生で叩いているけど、エレドラを使うっていう。俺らが作る曲は生ドラムなんですけど、ドラマーの作る曲が打ち込みやったり。
カワイそれに、生楽器で打ち込みサウンドを再現しよう、みたいな努力は、する必要ないかなと思っていて。打ち込みと共存した方が、いいものができるんじゃないかな、って。
岸本それは、7枚目のアルバムまでで、いろいろやったからですね。人力でドラムンベースをしたり、ピアノとかベースにエフェクトをかけたり。それが終わって、8枚目の『DISCOVERY』から、どんどんサウンドのバリエーションを追求し始めてますね。
──1曲1曲バラバラだから、アルバム通して聴かないと、どんなバンドなのかわからない。だから「次の曲、どうなるの?」って、続けて聴きたくなる。ただし、1曲1曲バラバラでキャラが立っているから、逆にその1曲だけ聴かれても成立する。
カワイそうですね。すごく多面的だと思います、今のfoxって。
岸本まあ、天の邪鬼な部分もあるので。fox capture planってこういう音楽でしょ? って思ってる方の、予想を裏切っていきたい、っていうのも、毎回あるんですけど。それが顕著に出たアルバムかな、と思いますね。
──で、最後に通して聴いて、「ああ、こういうアルバムだったのか」とわかった?
カワイミックスの段階でアレンジが完成するというか、最終的な全体像が見えてくる。
井上録り終わった時は、どんなアルバムなのかがまったくわからない。「大丈夫かな」って思ったぐらい、わかっていなかったので。ミックスして「え、すげえいいじゃん!」って。
カワイそう、ラフミックスが終わった時とか、「うーん、大丈夫かな」ってなるんですね。
岸本でも、初期から……「衝動の粒子」っていう曲も、そんなふうにできて。いまだにライブで必ずやる定番曲ですけども。ピアノを重ねて、難しいキメとか変拍子があったりして。録ってる時は、メンバーもいまいち──。
カワイ全然ピンときてなかった(笑)。
岸本『DISCOVERY』も、いろいろ挑戦しながら作っていったんですけど、そういう意味では、『DISCOVERY』でやったことや、『NEBULA』でやったことで、より手応えを得て、『XRONICLE』で、ひとつの形にできた。新しい、第二のfox capture planを確立できたな、と思いました。
井上10枚目にふさわしいアルバムができた、っていう感じですね。マスタリング終わって、最後に聴いて、やっとそう感じました。
──で、ツアーがありますが。
岸本日程的には最後なんですけど、日本橋三井ホールの初日は『NEBULA』、2日目は『XRONICLE』というタイトルにしてるんです。で、そこまでの各地のツアーもあるんですけど、まだライブでやっていない曲の方が多いので。でも、10周年なので、今までの代表曲を聴きたいっていうお客さんも多いと思うので。やらないといけない曲が多すぎて、難しいですね。うれしい悲鳴というか。
カワイちょっとね、曲が渋滞してるからね。
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