──なるほど。で、ホコ天からいきなり渋谷公会堂の話になるんですが、実際のジュンスカの足取り自体がそういう一足飛びな感じでしたよね。そのことに驚かされたし、あるいはもしかしたら“大丈夫か?”という気持ちで見ていた人もいたと思いますが、メンバーはどんな気持ちだったんですか。
僕らの足取りということで言えば、La.mamaがあって、その次にLIVE INNというのがあったんです。
──そうでした、そうでした。
で、その次のステップが普通は日本青年館で、それから渋公、そして武道館というふうに思われていたので、僕らのなかでは“日本青年館をすっ飛ばしたな”という気持ちはありました。日本青年館をやらなかったのはちょっと悔しい感じがあって、ちゃんとそのステップを踏んでいきたかったなという気持ちは今でもありますよ。
──そうなんですか!?
だって、僕はARBを青年館で見たし、ジョニー・サンダースを見たのも青年館ですから。同じレーベル・メイトだった筋少(筋肉少女帯)も、それからBUCK-TICKも日本青年館をやってから渋公だったし。いきなり渋公がやれたのはもちろんうれしかったけど、それでも青年館を飛ばしたというのは僕のなかでは悔しいんです。
──バンドが人気を高めていく過程には、そのバンドの身の丈というか地力が会場の大きさに足りていないという場合があるし、逆にバンドの勢いが会場の大きさを上回っていて、もっと大きな会場でやってほしいと思わせてしまう場合もありますが、ジュンスカが初めて渋谷公会堂でライブをやった時、自分たちの身の丈と会場の規模感とのバランスはどう感じましたか。
ちょうどぴったり来てたと思いますよ。ただ、生活の部分ではね。急に売れちゃったから、僕はまだ2万円のアパートに住んでて、風呂屋が閉まっちゃうから打ち上げの途中で帰ったっていう(笑)。そういう部分の身の丈は合ってなかったですけど、精神的な身の丈という部分ではいきなり渋公に行っても全然違和感はなかったです。
──門池さんは初めての渋公について、「全く心配していなかった。翌日のホコ天ライブのほうが心配だった」と話されていました。
僕もそうですね。ホコ天は、やったらパニックになるだろうと僕らも予想してましたから。だから「やめたほうがいいんじゃないか」という意見もあったけど、「初心を忘れたくない」というメンバーの意志を門池さんはじめ事務所のスタッフやディスクガレージが理解してくれて、やったんです。やっぱり人が集まり過ぎて、警察も来て、結局3曲くらいで中止することになったんですけどね。
──普通は、というか初めて渋谷公会堂のステージに立つとなると、前日はいろいろ考えて眠れなかったりするようですが、そういうことはなかったですか。
それは、全く無かったですね。ライブに関しては、僕は今まで不安になったことは無いです。緊張はしますよ。緊張はするんだけど、不安は無いんですよね。
──それは、言葉で言うと「自信がある」ということでしょうか。
自信というより、そういうタイプというか…。いろいろ考える神経が足りないのか…。友達の結婚式とか何かのパーティーで「1曲、歌ってください」みたいなことになったら、震えるくらい緊張するんですけどね(笑)。
──和弥さんは今、弾き語りのライブ・ツアーを回ってますが、そういうライブでも感覚は同じですか。
今の弾き語りのほうが緊張はしますね。一人だし、お客さんが近いから。バンドというのは、やっぱりチームなので、そのエネルギーみたいなものが力になるのかな。JUN SKY WALKER(S)でいる以上、不安になることは無いですね。
世界のサウンドを、あのハコは吸ってるというか、知ってるというか
──ホールとしての渋谷公会堂の感触、居心地というのはどういう感じですか。
大好きな会場です。日比谷野音、武道館、渋公は特別な場所ですけど、そのなかでも渋公はいちばん好きかもしれない。お客で行っても、すごく見やすいホールだし。
──演者として気に入っているのはやはり、やりやすいからということになりますか。
やりやすいし、一体感も生まれやすいし…。それに思うんだけど、僕はあそこにいろんなバンドを見に行ってますが、そう!U2もやったりしてるんですよね。そういう世界のサウンドを、あのハコは吸ってるというか、知ってるというか。だから、あそこのステージに立つと魔法にかかるような気分になるんですよね。
──お客さんとして出かけて、印象に残っているライブは?
ブルース・ブラザーズ・バンドに行ったんですよ。そしたら、ちょうど来日してたウィルコ・ジョンソンも見に来てて、終演後に彼がスティーヴ・クロッパーと談義している姿を見たのはすごく印象に残ってますね。それと、やっぱりRCサクセションかなあ。僕は、日本のバンドではやっぱりRCがいちばん好きだから。でも、渋公でやるライブは、みんないいライブをやるんですよね。(奥田)民生もそうだし、斉藤和義くんもそうだし。それからMODS。THE MODSの渋公もすごく良かったんだよなあ。
──最後に、今年中には新しい渋谷公会堂がオープンすることになると思いますが、新しい渋公に対する希望なり注文なり、何かあれば聞かせてください。
注文なんてないですよ。スタッフの皆さんが今の技術とこれまでの経験で素晴らしいものをきっと作ると思うので。だから、その新しい渋公にも、機会があれば、僕もまたぜひ出たいですよね。場所は同じだから、そこで違う渋公を2回体験できるというのは、ミュージシャンとしてすごく幸せなことだと思うから。すごく楽しみです。