埼玉発のミュージック&カルチャーフェス『ぐるぐるTOIRO 2016』が、12月10日・11日の2日間にわたって<さいたまスーパーアリーナTOIRO>にて開催される。
都市型フェス黎明期から異彩を放ってきた『ぐるぐる~』だが、その代表である川瀬拓さんにインタビューを依頼したところ、「普通の内容じゃ面白くない」ということで、“ぐるぐると縁が深いアーティスト”との対談形式で行うことが決定。そこで川瀬さんに提案していただいた対談相手は、今なにかと話題のラッパー、DOTAMAさん!
これまで5度出演しているという、まさに『ぐるぐる~』シリーズとともにキャリアを築いてきたとも言えるDOTAMAさん。今回は川瀬さんと共に『ぐるぐる~』の変遷を辿りつつ、過去出演時のエピソードや今年の展望、さらに現在のヒップホップシーンや、社会現象と言っても過言ではないムーブメントを巻き起こしている「フリースタイルダンジョン」に至るまで、ざっくばらんに語ってもらったので、前後編に分けてお届けする。
TEXT&PHOTO:有賀 誠文(Captain And Me Inc.)
いまや埼玉名物となった『ぐるぐる回る』、川瀬とDOTAMAのファーストコンタクトは?
DOTAMA 今年も素晴らしいメンツですね。
川瀬 ちょっとアンダーグラウンドな感じにしようかなと思って。都内でやってる“ロフトっぽさ”を埼玉でやったらどうなのかな?って。
DOTAMA おっしゃりたいことは分かります。『ぐるぐる~』は“埼玉でやる!”っていうこだわりがあるわけではないんですか?
川瀬 もともと、2008年から都内で『廃校フェス』っていうのをやってたんですけど、2年やって場所が使えなくなって。当時の代表の竹内(知司。2012年逝去)が「埼玉スタジアムのコンコースを使うのが面白いんじゃないか」って言って始まったんですよ。それが2010年。
編集部 DOTAMAさんの初出演は2011年になるんでしょうか?
DOTAMA そうですね、3枚目のアルバム(※『ホーリーランド』)をリリースした時。その曲をステージでやらせてもらったのがすごく記憶に残ってます。
川瀬 曽我部恵一BANDがトリを飾った年ですね。その後、2012年の1月に代表の竹内が亡くなって、じゃあみんなで(引き継いで)やろう、って。
DOTAMA でも、今となっては埼玉では欠かせない、名物フェスになってますよね。
川瀬 もともと僕は学生時代に埼玉の熊谷でバンドをやっていて熊谷のライブハウスによく出演をしていたんですが、埼玉はなかなか音楽シーンが盛り上がらないなぁと思ってて。埼玉でやるっていうのは他にないから面白いなって、それでさらに頑張るようになったので、僕は思い入れあるんですけどね。
DOTAMA 僕は13年前から(DOTAMAとして)活動させてもらっていて、その頃から埼玉のヒップホップシーンを見ていましたが、かなり盛り上がっていたと思います。
こういう言い方をすると失礼かもしれませんが、埼玉ってどうしても“東京のベッドタウン”みたいなところがあるじゃないですか。でも人口がすごく多いので、必然的にヒップホップ人口も多くて。近年は<浦和 CLUB BASE>さんが閉店したりもしましたが、川越の<CLUB G-style>さん、大宮の<444quad>さん、春日部や色んな場所にも格好良いラッパーがいっぱいいて、依然としてしっかりしたシーンが根付いていると思います。
今って、フェスに限らず小さなイベントでも、色んなジャンルの方が一緒に共演するじゃないですか。アイドルさんやバンドさん、ラッパーも普通にバンドさんと一緒のイベントに出ますし。それは今でこそ普通になってますが、『ぐるぐる~』さんは5~6年前からどんどんミックスしてやっていらっしゃった。
川瀬 (手元の資料を見つつ)BiSも2011年から出てもらってますね。今でこそアイドルのシーンってスゴいけど、モーニング娘。くらいしか知らなかったので(笑)、まだ当時は自分たちで物販に出て、みたいなのは珍しいなぁと思ってて。
僕がよく覚えてるのは、2012年はthe telephonesとFragmentがメインステージだったんですよね。そこに空也MCとDOTAMAさんが出た。
DOTAMA なつかしいですね。Fragmentにくっついて出させてもらったんです。
川瀬 Fragmentは大宮のレーベルだから、埼玉を盛り上げたいっていうのはよく言ってて。でも、なんで<術ノ穴>(Fragmentが主宰するレーベル)からDOTAMAさんの作品をリリースすることになったのですか?
DOTAMA 僕は栃木でサラリーマンをしながら音楽をやっていたんですが、あるイベントにFragmentがツアーで来ていて。僕のライブを見て「おもしろいラップするね。ウチのレーベルから音源出さない?」って言って頂いて。それから10年くらい一緒にやらせてもらっています。作品を7枚リリースさせてもらっていますが全て<術ノ穴>からです。ジャンルレスなレーベルなので、シンガーソングライターもいればバンドも、ラッパーもいる。もともとは主宰のFragmentがヒップホップのトラックメイカーなのでヒップホップのアーティストがメインでしたが、2010年代からは“面白くてカッコイイ”がリリースアーティストのキーワードになったと思います。
川瀬 2012年にFragmentに出てもらったときはバタバタしてて観られなかったんですけど、3ヶ月後くらいに居酒屋で偶然『ぐるぐる回る2012』に遊びに来ていたお客さんに遭って「何が良かったですか?」って聞いたら「メインステージに急にサラリーマンのラッパーが出てきて、スゴい持ってかれたんですよね」って言われて(笑)。そこで初めてDOTAMAさんを意識しました。
DOTAMA 今でこそ女性にも男性にも、色んなスタイルがミックスされたアーティストがいますが、昔は僕みたいなラッパーはヒップホップのシーンからは受け入れてもらいにくかった。自分の力不足もありますが、どんなシーンでも、極端に新しいことをやるとちょっと敬遠されてしまいますよね。
川瀬 僕もヒップホップには怖いイメージがあったので、すごく新鮮だったんですよ。で、2013年に熊谷の<HEAVEN’S ROCK>で曽我部さんのソロとFragment&DOTAMAの2マンライブありましたよね? 僕それ観に行ってて、そのとき初めてちゃんとDOTAMAさんとお話したのを覚えてます。そのとき印象に残ってるのは、泉まくらさんがガッときてる時だったんですけど、「僕ももっと頑張らないと」っておっしゃってて。
DOTAMA お恥ずかしい……(苦笑)
川瀬 でも、今はその通りになってるから。
やはり「フリースタイルダンジョン」の影響は大きかった?DOTAMA快進撃のきっかけと揺るぎないヒップホップ愛
DOTAMA 僕は“MCバトル”というもので名前を知ってもらっているところがあります。ラッパー同士が即興でラップをして、攻撃し合い、技術を競う。今それがムーブメントになってる。ここ3~4年は右肩上がりにそのムーブメントが盛り上がっていて、地上波でMCバトルの番組が放送され、それに僕も出演させていただいている。ただ、お客さんが増えたのはMCバトルの盛り上がりだけじゃなく、時代が変わったからっていうのもあると思うんですよね。今は色んなものがミックスされた、新しい感覚をお客さんもなんとなく求めてる気がします。だから「ラッパーだけど何か違う」みたいな、王道じゃない僕のようなアーティストも見てもらえるのかなと。それは本当に有り難い事ですし、良いものをお見せ出来るよう、精進しないとと思います。
川瀬 僕はあまりヒップホップに明るくないんですけど、DOTAMAさんみたいな人ってあまりいないんじゃないですか?
DOTAMA 実はけっこういらっしゃると思います。ただ、バトルブームで「ラップ」というツールを使う方はミュージシャンやタレントさん、ジャンルを問わず増えましたが「ヒップホップ」を表現しているかというと少し違う話になってくる。もちろん、ジャンルレスに産み出される新しい表現のラップはとても楽しいですし、自分も少なからずやらせてもらっています。自分は俗にいう、王道なヒップホップのスタイルではないですが、自分なりの最高のヒップホップは表現しているつもりで。サブカルのアーティストさんやアイドルさん、バンドマンの方でもラップをする今の時代はとても楽しい。そういう最高の時代だからこそ、自分自身の「ヒップホップ」をブレずに表現していきたいと思ってます。
川瀬 状況は変わったけど、スタンスとかやってることはずっと変わってないと。
DOTAMA 僕自身毎年『ぐるぐる~』さんに出演させていただいて、とても光栄な反面、本当に多種多様なアーティストさんがたくさん出てて、最初はけっこう戸惑ったんですよ(笑)。「うわ、こんな人もいるの!?」みたいな。でも価値観をブレさせずに、自分が本来やるべきことをバシッとやるっていうことは『ぐるぐる~』さんに学ばせていただいた部分です。
川瀬 いやいや、そんな(笑)。そこはDOTAMAさんが変わらぬスタイルでやってるからですよ。
DOTAMA もちろん、変わったことをしているだけじゃダメじゃないですか。それが突き抜けて、エンタテイメントにならないとアーティストではない。それはラップを始めた頃から現在でも、常に自分に言い聞かせながらやらせてもらってます。
特に印象に残っている『ぐるぐる~』は?