大人の年齢になって思うこと、感じること
青木 では、ちょっと話題を変えます。今や僕たち66年生まれもすっかり大人の年齢になっているわけですけど、そもそもは大人って遠い存在で、むしろ反発するような対象だったわけじゃないですか?それがこうして歳をとってきて、その大人であることを今はどんなふうに思っているのかを話したいんですけど。
宮田 ロックには、それこそDon’t trust over 30――「30歳以上の奴らの意見なんか信頼するな」という言葉がありますもんね。でも僕は早く歳をとりたかったので、あんまり抵抗はないんです。それは今もそうなんですけど。だけど……他人の話をますます聞かなくなってくる傾向にあるので、それに気をつけるように心がけてますね。
青木 (笑)そうですか。他人の意見を聞き入れるんじゃなくて、だんだん聞かなくなってきていると。
宮田 人の話を聞くのを意識するようにしないと、ずいぶん外れていくんだろうなって思う。あと、僕の同級生で「最近の音楽はつまらない」みたいなことを言い出してる奴を見ると、「あ、こいつは危険だね」と思うようにしてますね。だから……とにかく話を聞くとか、新しい音楽に触れるぐらいはしてないと、自分もダメになっていくかなと。息子が新しいサウンドを聴いたりしてると……RADWIMPSぐらいからだったかな、最初は全然わかんなくて。ゲス(の極み乙女。)にしてもね。でもやっぱり新しいサウンド感の中に見つかる面白いことって、たくさんあるんですよ。だからちょっと大変だけど、それを聴くようには頑張ってはいるんです。
青木 ああ、大変だと感じてしまうんですね。どこかで。
宮田 フェスとかに出ると、若いバンドなんてほんとわかんないし、入り込めないところもあるんですよ。だから、そこを意識して見たりするんだけど。でもこのROOTSのライヴは、頭から終わりまでみんな、自分が通ったサウンドを出してるんですよね。やってる音楽は違っても、僕が聴いてきたポップスやロックのエッセンスが散りばめられてるから、どこを見ても楽しいというか。だからたまに客席に行ってみたりもするんです。そこもいいイベントですね。
青木 そうですね。渡邊さんは、歳をとっていくことについてどうですか?
渡邊 僕、精神年齢が21、22ぐらいで止まってるんですよ。完全に!もう考えてることもレベルも、ほぼずーっと、あの頃のまま!
青木 (笑)レベルは上がってるんじゃないですか?さすがに。
渡邊 いやいやいや!それは感覚が若くて冴えてるってことじゃなくて、考えてることがそれ以上、歳とらないんですよね。
宮田 いいじゃない(笑)。それでいいです!
渡邊 で、今、和弥さんの話を聞いてて、やっぱり作り手と、僕らみたいなそれを広める側の人間の違いを感じました。僕、シングル盤が大好きで、だから『ベストテン』みたいな番組が好きだし、すごくミーハーなんですよね。だから「この曲いいな!ああ、あれはゲスなんだ!」ってすごく思ったりします。最近はback numberとかすごく好きですね。で、和弥さんはどっちかというとサウンド(重視)のほうなのかな。僕は歌声とメロディ、みたいな聴き方なんです。だから洋楽と邦楽の聴き方が変わらないんですね。
青木 そして、それをいまだにミーハーとして聴けると。
宮田 それは素晴らしいね!
渡邊 (笑)はい。ミーハー的に「いい!」と思う数は、自然と減ってるかもしれないですけど。ただ、その感じ方は変わらないですね。
青木 僕は、新しい魅力のある音楽は相変わらず面白いと思いますね。これがね、高校野球を見るのとちょっと似てるんですよ。高校野球は子供の頃から好きで、自分が同じ高校生になっても好きで、それを超えて大人になった今も好きなんです。こちらの年齢とか立場を超越した魅力がつねにある世界というか。それは音楽も同じなんですよね。もちろんそのアーティストの年齢や世代によっても、自分との価値観や感じ方、考え方の違いはあるでしょうけども、それも含めた新しさが楽しかったり刺激的だったりするし、カッコいいなとも感じます。それが10代から続いてる感じですね。だからこの仕事ができてると思いますけど。
渡邊 へえー!そうなんですね。
宮田 それはうらやましいな。自然に、ストレスなくできてるんですね。だから僕はちょっと意識して、無理しないと、なかなか聴けなくなってきてますね……ちょっと止まっちゃってるんですよね。
青木 だから心をより開こうとしてるんですね。でもそれは渡邊さんが言われたとおり、和弥さんのように音楽を作る側のアーティストは、また違うんでしょうね。
渡邊 そういえば今日、すごいことがあったんですよ。記者会見の受付にいたら、取材に来ていたテレビ番組のスタッフのひとりが「渡邊さんだよね?渡邊邦夫だよね?」って言うんです。「エッ?」と言ってたら……そいつ、高校の同級生だったんですよ。さっき名刺もらったんですけど。
宮田 ええ~っ!?ひさしぶりに会ったの?
渡邊 というか、卒業して初めて!
青木 じゃあ32年!?……じゃないな、31年ぶりとかですか?
渡邊 そうなんです!で、「よくわかったね」って言ったら、「お前、全然変わってないよ!」って。それがいい意味なのか悪い意味なのか、わかんないですけど(笑)。それで思ったんですよ。そいつ、もう10何年もテレビのカメラやってるらしいんですけど、何で今まで会わなかったんだろう?って。今日会ったのには運命を感じましたね。
青木 呼んだんですよ、きっと。このイベントが。
宮田 引き寄せの法則(笑)。すごいね!
渡邊 このROOTS 66は「出演者が66年生まれだから、じゃあスタッフもそれで揃えようよ」って、ほんとに66年生まれのスタッフから探してるんです。だけど、まさか取材で来た人たちの中にほんとの同級生がいるとは思わなかったですね(笑)。あまりにも出来すぎですけど、作り話じゃないですよ。
(第3回に続く 次回2月28日掲載予定)