7月8日、9月末日をもって活動を無期限休止することを発表したthe peggies。活動休止前の東名阪を周るラストツアー『the peggies tour 2022“My White”』が行われた。そのファイナル、東京・Spotify O-EAST 公演の模様をレポートする。
オープニングムービーとして、北澤ゆうほ(Vo&G)、石渡マキコ(B)、大貫みく(Dr)の母校であり結成の地である日本女子大学付属中学校をスタート地点に、仲良く喋りながら電車に乗り、Spotify O-EASTの楽屋に到着する映像が流れる。3人はとにかく笑顔だ。活動休止と共に発表されたコメントに北澤は「私たちは今でもかけがえのない仲間であり友人です」と書いていたが、そこに何の偽りもないことが一瞬で伝わる。
笑顔を浮かべながらも少し緊張した面持ちでステージに向かう3人。1曲目は「グライダー」だ。とても晴れ晴れしいサウンドに乗せて北澤が《好きだったものを嫌いになっていく寂しさは簡単に埋められるもんじゃないな》と歌った後、《僕らの戦闘機はまだまだ大丈夫さ》と歌う。満員のフロアが手拍子で応える。そして、3人が誇らしげに片手を突き上げる。3人で何度も話し合い、「3人の内、誰かひとりでも健やかでいられない可能性が1gでもあるなら一旦休憩すべき」という結論に至ったわけだが、その大きな決断に1点の曇りも感じさせない。
続く「青すぎる空」は、約13年前に軽音楽部で孤立しかけていた北澤に石渡と大貫が手を差し伸べてthe peggiesの原型が生まれたという始まりの誓いを想起させた。パワフルなアンサンブルの中、北澤が元気よく、「今日は私たちの思い出史上、一番楽しい時間にしましょう!」と呼びかける。そう、笑顔でさよならを言うための最高の時間をthe peggiesはこの日、更新し続けた。
北澤が「とても楽しいです。みんなはどうですか?」と言うと、石渡と大貫が「楽しい!」と言いつつ、フロアから拍手が上がる。「バンドを始めた当初は、自分の悲しさや辛さをぶつけるためだけに音楽をやっていて、みんなは辛くないと勝手に思っていて嫉妬していた。だから、どういう気持ちでステージに立てばいいかわからなかった」と北澤が告白する。「でも、こんな自分のままでは嫌だと思って、勇気を出して顔を上げてライブをしたら、みんなが私のメッセージを受け取ろうとしてくれることに気付いた」と話す。感謝の気持ちを伝えた後、自分を愛せたら大切な誰かをもっと大切にできるんじゃないかと思い、自分を暴いていた結果生まれた楽曲だという「足跡」を披露。「私自身を、みんな自身を、ちょっと離れちゃったとしてもこれからも肯定していくよという気持ちを込めて歌います」。《僕が僕になれるように 誰かの声のままじゃ 君に届かない さよならは明日を呼ぶサイン 君が君を愛せるように 曇った鏡捨てて もう一度笑える日まで》。言葉ひとつひとつが説得力を持って押し寄せ、前進のためのエネルギーを増幅させる。
北澤が1曲目に演奏した「グライダー」について話し始める。「今思うと、私はなかなか飛ぶのが難しいと思ってたけど、自分の力で飛べなくても音楽を通して出会ったスタッフや、何より応援してくれてるみんなが私たちを引っ張ってくれてる。私は勘違いしてたけど、みんなのおかげで私たちは空を飛べてたんだなって」と涙ながらに感謝を伝える。
活動を総括するベストアルバムを作ることと活動休止をするというふたつの出来事と向き合う中で、「今の私たち、そして今のみんなが最高だっていう気持ちを込めて作った曲」だという新曲「CHEESE!」も歌われた。心が弾むようなビートが貫くとびきりハッピーな曲で、“最高の今”を刻み付けながら進んでいこうというthe peggiesからのメッセージが伝播していく。記念撮影を挟み、オーディエンスが片手を左右に振る中、「ドラマチック」で多幸感を更新した。
「みんなに届けたいと思って曲を作るようになって、私たちが歌うだけじゃ楽曲は完成しないと思うようになりました。次の曲は特にみんながいるっていうことが前提で作りました、昔の自分だったらみんなが歌ってくれるって思って曲なんて作れなった。私はすっかりこの2年でみんなの心の声が聴こえるようになりました」(北澤)。そう言ってから「マイクロフォン」へ。心の声を届けるべく、思いっきり腕を突き上げるオーディエンスを前に、北澤が心底楽しそうにぴょんぴょんとジャンプをする。「こんなに楽しいのは誰のせいだ~! そう、今日O-EASTに来てくれた君のせい!」。高揚感が爆発した「君のせい」、そして、君との距離に一喜一憂する瑞々しいラブソング「センチメートル」で本編は終了した。
アンコールではまず、遊び心あふれる「I 御中〜文房具屋さんにあった試し書きだけで歌をつくってみました。〜」を演奏し、「みんなが笑っていて安心しました」と北澤が言った後、メジャーデビュー曲「ドリーミージャーニー」は、再会のきっかけになればという願いを込め、事前に募集していたコーラスを付けた形で披露された。北澤が「みんなの声ちゃんと聴こえてました!」と嬉しそうに叫ぶ。
「次で本当に最後。みんな楽しかったですか?」と北澤が呼びかけると、大きな拍手が起こる。「それが何より。ありがとう! 今日やってて思ったけど、やっぱりthe peggiesは良い曲がたくさんありますね」と言うと、間髪入れずに「ほんとにそう!」(大貫)、「良い曲しかない」(石渡)という声が飛び、じんわりとした空気が広がる。
「今の私たちに重なる曲。寂しい気持ちはゼロじゃないけど、また必ず会いましょう」と北澤が宣言した後、涙を堪えながら歌った「明日」。オーディエンスがかざすたくさんのスマホライトが揺れる中で、変わりゆく景色に不安と寂しさを感じながらも再会を約束する楽曲を演奏し終わり、恒例の1本締めをしてから、the peggiesの3人は晴れ晴れとしい表情を浮かべてステージから去っていった。
※本公演は9月30日(金)23:59まで見逃し配信が視聴可能。