インタビュー/東條祥恵
ビジュアル系バンドがまた一つ、この世から姿を消す。これは、バンド解散を直前に控えたあるバンドの貴重なインタビュー。あるバンドとは、結成から10年、これまで独自のスタイルで感情をぶちまけ、メンバー脱退の危機に襲われても止まることなく走り続けてきたSCREWのこと。11月1日、東京・TSUTAYA O-EAST公演をもってバンドを解散する鋲(Vo)、和己(Gt)、マナブ(Gt)、ジン(Ds)が4人揃って解散発表後の心境、SCREWの10年、これから迎えるラストライブ、その後について赤裸々に語ってくれた。
──今年5月2日 、活動10周年ツアーを終えた直後に突然解散発表をされたときの周りの反響はどうだったんですか?
ジン(Ds) じつは、10周年を迎えたときに解散は決めてたんですね。
──えっ!そうだったんですか?
ジン はい(苦笑)。でも、そういうおめでたいときに解散を伝えるのはどうかなということで、発表をずらしたんです。だから、僕ら的には10周年のツアーを回ってるときから解散を感じながらも、ファンのみんなからは楽しそうな笑顔で「おめでとう」といわれるというのが、ある意味心苦しかったんです。そのツアーを終えた後の発表だったんで、ファンからは「なんで?」という声が多かったですね。でも、少数派の意見ですけど「薄々は感じてはいました」というのもあって。10周年ツアーのときに、僕らの表情に出ていたのかなと思いました。
鋲(Vo) 反響ですよね?あんま聞かないように、見ないようにしてました。10年も支えてきてくれた子たちに対して、解散するというこの現実は非常に辛いと思うんですね。申し訳ないなという気持ちが大きくて、ファンの子の声とか、ツイッターのリプとかは見ませんでした。自分も心苦しくなるので。最近やっとです。落ち着いてきて、ファンの子ともしゃべれるようになったのは。
マナブ(Gt) 僕は、逆に発表直後に頂いたメッセージとか、ラストツアーで解散の重大さを肌で実感していってる感じですかね。あまりにも日常的にライブをやっていたので、それが解散で途切れるというのがいまいち想像がつかなかったんですよね。ファンの方からは「今までありがとうございました」とか「最後まで応援したいと思います」とか、僕の方にはそんなにネガティブな意見は届いてないですね。だから、ここにきて改めてファンの人は力強いなと実感してます。
和己(Gt) 僕はそういった周りの反響よりも自分自身の気持ちのほうが複雑でした。気持ち的には、発表後よりも発表する前の方が心境的にはとても複雑で。とにかく、これまで応援してきてくれた子に申し訳ない。そういう思いでいっぱいでした。
──そうでしたか。そうして突入した「SCREW LAST LIVE TOUR“BREATHE ONE’S LAST BREATH…”」。こちらはどうですか?
ジン 10年やってきたいろんなものが詰まったツアーになってる気がします。ラストツアーなので、やはりセットリストの1曲1曲を噛み締めながら演ってるなというのを実感しますし。ファンのみんなが1曲1曲に力を込めて聴いて、ノってくれてるのも分かりました。あと、僕は自分のライブ中の動画を撮ってるんですけど。それを家で編集してるときに、解散を決めたのは自分たちですけど、たま〜に寂しい気持ちになったりもしますね(微笑)。
鋲 まず、僕の中では解散を発表した時点でSCREWは終わってるんです。本来、そこで終わるのが綺麗だと思うんですね。実際、ツアーで回ると、ファンの子がすごい熱いんで、解散パワーって凄いんだなとまず感じました。これまでコンスタントにライブをやってきたけど、その日常がもう無くなる訳ですからね。寂しいとは思うんですけど、後悔しないように暴れてくれてるなと感じてます。僕自身も解散を決めたことは後悔していなくて。そのお陰で、すっきりした気持ちでステージに立ててるんですよ。もう、先のこととか考えなくていいので。
──そういう気持ちでステージに立てたのは久々ですか?
鋲 そうですね。解散が決まってなければ、いつものようにその先にあるスケジュールに向けていろいろ考えていかなきゃいけないですから。でも、いまはそこがないので、変なプレッシャーとかないんですよね。
マナブ ツアーで回ってるところは、これまで何年も何回も行ってるところなんですけど。自分は、SCREW解散と同時にステージに出るのは止めようと決めているので。
──えっ!!そうなんですか?
マナブ ええ。だから、これまで自分がやってきたことにケリをつける気持ちでツアーに出て。結果、いままでやってきたなかで一番自分らしく、透明な気持ち。本来こうあるべきという気持ちでやれてる気がします。毎回いろいろ考えてステージに立ってたんですけど、いまは何も余計なことを考えずにステージに立ててるので、今までで一番楽しいツアーかもしれないです。個人的には。
和己 ツアーをやってる感触は、僕も今までとはまったく違いますね。もう2度と行けない地方とか、ツアーで行ったすべての会場にこれまでSCREWとして刻み込んできた思い出がありますから。そういうことを感じながら、僕はこのラストツアーを回ったことで、解散するんだっていうことを自分自身やっと実感していった感じですね。
──セットリストは各地変えてたんですか?
鋲 毎回バラバラでした。久しぶりにやる曲とかあったんで、歌詞を覚えてない曲とか(笑)緊張感はありました。いまんとこ歌詞はとんでない気はします。
ジン …そうだっけ?(一同笑)
鋲 だから、そういうのもいまの状況だと最後にレアなもの見たってことになるから(笑)。歌詞がとぼうが、昔の曲をやるということに意義があると思うので。
──ツアーでは終演後にファンの方と握手会もされてましたけど。ファンの方にかけてもらった声のなかで印象的だったのは?
ジン 「見えませんでした」です(一同爆笑)。僕がドラムの動画をアップする決め手となったのはその言葉なんです。それから3日に1回アップしてるんですよね(微笑)。
鋲 僕はファンに喋らせる隙を与えないように「水、めっちゃかかっちゃったね」とかこっちから話を振って、人が流れるのを待ちます(笑)。でも、解散発表直後は大変でしたよ。「まだ半年あるのに泣くの早ぇな」と思いながら、こっちも(涙を)もらいそうになりました。だから、前半はサングラスかけて、表情を悟られないようにメイクもすっごい濃くして握手してました。最近は解散に向かう環境にも慣れたんで、ニコニコでファンを送り出してますけどね(笑)
──ふはははっ(笑)。半年ありましたからね。
鋲 でも、泣いてる子を見ると“それだけSCREWを愛してくれてたんだな”“SCREWやっててよかったな”と思いますよ。終わりに近づくにつれ。
──そんなしみじみした発言を鋲さんから聞けるとは(微笑)。
鋲 普通に活動してるときはいつも何かに追い詰められて、結果を出し続けていかないとバンドは続けていけない訳ですからね。そんなこと考える余裕もなかったんですよ。でも、終わりが決まると気持ちが途端にフラットになって。逆に気持ちがフラットになりすぎて、緊張感が途切れたのか体調悪いんですけどね(←当日は風邪気味)。何の話でしたっけ?
──ファンの方にかけてもらった声のなかで。
鋲 ああー、それね。いわれて“ドキッ”としたのは、サディが活休したときに、その直後のライブで「俺らは大丈夫だから」っていってたんですよ。実際そのときは解散とか頭になかったんで。それ以降出てきた話ですから。でも、ファンの子からしたらそんなこと知ったこっちゃねぇって感じですから。「嘘つき」「言ってたことと違うじゃない」といってくる子もいて。それはドキッとしましたね。
マナブ 僕は「やめたらどうするんですか?」というのをよく聞かれました。この前もファンの人に聞かれたんで「月に帰ります」といったら「何いってんの!」って顔をされました(一同笑)。自分では「居酒屋でバイトします」とか「就職先探します」って現実的なことをいわれるよりも全然夢があることをいったつもりなんですけど、伝わらなかったですね(笑)。
和己 僕が印象に残ったのは「SCREWが私の青春でした、今までありがとうございました」という言葉ですね。地方の子なんですけど、そのライブが彼女にとって最後だったんだなって思うと…正直気持ちが追いつかなくて解散する実感があまりなかったんですけど、その言葉で色々感じました。
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