◆五感で大満足!「音楽、食、花火」
フェスが乱立している今、フェスとは何かが問われている重要な時期だと思います。チョイスがたくさんあるということは、運営側はどこにポリシーを持ってやっているのかを問われますからね。音楽を楽しむ場所であることはもちろんですが、それだけではなく、アーティストが自分の出身地の町おこしをしたいと、地域密着型フェスも増えています。
僕らが昨年立ち上げた「米フェス」が開かれる長岡市は、いきものがかりなどが所属する事務所「キューブ」の代表を務めている北牧裕幸さんの地元なんです。長岡市から「長岡開府400年を記念して音楽フェスをやりたい」と依頼があり、北牧さんから島田昌典さんと僕の所にお話が来て、数年をかけてプロジェクトを進行していました。
僕は関西出身なのですが、子どものころに山下清画伯の作品を見て「長岡花火を見てみたいな」と思っていたんです。でも「長岡ってどこにあるんだろう」と漠然としていました。今回の発案を聞いたとき、その記憶を思い出したんです。まずそこからなんとかしないとって。
例えば「フジロック」なら苗場スキー場(新潟県)、「ロック・イン・ジャパン」ならひたちなか市(茨城県)など、行きづらさも含めて理解されていると思うんです。
でも米フェスは、実は意外と近い。東京から1本で長岡駅まで行けて、駅からも近いので、そのあたりについても広まっていければと思います。
更に米フェスの魅力として、音楽、食、花火の3本柱でフェスを構成していくことでした。フェスを行う10月は新酒・新米の季節ですから、お腹も十分満足してもらえる。そしてクライマックスは、毎年100万人以上動員する長岡花火の打ち上げです。体にズンと響く音はもう「すごい」としか表現できませんし、地元の人も「頭の上に振ってくる花火は初めて」と「迫力がある」と驚かれていました。このフェスの魅力は幕の内弁当を開けたとき、何を食べようかなと心を躍らせる感じです。「おいしい」、「ハッピー」、「すごい!」など、それぞれの楽しみ方をしてほしいです。
◆アーティストの胃袋をつかんだ!3つの「米、水、酒」
リピータ-を作るために必要なのは“口コミ”です。米フェスは開催2度目ですから、まだまだ浸透度が弱い。ここを強化することが生命線だと思っています。
昨年、出演した山下穂尊くん(いきものがかり)やwacciらは、花火はもちろんですが“食”に感動していました。昨年参加したアーティストから、今年初参加のアーティストに「(フードコートの)目の前で握ってくれるおにぎりがおいしい。売り切れる可能性があるから早めに買っておいた方がいい」などの情報が出回っているようなんですよ。長岡で収穫した米は、長岡の水で炊くのが一番おいしいと言いますからね、このフェスのおにぎりは確かにおいしい。ウワサを聞きつけて、「そんなにおいしいものがあるフェスなら出演したい!」と、想像もしていなかったアーティストが出演するきっかけになっていってくれたら面白いですよね。豊かな自然の中で、アーティストの胃袋をつかんだ「米」を堪能して欲しいです。
そしておいしい「水」と「米」を使ってできる「酒」もぜひ楽しんでもらいたい。今年は1673年に創業した「玉川酒造」が地元でしか飲むことができない秘蔵酒を販売するほか、アレンジしたモヒートなども並ぶので、いろいろ試してみるのも良いと思います。
昨年、いとうせいこう is the poetのメンバーとして参加した屋敷豪太さんは今年、DUBFORCEとして出演するのですが、お酒が好きで舞台の裏では升を手に持って、試飲していました。少しばかりお酒を入れても、やはりレジェンド。本番ではポケットから、サッとスティックを取り出してドラムをたたき始めて、舞台袖で見ていたアーティストは、その迫力に「すげぇな」と驚くほど、圧巻のステージでした。僕もお酒が好きなので、今年のお酒の出来が楽しみです。
◆育てたい!「地元の若手、米フェス出身のアーティスト、米フェス」
ここまで花火と食について話しをしてきましたが、音楽フェスですからアーティストについても、このフェスだけの特別な魅力を提供したいと考えています。なんと言っても米フェスの魅力は3世代で楽しむことができるようにラインアップです。お母さんと子どもに大人気の横山だいすけさんから、アイドルグループの日向坂46、大御所の小林幸子さんは、しょこたん(中川翔子さん)と共演するなど、どこにも負けない幅広い出演陣がポイントです。
外からアーテイストが来て、歌って帰るのではなく、地元を巻き込んだものにしたいと思い、いきものがかりの山下穂尊くんにフェスのテーマ曲「輝き」を書き下ろしてもらいました。この曲を毎年長岡市内の小学生の歌唱でレコーディングし、テーマ曲にしているんです。
また米フェスからメジャーアーティストが生まれて欲しいと、アマチュアオーディション「COME100 オーディション」を今年も開催しました。グランプリを獲得したアーティストにはオープニングアクトを任せるのですが、アーティストにとって大型フェスのオープニングアクトは貴重な経験になるので、いいパフォーマンスで頑張ってもらいたいですね。
実は先日、今回出演するアーティストの天月くんに会う機会があったのですが、「アニメが好きで、『鋼の錬金術師』のオープニングテーマだったポルノグラフィティの「メリッサ」が初めて買ったCDだった」と教えてくれたんですよ。僕らが作ってきた音楽を聴いて育った世代が、メジャーデビューして活動しているのを目の当たりにして、「COME100 オーディション」からプロを輩出したいという思いが強くなりました。
小学生以下は入場無料にしているのも、たくさんの子どもたちにプロの音楽に触れて欲しいからです。僕らもがんばってフェスを継続していくので、将来出会ったミュージシャンに「10年前に見ていました」と言われたらうれしいですね。
それに今年は出演アーティストと、地元の高校生のコラボも実現しました。2日目に登場するTEAM SHACHIには、私立中越高等学校のブラスバンド部と『Rocket Queen feat. MCU』のマーチング・バージョンです。ポルノグラフィティの(新藤)晴一くんが作詞、僕が作曲という初期ポルノグラフィティのタッグで、さらにKICK THE CAN CREWのMCUさんとコラボしている曲なのですが、長岡市の中越高校のブラスバンド部に担当してもらい、ミュージックビデオも制作しました。米フェスのステージでも共演することになっているので、地元の若い世代の取り組みをいろいろな人に知ってもらえたらなと考えています。