スリーピースのガールズロックバンド、the peggies(ザ・ペギーズ)の周辺がなにやらざわつき始めているようだ。今年2月にリリースされたばかりのメジャー1stアルバム『Hell Like Heaven』に収録されていたギターロック「マイクロフォン」が馬場ふみか主演のロート製薬「SKIN AQUA TONE UP UV」のTVCMソングに決定してオンエア中で、同じく「そうだ、僕らは」がHONDA「バイクに乗っちゃう?」のCMソングに起用され、テレビCMと販売促進ポスターへのメンバー起用も決定。さらに、4月よりフジテレビのノイタミナ枠で放送されるアニメ「さらざんまい」のEDテーマを担当することも発表された。アルバムリリース後に立て続けに発表されたニュースや反響をどう感じているのか。4月から始まる全国ツアーを前に、下北沢のスタジオで練習に励む彼女たちを直撃した。
自分自身のバンドに対するエネルギーの源になるような1枚ができた(北澤)
──アルバムがリリースされた後の心境から聞かせてください。
大貫みく(Dr)
たくさんの嬉しい反響をいただいていますね。私たちの新しい一面をいい感じに捉えてもらえてるみたいです。
石渡マキコ(Ba)
自分たち的に挑戦だった「Fortune」が一番好きって言ってくれる人がたくさんいて。
──僕も「Fortune」が一番好きです。アーバンソウルというか、ブラックミュージックのビートになってますよね。
石渡マキコ
そうなんですよ。だから、新しく挑戦したことをみんなに認めてもらえたことがすごく嬉しかったですね。
北澤ゆうほ(Vo&Gt)
周りからの評価もそうなんだけど、私自身が今までで一番満足できる1枚ができたなと思って。次のツアーもそうだけど、今後、バンドを続けていく上での自信になるなと思って。自分自身のバンドに対するエネルギーの源になるような1枚ができたから、自分のためにもすごいよかったなって思ってます。
──初回盤のDVDにはインディーズ時代の曲も演奏しているライブ映像も収録されていますし、インディーズ時代の3作品がサブスクで解禁されました。ニューアルバムでペギーズを知ったという人に聴いてもらいたい曲はありますか?
大貫みく
私は、今もライブでもやってる「JAM」を聴いてほしい。今のペギーズにはないとげとげしさや切羽詰まっている感じがよくでてるし、当時の私たちにとっては挑戦した曲だったっていうのも感じてほしい!ライブでは3人で溜めてためてためる場所があるんだけど、最初は全然合わなくて。今はなにも見ないでも合うようになってきたから、そういうバンドとしての歴史の長さとか、呼吸の合い方もライブで感じてほしいです。
石渡マキコ
インディーズ時代の曲だったら、「P/F」かな。ゆったりした曲で、ゆうほの綺麗な声がたくさん聴けるけど、歌詞は生きるとか死ぬとかがテーマになってて。重いというか、めっちゃ暗いことを歌ってるので、そのギャップを楽しんでほしいです。
北澤ゆうほ
私もまーちゃんと同意見ですね。インディーズ時代は、本当に自分が辛いっていうことだけをエネルギーにして頑張ってきた時期で。「いきている」とか「ヘルズ」が、私たちのインディーズ時代のメンタルを象徴する曲だと思いますね。例えば、「ヘルズ」を聴いてもらうと、明るくてポップに見えるこの人たちも悩んでたんだなってわかってもらえそうだし、そこを乗り越えて、今、ここにいるんだなっていうのが伝わるんじゃないかと思う。私、多分、あの時の、自分の中の辛さや苦しみを吐き出すだけで作った曲って、今後は絶対に作れないんですよ。あの時の自分はもういないから。もう絶対に作れないからこそ、大事にしたいなっていう曲でもあるので、北澤ゆうほ然り、ペギーズの歴史を知るためにも、「ヘルズ」は聴いて欲しいですね。
ペギーズは「裏の裏で表にいる」。ちゃんと努力して前を向くことの大変さや素晴らしさを伝えてきた(大貫)
──メジャーデビュー後は、甘酸っぱい胸キュンポップのイメージが先行したし、アルバムではみんなでシンガロンできる曲が数多く収録されてました。
北澤ゆうほ
そうですね。ただ、私たちはもともと前向きになる力を持ち合わせていたんじゃなくて。自分たちがポジティヴな方に持っていけるように、私たちなりに頑張って手に入れた前向きさなんだっていうのをみんなにわかってもらえるといいなって。生まれた時から明るくて、友達いっぱい、その延長戦でバンドやってます!みんな大好き♡っていうバンドではないから(笑)。
石渡マキコ
ゆうほもよく言うけど、「裏の裏で表にいる」っていうことなんですよね。「ヘルズ」は裏を象徴していると思うし、そう言うものを噛み締めた上で、「ドリーミージャーニー」や「マイクロフォン」を聴いてもらえると、よりみんなに届くんじゃないかなと思いますね。
──「マイクロフォン」は馬場ふみかさん出演の日焼け止めのCMソングに起用されることになりました。
北澤ゆうほ
近鉄パッセのCMソングに「BABY!」が使われたことはあったんですけど、中部地方限定で、東京で見れるCMは初めてだったので嬉しかったですね。
大貫みく
しかも、私たちが高校生の時に使っていたやつだったからびっくりして。
北澤ゆうほ
だし、本当に美味しい感じで使ってもらってて。ただのBGMじゃなくて、耳に残るかなと思うので。日焼け止めとかチェックしてる若い女の子が気になってくれるといいなと思います。
石渡マキコ
私は個人的にラブリーサマーちゃんと中高から仲良くて。ずっと友達だったんですけど、ラブサマちゃんは昔からCMの曲をやってて。ずっと、「いいな、悔しいな」と思ってたので、今回、初めて自分たちの曲がテレビCMの全国放送に使われることになって嬉しいです。
──みんなで声を出せる歌になってますが、もともとはどんなところから生まれた曲だったんですか?
北澤ゆうほ
完全にライブを意識して作った曲ですね。でも、ライブで盛り上がる曲という意味じゃなく、みんなの心が1つになる瞬間をわかりやすく、きちんとした場面として作れる曲が欲しいなっていう気持ちで作って。だから、これでもかっていうくらい、ずっと<WOW WOW>って言ってるんですね。でも、歌詞で描いている情景や心情は決して、希望に満ち溢れて明るいものではなくて。辛いかもしれないし、しんどいかもしれないけど、前に一歩進んでみようぜ!っていうメッセージがぎゅっと込められているんですね。だから、ライブでは……<WOW WOW>っていう部分は言葉を当てはめてない、メロディだけの歌だけども、言葉がないからこそ、一人一人がそこにみんなの日常の悩みや苦しみを全部重ねて、それぞれの歌にして欲しいなって。それがライブハウスで1つになった時の一体感というか、一瞬でも一人じゃないんだなって、みんなが感じられるような瞬間を私たちが作れたらなっていう気持ちで作りました。
石渡マキコ
歌詞にめっちゃ、ゆうほのセンスが溢れてて。ストレートすぎない、詩的な表現は、ゆうほがもともと持ってる“らしさ”であり、カッコいいなって思いますね。さらに、<WOW WOW>が加わって、最強になったと思います。
大貫みく
CMでも使われてる<射した光から逃げずに行こう>っていうフレーズが、本当に今のペギーズを象徴しているなと思って。MCではずっと、「裏の裏で表なんだ」っていうことを言ってたけど、それをこんな一文でピタッと言えるのかと感動したし、卑屈なだけで終わらないで、ちゃんと努力して前を向くことの大変さや素晴らしさっていうメッセージが込められてるんじゃないかなと思いました。
──日焼け止めして外出ようっていうCMともぴったりですよね。
北澤ゆうほ
そうそう。全く別の意味として作った曲だったから、こんなハマり方あるんだと思って。それも、インディーズで私たちだけで活動していたら想像もできなかったことですね。いろんな人を巻き込むことによって、曲の捉え方はいかようにも広がるんだなって。タイアップとかによる化学反応を体験するたびに、自分たちの音楽の可能性を改めて感じて、ワクワクできますね。