え~と、今年の頭って何してましたっけ?(笑) そうか、まだ前ホールツアー『リーゼント魂』の最中だったんですね。1月は岩手県遠野市に行ったんですけど、遠野にはうちのばあちゃんが住んでいて。その直前の1月3日に亡くなってしまったので、残念ながら間に合わなかったんですけど、自分のルーツである遠野でGIGが出来たことはすごく良かったなと思ったり。20周年記念盤『万謡集』を出して、それを引っさげてツアーを回れたこともすごく良かったです。あと、このツアーは錦織純平くん(微熱DANJI)に演出を任せたので、僕は歌や演奏に集中して出来たことが本当に学びや気付きになって。すごく力になったし、自分の中では大きく成長出来たツアーでした。ただそれと同時に、あの頃は自分の中ですごくモヤモヤするものがあって。「バンドってなんだろう?」なんてことを漠然と考えていて、思い切ってバンド活動から一回離れてみようかな? とさえ思っていたんです。
はい。決してネガティブな思考なわけではなくて、一度一人でやってみないことには答えがでないのではないかな、と思って。で、ツアーが2月に終わって、4月に自分の生誕記念特別公演を行う際に「ロックン・ロール最高物語~P.S.アイシテル。~」』っていう、5人組のドゥーワップ・グループの青春活劇、いわゆるロックンロール・レヴューみたいなものを作ったんです。これはまさに自分の原点というか、“That's 綾小路ワールド”だったんですが、これをやったことで、「俺はソロがやりたいんじゃないんだ。みんなで分かち合いたいんだ」という己の原理に辿りつきまして。「最高のステージを見せよう!」と毎日、朝から朝まで稽古場にいて、みんなで血反吐はくぐらいに一生懸命練習して。それが最高に楽しかったし、「これがやりたかったんだ!」と思えたんです。そこでグループでやりたいんだってことを再確認出来て、今度は夏のライブハウスツアーに突入して。
そうですね。いま僕が目指してるのは東京ドーム公演でもなければ、日本武道館公演でもなくて。「あの夏のツアーのようなことを一生やりながら続けていくバンドになりたい」ということで。街から街へ流れ流れて、その土地土地の人々に出会って、毎晩どこかでショーを演って。移動日もあれば、連夜でショーを演る日もあったり、大きなホール会場もあれば、小さなライブハウスもあって。ああいう日々を送っていると、自分が活性化して、覚醒していく感じが分かるんです。あんな気持ちいいものは他にあまりなくて、僕が憧れてたのはやっぱ旅芸人だったんだなぁと思いました。平日だろうが休日だろうが、東京だろうが地方だろうが、そこにいるすべての人々を笑顔にさせることの出来るバンドになりたいなと思って。自分のやりたかったことはこれなんだと思ったし、ここ数年で一番幸せな時間でした。
今年は初の2日間大トリということで、何をしようか? と考えて。フェスによく行く友達にリサーチもしたんですけど、実はフェスに来る人って、気になるアーティストでも頭の3曲ぐらいしか観てなかったりするそうなんです。他にも観たい人達がいるし、移動もあるし、食事もしたいし。で、大トリのアーティストに至っては、かなりの人気者でも、最初だけ観て帰られちゃったりして、実は全然おいしくなかったりするそうなんです。確かに帰りが一番混みますもんね。みんな炎天下の中、一日中暴れて疲れているし、翌日もありますし。ならばその時、自分たちに何が出来るのか?って考えた結果、じゃあ頭の3曲でロックバンド・氣志團の挟持をお観せしまして、もしまだ残ってくれた方々がいれば、感謝の気持ちを込めた壮大なオマケコーナーとして、後半3曲でエンターテイメント集団・氣志團の真骨頂をお観せしようという話になって。「氣志團らしくカッコつけようぜ」ってみんなと話して。僕がカッコ良さを貫いてるなと思う人って、いわゆるクールにキメ続けてる人じゃなくて、どんな土壇場でもユーモアを忘れない人なんです。美学のヴィジョンが明確な人って変な所で脆かったりするし、そこが魅力なわけですが、自分はやはり真の意味で強い男に憧れるんです。今まで見てきた中で、最強だと思った人は皆、いつの時代もイケメンのヒーローじゃなくて、土壇場に追い込まれても周囲を楽しく盛り上げて安心させられる人だったんです。やっぱ最後は笑顔がいいよなって。そんなところからセットリストがまとまってきたんです。そんなことから、バンド練習で集中力を使い切った後に、更にメンバーみんなでダンスを黙々と練習をして体力も完全に使い切るという、地獄の日々が始まったわけですが…(笑)。結果とても盛り上がったし、良かったねってところで無事、大トリを務め上げることが出来たんです。その後は全国のフェスやイベントにお呼ばれすることが多かったんですけど、万博で「O.N.C. ~One Night Carnival 2035~」(DA PUMP『U.S.A.』のマッシュアップ曲)が解禁になったんで。地方でバッカバカとホームラン打たせてもらって。あの時は「負ける気せん!」って感じで絶好調でした。人の褌で相撲を取らせたら横綱になれる器と言われていますから(笑)。