──森重さんの声帯ポリープ手術を経て、“森重樹一完全復活祭!”と銘打った全国ツアー『GET THE FxxK OUT‼』が始まりました。まず、声帯の手術についてお伺いしたいんですが、「これからも歌い続けていくために」というところで、手術を決断されたんですよね?
そうですね。歌い方がハードな人はどうしてもポリープが出来ますから、切ってから回復までどれくらいの期間がかかるのか?どれくらい悪くなったら支障が出るのか?を知りたかったし。ポリープがあった頃は僕の中で7割5分くらいしか、やりたいことが出来ていなかったんですが。手術後はイメージしたことが9割方出来るようになったので。いま、すごく良い状態で歌えていることが本当にありがたいし、何年後かにまたポリープが出来た時も、これくらいでリカバリー出来るっていうのが分かって。結成35周年という節目で、一度オーバーホールするにはちょうど良いかなと思って決断したんですが、本当にやって良かったと思っています。
──「前々から声が出づらい箇所があって、ポリープが邪魔してるってところで合点がいった」というお話も聞きました。
そうなんです。「なんでこの音出ねぇの?」ってことが多くあったんですけど。今回、自分自身の声帯について先生から詳しい説明を受けたり、スケールを鍵盤に合わせて、どこまでの音域が使えるかという確認も出来て。運があるというか、僕の音楽人生において必要な時間だったんじゃないかとさえ思いました。術後3日間は全く声を出してはいけなくて、4日目から少しずつ喋っていったんですが。最初喋った時、低音域が全然出なくて。それはなぜかというと、声帯にタコが出来てる状態の時は重量があって太い音が出るんだけど、ポリープを取り除いたことで軽量化されてしまって、低音域が出づらくなっているんですよね。そんな一つ一つが理にかなってるし、半年もすれば低音域も問題なく出るということで、何の心配もなくて。この間測ったら、高音も低音も上下に一音伸びていて、ちゃんと回復出来てるってことを確認出来たんです。
──ファンの人は今ツアーでいまの歌声を聴いて安心すると思いますが。その前に最新作「I STAY FREE FOREVER」の力強く伸びやかな歌声や圧倒的な声量を聴いてビックリすると思います。
今までもレコーディングでは最良の声を録音しようと思っていたんですが、明らかに疲れた喉のリカバリーの速度も早くなってるし、手術後の変化が上手く録れてると思う。物凄い良いコンディションで臨んだわけでなく、あんな感じに録れたので。状態はすごく良いと思います。ツアーも体のケアに気を使って、インフルエンザの予防接種もその病院で今年も一番最初に打ってきたので(笑)。体調に関しては多くのシンガーがナーバスになる時期ですが、一本一本のツアーを最善の状態で出来るよう、臨みたいと思っています。
──今回の全国ツアー『GET THE FxxK OUT‼』は、全26箇所とかなり長いツアーになります。
今回は久しぶりにバンドらしいツアーが出来る喜びがあります。これだけの本数を切らせてもらえるということは、ここ数年、ちょっとずつ蒔いてきた種がやっと実になったということだと思ってて。さらに花を咲かせていくのが、バンドがブレイクするということだとも思うんです。それもやっぱり応援してくれるファンと出会い共感出来る、一期一会のライブがあるからこそ、次の一歩が踏み出せると思ってて。ライブでのフィードバックが無ければ、次に目指す場所も見えてこないんです。だから今、ツアーをやって、新しい音源を作って、またツアーをやってという良いサイクルが持てることが、バンドにとってすごく幸福なことだと思うし。この幸福を全26箇所で分かち合いたいという気持ちで臨んでます。
──現在のZIGGYって、ライブを観るたび新鮮さを感じて。最新シングル「I STAY FREE FOREVER」もZIGGY節を炸裂させながら、新しい挑戦もたくさんあって、バンドの充実ぶりを感じさせてくれます。
僕もメンバーも色んなアーティストと共演したり共作したり、常に音楽と関わろうという姿勢で生きていて。引き出しいっぱいの中からアイデアを出し合った時、おのずと新鮮なものが出来てくるという感覚でやれてるんです。僕はサウンドのテイストとかに、オールドスクールへのこだわりとか全然なくて。音楽の骨格に自分らしさがしっかり表せれば、どんな服を着ても僕であることに変わりないと思ってるし、サウンドのディティールで変容してしまうものは作りたくない。本質さえしっかりしてれば、何をしても「ZIGGYだよね」と分かってもらえるし、僕らも色んなことにトライ出来る。そうすることで鮮度も生まれるし、お客さんを驚かせる変化球を投げることも出来て。常に150kmのストレートを投げるばかりでなく、来ないと思ってるコースにもビシッと投げて、緩急使い分けたところでの奥行きを見せていくというのが楽しいし、やりたいことでもあって。その中に「これこそZIGGYだよね」って、ど真ん中のものが常にあるのが一番良いと思うんです。
──森重樹一という存在、そしてバンドとしての核たるものがちゃんとあるから、何をやってもZIGGYというのはすごく思います。
お客さんとの信頼関係って、ステージと創作物だと思ってて。そこに手抜きや欺瞞があれば、絶対に誰も付いてきてくれないんです。どんな音楽やスタイルでもいいけど、愛と情熱を持って誠実にやってる作品であれば、そこに必ず感動がある。僕もそういうものが作りたくて、自分らしくありたいと思い続けて。もがき続けてたら、デビュー30年を超えてましたが。現在は「もう、自分の正直な気持ちを投げても大丈夫」という確信があるし、それが現在のZIGGYの強みだと思ってます。
──「昔はよく聴いてたけど」って人とか、ZIGGYを知った気でいる人にこそ、いまのZIGGYを体感して欲しいですね。
それを言葉でなく証明していけるのは、ライブでしかないので。観に来てくれた人が何を持って帰ってくれるか?だけなんですよね。そこで「ZIGGY凄かったぜ」ってことを誰かに伝えてくれて、広まっていく。全てはそこからだと思ってて、本質のないものはその程度でしかないけど、本当に光り輝くものは磨きをかければピッカピカに光るんです。原石の輝きを持ったものが、荒削りのまま届いていくことのカッコ良さ、それがロックだと思うんで。
──大丈夫です、いまのZIGGYはギラギラ光ってます! 改めてですけど、「I STAY FREE FOREVER」はどんな作品になりましたか?
手術もあって、今年はアルバムを作ることは出来ないかなと思っていたので。シングルだからこそ、この曲数だからこそ出来る音源の作り方を考えて作りました。曲調もバンド的なビート感を打ち出そうというコンセプトで、ロックバンドのバンド然とした、ロック的なエッジをしっかり立てたものを聴いてもらいたいと思って並べて、作品としてはすごく満足するものになりました。
──勢いやライブ感があるから、一気に聴けちゃいますよね。
そうですね、ライブっぽいものを作りたいというのがあって。いまのテクノロジーやミュージシャンのスキルをどう使うか?って考えた時、ロックをロールさせるために使う必要があるんじゃないか と思って。パッケージした時、こじんまりしたものにはしたくなくて、アグレッシヴでドライヴ感のあるものをRecしないと、ロックバンドがやっている意味が無い。とは言え、一発録りすればいいのか?というと、そうでもなくて。この音楽に関しては構築することがもの凄く大切だと思ったので、構築する方法をいまのテクノロジーやメンバーのスキルを用いて。これをライブでさらにドライヴするように作り上げたのが、今回の楽曲たちです。
── 一気に聴けるけど、しっかり構築されているから、聴くたびに新しい発見があることにも驚いて。シングルという形でパッケージされている意味のある作品だと思います。
いま多くの人にとって、音楽って形を伴わないデータになってしまってますけど、音楽は確かにそこにあるじゃないですか。シングルを手にとって、ジャケットや歌詞カードもあって、盤があって。“そこにある”ってことを僕は大事にしたいんです。ライブを演るなんてアナログの極みで、ただそこに行って、楽器をセットして、プレイするというシンプルな行為そのものなので。インフォメーション過多なものを見ていると、時々、希薄になることがあるんですよね。歌い手の魂はそこに存在しているだろうか? と思うこともたくさんあるんですが。僕はそこに歌い手の意志や美意識や価値観や、怒りや悲しみや叫びがあるから、ロックに夢中になってきたし。僕が憧れてきた先輩たちは本当にカッコ良かったし、「ああいうカッコいい人になるんだ」と思ってやってきたんで。言動や生き方だけじゃなくて、それを音で表現する必要があって。サウンドに出来た時に初めて成功だと思うし、それをオーディエンスが受け入れてくれたら大成功だと思う。それを続けていくことが出来るというのが、自分たちのビジョンでもあるし希望であって。そこから生まれてくるものがまた次のビジョンを作り、希望を作っていく。結局、音とステージが自分たちの全てなんです。
──今作を聴いて、いまの森重さんの真正直な言葉に奮起させられましたし、バンドの全身全霊ぶりが求心力になってると思いました。
だったら嬉しいですね。誰かを煙に巻くわけでなく、みんなが喜んでくれたり、楽しんでくれるのが一番嬉しいわけで。そこに変なエクスキューズを付けたり、大きく見せようとする必要は何もない、俺は違うというのがハッキリ分かったので。これからも「自分は何者なのか?」というのを形にし続けるしかないし、それをやり続けられる人生が本当に幸せだと思ってます。言ってもまだ56歳、上を見ればもっとジジイも頑張ってますから(笑)。今は新しいものを作る気力に満ちているし、メンバーたちもZIGGYを最高のものにしようと全身全霊で臨んでくれてるので。名前が独り歩きするキャリアになってきてるけど、真のZIGGYというものをツアーでみんなに体感して欲しいというのが本心です。
PRESENT
サイン入りキャップ、サイン入りTシャツを各1名様に!
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