世界を巡ったHYDEの「ANTI」が12月7、8日、千葉・幕張メッセ国際展示場4〜6ホールにて、<HYDE LIVE 2019 ANTI FINAL>と題し、ついにツアーファイナルを迎える。2019年のHYDEは、3〜4月にかけてアジアを巡り、5月に行ったアメリカツアーを経て、日本に帰還。そうして、最新アルバム『ANTI』を提げて6月から全国7都市26公演を行ったJAPANツアー<HYDE LIVE 2019>を大成功で締めくくったあと、HYDEはすぐにライヴの舞台をアメリカへと移し、現在はSTARSET のUS ツアー<STARSET U.S.DIVISIONS:2019>に帯同中。セカンドサポートアクトとして連日ライヴを繰り広げている。このUSツアーを経て、さらにパワーを倍増させた「ANTI」が、そのファイナルステージとなる幕張2Daysでどんなカオスを生み出すのか。USツアー中のHYDEにメールインタビューを敢行。現在行なっているUSツアーの生の声、「ANTI」ツアーの舞台裏、幕張2Daysにかける抱負などたっぷりと話を聞いた貴重なロングインタビューをお届けする。
──スゴい…。気になるUSツアーについては後ほどお伺いするとして、まずはアルバム『ANTI』について聞かせて下さい。今作はアメリカの音楽シーンの第一線で活躍するクリエーター陣を迎えて制作。HYDEさんが提供楽曲を歌うという画期的な挑戦も行いながら、“世界標準のライヴ”を意識して作られた作品だったと思うのですが。あらためて『ANTI』はHYDEさんにとってどんな意味を持つアルバムだったと感じていますか?
僕の総合プロデュースが強くなったアルバムかな。全曲アメリカのプロデューサーを通して、ライヴ映えするアルバムを作るのが目的だったので、いい曲であっても(ライヴ映えしなければ)採用しないなどこだわりました。海外といいながらもアップテンポな日本人向けの曲が多くなったけどね。
想像よりはるかに素晴らしかった。ファンは、僕の喜ぶことをよく分かってる
──そのアルバムをひっさげて全国7都市26公演を行なったJAPANツアー<HYDE LIVE 2019>は、舞台上のNEO TOKYOの街並み、UVライトを使った演出などで、ライヴがよりシネマチックになった印象を受けました。演出の部分でとくにこだわったところは?
日本でのライヴとはいえ、海外に向けてのキャッチーな部分として僕の好きな“日本感”をステージには反映していて。NEO TOKYOもその一つですね。古風な日本の文化は僕のスタイルに合わないんだけど、ああいう『ブレードランナー』的なアジア感は大好きだし、雰囲気も僕のスタイルに合うと思う。今回はソロということもあって、自分が映える演出も遠慮なくやっていったので、見どころも多かったんじゃないかな。
──ですね!しかも1-2階のフロアを駆け巡ったり、スピーカーやドラムセットの上によじ登ったり、HYDEさんのステージングは年々年齢に逆らうように若々しくなっていってる気がします。本ツアーでの“えいやっ!”ジャンプもそんなことを思いながら見てたんですが。これ、実際に頭の中で“えいやっ!”っていいながら飛んでるんですか?(微笑)。
「えいやっ」みたいな事をいってますね(笑)。
──ははっ(笑)。そうなんですね。
実際はもう少し荒い言葉ですけど。自分はエンターテイメントしていくことが自分の個性だと思っているので、もっと何か会場で出来ることはないかというのは常に考えていて。それで、思いついたアイデアを出し惜しみするんじゃなくすぐに使っていって。いいアイデアを使ったら、さらに別のアイデアが出てくると信じてその日にやれることをやってる感じです。ZEPPでやれることは随分やった気がするんだけど…まだ何かあるだろうね。
──ちなみに、ライヴで担いでいたあのバットはHYDEさんの私物ですか?
誰かが買ってきた金属バットです。
──バットを担ぎ、ドラム缶を叩いたり(<HYDEPARK>の映像では、あのドラム缶に貼り付けてある新聞紙までHYDEのこだわりがあることが伝えられた)やんちゃ感もエスカレートしていっている印象を受けますが。
もともとインストをやりたくて思いついたアイデアなんですけど、とても気に入っています。過激なロックが少なくなった印象があるので、僕が死ぬ前に示しておこうと思って。
──過激に激しく叫び散らし、暴れ倒したあとに、本ツアーのエンディングには「ORDINARY WORLD」を配置。オーディエンスがスマホのライトをかざすなか、感動的な気持ちでクロージングを迎えるという流れが美しくて、新しかったですね。
VAMPSとの差を出すのに良いアイデアだと思いました。しかし、美し過ぎる。僕はもっとクレイジーになりたいので、このエンディングは幕張で最後にしたいですね。
──なるほど。今回のツアーもそうですけど、HYDEさんのライヴはVAMPS時代からエネルギッシュに暴れて叫んで、クラップしながら歌っていたらあっという間に終わってしまうんですが。長時間ライヴをやらないのはなにかこだわりがあるんでしょうか?
長いライヴは好きじゃないですね。僕は長いライヴを観に行くと、基本4〜5曲目ぐらいで時計を見てしまうんです。そういう長いライヴもしますけど(いまやってるものとは)曲調が違うし、その際も曲数よりも満足して飽きさせないライヴというのを念頭に置いて考えます。今やっているライヴは90分と短いんですけど、内容は3時間のライヴ並みに濃いと思ってやってるので。ゆったり3時間やるよりも、全力で90分を戦うのが長年のスタイルです。
僕たちはUSツアーを回って、さらに強力になるつもり
──今回のツアーでは会場によって黒HYDEになったり白HYDEになったりされてましたけど。ご自身の気分は少しは違うものなんですか?
うん。白は『時計仕掛けのオレンジ』の気分ですね。
──それを知ると、いろんな意味でゾッとしますね(微笑)。ツアー中盤、名古屋では自転車で会場入りするHYDEさんが話題になっていましたけど。自転車を選ぶときのこだわりポイントってあるんですか?
自転車で会場へ行きたいといったらイベンターが持ってきてくれたものなので、あの自転車にはなんのこだわりもありません。自転車は普段乗らないのでとても気持ちがいいですね。
──そうして駆け抜けたJAPANツアー。ツアー中にHYDEさんは「君たちがいて『ANTI』は完成する」とステージでおっしゃってましたが。JAPANツアーを終えて、アルバム『ANTI』はHYDEさんにどんな完成形を見せてくれたんでしょうか?それは、ご自身が想像していたものとは違いましたか?
想像よりはるかに素晴らしかった。ファンは、僕の喜ぶことをよく分かってる。ただ、ファイナルはこれからなので、どうなるかな?僕たちはUSツアーを回って、さらに強力になるつもりだけど。ファンは11月にやるイベント(幕張メッセ イベントホールで開催される<Yahoo!チケットEXPERIENCE Vol.1>や、THE ORAL CIGARETTSが開催する対バンツアー<COUPLING TOUR BKW!! STRIKES BACK 2019>のファイナルとなる愛知県・ZEPP Nagoya公演にゲスト出演)でブランクを取り戻しておいてもらいたいね。
──HYDEさんがUSツアーに旅立たれる頃、日本では<HYDEPARK>が開催されまして。今回は映像上映や展示物に加えて、和歌山県の物産展が登場!これがまた来場者に大人気だったんですよ。
思ったより好評でよかった!
──それもHYDEさんが“和歌山市ふるさと観光大使”に任命されたからだと思うんですが。そこで、観光大使としてみなさんにアピールしたい“和歌山県のHYDE推しBEST3”をあげてください!
パンダ / 世界遺産 / ラーメン。
──ありがとうございました。ではここからは現在行われているUSツアーについて聞いていきたいと思います。ここまでの手応えは?
手応えはこれまでよりいいんだけど、こんなんじゃ何年もかかるね。自分の癖として、パフォーマンスメインになりがちなので、歌がやっぱり弱い。そこが今年の課題で、アメリカでもそれを気にして歌ってます。特にサポートのステージは足の踏み場もないくらい狭い場所が多いので、それを逆手に取って、いまは演奏に集中してます。
──今回、毎年恒例の自身主宰の人気コンテンツ<HALLOWEEN PARTY>もお休みにするという決断をしてまでSTARSETのUSツアーのサポートアクト出演を引き受けた理由を教えてもらえますか?決断の決め手はなんだったのでしょうか。
これまで継続してきたものへの後ろ髪はかなり引かれましたし、僕なしで出来ないかとか検証を続けたんですけど、やはり不可能でした。でも、僕の中では、これまで何年も海外への時間や経費を費やして得たチャンスなので、それを水に流す選択肢はありませんでした。これを断ると、いままで何を目的に何年もやってきたのか分からなくなるからね。みなさんには、今回お休みした分のお返しはいつかします。